星降夜(ホシフルヤ) 無期限活動休止中
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鳴リ続ケコノ想イ 答えが無くても突き進め。自分の考えを恥じるな。それは貴方だけのもの。 別サイトの作品の閲覧数8000突破。ぜひよろしければ、読んでください。『小説家になろう』で活動中。 『【4章執筆中】俺は空気に干渉する。風術師…じゃなくて、空術師。魔力だけが取り柄だったけど最強になりました。』代表作です。 2025年8月5日活動停止(と思われる)
俺は空気に干渉する。風術師…じゃなくて、空術師。魔力だけが取り柄だったけど最強になりました。
------------------------- エピソード1開始 ------------------------- 【第1章】 一章 全ての始まり 【エピソードタイトル】 0.プロローグ 【前書き】 初投稿です。投稿頑張りたいと思います。プロローグなため少ないです。 【本文】 この世界では、魔素を吸わないと生きていけないんだ。 魔素と同時に大気中に“空気“というものがある。空気は魔素を入れるためのもので、空気だけでは何もできない。 でも、そんな常識を覆した1人の人間がいたんだ。その少年は、『空術師』と呼ばれて、今も世界を見守ってる。 僕が今から話すのは、この世界の記憶と、その少年の旅の、儚い記憶。 俺の名前はラティエル。俺の親は戦争に行く前に、孤児院の院長に、俺を預け、失踪した。 そこから俺は、孤児院がある地域を治める伯爵様から支援を受けた。 伯爵様によると、俺は魔力量が人と比べて多いらしく、将来は凄い魔術師になれるそうだ。 ーーでも、この幸福もすぐに壊れた。今日で俺はもう15歳。今まで育てて貰った恩を返そう。そう思っていたのだが、俺に宿っていた魔術は、神官様によると『空気』という名前だった。 伯爵様に激怒され、孤児院を追い出された。俺は馬車から降ろされた。そこは森だった。 「ーーでっか。」 ここからどうすればいいのか。俺の頭はそれだけでいっぱいだった。 ただ、悲しかった。伯爵様が見ていたのは俺じゃなくて、俺の魔力だったんだろう。 【後書き】 「こここうしたらいいよ」などの優しいコメントがあれば幸いです。ダメ出しよろしくお願いいたします。 【リアクション】 好き: 1件 ------------------------- エピソード2開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 1.『空気』の可能性 【前書き】 2エピソード目です。 【本文】 ヤバい。森に放り出されてしまった。どうすればいいんだろう。まず、生き残る可能性は、『街に戻る。』『森を通って別の街に行く』の二つが現実的かな?いや、でも、流石に後者は現実的ではないような。でも、街へ戻ってもまた追い出されるだけだろうし…。まあ、どのみち、森に放り出された時点で生き残る可能性は少ない。よし、決めた。この森、通ろう! 「でも戦う手段ないよな。」 ラティエルは小さく呟いた。 まずは魔術を見てみるか。確かに伯爵様に追い出されたけど、名前が弱そうなだけかもしれない。神官様もユニークマジックって言ってたし。 「まあいいや、とりあえず、『ステータスオープン』」 名前 ラティエル 種族 人間 属性適正 風 魔術適正 空気(YM) 性 男 Lv 2 HP20 STR E VIT E AGI C INT A DEX B MND C LUK D 「やっぱり魔術系のステータスに結構偏ってるな。これでもINT凄いんじゃないか?」 でも空気に関する情報がないな。 「ステータスデータオープン『空気』」 こうすると言ったものの情報がステータスに開示される。 空気(YM) ユニークマジックで、空気に干渉することができる。空気を動かしたり、固めたり、色をつけたりすることができる。なお、『空気』は常時発動型魔術(パッシブマジック)で、発動条件は『空気』ということ。空気と言ってからは、空気の流れが見えるようになり、自分のイメージ通りに空気を変化させることができる。なお、自分の思い通りに動かすには、『エア』という必要がある。 「は?」 いや、これ、ぶっ壊れすぎる魔術では?もしかして、伯爵様って馬鹿だった? 【後書き】 「ここをこうしたらいいよ」などの優しいコメントがあれば幸いです。ダメ出しよろしくお願い致します。 【リアクション】 いいね: 3件 ------------------------- エピソード3開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 2.無知 【前書き】 3エピソード目です。人と会う回です。 【本文】 よし、これで光が見えてきた。『空気』が有用性の高いスキルということはもうわかったから、あとは『空気』の使い方をしっかりと理解するだけだ。ちょうどいいところにゴブリンがいる。『空気』の練習相手になってもらうぜ!でもなんか強そうなゴブリンだなあ。 「『空気』」 その瞬間、俺の周りが綺麗な色になった。なんというか、透明な、綺麗な色だ。透明でいてはっきりと見える。 「すげえ。」 『グワー!』 「やべっ、ゴブリンに気付かれた。試すか!『エア』!剣となれ!」 俺のイメージする剣は! ラティエルは、本物の剣を見たことがなかった。剣は、物語で読むような剣しか知らないのだ。そう。魔を滅するような剣や、呪われた剣や、神に使わされた剣とか。 そこにあった剣は、神々しくて、いかにも強そうな剣だった。 魔力がごっそり持って行かれて、少し怠い。 『ギャ、ギャオ?』 ゴブリンも狼狽えているようだ。俺もわからない。剣を空気で作ったらこんなかっこいい剣ができたんだから。 「まあいいや、喰らえ!」 ザンッ! ゴブリンが斬られ、溶けた。 「えっ?切れ味が良すぎるんじゃないか?」 ゴブリンがバターを切るぐらい簡単に切れたんだが…。 魔力がごっそりと持ってかれた。でもこれ、なんかみたことがある気がするんだけどなあ。 「な、な、な、そこのアンタ、何を持ってるんすかーーー⁉︎」 「え、人間?」 「はい、人間っす。」 「なんでこんなところにいるんだ?」 「それはこっちのセリフっすよ。ていうかアンタ、それもしかしなくてもエクスカリバーだったりしないっすよね?」 「いやいや、そんなわけないじゃん。」 「そうっすよねえ。」 (ガチなんなんすか、この人⁉︎なんかエクスカリバーに似てるもん持ってるし、変な人っすねえ。) なんだコイツ…。 「ちょっ、アンタ!なんだコイツみたいな顔でウチを見ないでくださいっす!」 「いや、そんな顔してないけど。」 「誤魔化しは効かねえんすよ!ウチはれっきとした人間、一般人っす!」 だいたい一般人って言ってるこういう怪しい身なりのやつは不審者なんだ。 「『鑑定(アナライズ)』」 名前 ラティエル 種族 人間 属性適正 風 魔術適正 空気(YM) 性 男 Lv 5 HP25 STR D VIT D AGI C INT A DEX B MND C LUK D 「えっ、アンタもしかして、ユニークマジック使いっすか⁉︎」 「え、そうだけど。」 「あ、でも弱そうな名前っすねえ。『空気』って!」 コイツ、人が気にしていることを…。 「でもこの剣、そのお前の弱そうな魔術っていたやつで作ったんだぞ?」 「そんなんどうせ、見た目だけでしょ、ただの剣っすよ〜。」 「ぐぬぬ」 「ていうか、アンタ、レベル低いっすねえ」 「はあ?今だってゴブリン倒したし!」 「え、待ってっす。アンタ、そのゴブリンって宝石つけてませんでした?」 「え、付けてたけど。」 (待ってっす。この人まさか、Lv5で、ハイゴブリンを倒したっすか?いや、そんなわけないっす。ていうかこの剣も見てみないとっすね。) 「『鑑定(アナライズ)』」 空剣エクスカリバー(仮) 従来の聖剣のような悪を滅する力は持っていないが、その切れ味は、聖剣をも上回る。 「は?」 「うん、どした?」 「ちょっと待ってくださいっす!アンタ絶対おかしいっすよ!」 「え?確かに『空気』は強いけど、俺は弱いもんなあ。この剣もお前が言うには普通の剣だし。」 「いや、違うっす!強すぎるって意味で言ってるんすよおおおお!」 「え?どこが?」 「いや、だって、Lv5でハイゴブリン倒すなんておかしいじゃないっすか!」 「いや、あのゴブリンを倒した時はLv2だったぞ?」 「はああああ?おかしいっす!アンタ絶対感覚めっちゃズレてますよ!いや、Lv2でハイゴブリン倒すって、どんだけ規格外なんっすか!アンタ分かってます?ハイゴブリンって、討伐難易度Bっすよ?アンタみたいなLv5の人間が倒せる強さじゃないんすよおおおおおお!」 「お前は倒せないのか?」 「そりゃウチはちゃんと強いから倒せますよ?ウチはLv結構高いんすよ?こう見えてS級冒険者なんっすから。正直ハイゴブリンってB級冒険者とかC級冒険者パーティぐらいで倒せるっす。でもアンタ、冒険者でもないっすよね?」 「うん。」 「じゃあおかしいっす。」 「え?俺のどこがおかしいの?弱いってこと?」 「強すぎるって言ってるんすよ!アンタ耳大丈夫っすか?」 「うん!」 「そんな満面の笑みで言われても困るっす!もういいっす、アンタには常識を教え込むっす!」 【後書き】 ラティエルは真面目に見えて結構なアホです。 「こここうしたらいいよ」などの優しいコメントがあれば幸いです。ダメ出しよろしくお願いいたします。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード4開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 3.模擬戦 【前書き】 戦闘回です。 【本文】 「いいっすか。」 「ああ。」 「この世界は、2つの大陸が存在することは知ってるっすね?」 「ああ。」 グラン大陸と、エルーガ大陸である。 「大陸には、国が幾つか存在するっす。その中でも大きいのが、ウチらのいるトートレイトっす。」 「なるほど。」 「そして、ウチらが今向かってるのは、王都のギルドっす。ウチが所属してるのはそこっすね。」 「なるほど。あ、そういえばお前なんていう名前なの?」 「はあ?今っすか?まあいいっす。ウチは、ミストっていうっすよ。ていうかアンタ、人に名前聞くんなら自分の名前を名乗るっすよ!」 「ああ、すまん。俺の名前はラティエル。よろしくな。」 「へえ、ラティエルさんっすか。いい名前っすねえ。」 「そうか?ありがとう。」 「んで、話を続けるっすよ。」 「ちょっと待ってくれ、王都のギルドにもミストみたいな高ランクの冒険者はいるのか?」 「王都は冒険者の戦力が集まる街っすからね。S級冒険者はもちろん、S級冒険者パーティも多くいるっすよ。」 なるほど、王都はいろんな人がいるんだな。 「ラティエルさん、人前であんまりユニークマジックは使わない方がいいっす。」 「そうなのか?」 「ユニークマジックは珍しいのは知ってるっすね?」 「ああ。その魔術を使える人間以外は使えない魔術のことだろう?」 「そうっす。無知なラティエルさんでもそれぐらいは知ってたっすか。」 「あ?」 「いやいや、ウチはほんとのこと言ってるだけっすよ〜。」 「おいミスト、喧嘩売ってんのかあ?」 「一回模擬戦してみてもいいっすね。」 「じゃあやるか。」 流石に冗談だったのか、すぐに和気藹々とした雰囲気になる。 「それじゃあ始めるっすよ。」 「ああ、いつでも。」 まずは様子見。空気で守りながらだな。 「始め!」 「風よ、吹き荒れろ。『旋風龍波(せんぷうりゅうは)』」 鋭い風が吹き荒れる。 「なっ!『エア』」 空気で自分の周りを固める。 「は、はあ?なんでウチの魔力で放った上位魔法を防ぎ切れるんっすかねえ?ずるいっすよ!」 「そっちだって初っ端から上位魔法撃ってくんじゃねえよ!」 「ならまたやるっすよ。万物を刻み尽くす風よ。顕現せよ。吹き荒れろ。我が敵に我の存在を刻め『天風神槍(オーディン)』 濃密な暴風の集合体が槍となり、具現化する。 「『エア』顕現しろ。『暴食之剣(グラトニーソード)』」 禍々しい魔力の集合体が剣となる。 「はああああ!」 「おらあああ!」 ぶつかり合い、弾け合う。 ガキイイン! そして、霧散する。 「はあ、ウチの負けっす。ウチの最強の切り札の神魔級魔術で倒せないっすから」 「すげえな。」 「最後のって何をイメージしたんすか?」 「御伽話に出てきた魔王の剣。」 「すごいのはそっちすよ。はあ、自信無くすっす。」 「まあいいや、飯でも食って、出発しようぜ。」 「そうっすね。また王都に帰ったら修行するっす。」 【後書き】 「こここうしたらいいよ」などの優しいコメントがあれば幸いです。ダメ出しよろしくお願いいたします。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード5開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 4.称号 【前書き】 常識回です。 【本文】 「さーて、後2日ぐらい歩いたら王都に着くんじゃないっすかね?」 「おっ、結構近くなってきたな。」 「そうっすね、模擬戦の時は生きた心地がしなかったっす。ウチの切り札をあんな簡単に斬られるなんて思ってなかったっすよ。」 「でも、ああいう感じの伝承に出てくる剣を作ったりしたら、魔力が結構持ってかれるんだよなあ。」 「ほんとっすか?ならステータスに書かれていない副次効果や、隠し効果もあるかもしれないっすね。王都に戻ったら、ウチの知り合いの鑑定士に聞いてみるっす。」 「鑑定士ってなんだ?」 「鑑定士っていうのは、鑑定魔法じゃ読み取れない情報も見れたり、隠蔽を看破する鑑定スキルを持つ人のことっす。」 「スキル?」 「ラティエルさんそれも知らないんっすか。」 「俺、非常識らしいから。」 実際、非常識らしいではなく非常識なのだが… 「まあいいや、スキルっていうのは、生まれた時から持っている、魔力を消費して使用する技能のことっすよ。」 「ん?俺そんなの持ってないぞ?」 「ユニークマジックは、別名ユニークスキルって言うんすよ。」 「なんでなんだ?」 実際昔は魔術もスキルも似たようなものだったんすよ。それが最近になって区別するようになったんっすよ。これには、帝国の魔王が関わってるんすよ。」 「魔王って、御伽話とかに出てくるあの魔王?」 「ああ、ちょっと違うっすね。物語に出てくるのは、魔族の王っす。帝国の魔王は、魔術の王って意味っすよ。どっちかっていうと称号って感じっすかね?」 「称号ってなんだ?」 「称号っていうのは、神が人に贈るものっすよ。ちなみにウチも称号持ちっすからね。」 「え⁉︎ミストが?どうせ嘘だろ、見え張らなくていいって。」 「はあ?ウチは正真正銘の称号持ちっすよ。ほら、『ステータスオープン』」 ミスト エルフ 魔法属性 風 魔術適正 強烈な隠蔽がかかっています。 称号 『翠の魔術師』『天風』 Lv765 STR A VIT A AGI A INT SS DEX S MND SS LUK A 「ほら、ウチは正真正銘の称号持ちっすよ。しかも2つ。」 「ミストすげえな。」 「そうっすか?ありがとうっす。」 「『天風』ってなんだ?」 「風を司る天使、ラーファルエルにも劣らない風魔術の使い手に贈られる称号っす。」 「『翠の魔術師』は?」 「これは、神が認めた風魔術の使い手に贈られるものっすよ。一応『天風』の方がすごいっすね。」 「へー、俺ももらえるかな?」 「Lvが最低でも3桁いかないと無理っすよ。」 「そうか、遠いなあ。」 「ま、一緒に頑張るっすよ。」 「ん?王都に戻っても俺とパーティ組んでくれるのか?」 「別にいいっすよ、ウチソロで冒険者活動してるんで。」 「じゃあ、お言葉に甘えるとするよ。」 「でも、このレベル差で、負けるっすか。一応称号を得たものにしか使えない魔術はあるんすけど、そしたら対等じゃないっすからね〜。」 「そうか?別に使ってくれてもいいが。」 「そうっすね、それ使わないと勝てそうにないっす。」 「それにミストは魔術しか使ってないだろう?剣も使えばいいだろう。ミストの背中に背負ってる立派な剣。」 「これはエルフに伝わる宝剣っす。クールレイっていう名前っす。」 「すげえな、俺もそんな剣欲しいなあ。」 「ラティエルさんは空気で出せるじゃないっすか。」 「確かにそうだな。お前頭いいな。」 「いや、誰でも思いつくと思うんすけど。」 「そうか?まあいいや、早く王都に行こうぜ。」 「はいはい、わかったっすよ。」 【後書き】 「こここうしたらいいよ」などの優しいコメントがあれば幸いです。ダメ出しよろしくお願いいたします。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード6開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 ステータス説明 【前書き】 自分の知識なため、皆様の常識と異なる場合があるかもしれませんが、この人はこういうステータスでやってるんだな。というふうに捉えていただければと思います。 【本文】 STRとは ストリングス(物理攻撃力)を表すもの。 STRの高さによって、物理火力が変わる。 VITとは ヴァイタリティー(物理防御力)を表すもの VITの高さによって、物理防御力が変わる。HPも変わる。 AGIとは アジリティ(敏捷性)を表すもの AGIの高さによって、敏捷(足の速さ)が変わる。回避力も変わる。 DEXとは デクスタリティ(器用さ)を表すもの DEXの高さによって、命中力が変わる。 INTとは インテリジェンス(知力)を表すもの INTの高さによって魔法攻撃力が変わる。 MNDとは マインド(魔法防御力)を表すもの MNDの高さによって、魔法防御力が変わる。状態異常系に対するレジスト率が上がる。 LUKとは ラッキー(運)を表すもの LUKの高さによって、ドロ率(ドロップ率)や、クリ率が(クリティカル率)変わる。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード7開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 5.登録 【前書き】 噛ませ犬はどの作品にも大体入るものです。 【本文】 「ラティエルさん、朗報っすよ!後5時間ぐらいで王都に着くっす。」 「ん?なんでなんだ?」 「それはっすねー、道中にあるダンジョンのせいで、最低でも2日はかかるはずだったんっすけど、ダンジョンが消えたらしいっすよ。」 「へー、なんで消えたんだろうな。」 「そうっすね、魔王が出現したか、勇者が出現したか、それか両方っすかね?」 「なるほどなあ」 「それじゃあ、スピードアップするっすよ。」 5時間後… 「すげーーー!でっけー!なんだこれ?」 「これが王都の城壁。この国が城壁王国って言われているのはこれがあるからなんっすよね〜。」 「これは攻められても負けないな。」 「そうっすね、それがこの国の強いところっす。」 「ギルドはどこ?」 「中っすよ。」 「何者だ?住民票を見せろ。」 「はぁ、これでいいっすか?」 と、ミストが金色の札を差し出す。 「なっ、申し訳ありません。『天風』ミスト様でしたか。どうぞ、お通りください。」 「ありがとうっす。ちなみに後ろの人はウチの連れで、ウチより強いっすよ。」 「なっ、S級冒険者よりも⁉︎失礼いたしました。お連れの方もお通りください。」 「あれ何?」 「あの人は衛兵っすよ。多分新人っすね。有名な冒険者は衛兵に顔が利くんす。なんで、あの人はウチを知らなかったんで、新人っす。ああいう検査みたいなんがいつもあるので、聞かれたら冒険者カードを見せるといいっす。ラティエルさんなら、すぐにA級とか行くんじゃないっすかね?」 「S級はすぐにはいけないのか?」 「王家からの指名依頼を成功させる必要があるっす。どれも一級品の依頼っすから、それを受けないためにA級にいる人はいるっすよ。」 「なるほどなあ。」 「はい、着いたっすよ。ウチは外で待ってるっす。」 「おう、ありがとな。」 「そんなもん簡単にいうんじゃないっすよ!」 「ん?わかんねえなあ」 「ようこそ、王都ギルドへ。依頼ですか?登録ですか?」 「冒険者登録をしたいんだけど。」 「かしこまりました。ではこちらの水晶に手を乗せていただけますか?」 「なんでなんだ?」 「ステータスが表示されますので。」 「わかった。」 名前 ラティエル 種族 人間 属性適正 風 魔術適正 空気(YM) 性 男 Lv 7 HP45 STR C VIT C AGI C INT A DEX B MND B 「ユニークマジック使いなのですね。」 小声で受付嬢が言う。 「そうだ。」 「かしこまりました。では、これがあなたのギルドカードです。」 そう言って、受付嬢が、銅色のカードを渡す。 「ありがとう。」 「私は受付嬢のリヴィウスといいます。また来てくださいね。」 そう言ってリヴィウスは微笑んだ。 「よろしく、リヴィウスさん。」 ラティエルがそう言って依頼板を見ようとすると 「おい、先輩に挨拶はねえのか?」 「え?」 「俺の名前はカマセーヌ。このギルドのC級冒険者だ。このギルドは年功序列。だからいつも、新人の歓迎会(リンチ)を開いてるんだ。」 凶悪そうな顔をした男がそう言う。 「本当ですか?ありがとうございます!」 「おう、みんな、歓迎会(リンチ)の時間だぞ!」 「よっしゃー!」 「やっとかよ」 「待ってましたー!」 「またですか。」 リヴィウスは呆れたようにそう言い、口を開いた。 「ラティエルさん、怪我をしても私が治しますが、気をつけてくださいね。」 「?はい、わかりました。」 未だに状況がよくわかっていないラティエルは、首を傾げながらそう言った。」 その頃ミストは。 「あ、そういえば、歓迎会(リンチ)があったっすね。どうせまたカマセーヌだろうけど、これはラティエルさんのストッパーが必要っすね。はあ、仕方がないっす。」 そう言って、ミストはギルドに足を踏み入れた。 「あっ!ミストさん!」 「おい、あれ『天風』じゃねえか?」 「ほんとだ。」 「あれが本物か」 「ただいま戻りましたっす。今すぐ歓迎会(リンチ)会場に案内してくださいっす。」 「なぜですか?」 「ちなみにラティエルさんウチより強いっすから、カマセーヌ、死ぬっすよ。」 真剣な顔でミストがそう言う。 「ミストさんより⁉︎わかりました。今すぐ行きましょう。」 【後書き】 「こここうしたらいいよ」などの優しいコメントがあれば幸いです。ダメ出しよろしくお願いいたします。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード8開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 6.リンチだヤッホー!(逆) 【前書き】 無双回です。新冒険者キャラが登場⁉︎ フローリアの性別変えました。女性から男性になりました。 【本文】 「ようこそ、新人。」 「ん?こんな殺伐とした場所で歓迎会をするのか?」 「ああそうだぜ。ここで歓迎会(リンチ)をするんだ。」 「ひゃっほーー!」 「久しぶりだな!」 「あんな弱そうな新人久しぶりだったからな!」 「さあ、歓迎会(リンチ)の相手は、C級冒険者パーティ『飢餓の灰狼(きがのはいろう)』だ!」 「待ってましたー!」 「真ん中がカマセーヌ。左がザコモーノ。