追憶の旅へと立つ−忘れた再開−

追憶の旅へと立つ−忘れた再開−
 忘却という扉で私はこの部屋を閉じた。理由も分からぬまま私は此処で終わるのだと思っていた。けど、貴方がこの部屋に入って来た。 「久しぶり!メモリアって…覚えてるかな?」  困った顔で檸檬色の瞳を覗かせた。眉下で切り揃えたぱっつんの前髪は後ろで束ねておらず、髪は腰まで下ろしている。少し変わった薄墨色の妙に目が惹きつけられる。 「いいえ、申し訳ありません。どちら様ですか?」 「あはは〜…私はシャイン!ほらこの帽子を被っているから『魔法使い』のちょっと凄い人なんだ〜☆」  私は適当にそうなんだと返した。貴方は先程打って変わって神妙な面持ちで此方に向き直る。 「実はね…君の『精神療法』を次のフェーズに移そうと話が上がってね、君さえよければ一緒に記憶を無くす前の君が訪れた地を巡ろう。記憶が元に戻る可能性がある。」 「私は記憶を無くして…るのか?」 「じゃあ…この部屋中にあるこの付箋達と凄まじい量の本は何のためにある?」  部屋を見渡すと確かに天井まで何かがぶら下がっている。あれが付箋か、そして壁にも付箋がある。加えて本棚には所狭しと本が収納されている。何なら本棚に収まり切らない本は床積まれている。
雨傘空々
雨傘空々
初めまして、放置しすぎてアカウントを変えて低浮上となりますが投稿していきます。 前アカウントの『雨傘凪』のアカウントは人がいない状態ですので此方で更新していきます。