ちろ𝕜𝕦𝕟._.

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誤字脱字あるかもしれませんが、優しい目で閲覧お願いします。

紅き瞳と白き森 ~白き鳥、囁く森~

「ウィル、見て見て。お花が笑ってるみたい」 ソフィリアムは森の奥、苔むした小道の先で立ち止まり白い一輪の花に指を伸ばした。 「笑うわけないだろ」 ウウィリアムは苦笑しながら、妹の後ろに立つ。 「こんな場所、母上に見つかったら怒られる」 そこは王家に代々伝わる、入ってはいけないとされる森だった。 「でも呼ばれた気がしたの」 ーーー風が吹いた。 森の奥から柔らかな鈴の音のような風が吹き抜けた。 次の瞬間、空気が震えた。 ソフィリアムの髪がふわりと舞い、紅い瞳が光を帯びた。 彼女の前に1羽の白い鳥が現れた。 羽は透明な輝きを持ち、まるで光の精霊のようだった。 「……こんにちは」 ソフィリアムは自然に言葉を発した。それは人間の言葉ではない。古きエルフの言葉だった。 鳥は囀り、彼女の肩に止まると羽ばたきと共に空へ舞い上がった。 その瞬間、周囲の木々がいっせいに葉を揺らし草花が音もなく咲き誇った。森が少女に応えたのだ。 「っ…姫様、今の……!」 森の入口にいた侍女が血相を変えて駆け寄ってくる。 「姫様、何を……今の鳥は…どうして、木々が…!」 ウウィリアムは、妹の横顔を見つめていた。 彼女はただ静かに空を見上げていた。とても穏やかで、幸せそうに。

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紅き瞳と白き森  ~白き鳥、囁く森~

紅き瞳と白き森

<プロローグ> 数百年前、初代国王リュシアン=レーヴィエントは、北方から流れてきた白銀のエルフ族と契約を結び、共にこの地を治めることを決めた。 リュシアンとエルフの巫女との間に生まれた子が、王族の血筋の始まりとされる。王家はエルフの力を受け継ぎ、「自然と魔との調和」を司る力を持っていた。 時は流れ、エルフたちはこの地を去った。 王族の血は次第に人間の血に薄められ、力を持つ者はいなくなった。 やがて王族が力を持っていた記憶は神話となり、 いつしか「力を持つ者=異端・災いを呼ぶ者」という迷信が広がっていった。 王宮の古文書や記録は封印され、エルフの力について語る者はほとんどいなくなった。 ただ一つ、「エルフの力が再び目覚める時、王国に災いが訪れる」という曖昧な言い伝えだけが残った。 そんなレーヴィエント王国に、100年ぶりの双子が生まれた。 王国の歴史上、王家に双子が生まれるのは異例だった。占い師たちは不吉の兆しと解釈した。 兄ウウィリアムは黒髪に紅の瞳を持ち、王の器として期待された。 妹ソフィリアムは白髪に紅い瞳。 そしてある日、白き鳥を宙に舞わせた。 「あれは…エルフの呪いか?」 「いや、古の精霊術だ…あれは災いを呼ぶ」 誰も真実を知らぬまま、少女は静かに王宮の奥へと追いやられた。

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紅き瞳と白き森