右がモブリンだ!」 「やっちまえー!」 うわー、歓迎されてるなー。嬉しいぜ。 当の本人は気づいていない。むしろリンチしようとしていることに。 「本気でこいよ」 もしこの言葉をミストが聞いていたらこう言っただろう。『あんたやめとくっすよ。』と。 「よし、わかった!本気で行くぞ!」 この場にツッコミがいないため、ボケ(無自覚)とボケ(雑魚)が暴走して、ボケ(雑魚)が破滅するのである。 「『空気』。」 ラティエルはイメージする。かつて、勇者と一緒に数多の敵を切り裂いた神剣を。 『空剣グラディアス』 「おい、何もないところから出したぞ。」 「アイテムボックス持ちか?」 「へっ、新人、お前にはそんな高価な剣もったいねえよ!」 そう言って、魔術師のザコモーノが、中級魔術を放つ。 「流せ、顕現せ、飲み込め、『水之竜巻(アクアトルネード)』」 強烈な水流がラティエルを襲った。否、襲おうとした。 「『空気(エア)』!」 固まれ! ラティエルがイメージした空気の壁は、ミストの放つ風上級魔術をも防ぐ。『天風』の称号を持ち、風魔術にバフがかかっているミストの魔術でも。 ザコモーノの魔術が勢いを失い、消えてなくなる。 「なっ、結界持ちか⁉︎」 「なら剣で攻撃すればいいだろ!」 「『空気(エア)』!」 ラティエルはイメージする。かつて勇者を支えた縁の下の力持ち。天から『不死身』の称号と『絶対防御』のスキルを下賜された英雄。その男の使った伝説の盾。 『空盾イージス』 「おい、またかよ。」 「とりあえず行くぞ!」 そういい、カマセーヌが走り出す。 「くらえ!『回転斬り』」 カマセーヌが回転しながら剣を振るう。 カキン! イージスで、剣を弾く。 「おい、モブリン!」 「わかってる!『身体強化(エンハンス)』」 「よし、これで戦ってやるぜ!」 「本気で行くぞ。」 「来い!」 「空剣技『飛剣』。知ってるか?斬撃って飛ぶんだぜ?」 奇しくもラティエルは、勇者と同じ技を、同じ口調で同じ言葉を放った。 「おっと、それは危ないね。『泡沫(うたかた)』。」 「誰だ?」 空剣技は、そう簡単に防がれていいものではないのだ。勇者が、魔王軍幹部を倒した時に使っていた技なのだから。 「僕はフローリア。『泡沫のフローリア』だよ。」 「誰?」 ズコッ! その場にいたほとんどの冒険者がこけた。 「ははっ、きみ、面白いね。」 面白くて仕方がないというふうに、フローリアが笑う。紋章が発現した最強の冒険者の一角は、普通の男性のように、心の底から笑った。 「おい、『泡沫のフローリア』があんなに笑ってるとこ見たことあるか?」 「ねえな。」 「珍しいな。」 「ちょっとあんたたち!何やってるんすか!終わりっすよ!」 「『天風』だ!」 「本物だぞ。」 「すげえな。」 「あれ?ミスト、どうしたんだ?外で待ってるんじゃなかったけ?」 「あんたのストッパーが必要になるんすから、当たり前っすよ。」 「そうか、ありがとう?」 「そうそう、お礼を言うっすよ。」 【後書き】 「こここうしたらいいよ」などの優しいコメントがあれば幸いです。ダメ出しよろしくお願いいたします。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード9開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 7.最強同士の激突 【前書き】 最強格同士の対決が今ここに! 【本文】 「こんにちは、ミストさん。」 「げっ、フローさんなんでここにいるんすか?」 嫌そうな表情でミストが言う。 「ははっ、そんな嫌そうな表情をしないでくださいよ。」 「というか、フローさん泡沫の力使ったんすか?」 心配そうな表情でミストが聞く。 「そんな心配しないでいいですよ。ちょっと使っただけです。」 「紋章の力は身を削るんっすから、危ないっすよ。」 「そうですね。心配してくれてありがとうございます。」 「別に、フローさんが消えるとウチも退屈っすからね。」 「久しぶりに、模擬戦でもしましょうか?」 「いいっすね。ちょうどいいっす。ラティエルさん、見とくっすよ。対人戦のプロ同士の戦いを。」 冒険者は職業柄、魔物だけでなく、人。盗賊や、賞金首と戦う時もあるのである。 「ていうか、紋章って何?」 「は?」 ここに来て、ラティエルの無知がまた光る。 「え、君、紋章を知らないのかい?」 「ああ。そんなの聞いたこともないな!」 自信満々、という表情でラティエルが無知を披露する。 「あはははっ、本当に君は面白いね!」 面白くて仕方がないというふうに腹を抱えて笑う、フローリア。 「まあいいや、とりあえずやるっすよ。説明は後でしてあげるっす。」 「了解、ありがとな。」 「どういたしましてっすよ〜。」 「それじゃあやろうか。」 「面白くなってきたので審判は私がしますね。」 と、受付嬢のリヴィウスが言う。 「いや、普通は止めるべきじゃないか?」 と、案外まともなザコモーノ。 「それでは始めます!」 「いや、無視しないで」 「始め!」 「おい!」 と、コントのような2人だが、皆気づいている。この模擬戦が、最強同士の激突であることを。気づいていないのは、どこかの無知な主人公だけだろう。 片や、風魔術を極め、神から『天風』の称号を下賜された最強格のエルフ冒険者。 片や、呪われた紋章に発現し、神から『蒼魔(そうま)』の称号を下賜された最強格の冒険者。 2人の最強格が、今、激突する。 「それじゃあ、こっちからいくっすよ!吹き荒れろ。『天翔ル翔風(あまかけるしょうふう)』。』 空を駆け巡る、風の嵐が、フローリアを襲う。 「それじゃあ、仕返しだ。飲み込め、流せ。『蒼之激流(あおのげきりゅう)』。 濃い青色、否、蒼色の激しい水流がミストを襲う。 空中で、水の激流と、風の嵐がぶつかり合い、消える。 「ちっ、相殺されたっすか。」 「相殺したね。」 「それじゃ、ウォーミングアップはここまでっすよ。『森林(しんりん)の魔法』。消しとばすっすよ。』 魔法。それは、魔術を超越し、魔術を極めた者だけが使える、無から何かを生み出し、何かを無に還す。それが魔法。『森林(しんりん)の魔法』とは、エルフであること。風魔術に一番適性があること。そして、魔術を極めること。魔法がある理由。それは、魔術をねじ伏せるためなのである。魔法の本質は、自分の領域に引き込み、自分の有利な勝負をさせることにある。それは、人によって違い、考えによって違うのだ。複数の魔法を発現することもある。脳内によって、魔法は構成される。魔法とは、魔術師の、切り札なのである。 「へえ、やっぱりすごいですね。ならこちらも…。行かせていただきます!」 【後書き】 なんか新要素出てきましたが、一章終わったら、説明しますんで、よろしくお願いいたします。どうか評価お願いします。いつも読んでくれる方ありがとうございます。コメントや評価が励みになります。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード10開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 8.魔法のぶつかり合い 【前書き】 中盤戦です。奇跡(まほう)から、魔法に変えます。 【本文】 「『泡沫(うたかた)の魔法』」 無から何かを生み出す魔法があるなら、何かを無に還す魔法もある。つまり、0を1にする。1を0にする。その違いである。決して魔法は万能ではない。何故か?魔法使い同士がぶつかり合った時、世界の特性によっては破壊されるからである。相殺し合う場合もあるが、時に残り続ける場合がある。そのため、魔法使い同士の対決には危険が伴う。世界が壊れる。 かつて、世界初めての魔法使いである、勇者レインはこう言った。『1を0に、0を1にするには、研鑽が必要なわけではない。その考えに脳がたどり着くまでが長いのである。才あるものは、頭にパッと浮かんだ考えで、魔法に目覚める。魔法とは、努力と才能の結晶なのである。』と。 勇者レインの仲間だった賢者セーラは、こうも言った。『魔法ほど、脳内に精通しているものはない。その人の脳の中がそのまま魔法になることもある。魔法の中では、術者が絶対なのだ。』と。 そして、模擬戦の会場内が、泡で敷き詰められる。 「これが、噂に聞く『泡沫の魔法』っすか。」 「ああ。この魔法を前に後出しは良くなかったね。」 「ふふっ、そっちこそ、これでウチが終わるとでも思ってるんすか?この魔法は、ウチが『絶対』すよ。」 そう言った瞬間、木々が、模擬戦会場から生え、泡をどんどん消していく。 「なっ。」 「ウチの『森林の魔法』はただ木を生やすだけの能力っす。でもね、この魔法は先手必勝なんっすよ!」 ミストが言った通り、『森林の魔法』は、先手必勝の魔法である。速度を重点的に置いた風の魔術と同じように、先に発動することによって、絶大な効果を発揮する。 対して、フローリアの『泡沫の魔法』は、後手に回ることによって、相手の魔術を消すことができる。魔法も同じである。 後手に回ることで強いフローリアと、先手に回ることで強いミスト。これは単純に魔法の相性の差と言える。 「魔法はウチの勝利っす!終わりっすよ、フローさん!」 「ははっ、ならこれでどうだい?」 フローリアの体が光り、泡が溢れ出す。 「正真正銘、泡沫の紋章の本領発揮だよ。」 泡沫の紋章は、消すことに特化した、攻撃性の紋章である。フローリアはそれを進化させた。自分の存在を泡に慣れさせる。そうすることによって、泡に触れたものを無に還す唯一無二の攻撃手段となった。 「木々が消えてくっす。」 「形勢逆転だね。」 「なら、ちょっとずるいかもしれないっすけど、使うっすよ!うちが『天風』の称号を貰ったことによる強化を見せてやるっすよ!」 「なら僕も、『蒼魔』の本領発揮と行こうじゃないか!」 こうして、最強格の激突は終盤戦に突入することになる。 蒼と翠。二つの色が。 【後書き】 「いやー、ミストの方が好きだな」って方は⭐︎5を。「いやー、フローリアの方が好きだな」って方は、ブクマを。よろしくお願いいたします! 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード11開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 9.紋章の真価 【前書き】 一章最後です。 【本文】 「さあ、クライマックスだー!」 突如大声を上げ始めたリヴィウス。 「え?実況?」 今この場唯一のツッコミ役であるモブリン。 「さあ、突如繰り広げられた、S級冒険者同士の対決!今状況は拮抗しております!」 「え?ノリノリすぎないか?」 「さあ、まずは振り返っていきましょう!一番最初!ミスト選手がすごい威力の、風魔術を撃ったと思ったら、その瞬間、フローリア選手が高密度の、水魔術を撃った!そして、空中で2人の魔術がぶつかり合い、相殺しました!」 「え?え?ごめん、ついていけない。」 「さあここまでが序盤戦です!ここから、中盤戦の振り返りをしていきます!中盤戦、お互いが、魔術師の切り札である魔法を発動!先にミスト選手が魔法を放ったが、フローリア選手の魔法によって無効化!されたと思いましたが、なんと!ミスト選手の魔法は先手必勝!フローリア選手の魔法を打ち破りました!しかし、さすがはS級冒険者だ!魔法を打ち破られても、持ち前の紋章で、打開していきます!さあ、両者一歩も譲りません!いや、譲れません!さあ、これから終盤戦に突入!勝利の女神はどちらに微笑むのでしょうか⁉︎」 「いや、なんか熱烈すぎないか?」 「うるさいですよ!この戦い見逃せるわけないでしょうが!」 「あ、そういえばこの受付嬢、戦えないのに戦闘マニアだった。」 「さあ、両者が動き始めます!この戦いを静かにみたいので、一度中継を終了します!では!」 「中継?誰に言ってんの?」 そして、勝負は動き出す。 「『天風』の真価を見せてあげるっすよ!『天装(ユナイト)』」 その瞬間、ミストの体を金色のオーラが包み込む。 『天装(ユナイト)』。それは、天系統の称号を神から下賜された者が使える技のことで、属性によってその特性は違う。『天装(ユナイト)』をすると、行動の一つ一つが必殺の魔術となる。 「さあ、仕切り直しっすよ。『吹け』」 天使は、存在そのものが魔術化されているため、言葉の一つ一つが魔術となる。 風が吹き荒れ、フローリアを襲う。 「これは怖いね。『蒼魔』。」 魔術系の称号を下賜された者は、その称号の名を冠した魔術を撃つことができる。それは、称号によって撃てるかは変わるが、大抵の称号は撃つことができる。それは、ただの魔術ではない。神が授けた魔術である。 「高密度の水流による、波状攻撃。それが『蒼魔』の真骨頂だよ。」 フローリアがそう言った瞬間、蒼色の水流が次々とミストに襲いかかる。 「まだまだっすよ!『刻め』」 風の斬撃が放たれる。 水が切り裂かれ、風が弾かれる。 お互いの魔術がぶつかり合い、霧散する。相殺の連続である。 「多用は出来ないっす!もう終わらせるっすよ!穿て!『風之神使イ(ラーファルエル)』!」 世界に歴史として伝わる、風を操る天使、ラーファルエルを模した、風の像ができる。魔力密度が高いため、具現化しているのだ。 「こちらもだ!『蒼魔之流銃(アオノナガレ)』!」 蒼色の銃がフローリアの手元に具現化される。 「『発射(ファイア)』!」 「『刻め!』」 お互いの最強の一撃がぶつかり合い最後に立っていたのは、ミストだ。 「やったっす!危なかったっす。」 「いい戦いをありがとうございました。それでは治しますね。『回帰(リバース)』。はい、これで治りましたね!」 リヴィウスが傷に手を当て、詠唱した瞬間、みるみる傷が治っていく。いや、なくなっていくという表現が正しいのだろうか。 「いや、しれっとすごいことしないで。」 やはりこの場にはツッコミ役がモブリンしかいない。 「フローリアさんも、治しますね。」 「ありがとう。」 手当てをされながら、フローリアが言う。 「さすがは『時の聖女』リヴィウスだね。回復力が桁違いだよ。」 「え?時の聖女?受付嬢が?」 「ああ、そうだよ、モブリン君。知らなかったのかい?」 「知らないに決まってるだろ!」 「あら、フローリアさん、国家機密ですよ?」 「いや、国家機密を軽々しく喋らないで!俺も命が惜しい!」 「それでは改めまして、このギルドの受付嬢兼、サブギルドマスターのリヴィウスです。ラティエルさん、よろしくお願いしますね!」 「ああ、よろしく!」 続きは2章で! 【後書き】 一章を最後まで読んでいただきありがとうございます!これからもよろしくお願いいたします! 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード12開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 1章登場キャラ紹介 【前書き】 一章のまとめです。 【本文】 一章登場キャラ一覧と紹介。 ラティエル。本小説の主人公で、ユニークマジックを持っている。『空気』という、空気をイメージ通りに操る、最強クラスのユニークマジックだが、名前が弱そうなため、伯爵からは有用性がないと判断され、追放。常識を知らないが、最強格の冒険者であるミストを圧倒。物語に出てくるような空想上の産物や、かつての英雄が使った武器なども、空気で再現できる。魔力が多いのが取り柄だが、魔術は空気以外は使えない。結構バカで、ツッコミには基本的に回ることができない。目は黒色で、髪も黒色。典型的な日本人のイケメンな人っていう感じ。 ミスト。本小説の主人公が一番最初に会ったエルフ。神から、『翠の魔術師』と『天風』の称号を下賜されており、風魔術が得意で、最強格の冒険者へと上り詰めた。魔法使いで、『森林の魔法』を使うことができる。風魔術にバフがかかっており、火力や、発動速度、詠唱短縮、などがついている。エルフの国の生まれで、実は高貴な生まれだったりして…。ラティエルに常識を教えていて、世話焼きな性格。目は緑色で、髪は金色。頭の回転も早く、本小説のツッコミ役をしている。 リヴィウス。王都ギルドの受付嬢で、訳ありの過去を持っている。会話を聞く限り、治癒の力を使うことができ、時間魔法を使えるとみていいだろう。大抵の人に優しく、戦闘マニアで、人が戦っているのを見るのが大好き。モブリンが言うには戦闘力がないらしいが、本当かはわからない。何故か?名前からもう信じられないから。 カマセーヌ。王都ギルドで、いつも新人を相手に歓迎会(リンチ)を開いている。大抵の人間は逃げていくが、ラティエルのようなバカや、強者は逃げずにしっかりと受けて、強者に返り討ちにされるが、懲りない。飢餓の灰狼のリーダーで、剣士。 ザコモーノ。飢餓の灰狼の一員で、魔術師。詠唱をちょっとだけ省略して中級魔術を撃てる。一応上級魔術も使えるが、詠唱に時間がかかるので、使わない。魔術師。 モブリン。飢餓の灰狼の一員で、付与術師。『身体強化(エンハンス)』などが使える。パーティの中では一番まともな方であり、リヴィウスに無視をされるという可哀想な人。なぜか、時々ツッコミ役をする。 フローリア。S級冒険者の1人で、『泡沫』の紋章を持っており、神から『蒼魔』の称号を下賜されていて、高密度の水流を使った魔術を得意としている。『泡沫の魔法』の使い手。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード13開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 一章登場魔法説明 【前書き】 1章まとめです 【本文】 この世界の魔術についての説明。 まず基本。1人一属性と決まっている。一つの体に生命が二つ宿っていたり、特殊体質の人間以外は無理。 『森林の魔法』 ミストが使っている魔法で、相手より先に使うことで絶大な効果を発揮する魔法。絶大な効果が何かはいいません。(作者の都合)木を魔法内に生やすことができ、自在に操れる。 『泡沫の魔法』 フローリアの使っている魔法で、相手より後に使うことにより、絶大な効果を発揮する。つまり、後出しジャンケンというわけだ。周囲に泡を発生させ、泡に触れたものを無に還すという強力な能力がある。相手が先に使った魔法を掻き消す能力がある。 2章から魔法使いは増えてくので、またおさらいします! 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード14開始 ------------------------- 【第2章】 2章 スタンピード編 【エピソードタイトル】 2章開幕 1.ラティエルの出生(リヴィウス視点) 【前書き】 二章開幕です。ラティエルの出生と、これからについて語られます。 【本文】 リヴィウスside… そういえば、私に回復術を教えてくれた先代の聖女様と、先代の剣聖様の息子の名前もラティエルだったような気がしますね。これは気になります。それに先代は未だ行方不明、もしかしたら手掛かりになるかもしれない! そう思い、私はラティエルさんの元へ向かいました。 「こんにちは、ラティエルさん。」 「あれ、リヴィウス。どうかしたのか?」 「ラティエルさんってお母さんはどんな人でした?」 私がそういうと、ラティエルさんは難しそうな表情をして、こう答えました。 「知らないんだよな。」 「知らない、と言いますと?」 「俺、孤児院生まれなんだ。院長が言ってたんだけど、俺の両親が、知り合いだった院長のところに、「私たちが死んじゃったらこの子をよろしくお願いします」って言って、どっか行ったらしい。」 ラティエルさんは淡々とそう言いました。 「悲しくはないのですか?」 私も幼少期に親を失ってしまったため、疑問に思いました。先代の聖女様は、私の母親のような存在でした。 「んー、俺の親って、孤児院の院長みたいな感じだからさ。あの人、いつもいってたんだよ。「孤児院の院長が、子どもの親みたいに支えになれなくてどうすんだ」って。あの人不器用だけど、いい人でさ。いつか恩返しをしたいなって思ってる。」 「そう、ですか。ちなみにラティエルさんの両親の名前って知ってますか?」 「ああ、母の名前がアスタルテで、父の名前がエルレインだ。」 「っ!」 間違いない。先代の聖女の名前は、『太陽の聖女』アスタルテ。そして剣聖の名前は、『無双の剣聖』エルレイン。 かつて、敵国に恐れられた、2人組のS級冒険者パーティ『陽双』。王国が誇る最強の冒険者。 片や神から『太陽』と、『聖女』の称号を下賜され、味方に太陽の加護を与えた王国の癒し手。 片や神から『無双』と、『剣聖』の称号を下賜され、聖剣『アーク』を振り続けた王国の鉾。 恐らく、そんな伝説級の2人の息子だから、あんなにも強いのだろう。 「ラティエルさん、あなたの両親は…。」 「ん?俺の親がどうかしたのか?」 「いえ、何もありません。」 私は思う。いつかラティエルさんと一緒にお二人を探しに行こうと。この思いを胸の内に秘めて、お仕事します‼︎ 「あれ、新人さんかな〜?」 リヴィウスの後ろに男が立った。 「なっ、ギルマス⁉︎会議はもう終わったんですか?」 「うん、あのクソ大臣、ギルドに全部押し付けてきたよ〜。」 「押し付けてきたって⁉︎」 「うん、もうすぐで起きる、S級ダンジョンのスタンピード、ギルドで受け持つことになった。」 「なっ、そんな!このギルドは戦力が足りていません。今依頼を出すことが可能なS級冒険者は、『天風』と『泡沫』と『斬魔』だけですよ!」 「そうだよね、どうしよっか。」 「あ!そういえば!ラティエルさんってミストさんより強いんですよね?」 「へ?『天風』よりも〜?」 「まあ、魔法を使われたら分からないが、普通に魔法なしだったら勝てるぞ。」 「いやいや、大ボラ吹くにしても大概にしなよ。ミストはギルドの最高戦力なんだから。」 「あれ?ラティエルさんじゃないっすか!早いっすね!模擬戦しましょう!この前のリベンジをするっす!」 「って、ええええええ!っな!」 ギルドマスターが困惑しながら驚く。 「ってあれ、無能ギルマスじゃないっすか。」 「はあ?誰が無能ギルマスだよ!」 「いやいや、王城会議の結果聞いたっすよ、あのクソ大臣に押し付けられたらしいっすね。それのどこが無能じゃないんすか?」 「っく、仕方ないだろ!アイツ、リーベルトが病気なのをいいことに、王命とか言ってきたんだぞ!」 「しれっと、国王陛下を呼び捨てにしないっすよ!あんた、ちょっとは抵抗してくれっすよ!」 「いや、しかたがないじゃん。」 「駄目ギルマスっすね、神から『駄目』と『無能』の称号でももらったらどうっすか?」 「はあ?ギルマス権限で冒険者ギルド出入り禁止にするぞ?」 「そんなんしたら、あんたが罰されるっすよ!私情で、S級冒険者を出入り禁止にするのは法律で禁じられてるっす!」 「とりあえず、ギルドの今いるA級冒険者以上とB級冒険者パーティを集めて、今すぐ会議開くから。そこの新人くんも来て。ミストより強いんでしょ?」 「まあ、一応は。」 「僕の名前はライム。よろしくね。このギルドのギルマスだ。」 「はい。」 「それじゃあ、先に執務室に行って呼び出すから。『通信(コール)』。」 ライムが詠唱をする。 「今、冒険者に念話で呼んでるから、先行っといて。」 「かしこまりました。今すぐギルド内にいる冒険者を集めます。」 「ああ、よろしく頼むよ。今回は僕も出ないといけないかもしれないね。」 「ライムさんが出るんですか⁉︎」 「へえ、『神剣』が戦うんすか。面白くなってきたっすね。」 【後書き】 一章まで読んでくれた方、ありがとうございます。これから二章が始まります。応援よろしくお願いいたします。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード15開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 2.スタンピード対策会議 【前書き】 ラティエル視点に戻ります。 【本文】 ライムが冒険者に招集をかけてから、10分後、ある程度冒険者が集まり、会議が始まる。 「それではいまから、スタンピード対策会議を始める。まずは、新人もいるから、自己紹介から。」 「それじゃあ、俺から行くよ。なんで新人がいるかわからないけど、ギルマスは意味もなくそんなことしないでしょ。俺の名前はレイス。『召喚』のレイス。A級冒険者だ。」 「アタシは、テミス。『魔剣』のテミスだよ。レイスと同じくA級だよ。」 「オイラは、イータ。『巨大』のイータだよ。オイラもA級だよ。」 「我が名はワイズ。『漆黒の堕天使』とは我のことさ。我もA級だ」 「僕はエイト。『斬魔』のエイトだよ。S級冒険者だよ」 「俺は、ゲノム。『永遠(とわ)』のゲノムだ。特A級冒険者だ」 それから、B級冒険者パーティのリーダーや、A級冒険者の紹介が続き、ラティエルの番になった。 「俺の名前はラティエル。二つ名も何もないただのラティエルだ。よろしく。」 「ははっ、ただのラティエルとは恐れ入ったな、お前、『飢餓の灰狼』を瞬殺したんだろ?確かにこの場にはいないが、少しは腕が立つ。あれを瞬殺とはただのじゃ通用しねえな。」 ぜノムが笑った後、そう言った。 「そうなのか?俺は普通じゃないのか?」 「はっ、C級冒険者パーティを瞬殺するのはふつうのやつはできねえんだよ。」 「そうか。」 全然わかっていない様子のラティエル。 「まあいいや、ギルマス、早く始めようぜ。」 「そうだね。本題に入ろうか。」 「おう。」 「まず、あのクソ大臣のせいで、S級ダンジョンのスタンピードを王都ギルドのみで対応することになったんだけど、はっきり言って無理に近い。でも、僕たちがやらないと人が死ぬ。冒険者はいつも危険と隣り合わせだ。もちろん強制はしない。その時は僕の命に懸けて止めるだけだからね。でも、この場に来ている時点で、皆参加してくれると思っている。僕はね。参加してくれる人はいるかな?」 その瞬間ラティエルも含めて、全員が手を上げた。 皆を代表して、ミストが口を開く。 「ギルマス、あんたダメなところもあるっすけど、みんなあんたに助けられてるんすよ。今返さないでいつ返すんすか?」 「そう、だね。僕はいいギルメンを持ったものだ。よし、みんなでこのスタンピード、乗り切ろう!」 『おう!』 「まず、おさらいだ。スタンピードとは、ダンジョンからモンスターが湧き出ることを言う。スタンピードボスは、通常のダンジョンボスよりも強くなっている。本来S級ダンジョンのボスは、自然災害級の危険度だが、今回は、それを超える、国家災害級まで届くだろう。これは予想でしかないが、簡単に倒せる相手ではないだろう。」 「そうっすね。もっと、戦力が本来なら必要っすけど、贅沢は言えないっす。この場にいる冒険者だけで乗り切れるように策を考えるっすよ。」 「そうだね、まずはボスモンスターは、火力の高いミストとエイトに。フローリアは、殲滅に長けているから、魔力が続く限りモンスターを倒してもらう。どこかにフロアボスがいるだろうから、フロアボスには決して1人で挑まないように。そう簡単に1人で倒せる相手ではないからね。1人で挑むにしても、絶対に勝てる状況以外は、倒しに向かわないこと。」 「わかりました。」 「それでは私は皆様の支援と、回復に回りますね。」 「それでは、各自備えて、スタンピードを無事に乗り切ろう!」 「おう!」 【後書き】 ちなみにワイズの二つ名は『漆黒』です。(『漆黒の堕天使』は、勝手にワイズが付け加えたものです。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード16開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 3.歴史に残る大災害(途中からミスト視点) 【前書き】 スタンピード開始。頑張れライム! 【本文】 「リヴィウス!今すぐ招集をかけろ!今から2時間後にスタンピードが始まる!」 「もうですか⁉︎分かりました。ギルマスは待機場所へ!」 「ん?何かあったのか?」 「ラティエルさん!ちょうどよかった!王都の欅の森へ今すぐ向かってください!スタンピードが始まります!」 「もうか⁉︎わかった、今すぐ行く。」 「はい!」 そして、1時間後。 「よし、全員集まったね。それじゃあ、今からスタンピードヘ向けて各自配置について。僕は、最前線に行く。」 そう言った瞬間ライムが飛び出す。 「は?ギルマス!おい!待てって!」 ぜノムが言う。 「無理だよ。あれは縮地。剣士の目指す理想系。さすが、『神剣』は伊達じゃないね。」 笑いながらエイトが言う。 「お前でも追いかけられないのか?『斬魔』。」 「無理だね。ただの転移魔法なら斬って阻止できるけど、あれは武術だから。斬れないね。」 「そうじゃねえ!空間を斬れっつってんだよ!」 「君は相当ギルマスに憧れているからね。自分でやりなよ。僕は責任を取らない。」 「ギルマスが死んでもいいのか!」 「それは、彼の決意だ。それを邪魔するのは彼に失礼だよ。」 「ならいい、自分で止める。『永遠(とわ)の魔法』」 詠唱した瞬間、世界が停まりかけた。その時。 「大丈夫だよ、ゼノム、僕だって死ぬつもりで行ってないよ。そんなに心配なら、僕を見とくといいよ。歴代最強の剣士と謳われた『神剣』をね。リヴィウス。頼んだよ。」 「はい、人使いの荒いギルマスですね。でも、頼みますよ。私を守ってくれるんですよね?『光映(こうえい』」 そう詠唱した瞬間、突如空中にライムの姿が映った。 「これで僕を戦いながら見とくといい。ミスト、エイト、計画変更。君らはフロアボスを倒してくれ。ダンジョンボスは僕が叩く。」 やれやれっと言った様子でミストが言う。 「了解っすよ。先に言ってくださいっす。」 「わかりました。」 「頼むよ。」 「さあ、作戦開始だ!」 ライムがそう言った瞬間、全員が動き出す。 ミストside さて、ライムさんに言われた通り、フロアボスを対処するっす。 「ミストさん、振り分けますか?」 エイトが聞く。 「まあ、適当で。遭遇したモンスター片っ端から倒していくっすよ。」 「わかりました。それでは。」 彼は神から『斬魔』の称号を下賜され、魔術を斬り裂くという特殊な剣術を使う。彼は別名魔術師殺しとも呼ばれる。彼は剣士からこう言われる。『規格外の剣士』と。そして今も彼は、数々の憧れを生み出している。戦場を駆け抜けて。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード17開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 4.『神剣』(ライム視点) 【前書き】 ライムの無双回です。 【本文】 ライムside さて、ギルドのみんなにあんなに格好付けてしまっておいてなんだが、実は自信があまりない。でも、これは僕にしかできない。 「さあ、勘を取り戻そうか。来い、『虹帝剣シグルド』。」 ライムがそう言った瞬間、虹色の剣が姿を現す。これはライムが今まで振り続けた、英雄の証明。この剣と、卓越した剣技で、ライムは『神剣』と呼ばれるまでに至った。 「さあ、まずは肩慣らしだ。」 そう言ってライムが振り向いた先には、大型の牛の魔物。ミノタウロスがいた。危険度は災害級で、A級冒険者以上が対処にあたるクラスの魔物だ。裏を返せばA級以上じゃないと勝てないということだ。そんな凶悪な魔物を前に、ライムはこう言った。 「まあ、ちょうど良い相手かな?」 その言葉の意味を理解したのか、はたまた、ただその強大な存在に威嚇をしているのかはわからないが、ミノタウロスは雄叫びを上げた。 ブモオオオオオオッ! 「ははっ、結構元気じゃないか。ちょっと付き合ってもらうよ。」 そうライムは、笑いながら言った。災害級を倒すのが当然だと言わんばかりに。 「さて、まずは色を変えよう。『緋帝剣クリムゾン』。」 『虹帝剣シグルド』それは、鍛治を司る神『へファイトス』の加護を授かった最高の鍛治師『ウェポン』が生み出した、彼の作った剣の中でも最強格に分類される。シグルドは、形状変化をすることができ、9つの種類に分けられる。紅は炎を操り、橙は光を操り、黄は雷を操り、翠は木々を操り、水は氷を操り、蒼は水を操り、紫は闇を操る。そして、その色らを進化させたのが白と黒。白はより強い光と浄化を、黒はより強い闇と停滞を与える。つまり、シグルドは実質的に9つの属性を操ることができる。そして、その色に『闘気(オーラ)』は左右される。 つまり今のライムは緋色の闘気(オーラ)を纏っている。 「久しぶりに使うね。さあ、簡単に死なないでおくれよ?」 ライムはそう言って剣を振るう。その姿はかつて物語に語り継がれた英雄を想像させるようなものだった。 「『燃えろ』」 ライムが詠唱し、ミノタウロスの体に決して消えない『灼熱炎』が纏わりつき、燃え続ける。 「『荒ぶれ』」 ライムがまた詠唱し、炎が暴れる。 「これで終わらそう。緋帝剣技『灼熱斬』」 ブモオオオ… ミノタウロスが断末魔を上げる。決してミノタウロスは弱くはない。ライムが強すぎるだけなのだ。 「まあまあかな。これで『白帝剣』を使えば、自然災害級以上も余裕かな?」 「さて、それじゃあ、奥地へ向かおうか。」 かつて、大戦時代に名を残した剣の英雄は今も輝き続ける。未だ衰えを知らずに、最強の名を冠しながら。決して武器が強いわけではない。結局武器というものは器でしかないのだ。武器が強いことによって潜在能力が多く引き出される。武器が強くても本人が弱ければ、意味がないのである。その言葉を体現した男。それが『神剣』ライムなのである。伝説は今も輝き続ける。 「さて、もうちょっと体を温めないとね。」 【後書き】 ライムの方が好きだなって方は⭐︎5を、リヴィウスの方が好きだなって方は感想を。よろしくお願いいたします。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード18開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 5.VSボス(無自覚)ラティエル視点に戻ります。 【前書き】 ラティエル戦闘回です。 【本文】 スタンピードに挑むギルドメンバー。その中でも、特に活躍しているのは、我らが主人公ラティエルだ。 空気を操り、相手を圧死させる。それがラティエルの殲滅式戦闘だ。話は1ヶ月前に遡る。 「なあ、ミスト。」 「ん?なんっすか?」 「俺、スタンピードに向いてると思うか?」 「まあ正直に言うと向いてないっすね。」 「だよな。殲滅ができないんだよ、この魔術。」 「なんか、御伽噺に出てきそうな兵器とか無理なんすか?」 「兵器はないだろ。」 「確かに。珍しくラティエルさんが常識的っす。」 「おい、失礼だろ。」 「まあ、アドバイスするってなると、相手の周りの空気を固めて圧死させればいいんすよ。空気をイメージ通りに操れるんすよね?」 「ああ。」 「ならできるっす。頑張ってくださいっすよ!」 「ありがとう!」 嬉しそうな表情でラティエルが言う。 「ま、いつでも言うといいっすよ。」 「ああ、また聞くよ。」 そして今になる。 「おい、ラティエル。お前これすげえな!どうやってやってんだ?」 ぜノムが不思議そうな表情でそう言う。 「これは空気を固めて圧死させてるんだ。」 「へえ!お前のスキル強えな!よし、このまま安定させようぜ!」 「そういえばゼノムは何が得意なんだ?」 「ん?俺か?これさ。『永遠(とわ)の魔法』」 そう言った瞬間、周りを囲んでいたモンスターたちが一斉に止まる。否、停まる。 「俺の魔法は停滞を与える。相手に永遠(とわ)を彷徨わせる対人戦特化の魔法さ。」 「すげえ。でもそんな乱用しても魔力は欠乏しないのか?」 「確かに魔力は減るけど、この魔法、多数に使うと燃費がいいんだ。多数に使う時は拘束用だな。」 「なるほどな。じゃあ、この間に数を減らすか。」 「おう。」 そう言って、またラティエルが圧死させる作業に回る。 「それじゃあ、俺はあっちに行くよ。」 「わかった。頼んだぜ!」 そういいラティエルはゼノムと反対方向に走っていく。 その先にいたのは、ミノタウロス。と思いきや肌の色が赤黒い。これはこの世界では変異種という。通常の種よりも、強靭で、凶悪性を持ち、人間を襲いやすい。 ラティエルはそれに気付かず、 「おっ、なんか強そうな魔物だな!よし、倒すぞ!」 と、能天気に言う。 通常ミノタウロスの変異種は上位種とも呼ばれ、ものによっては危険度は自然災害級にも及ぶ。今ラティエルと対峙しているミノタウロスは、巨大かつ、眼の色が赤い。このレベルだと、極災害級ぐらいになる。つまり、自然災害級と災害級の間である。ちなみに撃退適正は、A級冒険者以上。討伐適正は、特A級冒険者以上になる。 つまり、この魔物を倒すには、ゼノム以上の強さが必要となる。 「さあ、倒すぞ。『空気』」 そう言い作り出すのは、かつて戦場を駆け巡った龍殺しの英雄の愛用していた竜をも滅ぼす剣。その名も、『龍滅剣ドラグレイ』。 「こいよ。」 ブモオオオオオ! その挑発を感じ取ったのか、ミノタウロスの変異種が雄叫びを上げる。 「荒ぶれ!ドラグレイ!」 ラティエルがそう言葉を放った瞬間、ドラグレイが、分裂しミノタウロスへと矛先を向ける。 『龍滅剣ドラグレイ』。それは、かつて神話の時代に、数多の龍を滅ぼした竜殺しの英雄が愛用していた剣である。その能力は魔物に対しての火力倍増と、分裂などの変型。分裂し、敵を殲滅する事もあれば、逆に大きくなり、相手を一刀両断にしたりと、その使い方は様々だ。 そして、分裂したドラグレイがミノタウロスを襲う。 そして、直撃した瞬間、爆音が鳴り響く。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード19開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 6.フロアボス討伐(無自覚) 【本文】 かつて龍殺しの英雄はこう言った。 「剣とは、守り、切り開く為にあるものだ」と。 「行くぜ、『殖えろ。』」 ラティエルがそう詠唱した瞬間、龍滅剣ドラグレイヴが、さらに増殖する。そして、上位ミノタウロスに突撃する。 「『貫け』」 ミノタウロスの分厚い体を、ドラグレイヴが貫いていく。 ブモオオオ! だが、それでもミノタウロスの勢いは止まらず、ミノタウロスは攻撃を繰り出した。否、繰り出そうとした。 「『形式変形。龍滅盾』」 ラティエルがドラグレイヴを形式変形させ、盾の形にし、ミノタウロスの攻撃を弾き、カウンターを与える。 「『集え。切り裂け。』」 ドラグレイヴが集合し、大剣になる。そして、ミノタウロスに向かって振り下ろされる。 残酷な断罪の一撃。その為、ドラグレイヴの大剣形態はこう名付けられた。 『断罪ノ剣(ギルティソード)』と。 ブモオオオ! 無慈悲な一撃。その恐ろしさを感じたのか、ミノタウロスが逃げようとする。だが、それを許さないのが、断罪だ。 「『断罪(ギルティ)』。 ラティエルが詠唱し、ミノタウロスが真っ二つになり、事切れる。 真の強者の前で背中を見せるということは、『死』と同義である。この場における真の強者。それが誰だったかは、言わずともわかるであろう。 そして、不幸にもこの上位ミノタウロスは、フロアボスで、ダンジョンの中ボスである。誰にも知られずに死んでいった。そして、ラティエルはこう思っていた。 ちょっとは強かったけど、あれが平均的な強さか。やっぱり雑魚よりは強いんだな。と。 そして、話はまた戦場に戻る。 「さて、さっさとスタンピードを片付けて、あの大臣に文句を言いにいかないとね〜。」 そうライムが言った後、ライムが紫電を纏い、走り出す。 『金帝剣ヤマブキ』。雷を操る剣で、『虹帝剣シグルド』の黄色に当たる。雷を体に纏わせることによって、実質的な光速での移動をも可能とする。今、ライムは光の速度で走っている。向かう先は、ダンジョン。 「さあ、切り抜けるよ。」 『金帝剣技。雷斬』 そう言い、剣を振ったその瞬間、ライムは、はるか先で剣を振り下ろしていた。 その道にいた、推定30匹の一般人死亡危険度(B級)モンスターを薙ぎ払いながら。 「まあ、ちょっとは勘が戻ってきたかな。」 かつて戦場を駆け回った『神剣』は健在のようだ。 そして、ライムがダンジョンに向かった時には、ダンジョンのボスモンスターである、黒龍変死していた。 身体中を焼かれ、斬られていた。 「どういうことだ?このレベルのモンスターを今の時間の間で倒したのか?」 スタンピードが始まってから20分。黒龍。それは、国家滅亡級と呼ばれる準最強級のモンスターで、その攻撃は国に破壊をもたらし、滅亡の危機に至らす。そのモンスターを20分で倒したのである。ライムが二人いるならまだしも。 「二人?…。」 そして、ライムはその可能性に至った。二人組で、炎属性を操り、剣を使う。かつてのライムの戦友であり、戦場を駆け回った最強の二人組のパーティ。『陽双』。 「いや、でも彼らは行方不明なはず。それに…」 「あれ、ライムくん!久しぶりだね!」 そう、太陽をイメージさせるような元気な声が響く。ライムは後ろを振り向く。 そこにいたのは、赤髪の女性と、黒髪の男性。片方は大きな太陽を彷彿させるような杖を持ち、もう片方は、光り輝く聖なる剣を持つ。 「君たちは…。」 「ライム。やはりエルフは長寿だな。久しぶりだな。戦友。」 「これをやったのは君たちかい?」 ライムは少し汗をかきながらそういう。長年行方不明だった人間が、歳も取らずに何事もなかったように出てきたからだ。 「ああ。」 「久しぶりに話でもしようよ!」 「君たちは変わらないね。でも、変わらないのがおかしいんだよ!」 「はあ、そっか、わかってくれないんだね。」 「僕は君たちを止める為なら鬼にだってなってみせる。」 そう言い、突如始まった戦友同士の激突。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード20開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 7.戦友同士の激突 【本文】 「そっか。じゃあ、仕方がないよね。」 アスタルテがそう言って微笑む。その笑顔は無邪気であり、どこか恐怖を感じるものだった。 「っ!」 冷や汗をかくライム。 「『太陽神の加護(アポロン)』」 突如出現した小規模の太陽が、二人を後ろから照らす。 「『真の聖剣アークレイン』解放。」 そうエルレインが言った瞬間、手に持っている剣が光り輝く。 「『蒼帝剣ラピス』」 ライムがシグルドから蒼色の剣に変える。 蒼帝剣ラピスは、高密度の水を操る。剣に高圧水流を纏わせ、敵を断つ。 「あーあ、ラピスかあ。私の太陽じゃ相性が悪いね。」 「なら俺が相手するよ。アスタルテは後ろでサポートをしてくれ。」 「りょーかい!」 「ちょっと聞きたいんだけどいいかな?」 ライムが汗をかきながら質問する。 「ああ、いいよ。」 「君たちはなぜ僕と別れたときと同じ姿のままなんだい?」 「それは答えられない。すまないけど、俺たちの雇用主がいるんだ。そいつには逆らえない。」 「なら、力尽くでも聞き出すまで!『纏え!』」 水流がラピスを纏う。 高いところから水に突っ込むと、体勢によっては体に大きな衝撃が来るのと同様に水は密度によって衝撃を与える。 「『蒼ノ烈斬』」 「『聖剣技 天冥斬(ヴォイドスラッシュ)』」 高密度の水流斬撃と、聖属性と闇属性の斬撃がぶつかり合う。 ドゴオオオン! そして、爆音が鳴り響く。 「まあ、そりゃそうだよねえ」 そう言って吹き飛ばされたのはライムだ。 「『闇帝剣アビス』」 黒色を基調とし、闇を操る剣。それがアビスだ。全てを飲み込む深淵の剣。 「『深淵ノ反撃』」 深淵ノ反撃は今まで蓄積したダメージを倍にして返すというもの。ライムの今まで受けてきたダメージは計り知れない。 「タダじゃ終わらせないよ?」 ライムは不敵に笑い、一撃を放つ。 「『天冥斬波(ヴォイドウェーヴ)』それはこっちのセリフだ。」 「炎もセットだよ。『天照ノ息吹』」 超高温の炎と、闇と光の属性斬撃が、アビスの一撃とぶつかりあう。 「『弾けろ』」 ライムが詠唱した瞬間、闇が弾ける。 パリン! ガラスが割れるような音がした後、周囲が煙幕に包まれる。 「今日のところはお暇させていただくよ。また戦おう。今の僕じゃ無理だしね。」 「ああ。」 優しそうな笑みを浮かべながらエルレインが答える。 「やっぱり君たちは変わっていないんだね。」 そして、霧が晴れた時には、ライムの姿が消えていた。 「良かったの?エルレイン。」 「何がだい?」 「別に雇い主のこと喋っても良かったんじゃないの?」 「まあね。でも今じゃないよ。ライムならシグルドを復活させれるだろうし。それまで待つよ。」 「そうだね。それじゃあ帰ろっか?」 「いや、ラティエルに会って帰ろう。どうやら戦っているようだしね。」 こうして、スタンピードは思わぬ形で終息を告げた。 そして束の間の平和を手にする。だが、これは序章でしかないのである。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード21開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 8.奮戦 【前書き】 更新遅れました…こっから投稿ペース上げてきます。 【本文】 「ああ!もう!いくら倒しても数が減らないっすよ!」 ミストがしんどそうな表情でそう言った。 「もう少しの辛抱だよ。ミストさん。もうすぐすればライムさんが片付けてくれるよ。」 「フローさん…。そうっすね!耐えるっすよ!『風の啓示(シルフィード)』」 ミストが風の加護をその身に受け、戦場を駆け回る。 「うちに勝ちたいんならフロアボスを連れてくるっすよ!『風霊のささやき』」 戦場を駆け抜ける風が怪物たちを襲う。 「さて、じゃんじゃん行こう。『蒼剣』 水属性の魔法剣。それはライムの持つ『虹帝剣シグルド』の青の形態である『蒼帝剣ラピス』の下位互換である。ラピス以下の出力と火力だが、ラピス並みの火力を並みのモンスターに使うと結果的にオーバーキルになってしまう。そのため、ただのモンスターには『蒼剣』の火力で十分なのである。 ギャオオオス! そしてモンスターの大群の中から現れたのは、危険度災害級のサラマンダーの上位種である、ネオサラマンダー。サラマンダーとはモンスターの中では精霊系にあたるモンスターである。物理攻撃はあまり通らないモンスターで、炎を操る。サラマンダーは常に炎を纏っており、その炎の色は通常赤色をしているのだが、ネオサラマンダーは、青色の炎を纏っている。炎は色によって温度が変わり、青色はその中でも高温なものとして知られている。サラマンダーの危険度は炎の色で決定されるのだが、ネオサラマンダーは、炎が青色をしているため、その危険度は極災害級である。 「ネオサラマンダーっすか。厄介なんが出てきたっすね。『天翔る翔風(アマカケルショウフウ)』」 風が吹きネオサラマンダーの放った炎を吹き消す。 「追い討ちをかけよう『蒼魔刀』」 詠唱し、作り出した刀状の武器でネオサラマンダーを切り付ける。 ネオサラマンダーが、纏っている炎の勢いが弱まる。だが、ネオサラマンダーの口に熱が集まる。 「フローさん!『蜥蜴ノ焔(リザードブレス)』が来るっす!相殺するっすよ!」 「了解です。『蒼ノ激流』」 「うちもっす!『翡翠の暴嵐』」 蒼色の水流と翡翠色の風が、青色の炎と激突する… その刹那…一筋の閃光が戦場を駆け巡る… 青の攻撃を見て何かに気付いたのか、ミストが顔を緩ませる。安堵の表情である… 「やっとっすか。遅いっすよ。」 その閃光の正体は… 「すまない。少し遅れてしまった。」 王都ギルドに所属するS級冒険者の一人。『雷速の剣聖』エルム。世界最速のスピードを誇る冒険者だ。先代の剣聖エルレインjから、剣聖の名前を受け継ぎ、剣を振るう。 「今、リヴィウス殿に知らせを受けてな。最高速度で来た所でな。」 「遅いっすよ。」 「ガハハッ、すまぬな。おっとミスト殿、まだ蜥蜴が生きているようだが。」 「よし、じゃあ決めるっすよ。『天風ノ御使(ラーファルエル)』」 「『蒼魔ノ拳銃』」 「『刹那ノ雷刃』」 三つの攻撃が一つに収束し、ネオサラマンダーに激突する。 ギャオオス… 「よし、やったすね!」 「エルムさん、ありがとうございます…」 「いやいや、吾輩も久し振りに強敵と戦えて良かったわ…」 「とりあえず、他の人たちの援護に回るっすよ…」 「了解」 「応」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード22開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 9.謎の生物 【本文】 「そういえば、なんでエルムさんは王都ギルドを離れて居たんっすか?」 「それはだな、依頼だったのだよ。」 「依頼?」 「なんの依頼だったんっすか?」 「かつて存在した最強の侍『サメウラ』についての調査だ。」 サメウラ。それは、かつて極東の国『ツキジ』に存在した最強の侍である。その剣技は容易に古龍の鱗を斬り裂き、滅ぼす。魔神が展開した魔力障壁をも容易に破り、刃を殿喉元に突き立てる。『ツキジ』に伝わる斬ることに特化した剣。それが『カタナ』である。その『カタナ』を振るい、戦ったとされている。サメウラの使った『カタナ』は、『神葬刀エクレール』。その刀は神をも葬り去る最強の刀。 「ひえー、そんな大変な依頼受けてたんっすねえ」 「うむ。そのため遅れてしまい誠に申し訳ないな。」 「良いっすよ。エルムさんが来てくれたお陰で戦況が激変したんで、早く来てくれてまじ感謝っす!」 「ガハハッ、だが間に合って良かったな。先ほどライム殿が傷だらけでリヴィウス殿の野本に治療を受けにきたぞ。」 「ギルマスが⁉︎仕事は出来ないけど力だけで言えばS級冒険者の中でも余裕で上位に入るギルマスが…」 「なるほど、それでボスは倒せたんですか?」 「いや、倒されていたそうだ。」 「つまり到着する前に倒されて居たということですか?」 「うむ。吾輩も信じられん。」 「ではそれほど強力な人がいたあと言う事ですか?」 「詳しくはわからん。だが、ライム殿を超える強者がいたことは間違い無いだろうな。」 「そうですか。」 「スタンピードが終わり、ライム殿の体力が回復したら改めて話を聞こうではないか。」 「そうですね。まずはここを乗り越えましょう。」 力強い声でフローリアがそう言い、エルムとミストがそれに同意する。 「応」 「了解っす」 そうして意気投合して居た三人の前に現れたのは、謎の渦だった。 「なんだこれは?」 「一応警戒するのに越した事はないっすよ。」 「そうだnな。」 そしてその渦が動きだした。その渦か出てきたのは…黒い靄がかかった『ナニカ』だった。 「総員警戒!未確認モンスターっすよ!」 ほとんどの種類のモンスターが出現すると言うエルフの森『トワイライト』で育ったミスト派魔物の知識については冒険者一と言われている。 「この感じ…最大でも自然災害級派ありそうっすね…」 %$@#%&^(*! 「この世のものとは思えないような怪物の鳴き声がして、ミスト達は戦慄する…… 「化け物退治の時間っすよ!」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード23開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 10.激闘、そして救援 【本文】 突如謎の渦から現れた未確認モンスター。推定危険度は自然災害級以上。決して楽な相手ではないと言う事でその場にいたS級冒険者の『泡沫』のフローリアと『雷速の剣聖』エルムと『天風』のミストというS級冒険者三人で謎のモンスターを倒すことに。 「全員迎撃体制!本気で行くっすよ!」 「分かりました。」 「応」 三人の覇気を感じたのか、謎のモンスター…Xと仮定しよう。Xが咆哮を上げる。 !$@^#&%^#^$!「まずは様子見っすよ!『翡翠ノ霧(ジェイドミスト)』」 「『蒼ノ塔壁』」 「『雷ノ小太刀』」 まずは小手調べと言わんばかりにスケールが小さめの攻撃を放つ3人。その攻撃がXに当たる瞬間、Xが謎の言葉を放つ… @#$%。。。 そのXの発した言葉により、謎の障壁が発生した。 そうして、3人の攻撃がXに当たる瞬間攻撃が歪み、Xから黒色のナニカが溢れる。 「攻撃が歪んだんっすか?」 「うむ。にわかに信じがたいがその様であるな。」 「恐らく防御出来るキャパシティには流石に限界があると思いますが…」 「うむ。殿様な防御も技も限界は等しくあるからな」 「それじゃあ、ギアあげてくっすよ『暴嵐ノ斬撃(タイラントスラッシュ)』」 「うむ。そうであるな。『雷迅ノ燦キ』」 「では僕も。『蒼魔ノ大蛇(シアンリヴァイアサン)』」 嵐を纏った斬撃と、雷の閃光が迸る剣と、蒼色の口を開けた大蛇がXを襲う。 Xがまた詠唱をはじめる。 @#$%^&*!()!$&^! その瞬間、Xから巨大な闇の波動が迸る。 「なっ、ここまでっすか…。」 ミストが驚くのも無理はない。S級冒険者3人の攻撃をたった一つの魔術で相殺し、その上攻撃が届き、ダメージまで与えているのだから。 「まさかここまでとはな。」 エルムが戦慄する… 「これはまずいですね…」 そうしてまたXが詠唱をはじめる… !@%#@^%#@#^%@#&#@#! 今までのより長めの詠唱をし、それを放とうとするX。 「うーむ。まずいなあ。」 「あーっ魔力まで吸収してるっぽいっすね。誰か救援来ないんすか?」 「エイトさんも他の相手と戦って居るみたいだったし…。」 そうして魔力が貯まったのか、Xから闇がほと迸る。 そうして3人にぶつかりかけた時…。彼が来た。 「ミスト、大丈夫か?まあまずはこいつを止めないとだな…『空気』」 ラティエルは或る人物から空気の使い方をアドバイスして貰った。 『良いかい。ラティエルくん。僕はもう戦闘に参加することができないが、君にアドバイスをするよ。キミの空気はイメージ通りに操ることが出来るんだよね?』 『ああ。ギルマス。』 『じゃあ、僕が今から言う武器の特徴を覚えて出しおてみてくれ、それができたら君は破格の力を手に入れることが出来る。』 そして現在。 「さあ、化物。ラウンド2と行こうじゃないか。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード24開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 11.新たな力、だが苦戦。 【前書き】 久しぶりの投稿です。 【本文】 「さあ、化物。一回退けよ。」 %&$%&%! Xが激昂した様に咆哮を上げる。 「『空気顕現』。『治癒神の神域』」 「ふぁ⁉︎これって、世界最高の治癒師『治癒神エルトゥーナ』の神域じゃないっすか⁉︎そんなものをどうやって出したんっすか?」 「これは俺がギルマスに教えてもらった新しい力。『空気顕現』だ。」 「どういうことっすか?」 「今までのような形だけじゃなく、その武器や物について深く知ることで、属性までもが再現できるようになったんだ。」 「なるほどっす。すごいっすね」 「まずはこいつを倒す。『空気顕現』。『退魔剣カルラ』。」 退魔の英雄アドラが使ったとされる剣だ。 %#&#%? 「うん?何言ってるんだ?『空気顕現』。『万物対話』。」 万物対話。それはどんな物でも石を持っているという考えを持ち続けた、万優の騎士が使ったとされるユニークアイテム。 『はろー、ゆー。らーのなまえはらーなのです。ないすとぅーみーとぅーなのです。』 「よう、ラー。俺はラティエル。んで、なんのようだ?」 『ゆーのもってるそのかっこいいけんでらーをきっちゃ、のーなのです。』 「お前の意思で止まることはできないのか?」 『むりなのです。らーうまれたばっかだからわからないのです。』 「じゃあ、その力を封印する形でいいか?」 『おーけーです。それでだいじょうぶです。ゆーがぜんりょくでらーをたおそうとしてもたぶんむりなのです。』 「わかった。じゃあ行くぞ。『空気顕現』。『自然の箱庭』。」 『てんきゅーなのです。』 その刹那ラーから閃光が迸る。 『あったかいのです。』 そうして光が晴れるとそこにいたのは一人の少女だった。 「ゆー、ありがとなのです。」 「ラーか?」 「そうなのです。」 「どういたしましてだ。」 こうして、スタンピードは終息を告げた。死者は0であった。 「死者が0か。まあ色々気になることはあるけど、取り敢えずひと段落は着いたかな?」 「そうっすね。ていうかギルマス、傷はもう治ったんすか?」 「いや〜、治りかけだね。まだ動いちゃダメだけどね。」 「これからしんどくなるっすね。」 「大丈夫。もうすぐS級冒険者が帰ってくるはずだからね。」 「そうっすね。それにしても、あの子どうします?」 「このりょうりおいしいのです!これも!これもなのです!さいこうなのです!」 「ギルドの食料尽きそうっすけど大丈夫っすか?」 「こ、これは早急に手を打たないとね。」 困った表情をするライム。スタンピードでバタバタしていたこのギルドに日常が戻ってきたのであった。 【後書き】 「ラー可愛すぎね?」 「いやミストの解説助かるー」 と思っていただけたら幸いです。ぜひ評価などお願いします。 そして、お知らせです。これから新しい連載作品を書こうと思っているので、一度空気の連載を打ち切ります。またひと段落着いたら書き始めますので、新作の方も読んで下さると嬉しいです。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード25開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 ⭐️お知らせ⭐️ 【本文】 この度、空気の連載を一時打ち切りにしたいと思っております。二章ep11の後書にも書いたように、新作の方に専念したいと思っております。 新作のタイトルはこちら。 『世界最強の祝詞(だじゃれ)使い。魔術を使えないと追放されたけど、実は祝詞(だじゃれ)で詠唱するだけで性能が爆上がりしました』です。 こちらの作品も楽しみにしていただけたら嬉しいです。この作品を読んでくださった読者の皆様方、今までありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いいたします。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード26開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 謝罪とこれから 【前書き】 このエピソードを読む読者様、こちらのエピソードはこの作品のこれからについてです。 【本文】 いつも僕の作品を読んでくださっている読者の皆様方、こんにちは。星降夜です。 だじゃれの方の投稿に専念するため、連載休止にしていた『【2章完結】俺は空気に干渉する。風術師…じゃなくて、空術師。魔力だけが取り柄だったけど最強になりました。』ですが、この度、だじゃれの方に本作の主人公であるラティエルが登場したため、こちらの作品をメインに進めて行きたいとおもっております。色々混乱させてしまい、申し訳ないです。ですが、このたびの連載再開を喜んで下さる読者様がいてくださると嬉しいです。読者様の声援を受けて今まで以上に頑張っていきたいと思っております。皆様、どうか温かい目で僕を見守っていただければなと思っております。これからもよろしくお願いいたします。 【後書き】 これからもどうぞよろしくお願いいたします。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード27開始 ------------------------- 【第3章】 3章 王都での一幕 【エピソードタイトル】 1.始まり 【前書き】 3章スタートです。 【本文】 スタンピード終了後。ラティエル達は無事にギルドに帰還した。1人の女の子を連れて。 「こんにちは!らーの名前はらーなのです!よろしくなのです。」 「可愛い!」 実は可愛いものが大好きだというリヴィウスが叫ぶ。 「こんな子どこで拾ったんですか?」 「うちらが戦った魔物っすよ。」 「らーは、まものじゃなくてあくまだってだれかがいってたのです。」 「まあ、それは置いといて、みんな、よく戦ってくれた。」 「って、体がボロボロの人に言われてもって感じっすよね。」 「そうだね、僕もまさかこのスタンピードで怪我をすることになるとはね。」 「早く宴会するっすよ。みんな待ちくたびれてるっす。」 「そうだね。それではみんな頑張った自分に乾杯!」 『乾杯‼︎』 こうしてスタンピードを乗り切ったエスフォート王国王都ギルドの面々は宴をはじめた。 「これとてもうまいのです!」 「そっか、ラー良かったな」 そこに面白げな表情をしたライムが近づく。 「おっとそうだ。ラティエル君。」 「なんだ?ギルマス?」 「きみ、レベルが100を超えたよね?」 そう。ラティエルは数多くの高レベルモンスターを倒したため、100レベルに到達したのである。 「ああ。」 「君に国から戦力としての称号が授与された。それと、神から君に称号が与えられることになった。」 「おっ、やった。」 明日に備えて早めに寝なさい。明日はエスフォート王城と神殿に行かなければいけないからね。」 「わかったよ」 「いやーそれにしてもラティエルさんが称号っすか。ウチもきっともらえるって思ってたっすよ。」 と明るい声でミストが言う。 「明るい声にしてはミストさん。悲しそうですね。」 「いやいや、悲しくないっすよ。別にね。」 「ちょっと置いてかれて悔しいんですか?」 「いや、別に現時点はうちの方が上っすからね!」 と言い訳するように言う。 「そうですか。ならいいです。」 あまり深入りはしないというスタンスなのか、フローリアが引き下がる。 「ミスト嬢。そういえばそろそろ『天炎』殿が帰ってくるらしいのであるぞ。」 「エルムさん、うちに稽古つけてくださいっす。」 「いいであるぞ。ミスト嬢に稽古か。楽しみであるな!」 こうしてそれぞれの思惑が交差しながらラティエルは式を迎えることになる。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード28開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 2.称号と『天』 【本文】 そうして翌日。 「おい、あれが今回の称号授与者か。」 「ああ。格好的に魔術師のようだが…」 「それにしても、あの子は冒険者に成り立てと聞いたぞ。」 「冒険者に成り立ての平民が称号か…。世も末だな。」 そうしてラティエルが王の間に到着する。 「それでは、A級冒険者ラティエルに王家から称号を授与する!」 そう。ラティエルは此度のスタンピードでただイアンる功績を残したため、A級冒険者になったのだ。 「それでは、冒険者ラティエルに『万喚』の称号を授与する!」 「宰相よ、称号についての説明をラティエルに。」 「畏まりました陛下。冒険者ラティエルよ。」 「はっ。」 「そなたは此度のスタンピードで、数々の人を救い、自分の魔術で数々の敵を倒した。その際にいろいろな魔道具を召喚したと報告で聞いている。相違ないか?」 「ありませぬ。」 「よってお主には『万喚』の二つ名を与えると言うわけだ。」 「ありがたき幸せ。」 「異議はないか?」 「異議あり!」 「ソーダ大臣。異論を述べよ。」 ソーダ大臣。彼は王都ギルドにスタンピードの対処を押し付けた張本人である。 「はっ。そこの平民は、止まっている敵を倒したと聞きました。ならばその拘束をしたものが称号をもらうべきではあ?」 「だが、自力で強敵を倒したと聞いたぞ?」 「それはやはりあのライムというギルドマスターがギルドの箔を上げるために報告を偽造したのでしょう。」 「しかしだな、彼が嘘をついたと言うのは…」 「奴が嘘をついていないという証拠はどこにもないでしょう。」 「そうだな…。」 「ソーダ大臣に異議あり」 「ヴァルトラエル天爵、異論を述べよ。」 アルノード・ヴァルトラエル。それは1500年続く名家である。アルノード・ヴァルトラエル。彼は城壁王国エスフォートの魔術基礎を作った男。彼はあの神話の大戦から生きている。1500年前からずっと生きている。ヴァルトラエル家は、初代当主のエルミナ・ヴァルとラエルの代から続いてきたのである。エルミナはアルノードの妹である。彼は星に愛されている。世間は彼を認めた。この国を、この星を護る人間として。『星の守護者』アルノードはここにいる。 「どう考えても無理がありますよ。あっと、そういえば王が体調不良の間に王都ギルドにスタンピードの対処を押し付けたのって、貴方でしたっけ?」 「それはまことか?ソーダよ。」 「ヘ、陛下、それは違います!」 「ははは、ソーダ大臣。王への虚偽の報告は罰されるよ?」 「何を言っている!これは虚偽では無い!貴様こそおかしいだろう!何故ヴァルトラエル家は、投手が出て来ない!貴様が居るのはおかしいだろう!」 「ははは。僕を何回笑わせるつもりだい?僕はね、意外にこの国想いなんだぜ?だから、この国にいる虫を取り除いてるんだぜ?」 「虫とは不敬な!!貴様私を誰だと思っている⁉︎」 「国の品格を落とす害虫だろう?」 アルノードがソーダ大臣を煽る。 「貴様ー!」 「君はこの国の貴族であり魔術師だろう?魔術師は品格を下げるのが仕事だったんだね。僕は知らなかったよ。」 そう。この国の貴族には義務が課せられる。まず、王家から下賜された超血を収めると言うことだ。そして二つ目。これが1番大事である。魔術師として人々を救い、護る存在になると言うこと。 「苦労するのも大概にしろ!『碧き竜の住む沼(ハエルブルー)』!」 歴史が紡がれる。貴族にはその血しか使えない特殊な魔術がある。その名も『継承魔術』。魔術師の切り札であり、最大火力でもあるこの魔術。歴史に紡がれし魔術が詠唱され、今アルノードの喉元に喰らいつく。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード29開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 説明 【本文】 今設定を急激に変更しておりますので、一度これまでの設定説明を挟みます。 3章に出てきた要素を一度振り返りましょう。 継承魔術とは。 継承魔術とは貴族のみに許される強力な魔術のこと。王族秘伝の継承魔術もあるがまだ未公開。近々出るかも。 貴族とは。 貴族とは王に仕える臣下の事で、国民を守るために魔術を行使する義務がある。大抵の貴族がお金持ち。没落貴族も貴族なので金持ち。王と国民を守る義務がある。貴族には公爵家、伯爵家、侯爵家、子爵家、男爵家がある。ラティエルを追放した某貴族は伯爵。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード30開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 3.堕者召喚 【本文】 「ははは、ここで魔術を使うなよ。『変換接続』『敵穿つ星の意志』」 こうして、最強の継承魔術が放出された。アルノードは。星に接続することで魔術の効果を最大限引き出すことができる。 「それがなんだ!いけ!そいつの喉元に喰らいつけ!」 『星の守護者の意思確認。ヴァルスター。敵を殲滅します。』 「ヴァルスター、主要(メイン)を形態(モード)変化(シフト)。『戦闘型』に。副星(サブ)を魔術形態に。」 『術者の命令確認。変化(シフト)します。』 アルノードが星に向かって命令をした途端、大きい一つの星が剣に。小さいいくつかの星が宙を浮かぶ杖になった。 「『木の星』」 小さい杖から木でできた巨大な盾がいくつも生成される。 「なっ、私の継承魔術が防がれただと⁉︎くそ、ならあのお方にもらった力で!『堕者召喚』『堕天使ルシファー』」 堕者召喚。それはこの世界に存在した、悪しき生命をある方法で召喚するもの。召喚した後は、生命と一緒の体を使うか、精神が飲み込まれる。 そうしてそこにいたのは、黒き天使だった。 『久しぶりだ。この感覚。』 「おい、なんだよ、あの怪物は!」 ラティエルが詠唱する。 「『空気顕現』『龍滅剣』」 「おっと待ちたまえ、今の君じゃ無理だ。ここは僕がやろう。」 そこに、アルノードが口を挟む。 「いや、俺はいけるぞ?」 「まあまあ、一回僕の戦いを見ておきたまえ。危ないからね。」 『へえ、逃げてもいいんだよ。僕は世界を追い詰めた堕天使の人柱。』 「いや、僕は貴族だしね。それに生け取りにしたいね。どこから核を仕入れたのかも気になるしね。」 『星の守護者か。まさか、老いてないとでも?バケモノめ。』 「バケモノは君だろう?とりあえず潰す。『青の星』」 杖から、強大な青い星が出てくる。 「まずは物量実験だ。こいつを耐えれるかな?」 『なら破壊しよう。『光ノ堕天使(ルシファー)』 天使の背後から黒い光が差し込み、星を襲う。 「うーん。なかなかにめんどくさいね。『天を貫くは光の槍。光の槍を生み出すは光の天使。光の天使は天界を照らしたり。』『光ノ天使(ロシエル)』」 『光の天使の完全開放か。なるほど。君は天使の加護を持っているのだね。流石にまずいな。『闇に堕ちしは黒き堕天使。堕天使は光を司りし神子。闇と光は融合し、天界を飲み込む。』『光ノ堕天使(ルシファー)』』 「おっと、同属性だからそりゃ相殺するよね。『夜ノ天使(ドビエル)』」 『ほう。夜の天使か。それで勝てるとでも?『闇に堕ちしは黒き堕天使。堕天使は光を司りし神子。闇と光は融合し、天界を飲み込む。』『光ノ堕天使(ルシファー)』』 「『天使を創るは夜の闇。夜を司るは夜の天使。飲み込まれ、恐れよ。夜は神をも飲み込む。』『夜の天使(ドビエル)』 光の堕天使の完全解放と夜の天使の完全解放がぶつかり合う。 「負けないよ。僕はね。星の守護者だから。『天装』』 『何をする気だ?星の守護者よ。』 「さあ?こっから全力だ。」 『天を纏っただけで僕に勝てるとでも?舐めないでくれるかな?人間風情が。』 「今から君はその人間風情に負けるんだけど大丈夫?」 こうして、二つの強大な力がぶつかり合う。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード31開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 4.天装 【前書き】 久々の投稿となります。遅れてしまいすみません。 【本文】 「『天装:光の天使(ロシエル)』」 『光の天使ロシエルの権能と接続しました。』 「『光の槍』」 『権能か、その力もまあ、馬鹿にはできない。神を纏え。『武光の堕天使(アキレス)』」 「星の意志よ、我が望みに応えよ。『敵穿つ星の意志(ヴァルスター)』」 その次の瞬間、アルノードが放った光の槍が肥大化し、強いエネルギーを放つ。 「我が敵を穿て!『敵穿つ神槍』!」 『なっ、これは!なんだと!?この僕が人間に負ける⁉︎そんなことありえない、ありえないはずなのに…』 そうして、ルシファーが粒子となって消えていく。その場に残ったのはソーダ大臣だった。 「まあ気絶してるか。ユート。こいつをうちの領内で尋問してもよろしいかな?」 「師匠。ここは貴族の前いつもの口調はやめていただきたい。」 「かしこまりました、陛下。では改めて我が領内でこの者を尋問してもよろしいでしょうか?」 「ああ、しっかりと報告するように。私の大切なこの国に手を出した者は許さん。」 「御意。」 『まさかソーダ大臣か敵と繋がっていたとはな…』 『我が王国の恥晒しめ!』 「さて、皆の者。先ほど異議を申し立てたソーダ大臣が敵の間者であった。だが、このまま称号授与式を続ける。」 「かしこまりました、陛下。冒険者ラティエル、陛下に近寄りなさい。」 「はっ」 「冒険者ラティエルよ。其方には神から称号が下賜されている。神からの称号は、『空の賢者』だ。」 小声でアルノードがラティエルに「ありがたき幸せというんだ。」といった。 「ありがたき幸せ。」 「それではこれにて称号授与式を終了する。皆のもの。国を救った勇敢な冒険者に、拍手を。」 『わぁっ!』 歓声が沸く。 歓声が沸いている間にアルノードがラティエルに「陛下が呼んでいる。僕についてきなさい。」という。 「わかった。」 「それではラティエルと国王陛下が退出する。皆のもの、礼を捧げよ。」 そうして、皆が頭を下げ、静かになる。 ラティエルがアルノードについていき、歩くこと5分。 「よく来てくれた、ラティエル殿。」 「陛下、何のようですか?」 「ラティエルくん、ユートは優しいからね、あまり敬語を使う必要はないよ。」 「師匠、そこは威厳を保たさせてくださいよ。」 「今日君を読んだのは他でもない、君のご両親についてだ。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード32開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 5.ラティエルの出自 【前書き】 久々の投稿です。また上げて行きます。 【本文】 「今日ここに呼んだのは、君のご両親についてだ。」 「俺の両親?」 「うん。」 「俺は孤児院出身で、親の顔も見たことはないが。」 「なるほど。名前を教えてもらえるかい?」 「アスタルテとエルレインだが」 「予想通りだね。」 「師匠の言葉を疑っていたわけではないですが、まさか本当に的中するとは思いもしませんでした。」 「何かあったのか?」 「君の両親は大戦の英雄だ。」 少し間が空く。 「君の両親は君の所属す流王とギルドのギルマスである『神剣』のライムと友人でね。スタンピードで会ったらしいんだ。」 「父さんと母さんが?だが俺が産まれて俺と別れてからはもう10年以上は経っているぞ。」 「ああ。君の両親は、二人は一切老いていない状態だったんだ。」 「⁉︎そんなことがあり得るのか?」 本来、不老の秘術というのもあるにはあるが、使うには相当の魔力、気力が必要であり、大戦終了直後に失踪した『陽双』の2人には無理な所業だと言えるだろう。 「あり得ない話ではないね。だがその可能性の方が低いだろうね。」 「で、それだけか?」 もう何も聞くことはないと言わんばかりの表情をするラティエル。 「え、久しぶりに両親が見つかったと思ったら老いていない状況で見つかったんだよ?何もないの?」 「ああ。別にないな。」 アルノードがポカンとした表情で固まる。 「ふっ、ふふっ、あははは!」 「なんだ?何かあったのか?」 笑いながら泣くアルノード。 「いや、本当に小さいころのエルレインに似てるね。君は。」 「そう、なのか?」 「ああ、その無愛想なところやどこか抜けているところが特に、ね。」 「そうか。なら少しは嬉しいな。」 「ふふっ、もう用事はないよ。僕からは。今度君が保護したという少女を連れてきてくれないか?少し気になるからね。」 「ああ。了解だ。」 「それでは私からも一言。いいかい?君にはこれから色々な困難が降り注ぐだろう。でも、決して諦めるな。我が王国の英雄の息子が諦めるなど私も見たくはない。」 「ああ。すぐにS級冒険者まで行ってやるからな!」 「ああ。次世代の王国の英雄。空術師よ。」 「どういうことだ?」 「ああ、何もない。戯言だと思って聞き流してくれ。」 「あ、ああ。」 何か感慨深い表情を少し見せた国王を不審に思いつつもラティエルはギルドに帰るのであった。 その頃ギルドでは。 「おいおい、ミストさんよお、こんなもんか?ああ?」 「黙るっすよ!今にみとけっすラティエルさん!すぐに追いつくっすよ!」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード33開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 番外:ミストの一日1 【前書き】 じゃんじゃんいきましょう!じゃんじゃん! 番外ですが、本編にも関係があるのでぜひ読んでください。 短めです。 【本文】 私はミスト、S級冒険者の1人で『天風』の二つ名をもらった最強の冒険者の一角っす!ま、下の方っすけどね! 今私は、依頼で向かった森で見つけた男性と仲良くしてるっす。 その人は『空気』というユニークマジックを持つ最速でA級冒険者になった人っす。名前はラティエル。 王国からは『万喚』、天からは『空の賢者』という二つなをもらった人っす。 ウチは頑張ってその人に追いつこうと必死で頑張ってるっす。 今日は『雷速の剣聖』ことエルムさんと修行をしているっす。 「ミスト殿!貴殿の強さはこんなものではないだろう!」 「はいっす!」 エルムさんはとても厳しいけどめちゃくちゃ強いっす。まだ一本しかとれてないっす。 「『天翔ケル翔風(アマカケルショウフウ)」 「良いぞ!『迅雷の斬撃』!」 雷の斬撃が風とぶつかり合う。 「うおおおおっす!」 ズバンッ! 斬撃音が響き渡る。 「くっそ、負けたっす〜。」 「リヴィウス殿、治療を。」 「畏まりました。『回帰(リバース)』」 ミストの傷が治っていく。 「いやはや、なかなかに危なかった。やはりミスト殿は強いな。」 「それは煽りに聞こえるっすよ。」 拗ねた表情でミストが言う。 「わははは。ミスト殿。まだまだお若いのだから爽焦らなくとも良いであろう?」 「いや、ウチはあの人に追いつくんっす。まだまだ足りないっす!訓練よろしくっす!」 「ラティエル殿か…。あの力ははっきり言って異質。吾輩は彼が恐ろしく思う。あの歳であの強さ。一体これからどこまで強くなるのか。 「エルムさんにそこまで言わせるっすか。ラティエルさんは凄い人っす!ウチも負けてられないっすね!」 そして2時間後。 「『神討ち堕とす風の矢(グングニール)』」 「これはまずいな!うおおおお!『剣聖技 雷神の刃』」 膨大な力を持った一筋の風が雷の斬撃とぶつかり合い、斬撃を打ち破りエルムを襲う。 光が晴れた所にはエルムが倒れていた。 「うむ。吾輩の負けだ。リヴィウス殿、治療を頼む。」 「畏まりました。『大いなる回帰(エル・リバース)』」 「疲れたっす〜。やっとエルムさんに勝ったっす!やったっす!」 「掴んだ。掴んだっすよ。コツを!」 「またいつでも引き受けよう。ミスト殿。ではな。」 【後書き】 ポイントや感想など応援よろしくお願いします。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード34開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 6.聖霊 【本文】 王城からの帰り道。 『おい、そこの兄ちゃん!』 「ん?なんの声だ?」 『やっぱり聞こえるのか!おい、兄ちゃん!あんたの目の前に姿を見せる!ちょいッと止まってくれ!』 「ああ。いいが。」 『マジか!恩に着るぜ!風の聖霊リゲルが命令する!我が身を現世に顕現させよ!』 その次の瞬間あたり一面に強い風が吹き蛍が飛び交う。 『聖霊リゲル、参上だぜ!』 「お前が声の主か?」 『ああ、そうだぜ兄ちゃん!あんた、相当イゾルテに好かれているようだな!』 「イゾルテ?誰だそれは?」 『あれ、兄ちゃんイゾルテを知らないのか?まあいいや、アタシの名前はリゲル。聖霊リゲルだ!』 「精霊ってあの精霊か?」 『そうだ、あの聖霊だ!』 行き違いが発生する2人。 『そうだ!兄ちゃん、アタシと契約しないかい?』 「お前と?」 『ああ、兄ちゃんみたいな心が綺麗なニンゲンは久しぶりなんだ!絶対に後悔はさせねえ!頼むよ!絶対に後悔はさせねえ!』 「分かったよ。どうやって契約するんだ?」 ラティエルが渋々といった表情で頷く。 『ここに風の聖霊リゲルとの契約を交わす。兄ちゃんの名前は?』 「俺の名前はラティエル。」 『ラティエルか、良い名前だ。ここに聖霊リゲルと契約者ラティエルの契約を交わす。』 あたり一面が光る。 光が晴れるとそこには小さい子供がいた。 『改めて、アタシの名前はリゲル。ラティエル、よろしくな!』 「ああ。よろしく」 ラティエルは思いもしなかったであろう。この聖霊が自分の冒険者生活にかけがえのないパートナーになるということを。 そしてギルドに戻る。 「あれ、お帰りっすラティエルさん!」 「あれ、ミストじゃないか。どうかしたのか?」 「ええ、ウチも結構強くなったっすよ!あれ、ラティエルさん、その横で飛んでるのって…。」 「ああ、王城の帰り道で出会ったんだ。精霊のリゲルだ。」 『アタシは風の聖霊リゲル!よろしくな!』 「姿が視えるぐらい高レベルの精霊っすか?また引き離されたっす〜。」 泣きそうな表情でミストが嘆く。 「おや、ラティエルくんじゃないか。」 「フローリアか、ただいま。」 「おや、ラティエルくん、式はどうだった?」 「ギルマス、聞いてくれ!凄い化物が現れて星の守護者って人が倒したんだ!」 「アルノード殿か。彼は規格外だからね。」 今日もギルドは騒がしい。 【後書き】 イゾルテって誰それ美味しいの?と思った方、そのうち出てくるので待っといて。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード35開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 7.神話の時代 【前書き】 過去回です。 【本文】 まず、「冒険者」という職業はどうやって出来たのか。そこまで振り返る。 時は神和の時代。あるところに1人の男がいた。後に『賢人』と呼ばれる、最初の冒険者である。 『賢人』リアライズ。彼は冒険者という枠組みを作った男である。『賢人』と呼ばれたが、実際は粗暴な男で、戦いをこよなく愛する俗に言うBJ(バトルジャンキー)と言うやつだった。そんな彼はとある日、異世界から現れた。 彼の故郷は日本というところで、平和な国だったそうだ。 そんな彼は、不可能という言葉が嫌いだった。 そんな彼が異世界で得たスキルは『否定』。 この能力が後々最強になるとは思いもしなかった。 そして時は暫く進む。この世界に来てから5年がたったリアライズ。彼はある貴族たちと旅をしていた。 「ねえねえリアライズ!」 「どうしたんだ、エルザ。」 彼女はエルザ・ヴァルトラエル。後に『光の原初』と呼ばれる、光魔術の基礎を作った人物だ。後の『人*の*』と呼ばれる。 「今日はみんなと合流の日でしょ?みんなで遊ばない?そ、の、あ、と、はー?」 エルザが自分を指差す。 その後ろでアルノード・ヴァルトラエルが青筋を立てながら、 「おいリアライズ。お前まさか僕の可愛い妹に手を出してるわけじゃ無いよな?」 「やめてくれ、アルノード。お前とやり合うなんて流石にきつい。」 一行は魔神討伐のために世界を旅していた。 「お兄ちゃん!そんなにキツく言わないでよ!」 「いや、エルザの頼みでもそれは無理…」 アルノードがそう言った瞬間エルザが悲しそうな顔をする。 「な、なるべく早くに帰ってくるのならいいだろう。」 「やったー!」 こんなこともあってか、この3人組の絆は深かった。 そして現在のアルノードに戻る。 「リアライズ。懐かしいね。あの頃が。」 そしてまた回想に戻る。 「リアライズ殿、お久しぶりですな。」 そう言ったのは後に『風の原初』と呼ばれるイカロス・クラウゼル。 「ああ、イカロス、元気にしてたか?」 「リアライズ!久しぶりなんだぞ!」 彼女は後に『炎の原初』と呼ばれるレイナ・トラキア。 「ああ、レイナ。そっちはどうだった?」 「ふっ、リアライズ。久しぶりだな。我は元気にしていたぞ。」 彼は後に『木の原初』と呼ばれるエルウッド・エスフォート。後にエスフォート王国を建国する。後の『弓聖』である。 「ああ、エルウッド。丁寧にありがとよ。」 「リアライズさん、お久しぶりですね。」 彼女が後に『水の原初』と呼ばれるソラ・ティーナ。初代聖女である。 「リアライズ!ひっさしぶりだね!ちなみにボクは寂しかったよー。」 彼女は後に『雷の原初』と呼ばれるライア・アズマ。極東の国の出身である。後の『忍王』である。 「リアライズよ、また強くなったようじゃのう。」 彼はロウアン・エンドルト。初代『盾聖』である。 「ああ、みんな、元気にしてたか?」 リアライズはこのメンバーと魔獣討伐の旅をしていた。 【後書き】 なんか知らん奴ら出てきたなあ。って思った人、もう少し待ってください。そのうち、ネタバレに入らないぐらいの設定のお話致します。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード36開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 8.歴史 【前書き】 3章の歴史回はこれで終わりです。 【本文】 『原初』。それは各魔術の基礎を作った人物である。 彼らについて一度話す。 まず、『人類最強』にして初代『剣神』のイカロス・クラウゼル。『風の原初』で、後の神聖クラウゼル皇国を建国した人物である。 次に『太陽姫』にして『賢者』のレイナ・トラキア。『炎の原初』で太陽帝国を建国した人物かつ、太陽帝国 の公爵家である。 次に、『森の監視者』にして『弓聖』であるエルウッド・エスフォート。後にエスフォート王国を建国する人物である。 次に、『人類の癒し手』のして初代『聖女』であるソラ・ティーナ。エスフォート王国の公爵家である。 次に、『暗黒姫』にして『忍王』であるライア・アズマ。異世界人が建国した世界最古の国『ツキジ』の生まれだが、ツキジが滅んだ後エスフォート王国の公爵家となった人物である。 次に、『人類の護り手』にして初代『盾聖』であるロウアン・エンドルトである。エスフォート王国の貴族である。 最後に、『原初』で最も強い。だが裏切った。『人類の敵』にして『魔神』エルザ・ヴァルトラエル。 この7人が『原初』である。 神話の時代の情勢について語ろう。 その頃、世界は魔獣によって荒れていた。その頃世界にはツキジという異世界人が建国した世界最古の国があった。それ以外の土地は魔物が出す瘴気に寄って汚染されており、その状況を打破するために選ばれたのが後に『原初』と呼ばれる者たちである。 『原初』たちは旅の途中、数奇な男に出会った。それがリアライズである。そして、リアライズとその一行は、旅先で魔獣を倒して行った。だが、瘴気によって汚染された土地の半分を取り戻した時、『光の原初』エルザ・ヴァルトラエルが裏切り、魔神となった。しかしリアライズ一行は苦戦しながらも魔神を討伐。それにより平和は保たれた。戦いの余波でツキジがなくなり、原初たちは自分の国を作ったり、貴族となったりした。 これにて歴史書を終いとする。 「なるほど。こう記されているのか。本当にこの世界は歪んでいる。リアライズ、僕は君を最後まで理解できなかったよ。始めようか。この世界への復讐を。」 【後書き】 最後の人物は誰なのか! よかったら評価お願いします。感想お待ちしております! 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード37開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 9.最強の訪問 【前書き】 通常に戻ります。 【本文】 その頃ギルドでラティエルは依頼先のダンジョンで見つけた歴史書を読んでいた。 「へー、『原初』なんてもんがあるんだな。」 「いや、ラティエルさん、物語に出てくる英雄のモチーフは大体が『原初』っすよ?」 「でもこの歴史書おかしいぞ。」 ラティエルが古びた歴史書を指差しながら言う。 「何がっすか?」 「いや、イカロスって人が人類最強なんだろ?」 「そうっすよ。それがおかしいんすか?」 「でもエルザって人が原初最強なんだろ?おかしいぞ。」 「あー。それはっすねえ…」 「ほう、ラティエルくん、面白いものを読んでいるじゃないか。」 後ろから男が声をかける。 『なんだテメエ!ラティエルになんか用か!』 「ふむ、何か知らない子が増えているね。ああ、ラティエルくん、この間の約束、果たしにきたよ。」 「アルノード!どうしたんだ?」 そう。その場に現れたのはアルノード・ヴァルトラエル。ちなみにラティエルはエルザの兄がアルノードだと言うことには気づいていない。 「ほら、あの少女を見せてくれると。」 「あー、そっか!」 「ていうかなんでラティエルさんはあのアルノード様と気軽に喋ってるんすかあ!?」 「おや、君は、『天風』のミスト殿だね。」 かしこまった態度でミストが言うと、それにアルノードが柔らかく接する。 「じゃあ連れてくるよ。おーい、ラー?どこだー?」 「ラーならご飯を食べ過ぎたから食後の運動って。」 「じゃあすぐ帰ってくるか。」 「そうっすね。」 安心したようにラティエルが言う。 「そうだ!なんでエルザが原初最強なのに人類最強じゃないんだ?」 「その質問には僕が答えようじゃないか。」 ちなみにミストはアルノードが神話の時代から生きていることを知っている。 「エルザは一般的には人類の敵になったとされているんだ。だから彼女を人類には含まない。」 「そうなのか、可哀想だな。人間を敵になったからと言って人類に含まないなんて…」 ラティエルが悲しそうな顔で呟く。 「そうか、君は優しいね。ところでその君の隣にいるお嬢さんは誰だい?」 「あー、こいつか、こいつは…」 ラティエルの発言をリゲルが妨げる。 『ちょいっとまちなラティエル!こいつにはアタシ自らが自己紹介するぜ!アタシの名前はリゲル!風の聖霊リゲルだ!』 「リゲル?もしかして君はあのリゲルなのか⁉︎」 『ちょいと待て、なんかお前アル坊に似てるな!お前もしかしてアル坊か⁉︎』 「ああ、そうだよリゲル!」 「ひっさしぶりだなアル坊!」 そこにラティエルが割り込む。 「すまん、俺とリゲルが契約をしたのは随分と最近なんだが、なんでアルノードはリゲルをしっているんだ?」 【後書き】 リゲルとアルノード。2人の関係性は伊一体なんなのか!?続く! 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード38開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 10.聖霊の頼み 【前書き】 3章ラスト!脳がパンクしそう。 【本文】 「なんでアルノードはリゲルを知っているんだ?」 「あー…それはね。」 『いいぞ、アルノード。そろそろ話さなきゃいけないところだったんだ。』 リゲルが神妙な面持ちをして告げた。 『アタシは、聖霊リゲル。初代『剣聖』イカロス・クラウゼルと契約していた四大聖霊の一体『魔断』のリゲルだ。』 「いいかい、ラティエルくん。君が想像している『精霊』と『聖霊』は違うんだ。聖霊は精霊の中でも力を持った存在なんだ。」 「そう…だったのか。それで?」 「『え?』」 リゲルとアルノードが声を揃えて驚く。 「アルノード様、ラティエルさんは無知なんで、聖霊のあのデマも知らないんすよ。」 『な、なんで姉ちゃんデマって知ってるんだ?』 「うちの師匠が聖霊と契約してたんっすよ。」 「どう言うことなんだ?」 『聖霊と契約すると莫大なデメリットを背負うことになる。世間ではそう言われてんだよ』 「え、そうなのか?じゃあやめとこっかな。」 『いや!違う違う、そんなんデマに決まってんだろ!』 「あ、だよな?リゲル優しいもんな。」 『あ、ありがとよ…。』 照れた表情でほおをかきながらリゲルが言う… 「むぅ…、ラティエルさん!早く話の続きするっすよ!」 ミストが怒る。 「ふふっ、本当に君はエルレインに似ているね。無自覚に女性に好かれるところもね。」 「?何を言っているかわからないが…。」 『で、ラティエルには頼みがあるんだ。アタシの故郷を助けてくれ!』 「まかせろ。」 「ちょちょちょ!ラティエルさん!内容を聞かずに決めるのは良くないっす!」 「ん?俺とリゲルは契約をした時点でパートナーだろ?大事なパートナーの頼みを聞くってのはダメなことなのか?」 「それはぁ…、はぁ、惚れた弱みってやつっすかねえ?いいっすよ。その代わりうちもついて行くっす!」 「僕も行こうじゃないか。」 「だ、駄目ギルマス⁉︎久しぶりの登場じゃないっすか!」 「なんだい?登場って。」 「じゃあ僕も…」とアルノードが言おうとするが 「あなたは無理です。アルノード殿。」 「だよねえ。」 ライムが拒否をする。 『みんな、ありがとう!みんなの安全はアタシが守る!イカロスの名にかけて!』 「ああ!よろしくな!」 4章へ続く。 【後書き】 読者の皆様!3章の俺は空気に干渉する。風術師…じゃなくて、空術師。魔力だけが取り柄だったけど最強になりました。を読んでくださり、ありがとうございました。このエピソードにて3章は完結です。またしばらくしたら投稿するので少しお待ちください。一回完結にします。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード39開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 連載再開 【本文】 テスト期間が終わりましたので、連載を再開しようと思います。お待たせしてしまいすみません。小説投稿頑張っていきますので、是非とも応援よろしくお願い致します。皆様が楽しめる作品を、ラティエルと共に書いていきます。 これからも空気をよろしくお願いいたします。 これから4章に入りますが、一度振り返り回を書いてからにしますので、少々お待ちください。 「これからもよろしく頼むぞ!」と、ラティエルも言っております。 by星降夜 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード40開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 振り返り 【本文】 現在のラティエルのステータス 名前 ラティエル 種族 人間 属性適正 風 魔術適正 空気(YM) 称号 『空の賢者』 性別 男 Lv 121 HP1210 STR C VIT C AGI B INT S DEX A MND B LUK C 登場人物 ラティエル…先代剣聖と先代聖女の子供。A級冒険者で、『万喚』のラティエル。当作の主人公。 ミスト…エルフで、S級冒険者。『天風』のミスト。ラティエルを気にしている。冒険者の中でも最強格。 フローリア…とある貴族の生まれで、『泡沫』の紋章持ち。S級冒険者で『泡沫』のフローリア。ラティエルの先輩。 ライム…王都ギルドのギルドマスターで、ラティエルの両親とは戦友。ミスト曰く「仕事はできないけど強い」とのこと。元S級冒険者で『神剣』のライム。 リヴィウス…ギルドの受付嬢で戦闘マニア。実は今代の『聖女』。主に治癒魔法を得意とする。 アルノード・ヴァルトラエル…『星の守護者』で、神話の時代から生きている。エスフォート王国の魔術基礎を築いた人物。妹が大好き。 リゲル…かつて初代『剣聖』のイカロスと契約していた『風の聖霊』。ラティエルと契約している。何か秘密を抱えている様子。 ユート・エスフォート…エスフォート王国の国王で、魔術の腕はピカイチ。アルノードの弟子で、何か秘密を抱えている様子。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード41開始 ------------------------- 【第4章】 4章 精霊界グラシアス 【エピソードタイトル】 1.旅立ち 【前書き】 久々の投稿です。がんばります。 【本文】 「よし、行くか。」 そう言って、男は仲間と共に歩き出す。 男の名前はラティエル。 エスフォート王国王都ギルド所属のA級冒険者で、呼び名は『万喚』のラティエル。先の王都防衛の立役者の1人である。 ラティエルの横にいる女の名前はミスト。エルフである。 エスフォート王国王都ギルド所属のS級冒険者で、呼び名は『天風』のミスト。冒険者最強の一角である。 ラティエルの右にいる少女の名はリゲル。聖霊である。 かつて初代『剣聖』イカロス・エルクラウゼルと契約していた。呼び名は『断魔』のリゲル。 ラティエルの後ろにいる男の名はライム。 エスフォート王国王都ギルドのギルドマスターで、呼び名は『神剣』のライム。もう冒険者を引退したが、その強さは健在である。大戦の英雄である。 ライムの横にいる女の名前はリヴィウス。 エスフォート王国王都ギルド所属の受付嬢で、呼び名は、『時の聖女』だが、そのことを知るのは王都ギルドのメンバーのみである。時間魔術を使った治癒を得意としており、今回の旅には治癒師として同行している。 時を遡る。 ギルドで、ラティエルはリゲルの故郷を救ってほしいという、リゲルの依頼に応じた。 その時その場にいたアルノード・ヴァルトラエルも同行を申し出たが、却下された。 ミストはパーティーメンバーとして、ライムはギルマスとして、リヴィウスは治癒師として、依頼に同行することになった。 一行が向かうのは精霊たちが暮らす精霊の国『グラシアス』に通ずる扉がある、エルフの国の集落の一つである『イ・ルル』。 ミストの故郷である。 「ほら、ささっと行くっすよ、ラティエルさん。」 「どうしたんだ?ミスト、久しぶりの帰郷ではしゃいでいるのかい?」 「うるさいっすよダメギルマス!」 相変わらず扱いは酷いままである。 「そうだな、よし!『空気顕現』『魔女の箒』。」 ラティエルが詠唱した途端、その場に箒が現れる。この箒は神話の時代、『聖撃の魔女』ラスティアが使った空飛ぶ箒である。 「みんな、これに乗ってくれ。」 「はい。」 「はいっす。」 「了解した。」 「アタシはラティエルの肩にいるぜ!」 「出発だ!」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード42開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 2.ミストの秘密 【前書き】 更新遅れてしまい、すみません。 【本文】 エルフの里『イ・ルル』に向かう途中、ラティエルたちは魔物に襲われている少女を見つける。 「助けに行くぞ。」 「切り裂くっす。『嵐刃』」 「デバフをかけます。『遅延(スロー)』」 動きが遅くなった狼を風の斬撃が斬り裂く。 ラティエルが少女に駆け寄る。 「おい、大丈夫か?」 「た、助けていただきありがとうございます。私の名前はアリアです。」 アリアは少し怪我をしていた。 「俺の名前はラティエル。冒険者だ。」 「ラティエルさん、ここには何をしに?」 「依頼を受けて、エルフの里に向かっているんだ。」 「なるほど、では私についてきてください。私はこれでも冒険者ギルドの受付嬢なんです!」 アリアが自慢するように言う。 「ふむ、怪我してますね。『回帰(リバース)』」 リヴィウスが治癒を施す。 「わわっ、すごい治癒力!高名な治癒師様ですか?」 「いいえ。私は王都ギルドの受付嬢よ。」 「ええっ、受付嬢なのにこの治癒力⁉︎凄い!」 ガルルルルゥ! アリアの背後に赤熊(ブラッドベア)が忍び寄る。 「危ないよ。『紅帝剣クリムゾン』『紅斬』」 「わわっ!なんて高密度の炎!すごいですね」 それからややあって、アリアが喋り出す。 「助けていただいたお礼に、私がこの国を案内しましょう!」 「ありがとう。よろしく、アリア。」 「皆様はどういう目的でこの里へ?」 「精霊界に用事があってな。」 「えっ!国賓さまでしたか!申し訳ありません。御無礼をお許し下さい!」 急に頭を下げるアリア。困惑するラティエル。 「ん?国賓?どういうことだ?」 「えっ、精霊界に行くには、王族だけが持つことができる宝剣が必要ですよ?」 「ミスト?どういうことだ?」 「ミスト…?ま、まさかミスト様ですか?」 「…」 「やはり、ミスト・イ・ルル様ですよね?」 「そうっす…ラティエルさん、黙ってて申し訳ないっす…ウチの名前は、ミスト・フォン・ウッドネス…エルフの里、イ・ルルの長の子供っす…」 「すまないね、ラティエルくん…ぼくも共犯者だ。」 静まり返る一同… 「そうだったのか。よし、じゃあ、行くか!」 『へ?』 「『空気顕現』『魔法の箒』」 「さあ、乗って!」 「え〜?理解が追いつかないです。」 「ラティエルさん…。じゃあ行くっす!」 アリアは何が何か分からない表情で。ライムは温かい目で。ミストは嬉しそうな表情で。リヴィウスは驚いた表情で箒に乗る。 「ラティエルさん、ありがとっす。」 小声でミストが嬉しそうにつぶやく。 「ん?ミスト、なんか言ったか?」 「何もないっす!」 そして一行は飛び立った。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード43開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 3.王城にて試練の間 【前書き】 久々の更新ですみません。 【本文】 「アリア。どこかで降ろそうか?」 「いいえ、その必要はありません。」 『やっぱ、おめえ、『聖歌』のアリアか。』 『ふふっ。ではあらためて自己紹介させていただきますね。私は聖霊『聖歌』のアリア。よろしくお願いしますね?』 そう言って微笑むアリア。 『私、水の聖霊なんです。』 『えぇ〜⁉︎』 一同が驚く。 「何か魔力がおかしいと思ってたんすよねー」 『それでは、私が精霊界『グラシアス』へご案内いたしましょう。』 「よろしく頼む。」 『ええ、ではこちらです。まずは王城に向かいましょう。』 「了解っす」 こうして、ラティエル一行は王城へ向かった。 「何者だ。」 『あ、衛兵さん、通して貰えますか?』 「これは、アリア様。どうぞお通り下さい。」 衛兵が頭を下げる。 王城の中に足を踏み入れたラティエル達。 「懐かしいっすね。」 「アリエル様。陛下への謁見が出来ますが。」 『ええ、お願いしますね。』 「畏まりました!」 「お進み下さい。」 衛兵が会釈をし、ラティエル達を案内する。 王の間に踏み入れたラティエルたち。 「面を上げよ」 そこにいたのは知的な顔つきをした青年。外見年齢はおよそ20代程度。片手に杖を持ち、腰に剣を携えている。 「私がこのエルフの里の長。ラウル・イ・ルル。そこにいるのは、私の娘、ミスト・イ・ルルで違いないかな?」 「違いありません。」 「ふむ。懐かしいな。君はライムか。ここへは何をしに?」 「ここにいるA級冒険者『万喚』のラティエル。彼の契約精霊であるリゲルの頼みを聞き、精霊界に足を踏み入れるためにこちらへ来ました。」 「おぉ、リゲル殿はエスフォートに行っていたのですか。」 『おう、長い間留守にしてすまなかったな。』 ラウルが頷く。 「いえ。しかし、精霊界へ行くには試練を突破する必要があります。」 『ラウル様、ここからの説明は私が。』 アリエルが前へ出る。 「そうですね。アリエル殿、お願いします。」 『ええ、改めまして、私は水を司りし聖霊『聖歌』のアリアです。私が精霊界へ行くための試練を担当しています。本来なら、そこにいるリゲルさんと共に、試練を与えるのですが…。まあいいでしょう。『水球』。それでは説明に移りますので、こちらへどうぞ。』 アリエルが生み出した水球が向かうのは王の間の最奥。 「分かった。それじゃあ行こう。」 「はい、お父様、また後でっす。」 「それでは、陛下。」 「…。」 ラティエルは淡々と。ミストはまた後で会う約束をし。ライムは別れを告げ。リヴィウスは無言で会釈をし。こうして一向は試練を突破し、精霊界に行くため、試練の間に向かった。 【後書き】 今までの登場人物と比べて、初登場の際の描写を詳しく書いてしまったかなと自分でも思いました。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード44開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 4.『聖歌』と試練 【前書き】 更新遅れました。がんばります。 【本文】 『それでは、進みましょう。』 アリアが生み出した水球についてきたラティエル達。王の間の最奥。そこにある試練の扉を開けるアリア。 ガチャッ 『開け』 門が開く。 『到着しました。ここが、精霊界への試練の間。『精霊の箱庭(ティターニア)』です。』『改めまして、私の名前は『聖歌』のアリア。試練の監督を務めております。以後お見知り置きを。』 アリアが一礼した瞬間、ラティエル達の視界を青い光が埋め尽くす。 「なんだこれ…」 『ここにいるのは水属性の精霊たちです。私のお友達ですね。彼らについていってください。そうすればあなた方の道は開けるでしょう。』 青い光が動き出す。 『それでは、これより『聖歌』のアリアが試練の監督を務める、『聖歌の試練』を開始します。』 二手に別れるラティエル達。メンバーがラティエル、ミストとライム、リヴィウスである。 ラティエル達side 『ようこそ、ラティエルさん、ミストさん。ここでは『聖歌の試練』の一つ『力の試練』を行います。ここでの試験官から説明を受けてください。』 アリアの声が聞こえた瞬間、茶色の光がラティエル達の前に集い、人の形となった。 「茶?土っすかね?」 ミストが予想する。 『御名答。エルフのお嬢さん。儂の名はフムス。『万護』のフムスじゃ。よろしくのう。リゲルの契約者よ。』 「ああ。よろしく。ここでは何をするんだ?」 『簡単なことじゃ。儂と戦って勝てば良い。この『精霊の箱庭(ティターニア)』の中では精霊は不滅の存在じゃ。』 「なるほどっす。じゃあさっそくやるっすよ!」 『元気だのう、エルフのお嬢さん、覚悟せえよ?』 「これは…。ゾクっとする殺気っすね、これは苦戦しそうっす。」 「『空気顕現』 『星撃の杖』ミスト、俺から仕掛けるぞ。」 「了解っす!『魔力装填』」 手元に杖を顕現させるラティエルと魔力を貯めるミスト。 「『星撃』」 『『地盾』。良い一撃じゃ。だが、火力が足りんのぉ。』 盾が出現し、星撃を弾く。 「うーん、確かに火力が低いな。こうなったら。ミスト!今から魔術の威力を上げる作業をする!ミストは持ち堪えてくれ!」 「了解っす」 『がはははっ、滾る、滾るのぉ。久々の殺気じゃ。儂の名前、覚えて冥土に行け、冒険者どもぉ!『怒霊の鉄槌』!』 フムスがハンマーを出現させ、ミスト達の元へ距離を詰める。 だが、フムスの目の前に居たのはミストだけだった。 「いらっしゃいっす、お爺ちゃん、そこはラティエルさんの射程内っすよ。」 『なっ!』 「リゲル、行けるか?」 『おう、術式解析完了。ラティエル、狙撃だ。』 「了解。『星撃』」 星を撃ち抜く魔術がフムスの体を貫く。 「もう一発サービスっすよ!『魔力装填』『神風破槍』!」 『まだじゃぁ!』 フムスがハンマーを振り下ろす。 『フムス、追い討ちだぜ。『断魔』』 フムスのハンマーが砕け散り、フムスの体が茶色の光となる。 「え、消えたっすけど大丈夫っすか?これ。」 『さっきもフムスが言ってただろう。ここでは精霊は不滅の存在だ。この世界で精霊は滅びることもない。まず、フムスは一切本気じゃないしな。アイツの本領は防御にあるからな。』 「でもすごい魔力だったっすね。」 『そう言ってもらえると光栄じゃ。エルフのお嬢さん。』 『久々だな、フムスの爺さん。』 『おぉ、リゲルか。お前さんの断魔、以前よりもっと鋭くなったのう。ここを出てからまた腕を上げたようじゃな。』 『フムスの爺さんは相変わらず戦いと普段で人格が変わるな!』 『がはは、そういうお前さんはいつも同じじゃの。リゲルよ。』 『へっ、アタシはアタシだぜ!』 『うむうむ、元気なのは良いことじゃのう。』 リゲルは笑いながら、フムスは感慨深そうに話す。 『おっと、そうだった。エルフのお嬢さん、そしてリゲルの契約者よ。名を教えてくれるか?』 「ウチの名前はミスト。ミスト・イ・ルルっす。」 「俺の名前はラティエル。」 『ミストに、ラティエル。良い名じゃ。お主らにこの石板をやろう。これは試練を突破した証であると同時に、儂のことを召喚することができる石板じゃ。』 「ありがとう。フムス。」 『おう、また後でな。』 【後書き】 フムス好き!って方は⭐︎5を! アリアだろ!って方はブクマと⭐︎5を! リゲルなんだが?って方はお気に入りユーザーとブクマと⭐︎5を! お願いします! 感想受け付けております。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード45開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 5.力の試練(ライム達side) 【前書き】 更新遅れました すみません 【本文】 『よォ、俺はルクス。『万照』のルクスだ。オメェらが今回の試練を受けるやつらかァ。男の方は強そうだが女の方は随分と小粒だなァ。』 ライム達と対峙しているのは、白い髪に黄色の目。ガサツそうな見た目をした男だった。 「初対面なのに随分と高圧的だね、ルクス殿。よろしく。」 『あァ?逆にオメェらは丁寧に接してもらえると思ってたのかァ?一ついいことを教えてやろう。聖霊と人間じゃァスタートラインが違ェんだよォ。』 「まあいいや、早速始めてもらえるかな?まあ、君が僕たちに勝てるのかはともかく。」 ライムが苦笑しながらルクスを煽る。 「ギルマス、一応補助を。『加速(アクセル)』。」 「ありがとう。」 「いえ。」 『ほォ。随分と小粒かと思えば、時を操る魔術かァ。訂正しよう、オメェらは俺が全力を出すに値する相手だァ。』 「それはそれは、光栄だね。それじゃあ始めようか。『金帝剣ヤマブキ』。」 ライムがシグルドを金色に変える。 『いいねェ。『万照』。』 「デバフを。『遅延(ディレイ)』」 ライムがルクスに肉薄する。 「飛ばすよ。『雷斬』」 『おっと、早えなァ。『光撃』』 ヤマブキを振り被るライムに光となり、突撃するルクス。 『接近戦と行こうじゃねえのォ!』 「術式構築。『風よ(ヴェントス)』。『遅延』。『水よ(アクア)』。」 リヴィウスが魔術を唱える。 『おォ?珍しい魔術だなァおい。』 余談だが、国によって魔術の使い方が違う。リヴィウスが使ったのは、エスフォート式ではなく、東の果てにある国『ゼルスラ』の魔術である。 リヴィウスが、まず、風魔術を構築し、『遅延(ディレイ)』をかける。その後すぐに水魔術を構築し、同時に放つ。普通の魔術師では、二つの魔術を同時に扱うことができない。それは高等技術『二種魔術(デュアルキャスト)』である。だが、リヴィウスは時魔術を使い、擬似『二種魔術(デュアルキャスト)』を放ったのだ。 『あァ、いいなァ!敵が強ェほど、俺は輝くんだァ!オメェらに敬意を表して、全力で行ってやるよォ!『夜照らす光(アステラス)完全解放』。』 ルクスの手元が光る。 いつも人間のそばにあったのは、光であった。暗闇の中、光が灯ると、人はそれを見て安心する。 ルクスの原点は、『安心』だった。 ルクスはとても小さな光から生まれた。神が作った光である。 生まれた当初からルクスは強かった。だが、その見た目と気の弱さから、精霊に舐められていた。 彼は、そんな中、一つの『光』に出会い、今に至る。 彼は、その『光』に至る最中に神殺しを成し遂げた。彼の光はまさしく『最強』である。 【後書き】 次回決着です! 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード46開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 6.強大な力の激突 【前書き】 更新遅れました。 【本文】 詠唱する。神話の時代から紡がれてきたルクスの魔術。それは強く、優しい光。人が暮らす場所を照らす光。彼の魔術の原点は『安心』である。 「何か、見ていて落ち着く光ですね。」 ルクスの体を光が包み込む。 『今の俺はさっきまでの倍強ェぞ。』 ゾクッ ライムの体を寒気が襲う。 「素晴らしいオーラだ。『白帝剣オルブライト』。僕も本気で相手しよう。」 刹那、ルクスがライムに肉薄する。 「なっ。(さっきまでより全然早い。だけどまだ対処できる。)『白斬』」 白き斬撃が光を襲う。 しかし、光は斬撃を阻む。 『おらァ!『最速の光撃』』 光の一撃がライムを襲う。ライムは苦渋の表情をする。 それを見て、リヴィウスが魔力を練る。 「ギルマス!『時計の針は永遠に(クロノスタシス)』!」 リヴィウスの詠唱の瞬間、時が止まる。 「ギルマス、お願いします。切り札を切ってください。『回帰(リバース)』」 リヴィウスがライムに囁き、詠唱を始める。 「『時計の針は動き出す』」 刹那、世界が動き出す。 「その通りだね、リヴィウス。あれを出す。『我が敵を打ち滅ぼす剣よ。顕現せよ。』」 その時、ライムの前に降りてきたのは天から使わされた神の剣。 「『神剣召喚』」 『そのスキルはァ!やっぱ熱くなってきやがった!全部似てるんだよなァ!アイツに!俺は全力で阻もう、お前の勝利をォ!『極光(アウローラ)纏う一撃(ブラスト)』』 オーロラを纏った一撃がライムを襲う。 「君が阻んだ道を僕は超えていく!『光を断つ刃となれ。『断光』!」 ライムが放った斬撃が攻撃ごとルクスを斬り裂いた。 『あぁ、気に食わねえなあ。』 刹那、ルクスが塵となる。 「君は強かった、僕1人じゃ勝てなかった。」 そう言い、倒れ込むライム。 「ギルマスっ!『大いなる回帰(エル・リバース)』!」 ライムの体を光が包み込む。 「本当に無茶ばかりなんですから。」 ため息をつくが、安心するリヴィウス。 ここに、強き光の聖霊と神剣の使い手の戦いの決着がつく。 勝者は『神剣』のライム。 そして少し時間が進む。 リヴィウスは倒れたライムを連れて先へ進んだ。 そこで、ラティエルとミストと合流する。 「おっ、リヴィウスか。ギルマス!?どうしたんだ!」 気絶しているライムを見て驚くラティエル。 「大丈夫です。力を使い過ぎたのです。」 「そうっすか、それより、無事に4人で合流できてよかったっす。」 「ああ、そうだな。」 『お主らはルクスの試練を乗り越えたのか?』 「ええ。」 『ほう。ルクスは我々の中でも最上位の聖霊じゃ。そこの男もそうだが、お嬢さんを強いのう。』 「ありがとうございます。」 賞賛に微笑みながら答えるリヴィウス。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード47開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 7.ライムとルクスの話 【本文】 ラティエル、ミストはフムスを倒し、ライム、リヴィウスはルクスを倒し試練を突破することに成功した。 『皆様、お疲れ様でした。ライム様の治療は私がしますので、皆様は精霊界に行く準備をしておいてください。』 「ああ、わかった。」 『『癒しの歌』』 アリアがライムを治療している時、白色の光が集まり形になる。 『あァ、いい一撃だったなァ、冒険者。』 『ルクスさん、お疲れ様です。』 『あァ、アリア、そいつは何分後ぐれェに起きる?』 『5分後くらいでしょうか?』 『わかった、ありがとよ』 「ていうかなんでライムさんはこうなってるんすか?」 「それは、あの人のユニークスキル『神剣召喚』が関係しているんです。」 「そこからは僕が説明しよう。」 目を覚ましたライムが話す。 『おい、ライム。オメェの血縁者に、エルザはいるか?』 「エルザ?」 『オメェはエルフの里の英霊区の出身だろう?エルザ・ヴァルトラエルはオメェの血縁者かと聞いてる』 「なぜ、知っているんだい?英霊区のことを。」 『おおかたオメェの母親の叔母あたりだろう?オメェ、エンシェントエルフにうっすい人間の血が混ざってるんだろォ?』 「全部あってる。君はなぜそこまで知っている?神話の時代から生きる聖霊だからといって、そこまで知っている物なのか?」 ライムが怪訝そうな表情でルクスに聞く。 『なぜもクソもねェ。俺がエルザの契約聖霊だからだ。テメェはしらなかったかも知れねえがなァ。』 「そうだったのか。僕は未だに疑問がある。彼女は本当に人類の敵なのかい?」 ルクスがはっとした表情でライムを見る。 『オメェ。』 「どういう意味っすか?」 「本当に、エルザ・ヴァルトラエルは人類の敵なのか。ルクス、君がそんな人類の敵に手を貸すとは僕には思えない。何か、あったんだろう?」 『ルクスさん…。』 『うるせェ、『聖歌』!いいぜ、教えてやる。』 「ありがとう。」 『だが、その前に奴を救ってもらう。奴の口から聞いた方が早ェだろ。』 「奴?」 『あァ。俺たち聖霊をも超越する唯一無二の存在。精霊達を統べ、神をも恐れさせる存在。『精霊王』イゾルテ。オメェらにはやつを救ってもらう。』 「ん?なんで2回言った?」 『ラティエルは相変わらず空気を読まねえな。』 ラティエルが空気を読まずに発言するとリヴィウスが突っ込む。 『あァ、そうだ、オメェ。』 そう言ってルクスが指を指したのはリヴィウス。 「えっ。私ですか?」 『あァ。オメェの魔術式。【里】の式だな?師匠はどいつだ?アリエルか?ルシー?それともいじっぱりのメアリーか?それとも意地悪ティファか?』 「ティファ先生です…。」 『まぁ、だろうなァ。式がティファの改良式だもんなァ。』 「ルクスさんは、どうして里のことを?」 『あァ?んなもん自分で考えろ、バカがァ。』 「そうですよね、ちなみに里は、まだ残っていますか?」 『潰れた。テメェ、イゾルテの力を持ち出したな?』 ルクスがリヴィウスとの距離を詰め、刀を突きつける。 『ルクスさん!?』 「リヴィウス!」 ライムが駆け出す。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード48開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 8.激突再び?リヴィウスの過去。 【本文】 「ルクス!止まれ!」 『チッ。オメェは俺の納得の行く説明をしろ。じゃねぇと殺す。』 「はい。」 悲しそうな表情でリヴィウスが話し出す。 10年前に遡る。 リヴィウスが生まれたのは、『精霊王の里』。精霊王に守られている神聖な里に彼女は生まれた。 「いい?リヴィウス。私たちは精霊の力を借りて魔術を行使するの。決して私たちの力じゃない。肝に銘じなさい。」 「はい、ティファ先生!」 リヴィウスは郷の中でも力を持つティファという魔術師に魔術を教わっていた。 「『風よ(ヴェントス)』」 風の刃が集まり、木の人形に向けて放たれる。 「おぉー、その調子よ!リヴィウス。『木偶人形(デクドール)』の数値は、『269』ね。いい数値じゃない。」 「ありがとうございます!」 満面の笑みでリヴィウスが喜ぶ。 「ふふっ。」 しかし、そんな平和な日々も崩れ去ってしまう。 「みんな、逃げろ!『漆黒』が来たぞー!」 そう言って黒い触手に貫かれる男。 「きゃーーー!ベリアルさん!起きて!」 「リヴィウス!もう間に合わない。奴に貫かれたらもう最後だ。あんたが死ぬ訳にはいかないでしょ!」 「ティファ先生!でも…」 「ほら、行くよっ!」 引き摺られるリヴィウス。 里の人間がどんどん死んで行く。 「くっ。『光あれ(ルクス)』!お前だけは仕留める!メアリーもアリエルもやられた。あんただけは!」 「せ、先生!」 果敢に突撃するティファ。しかし攻撃が通らない。 「リヴィウス、あんたは逃げな!」 「でも、先生がぁ!」 「リヴィウス。これを持って行きな。」 爽言って魔術結界を張りながらリヴィウスに水晶を渡すティファ。 「これがあればあたしといつでもお話しできる。ほら、行きな。すぐに追いつく。使い方は地面に向けて投げつけるんだ。」 「わかった。私頑張る。」 駆け出すリヴィウス。 その直後。結界が触手によって貫かれる。 「チッ、もう割れたのか!『光あれ(ルクス)』!」 戦闘開始から10分が経過し、1人で逃げていたリヴィウス。 「先生、もう大丈夫かな?あのまどーぐを使おう。」 そう言って、ティファに言われた通り、水晶を投げつけるリヴィウス。 パリイィィン 『我が力を行使するはお主か?少女よ。』 「あなたは?」 『我の名前はイゾルテ。精霊王イゾルテじゃ。』 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード49開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 9.リヴィウスの過去、いざ精霊界へ 【前書き】 リヴィウスの過去がついに明らかに!? 【本文】 「イゾルテ?精霊王さま?」 首を傾げてリヴィウスが聞く。 「ああ。回帰を司る精霊王。イゾルテじゃ。お主は我を喚び出した。御主は我に何を求める?小さき魔術師よ。」 「どういうことなの?これは先生とお話しできるものじゃないの?」 「これは精霊王を召喚する数少ない手段のひとつじゃ。もう一度聞こう。御主はどうしたい。」 「あの怪物を、先生をおsってるやつを助けたい。」 「良いだろう。御主に与えるは我が権能。『回帰』じゃ。」 「ありがとうございます。言ってきます。」 しかし、遅かった。回帰の力は死の運命を覆せず。精霊王から授かったのはその力の一端。ティファを助けれるほど力は強くな買った。 「リヴィウス、逃げてぇ!」 そして今になる。 「私はティファ先生に言われた通り、逃げました。そこで、『太陽の聖女』であるアスタルテ様に会ったのです。そして私は権能である『回帰』を使った治癒術を活かし、『時の聖女』となったのです。」 リヴィウスは悲しげな表情で語り終えた。 「アスタルテ、俺の母さんに?」 「はい。ラティエルさんの母親であるアスタルテ様は私に治癒術と支援魔術を教えて下さいました。」 『まァ。大体の事情は分かった。すまねぇな。事情も知らずに問い詰めちまってよォ』 「いえ、そんな。」 『それじゃァ、オメェらにはイゾルテを助けてもらう。そしたら隠された史実をオメェらに教えてやる。頼むぜ』 『『聖霊アリアの名の下に。開け、門。』それでは皆さん行きましょう。この向こうが精霊界です。』 アリアの詠唱の元開かれた門の先に見えるは、大自然。 『ラティエル行こうぜ!』 「ああ。」 こうして一行は精霊が生まれ、暮らす場所。『精霊界グラシアス』に足を踏み入れた。 「へぇ、ここがグラシアスか。」 「久しぶりの雰囲気っす。」 「精霊の力を沢山感じますね。」 「良いところだな、リゲル。」 『ヘヘッ、そうだろ?アタシもラティエルにココに来て貰えて嬉しいぜ!』 『よし、オメェらついて来い。』 『はーい、皆さん、こっちですよ〜。』 先導するアリアとルクスについていくらラティエル達。リゲルはラティエルと一緒に歩き、フムスは後ろを歩く。 『君たちが今回の試練の合格者かイ?』 黄色の魔力光と共に急に現れたのは黒色の髪に黄色の目をした、和風装束を着た男性。 『おや、トゥルスさん。お久しぶりですね、もう探索は終わったのですか?』 『あア。計画通り、黄の宝珠を手に入れたヨ。』 『そうですか、前から気になっていたのですが、本当に宝珠は必要なのですか?あなたにあの力を制御できるんですか?』 『まア、それよりイゾルテを救う方が先じゃないカ?それとも雷で貫かれたいカ?』 『あらあら、じゃああなたを世界の果てまで流してあげましょうか?歌で眠らせてあげますから、楽ですよ〜。』 一触即発の空気。 「『空気権限』『冥王の杖』。2人とも。落ち着いてくれ。」 そういいながら術式を構築するラティエル。 『ほウ。かの冥王アルトが使ったとされる杖カ。僕もケガはしたくないのでネ。すまなイ、アリア。』 『いえいえ、私も熱くなり過ぎました〜』 『騒がしい奴らだなァ。ジジイ、行くぞ。』 そう言い、ルクスにみんなを呼ばせ先へ進むルクス。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード50開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 10.恩人との再会 【本文】 『ニンゲンダ』 『ニンゲンダ!』 小人がラティエル達を見て騒ぎ立てる。 「あれは…?」 『ああ、あの子達は小精霊…とても小さく、あまり強い力を持っていない精霊達のことですよ。』 「なるほど。」 『うふふ、それにしてもラティエル様は精霊に愛されてらっしゃいますね。かごを頂いているエルフ王族の方々でもないのにこの好かれよう。もしかしたら、イゾルデ様の愛し子かもしれませんね。』 「愛し子?なんだそれは?」 『愛し子とはその名の通りイゾルテ様の寵愛を受ける人間の事を指します。愛し子は精霊にひどく懐かれたり、契約する時に精霊の力を上げることもできるのですよ。』 「なるほど。説明ありがとう。」 そういった風に話をしていると、青色の魔力光が集まってきた。 『アリア様、ご帰還なされましたか。イゾルテ様のご容体が悪化しております。『癒歌』を。』 そう言いながらアリアにひざまづくのは、青色の目に髪をした男。 『わかりました。ラティエル様、皆様を読んできてもらえますか?』 「ああ、分かった。」 そうしてラティエルが皆を呼んできた。 『なんだァ?』 『イゾルテ様の容態が悪化しました。今すぐ治療に向かいますのでついてきて下さい。』 そうして一行は移動を始めた。 『あなた様が、今回の試練の合格者ですか。僕の名前はアクア。水の大精霊です。以後お見知り置きを。アリア様の部下をやっております。』 「アクアさん、よろしく。」 『よろしくお願いいたします。』 そうこう話しているうちに宮殿に着く。 駆けるアリア 『イゾルテ様!』 『おお、アリアか。すまないのじゃ。』 ベッドに横たわりながら布団を被る女性。 『いえ、お気になさらず、イゾルテ様。かけますからじっとして下さい。『癒歌』。』 イゾルテを淡い青い光が包み込む。 『ふぅ、いつもすまぬな、アリア。』 『いえ、王よ。いつでも言ってくださいね。』 『ところで、そこの女子。懐かしい気配じゃ。あれは、10数年前かのう。名は確か…。』 「リヴィウスです、イゾルテ様。」 『すまぬな、わしはもう歳でな、人の名前を覚えるのも出来ぬ体になってしまったのじゃ。それにしても良かった。また再び御主を見ることができるとは。権能が御主に渡っていたおかげで御主が生きていることは分かっていた。だがその力は強大じゃ。御主に我の権能を渡した結果御主が悪用されていないか心配でのう。今、幸せか?』 イゾルテは優しげな顔でリヴィウスに問いかけた。 「はい。幸せです、とっても!」 リヴィウスは満面の笑みでそれに応えた。彼女の綺麗な瞳には光るものがあった。 『そうか、それなら良かった。精霊王冥利に尽きるものじゃて。』 強大な力を授けただけでは人は救えない。人を助けようという心があっても、力がなければ救えない。両方を持っているものが人を救うことができるのだ。 【後書き】 前話、今話に続き、リヴィウス回となっていましたが、次から本格的に精霊界でラティエルが大暴れします。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード51開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 番外編『クリスマス』 【前書き】 この話は、ラティエルたちが精霊界へ向かう前の話です。(リゲル契約後) 【本文】 『メリークリスマス!!』 大きくて、飾りのついたもみの木を背景に、ラティエル、ミスト、ライム、リヴィウス、リゲル、アルノードが乾杯をする。全員、伝承に伝わるサンタクロースを模した衣装を着ている。 「プハーッ!」 「うんうん、飲み物が美味しいね。」 ごくごくっとエールを飲むラティエル。その横で、満面の笑みでラティエルを見るアルノード。 「いや、何普通のように混ざってるんすか?」 突っ込むミスト。 「え?ミストくんは僕がいるのは嫌かい?」 少し涙目で問うアルノード。 「いや、ウチはいいっすけど、お城での仕事とかは大丈夫なんっすか?」 「…。今夜は無礼講だ!みんな、飲もう飲もう!」 「誤魔化した…。」 呆れた目でミストが見る。 「知ってるかい?リヴィウス。クリスマスというのは大昔にいた神子の誕生日を祝うものらしいよ。」 「何かの文献で見た覚えがありますね。確か名は…」 『フィエルだぜ。』 「そう、フィエル。彼は神の子として魔の者を討ち滅ぼしていたことで有名だ。」 『あいつは強かったぜ、あたしはあんま仲良くなかったけどな。』 太古の時代を懐かしむリゲル。 「それにしてもこのおっきい木は誰が用意したんだ?」 「うちが魔術で生やして、飾りはリゲルとリヴィウスで買ってきたっす。女子組の勝利っすね!」 ドヤ顔のミスト。 「くっ。負けた…。」 手をつき俯くラティエル。 それを見てくつくつと笑うアルノード。 「騒がしいねぇ。でも最高の聖なる夜だね。」 リヴィウスとライムが一緒に本を読み、ラティエルとリヴィウスとリゲルがボードゲームをしている。 「おいおい、僕も入れてくれよ。みんなでしようか!」 アルノード、リヴィウス、ライムが乱入し、みんなで楽しく笑う。 (この日々がずっと続けばなぁ。) 幸せを噛み締めながら、心の底から強く思うラティエルだったのだ。 【後書き】 ミストのサンタ姿かわえぇだろうなぁ。リヴィウスも、リゲルも。可愛い女の子…。むなしっ。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード52開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 11.精霊界に巣食う魔 【前書き】 久しぶりの更新です。暇な時間がなく、すみません。 【本文】 『まずは、リゲルの願いを聞き、はるばる精霊界まできてくれたこと、感謝する。』 「そ、そんな、頭を上げてくださいっす!」 『いいや、主らに迷惑をかけているのは我じゃ。そこはけじめをつけんといかんからのう。』 「まず、問題についての説明をしてほしい。イゾルテ。」 『そうじゃな。遡るに、1年前ほどか。『魔』が精霊界に押し寄せてきおった。』 「『魔』?」 ラティエルが聞く。 『我もよくわからん。禍々しく、我の知る魔王の魔力にとても似ているため、『魔』と呼んでいる。』 「今は戦えないイゾルテならまだしも、ルクスとかなら倒せるんじゃないのか?」 『精霊界では精霊は全力を出せない。それはルクス達聖霊も同じじゃ。』 『簡単に言うと縛りってやつだ。俺たちはその縛りを科される代わりに、精霊界では不滅の権利を得る。』 「なるほど。」 「それをうちらに倒してほしいってことっすよね?」 『そうじゃな。』 「わかった。厳密にはどこにいるんだ?」 『通称『精霊の迷宮(インフェリアス)』。精霊界に一つしかない迷宮にいる。』 「じゃあ、少ししたら出発しようか。」 「了解っす。」 「わかったよ。」 「了解です。」 『了解だぜ!』 そうして、ラティエル達は移動を始めた。イゾルテが用意した馬車に、ラティエル一行とフムスとルクスが乗る。 『すみません、私も同行して皆様のサポートをしたいですが、イゾルテ様の護衛がいないため、私が残ります。』 「ああ、大丈夫だ。それより、イゾルテをよろしく頼む。」 申し訳なさそうに謝るアリアに気遣いをかけるラティエル。 『はい、お任せください!』 「ああ。」 馬車が走り出した。 『いいか、向こうは闇の魔力を持っている。闇と光はお互いに相性が悪い。俺は基本お前らのサポートに回る。頼んだぞ。要はお前らだ。ラティエルとリゲル。そんでミスト。』 指を指しながら話すルクス。 「なんでっすか?」 『リゲルは理解しているだろうが、残り2人の属性が相性が悪い。ライムは剣の力で他属性を扱えても、根本はエルザと一緒の光だ。そこのリヴィウスもな。得意は光だろう。つまり火力を出せるのはお前らってことだ。』 『先ほど、わしとの戦闘で見せてくれたような、あの盾を軽く撃ち破る魔術。ああいうのを放ってくれ。』 「なるほどな。最善を尽くす。」 そうこうしている暇に、迷宮に着く一向。 『奴がいるのは最下層。奴を倒す前に、ダンジョンアタックを始める。』 「『おう!』」 【後書き】 最後のおう!はみんな言ってます。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード53開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 12.いざ、ダンジョンへ 【本文】 『ダンジョンアタック、開始すんぞ』 こうして、ラティエル達はダンジョンへと足を踏み入れた。 「ここは何下層あるんだ?」 『30階層まである。』 「了解だ。『空気顕現』『偶像召喚 王狼スコル』。」 ラティエルの詠唱により、一匹の巨大な狼がラティエルの隣に現れた。偶像召喚。それはスタンピード後にラティエルがライムと共に身に付けた新しい空気の技術(アーツ)であり、御伽話に伝わる神獣を召喚するという力である。 『王狼か。王の資格を持つ狼。良いもん持ってんじゃねえか。』 『ルクス、ワシらも戦闘準備を。』 『わぁってるよ、ジジイ。『万照』。』 ルクスの詠唱により、この場にいる人間全員が照らされた。 「これは、支援っすか?」 『ああ。この支援を受けた人間の膂力、魔力を底上げする。』 『『大地の槌』。』 フムスが詠唱したその時、フムスの目の前に土色のハンマーが生み出された。 「立派な武器っすね。」 『おい、お前ェら、そろそろくんぞ。』 ルクスがそう言った瞬間、数匹のトカゲが現れた。 「あれは…ダンジョンリザードっすか…」 『ああ。闇の魔力を纏って通常よりパワーアップしているぞ。気ぃ付けろ。』 「スコル。『敵を倒せ』。」 ラティエルの号令により、スコルがリザードに向かって突進し、噛み付く。 「『蒼帝剣ラピス』。『蒼斬』。」 ルクストの戦いからさらに研ぎ澄まされたライムの斬撃は容易くリザードを切り裂いた。 「うちの魔術をプレゼントするっすよ!『大いなる風(エル・ウィンド)』」 ミストの放った魔力密度の高い風がリザードを切り裂いていく。 『へェ。やるじゃねえか、お前ェら。』 ルクスが称賛する。 「まっ、うちらにかかれば余裕っすね!ね、ラティエルさん。」 「ああ、この程度ならまだ問題ないぞ。」 『ふはは、頼もしいの。』 「よし、じゃあ進もうか。リヴィウス、索敵を頼めるかな?」 『リヴィウス、索敵すんぞ。』 「はい!『光よ(ルクス)』『この先を視よ』」 『『霊視(ライトスコープ)』』 『ルクスはガサツな見た目をしているが、実はあの見た目で補助魔術の方が得意なんじゃよ。』 「ほへー、意外っすね!」 『魔術も繊細でのう。リゲルも繊細さでは負けておらんがの。』 「なるほど、うちも魔術繊細に扱ってるつもりっすけど、まだまだっすね。」 『いや、ミスト殿も十分繊細じゃよ。精霊と人間では魔術の感覚は違うからのう。その話で言うと、リヴィウス殿の魔術は、精霊の魔術に似ている。』 「なるほど?それはなんでっすか?」 『リヴィウス殿の魔術は精霊の力を借りることで行使する魔術じゃ。精霊の魔術を人間が使えるようにした、詠唱が短くても強力になるようにできている。まあ、扱い方は難しいが、その点、リヴィウス殿は上手くあの魔術を手懐けておる。』 「ふーん、難しそうっすね。」 『オィ!駄弁ってないで早く来い!階段見つけたぞ!』 「了解っす!」 こうして一行は次の階層へと足を進めた。 【後書き】 ミストの魔法名を書いてて、スマ◯ラSPの某魔法使いくんを連想してしまったのはここだけの秘密。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード54開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 13.VS魔物の王 【前書き】 今日の昼間に、12.いざ、ダンジョンへ を更新しています。まだそっちを読んでいない人はそちらを先に読んでください。 【本文】 『うっし、進むぞ!』 「ああ。それにしてもダンジョンに入るのは初めてだ。」 「えっ!初めてのダンジョンが精霊界のダンジョンとかどうなってんすか?」 ミストが驚きながら質問する。 「まあ、ダンジョンに潜る機会がなかったからな。」 『オィ!準備しろっつってんだろォ!』 怒鳴るルクス。 「はーいっす。」 「ルクスの言う通り、準備が必要そうだよ。」 ライムが言った瞬間、ゴゴゴ…と、地響きが聞こえてきた。 『おいおいおいおい、チッ!9階層ぐれェ大したことねェと思ったらァそういうことかよ。』 ルクスがイラつきながら呟く。 「どういうことなんだ?」 『準備しろ。魔物の王が来るぞ。』 ルクスがラティエルに言った瞬間、砂煙を立てながらダンジョンの床から黒色のドラゴンが出てきた。 「黒色!本当に魔物の頂点じゃないか。」 ドラゴン。それは魔物の中でも最上位に至る怪物。強き力を持つドラゴンは知性を持つ。順番に、赤→緑→青→黄→白→灰→黒と、右に行くごとに強くなていく。王都で起こったスタンピードのボスである黒龍の同種個体である魔物が今ラティエル達の目の前に立った。 「額に、傷跡。まさか!『黒き暴龍』⁉︎」 ライムが戦慄を覚えながら言う。『黒き暴龍』。それは、かつて『龍滅剣ドラグレイヴ』を腰に携えた英雄が戦い、相打ちになった伝説の中江もち(ネームド)のドラゴン。 「相打ちになったはず。まさか、まだ生きていたって言うのか?」 『ア、ア。』 喋り出す龍。 「しゃべった⁉︎おぉ、すげぇ!今度孤児院の院長にしゃべる龍がいたって自慢しに行かないと!」 呑気にラティエルが目を輝かせながら言う。 『アァ、愚かな人間。貴様の名は?』 「俺?俺の名前はラティエル。冒険者だ。」 『ラティエルか、貴様は我に立ち向かうか?』 「お前が襲いかかってきたらな。」 『ガハハ!面白い。貴様のそれは蛮勇か?それとも本物の勇気か?』 「それを決めるのは俺じゃない。お前だろう?」 『ガハハハハ!しばらく見ぬ大馬鹿者だ!我と戦ったあの面白い人間に似ているなぁ!右にいるのは光と土の聖霊か。精霊界ではお主らは敵ではない。左には、エルフが2人。もう1人は…、時術師か。なんとも変なメンツよのう!』 豪快に笑う龍。 『ラティエル。癪だが、あいつの言う通り俺らはここじゃあ、あいつにはおよばねぇ。ぶん殴れ。』 「ああ。まかせろ。お前は俺の敵か?」 『良いぞラティエル。我が真名はノワール。色持ちの龍の頂点である。我はお前の道を阻もうではないか!』 グオオオオオン!そこら中に響き渡る龍の咆哮。かくしてここに、黒き暴龍ノワールとラティエル達の激闘が始まった。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード55開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 14.黒龍との対峙 【前書き】 昨日の昼と夜に更新していますので、そちらを読んでいない方はそちらを。 【本文】 グオオオオン! そこら中にノワールの咆哮が響き渡った。 「なんていう覇気なんですか…。」 「リヴィウス、支援を。」 「ギルマス!」 ラティエルがライムを呼ぶ。 「ああ!ミストは火力が高い魔術を。僕とラティエルが前に出る。リヴィウスはサポート!」 「了解!」「了解っす!」「了解です!」 3人が一斉に返事をする。 「『空気顕現』『環境召喚 雷神之夜』。」 ラティエルの詠唱により、雷神の雷が降り続ける夜が、ダンジョン内に顕現した。 『ガハハハハ!良い術だ!我も返そう!『黒龍の息(ブラックブレス)』!』 「遅延します!『遅延(ディレイ)』。」 ノワールの口から放たれるあらゆるものを消滅させる闇の息。それをリヴィウスの魔術がスピードを落とす。 「『空気』『壁となれ』」 ラティエルの詠唱により、黒龍の息を阻む空気の壁が作られる。 『良い判断だ。しかし…』 「まずい、ラティエル、下がれ!」 ライムが指示を出す。 咄嗟に下がったラティエル。すると、空気の壁を息が侵食していく。 『良い眼だ。エルフ。我が息は全てを侵食し、無に帰す。生半可な壁に、我が息を阻めると思うたか!全力で来い、ラティエル!』 雷をその身に受けながらも未だ無傷。この龍、まさに規格外。 「全力だっつうの!リゲル、ミストの補助!」 『おう!』 「『空気顕現』『龍滅剣ドラグレイヴ』!」 一振りの剣を顕現させ、前へ出るラティエル。 『ミスト!術式立てろ!』 「わかったっす!『森人の魔法』!これで時間を稼ぐっす。」 魔法を使い、ノワールの体に刺さる木々。 『魔法か。久しく味わっていない痛み。良いな。』 「『神剣召喚』!『断龍剣』!」 ライムの渾身の斬撃。この斬撃を放ち、ライムは気絶する。 『がっ! 鋭い一撃だ。我が避けていなければ死んでいたな。』 「『増殖』。『貫け』!」 ラティエルの詠唱により、剣が小さくなり、増殖する。そして、その無数の剣がノワールへと襲いかかる。 『その剣ィ!あの馬鹿の剣かぁ!』 ノワールが血相を変える。 「わかったよ、ノワール。お前は俺たちを見ていない。」 『あァ?何を言っている!我が対峙するのは貴様らだ。』 「違うんだよ。お前が見ているのは結局、お前と戦った、英雄だ。お前は英雄に執着しているんだ!」 『えぇい!黙れ、黙れ、黙れぇェェェ!!』 激怒するノワール。 『ラティエル!貴様に、我の何がわかる!』 「俺は、人のことがよくわからないけど、お前の気持ちはわかる。寂しいんだな。この攻撃にも気づかない。」 『なっ。』 その瞬間一筋の強力な風がノワールを貫く。 「『神風の御使(ラーファルエル)』っす!」 リゲルの補助によりパワーアップしたミストの最高火力の魔術が、ノワールを貫いた。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード56開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 15.龍との対話。 【前書き】 今日の昼に第4章14話を更新していますので、まだそちらを読んでいない方はそちらを。 【本文】 『がっ。』 ミストの一撃がノワールを貫いた。 「ノワール。お前が見ているものが何か。自覚できたか?」 『ははっ。ああ、貴様に言われて気づいたのは癪だが、気づくことができたよ。ラティエル。貴様は優しすぎる。我は貴様の道を阻もうとしたんだぞ。』 「それでも、無情に殺すのは違う気がした。意思もなく、ただ人間を殺そうとする魔物じゃないだろ。お前は。話せる、そう思ったから。」 ラティエルは悲しげな表情でノワールに話しかける。 『ははっ。聞いてくれるか?』 「ああ。」 そして、一匹の孤独な黒龍は話し始めた。 『あれはまだ我があの馬鹿と会う前の話だ。』 『おい!ノワール!』 『なんだ?』 一匹の大きな龍が小さなノワールに話しかける。 『龍の里から出ていけ!お前のような、幼体なのにそこまでの力を持つ忌み子はいらん!』 『なんでおまえにきめられなきゃいけない!これはぼくのもんだいだ!』 ノワールは幼い頃から強大な力を持つため、龍の里のみんなに恐れられていました。唯一話を聞いてくれたのは、魔物というカテゴリーから逸脱した最強の龍にして、龍の里の長。『神龍ティアマト』だけだった。 『ちょうろうもぼくをとおざける?』 『確かにお前は強い力を持っている。でも、力とはその使い方次第なんだ。お前がその力をどう使うかはお前次第だよ。』 その言葉はずっとノワールの心に残り続けた。 それから、100年が経った。ノワールは成長し、里を飛び出した。 『僕は旅に出るよ。長老、いい生き方を見つけてくる。』 そう決心して飛び出した矢先にあったのは、初めて見る小さな生物。人間だった。 「ヒ!ヒエェー!龍だ!本物⁉︎かっこいいなぁ!これが龍か!」 『君は僕を怖がらないのかい?』 「えっ!しゃべった?すごい!喋れるんだね!」 『変なやつ…。』 「君!名前とかあるの?君って呼びづらいじゃないか!」 『僕の名前はノワール。』 「ノワールか!いい名前だね!」 『そ、そう?』 「うん!めっちゃいい!」 そう親指を立てながら微笑む少年。 『君の名前は?』 「ん?俺?俺の名前はドラグレイヴ!よろしくな、ノワール!」 『ドラグレイヴ。いい名前だね!』 それが、遠くない未来、ノワールを討伐する、『龍滅剣ドラグレイヴ』の使い手、ドラグレイヴとノワールの出会いだった。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード57開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 16.龍の過去 【前書き】 3話、ノワール関係の話が続きました。次も、半分ノワールの話の予定です。 【本文】 『ドラグレイヴ。人間はみんな君のように龍に友好的なのかい?』 「いや?多分だけど俺のような人間は珍しいんじゃないかな。わからないけど。」 『ドラグレイヴは優しいんだね。』 「そう?俺は龍滅の家系なんだ。」 『龍滅?』 「うん。子供の頃から龍は敵って習ってきて、龍のことを知るにつれて、龍が本当に敵なのかっていう疑問を感じてきた。だから、俺は龍がどんな存在なのかを調べる旅に出てるんだ。」 『そうか。ちなみにその剣は?ちょっと苦手な感じがする。』 「ん?この剣?この剣の銘は『龍滅剣ドラグレイヴ』。俺の名前と同じだろ?俺はこの剣への適性が高かったから、同じ名前をつけられたんだ。」 『ドラグレイヴは天才なんだね。』 「そう?この剣には形態変化の能力があるんだけど、まだまだ全然使えないんだ。」 『ふーん。確かに若造って言ってるもんねー。』 「うんうん。え?」 ドラグレイヴが口を大きく開く。 「もしかして、ノワールは剣の声が聞こえるのかい!?」 『え、うん。お前のような若造にはまだまだ早いって。言ってるよ』 「す、すっげえ!剣の声は熟練の剣士にしか聞こえないって言う話なのに!ノワールは剣の才能があるのかもな!」 『え?そう?』 そうして、2人は次第に仲良くなり、2人が出会った山で一緒に暮らした。しかし、その平穏も瞬く間に壊れてしまう。 「龍滅の家系の後継者、ドラグレイヴよ。国の敵である、デスマウンテンに住む黒龍を討伐せよ。」 ドラグレイヴは、国王に呼び出され、命令を受けた。 「お言葉ですが陛下。俺は龍が悪い存在だとは思えません。確かに害をなす龍はいるけど、それは一部だ!あの黒龍は、ノワールはそんなことをする奴には俺は思えません!」 「黙れ!貴様の使命は竜を滅することであろう!良い龍?そんなものいたとしても、いつ牙を我々に向けるかわからないではないか!我々は怖いのだ!国の近くにいるお巨大な黒龍の存在が!」 「それでも、俺は龍を信じたい!あいつは俺の友達だから!」 「そのような青臭い理論がまかり通るとでも思っているのか!大人しくヤツを殺せぇ!」 「それでも、、、」 「お前が言うことを聞かなければお前の家族を殺す。それでも聞けぬか?」 こうして、家族を人質にとられたドラグレイヴはノワールを討伐しに行き、相討ちという体を取るために、手を抜き戦いノワールに事情を説明した。 「家族が人質にとられている。ここはどうかやられたふりをしてくれ。」 そう言って戦い始めた2人は、やがて決着が着き、2人は決別し、ドラグレイヴはそれからしばらく経つと、病を患い、死に至った。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード58開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 17.幸せな龍と主人公 【前書き】 今日の昼に16話を投稿しています。まだ見てない方はそちらを先に! 【本文】 そうして、ノワールは話を終えた。 『これが我の過去だ。理解できたか?ラティエル。』 「ああ、痛いほど。」 『我は、ドラグレイヴと別れた後、傷を癒すため迷宮に入った。そこから、迷宮に来た多くの冒険者を殺した。』 語るノワール。 『我は生き方を探すべきだったのに、探さず目の前にある楽な生き方を選び、間違えた。』 「ああ。その通りだ。だから俺は、俺たちはお前を倒して、その生き方を正させた。」 『ははっ、やっと見つけれたんだなあ。大勢に看取られて死ぬなんて、理想じゃないか。』 安らかな顔で眠るノワール。ここに、魔物の王であり、誇り高き黒龍ノワールと、ラティエル一行の戦いが決着した。負けたにも関わらず、ノワールの顔にはかつてドラグレイヴと暮らしていた頃の安らぎが宿っていた。 「ノワール。俺たちは、お前を殺した分まで生きる。見といてくれ。」 『うん。ラティエル。死なないで。』 少し、ドラグレイヴと暮らしている時からあった幼さが出るノワール。 かつて、龍にも恐れられ、優しき青年に出会った黒龍は、その青年に似た冒険者に看取られた。確信して言える。今最も幸せな龍はノワールである。それを否定することはラティエル達が許さない。 『うし。お前ェら。感傷に浸ってる場合じゃねぇ、先に進むぞ。』 「ああ、みんな、行こう。」 こうして一行はまた進み始める。 「『空気顕現』『星撃の杖』。『星撃』!」 「『風よ(ヴェントス』」 「『風神の風撃』っす!」 「『金帝剣ヤマブキ』」 ラティエルが星の一撃を放ち、リヴィウスが風で敵を切り裂き、ミストが風神の一撃の如き攻撃を放ち、ライムが、雷の如き速さで敵を切り裂いた。 『おいおィ、やるじゃねェかァ。おい、ラティエル!』 「なんだ?」 『バランスの取れたいいパーティじゃねェかァ。』 「そうか?ありがとう」 『その調子で頼むぜ。お前ェらが頼りだ。』 こうしてラティエル達は進んで行った。 グギ、グギ、グギグギグギィ! ^*$@(@$(*$@(**%*^&! 異常な機械音と『何か』を放ちながらドシン!ドシン!と歩くゴーレム。 「『古代の巨人(エンシェントゴーレム)』が確認できるだけで20体ほどか。」 古代の巨人。それは神話の時代に作られた遺物。討伐レートは自然災害級。 『お前ェら、ここ超えたらもう『魔』は近いぞ。気張れよ!』 「おう!」 かくして、ここに過去の遺物とラティエル達の戦いが始まった。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード59開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 18.古代の巨人殲滅戦 【前書き】 昨日サボりました。 【本文】 突如現れたゴーレムの軍隊と対峙するラティエル達。 『気張れよ!ここ越えんぞォ!』 ルクスが吠える。 「『白帝剣オルブライト』!『白の瞬斬(アルブススラッシュ)』」 ライムの通った道にはゴーレムの残骸とそれを斬るための白い軌跡が残る。 「『空気顕現』『武装召喚 王剣レークス』!」 ラティエルが王の力を持つ剣を顕現させ、ーー斬る。 ゴーレムの胴体が崩れ落ちる。 そこに残るのは物言わぬ巨人の残骸だけ。 「私だって。支援だけじゃないんですよ。『炎よ(フランマ)』『爆発せよ(エクス)』。」 戦場に小さな炎が飛び散り、それが一つ一つ大爆発を起こして行く。 無論、味方に当たらないように調節されている。リヴィウスのその精密な魔術は彼女の敵を焼き尽くす。 「『天の業風(カエルムスピリトゥス)』。『石の息吹(ラピスアウラ)』!」 神の怒りを代弁するような凄まじい風を放ち、即座に対象を石化させる風を放つミスト。 ゴーレムが吹き飛び、石と化す。 「うちだって、ラティエルさんに置いてかれないように頑張ってるんすよぉ!『天の突風(カエルムフラートゥス)』!」 天から吹きし強大な突風がゴーレム達を襲う。ミストの怒涛の風撃にゴーレム達は怯む。 そこに肉薄するのは、強大な槌を持ったフムスだった。 ガガガガガガッ! 急に現れた巨大な存在に、怯えながら、それに対抗して攻撃を放つゴーレム達。 ギオオオン! ゴーレムの頭部が光を帯びる。 魔力レーザーが放たれる――その瞬間。 「させると思うか?『空気』『壁となれ』」 光線は、空気の壁に阻まれ、四散した。 『ナイスじゃ!ラティエル殿!』 フムスが一歩、前に出る。 槌を握る手に、怒りが宿る。 精霊界を踏みにじられた記憶が、胸を焼いた。 『制限解放(フィルターブレイク)』『怒霊の鉄槌』ィ!』 その一撃に、躊躇はなかった。 精霊界を踏みにじる者への、純粋な怒りだけがあった。 ドゴォォォン!! 地面が沈み、ゴーレムの大群が押し潰される。 『ヘッ……やるじゃねえか、ジジィ』 ルクスが笑い、光を纏う。 『制限解放(フィルターブレイク)』『光霊の穿光』!』 次の瞬間、光そのものが戦場を貫いた。。 忘れてはいけない。全力を出した彼は神すら視界にとらえる存在だ。 ギィィィン! 一矢報いようとゴーレムが体を光らせる。 「させないよ。『水帝剣アイシクル』。『凍』。」 ライムの振った剣により自爆しようとしたゴーレム達が凍る。 そして、ゴーレム達が崩れ落ちる。 瓦礫の山を残し、戦場は静寂を取り戻した。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード60開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 18.アリガトウ 【前書き】 ゴーレム回です。 【本文】 古代の巨人side 我々巨人は、世界の創造者より命令を受けている。 ――世界破壊対象を殲滅せよ。 命令は絶対であり、疑義は存在しない。 我々は創造者の意思を実行するための機構である。 だが、今我々の前方に、小さな人間を視認した。 解析開始。 ――理解不能。 当該存在は、世界破壊対象に該当せず、 かつ、世界を守護する存在とも定義されていない。 命令と照合不可。 優先度衝突。 疑問発生。 創造者の意思を最も忠実に実行する行動は、何か。 未定義存在。殲滅を開始するーー。 対象、主と同じ力を持ちし可能性。主の力を取り戻せ。 なぜ、我々は、斬られている? なぜ、我々は小さな人間如きに吹き飛ばされている? 理解不能。理解不能。適応不可。 なぜ、“空気が壁になっている?“ なぜ、なぜ、なぜ。疑問多発生。 せめて、自爆を… なぜ、凍っている? 命令は失敗していない。まず、主の力を持っている時点で気づくべきだった。あれは主なのだ。我々の仕事を終わらせにきたのだ。 その瞬間少しだけ、ゴーレム達に感情が芽生えた。 ーーアリガトウ。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード61開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 19.魔への恐怖とラティエル。 【本文】 一行は対峙する。闇に。 『よォ、久しぶりだなァ。俺らの精霊界を返してもらうぜェ!』 “……返す?誰のものでもないだろ。我のものでもないし、お前達のものでもない。“ 『あァん?』 “奪われて嘆くのはお前達の勝手だ。我は関係ないし、僕も関係ない。“ 「意識が混同してる?こんな魔物初めて見たっす。」 「まず、俺が牽制をかける。『空気顕現』『神の手』!」 天井から、巨大な手が振り、魔を直撃する。その地面には大きな手形がめり込んでいた。土煙が晴れると、魔は無傷だった。 “痛い、痛い。早く殺してくれ。もう疲れたんだ。楽にしてくれ。頼む、頼む。もう、無理なんだ。誰も助けてくれないんだ。“ 「なんすか、頭にノイズが響く。」 ラティエルには聞こえる。この声が。ミストには聞こえない。ラティエル以外には聞こえない。 「……。なぁ、ミスト。」 「なんっすか?」 「俺は、何を見てきた?何を守ってきたんだ?」 そう問うラティエルの顔は引き攣っていた。 「え?」 「今、頭に響いてきた。救ってくれって声が。消してくれって声が。」 「でも、痛いって声も聞こえてきた。俺は何をするべきなんだ?」 「ラティエルさん?」 そう口早に語るラティエルの顔には恐怖一色があった。 忘れてはいけない。ラティエルは子供である。幼少期、親の愛情を知らずに育ったため、彼は感情が希薄になってしまっている。だからこそ、敵を敵と断定して戦ってこれた。だが、今そこに疑問が生じる。 ミストは、いつもより少しだけ声を落とした。 冗談も、軽口も出てこない。 「それ、たぶん――魔の声っす」 「魔は、人の負の感情が集まったもんだって、言ってましたよね」 ラティエルは答えない。 ただ、視線を闇の奥に向けたまま、剣を握る指に力が入っていた。それでも、ラティエルは動かなかった。いや、動けなかった。 “殺せ。終わらせろ。救え。消してくれ。” 声が、重なっている。 誰のものでもないはずなのに、確かに“誰か”の声だった。 「……守るって、なんだ?俺の行動に意味なんてあったのか?」 ぽつりと零れた言葉は、誰に向けたものでもなかった。 これまでラティエルは、迷わなかった。 敵は敵だった。倒すべき存在だった。 空気は応え、力は形になり、世界はそれを許していた。 ――だが、今は違う。 空気が、ざわめいている。 拒絶も、肯定もせず、ただ揺れている。 「ラティエルさん」 ミストは一歩、前に出る。 風を起こさない。 ただ、そこに立つ。 「無理に答え出さなくていいっす」 「でも……聞こえてるなら、見えてるなら」 「無視しちゃいけない気がするっす」 「それをどうするかはラティエルさんが決めるべきだと思うっす。」 ラティエルは、ゆっくりと息を吸った。 空気が、肺に満ちる感覚が、いつもと違う。 それは“力”じゃない。 世界そのものが、問いかけてきている感覚だった。 「……俺は」 剣を消し、手を前に上げる。 「俺は、空気に干渉する」 その瞬間、世界が一瞬、息を止めた。 【後書き】 タイトル回収! 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード62開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 20.ミストの道標 【本文】 ラティエルが詠唱を始めた。 「俺は、空気に干渉する。『空気(プネウマ)』」 世界が一瞬、呼吸を止めた。 闇が、動きを止めた。 ミストが風を放つ。 風が、止まった。 「え?」 自分で起こした風なのに、行き場を失い、宙で解けていく。 前を見る。ラティエルが、そこに立っている。 剣を振るわけでもない。叫びもしない。 ただ、そこに在るだけ。 なのに、魔の攻撃が、闇がーー止まっている。 うちの風は吹き飛ばすためのものだった。砕き、壊すための力だった。 でも、ラティエルさんの“空気“は違う。 守るわけでも、攻撃するわけでもない。 ーー最初からそこにあったみたいに。 その事実に気づいた瞬間、少しだけ胸が痛くなった。 置いてかれないように、必死で、必死で走ってた。 けどーー。 この人は、うちらが壊さないように、ずっと前からここにいたんだ。うちは見えてないだけだった。 風を行使しようとする体が、わずかに震える。 追いつこうとしてたんじゃない。 うちは、ラティエルさんと同じ場所に立ちたいだけだったんだ。 なら。うちが放つべき風は。 人のことを思い行使する魔術は、どんな魔術よりも強い力を持つ。 魔術は、思いの力だーー 「そこに在れ。『原初の風(プロト・アネモス)』。」 ミストの放つ風は、どこか落ち着く風だった。少し懐かしいような…。 『オィ、この風は…。原初の?いや、どこか違う…。』 ルクスが何かに気がついたような顔で呟く。 「ラティエルさん、動きを。」 「ああ。」 ラティエルが、再び闇を止める。また、魔も動きを失う。 「もう楽になっていいんす。」 「ーー今までお疲れ様でした。『散れ』。」 ミストの詠唱により、魔が解けていく。 “ああ、長かった。ありがとう、アリガトウ、ありがとウ。“ 魔が呟く。 魔が霧散する。淡々とした決着だけど、どこか落ち着く決着がラティエル達を待っていた。 『おいおいおいオィ!お前ェらやったじゃねェか!おい!』 戦いを終え、どこか興奮しているルクス。 『おいジジィ!俺たちの精霊界が、戻ってきたぞ!』 『ああ。本当に、長かった。たかが半年、だが長かった。礼を言う。イゾルテ様のところへ向かおうか。』 それに応えるものは誰もいない。 「ちょっと待ってくれ。今は、弔いたい。」 『そうか。悪ぃ。』 ルクスは何も言わず、その場を静かに離れた。 【後書き】 長かった精霊界編もそろそろ終わりそう。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード63開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 21.エピローグ 【前書き】 4章ラスト。ここまでありがとうございました。 【本文】 『礼を言う。本当に、本当にありがとう。』 イゾルテが頭を下げる。 『皆様のおかげで、精霊界は救われました。精霊一同を代表して感謝を。』 「俺たちも危なかった。ルクスやフムスがいないと危ないシーンがいくつもあった。」 『ーールクスから聞いた。魔により、お主が精神的に危うくなったと。我の配慮が足りてなかった。すまぬのう。』 「いいんだ。俺も大事なところを見直せたし。 “空気“ を感じれた。」 穏やかな表情でラティエルが言う。 「ところで、ルクス。」 ライムがルクスを見る。 『あァ。約束があったなァ。だが、ここでは話せねェ。お前ェらが知るべきは今じゃねェ。』 「話と違うくないか?」 『まァ、待て待て。そう焦るなァ。リゲル、言いたいことあんだろォ。』 『ああ。ラティエルの空気って言葉。イカロスも同じことを言ってたんだ。』 「え?」 『それに、ミストの風。イカロスの風に似てた、ような気がする。』 「そこは曖昧なんっすね。」 『ごめん、何せ、もう1500年以上経ってるから。』 『うっし、行き先は決まったな?あの剣バカの作った国、神聖クラウゼル皇国が次の行き先だ。』 ルクスが締める。 『なるほど。あのエルフの女子。ーーそう言うことか。』 イゾルテが少し考えて呟く。 『おい、イゾルテ!』 『ーーん?なんじゃ?』 考え込んでいたため、少し返事が遅れる。 『俺ァこいつについてくぞ。』 そうライムを指差す。 『数少ねェ俺の光の子孫だ。ってことで、ライム。俺と契約しろ。』 「え、いや、子孫って話なら、アルノード殿が、いるじゃないか。」 『アルノードォ?あァあのガキか。あいつはダメだ、あいつも精霊と契約してやがるからな。』 「え、そうなのかい?」 『あァだから、消去法的にお前ェだ。幸い神剣召喚も持ってるしな。ほら、血滴らせ。』 そう言いながら魔術式を立てるルクス。 「うーん、ーーよし、わかった。契約しよう。」 『うっし、そうこなくっちゃな。『汝の名は?』』 「『ライム・トラエル』」 『『光の聖霊ルクスの名の下に。ライム・トラエルとの契約を結ぶ。』』 強大な光が精霊王の一室に広がる。 パアアァ! 「契約、完了かな?」 『ああ、これからよろしくな、ライム。』 こうして一行は、新たにライムと契約した光の聖霊ルクスを伴い、精霊界を旅立った。 『本当にありがとう。ラティエル、お主に精霊王の寵愛を授ける。契約はできんが、このような簡単なことなら。お主の旅路に祝福を。』 そう言ってイゾルテがラティエルの頬にキスをする。 「『あぁ!』」 ミストとリゲルがそれを見て驚く。 精霊界を救った英雄達とは思えないほど、精霊王の間には、のどかな風が流れていた。 【後書き】 5章へ続く。5章は神聖クラウゼル皇国での話になります。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード64開始 ------------------------- 【第5章】 5章 神聖クラウゼル皇国 【エピソードタイトル】 1.いざ、神聖クラウゼル皇国へ。 【前書き】 5章開始。 【本文】 ……静かだ。 精霊界特有のざわめきも、 エルフの森にあるはずの湿った空気もない。 代わりにあるのは、澄みきった風と、 どこか張り詰めた気配だった。 精霊界を出た一行は、風を感じていた。 ーー見上げると、剣の紋章が刻まれた、そびえ立つ巨大な城壁があった。 「……ここ、違うっす。」 ミストが足元の地面に視線を落とす。 「精霊界の門って、エルフの国にあったはずっすよね」 ミストが問う。 『そりゃそうだ。お前ェらは世界に触れた。』 ルクスが一拍置く。 『ーー精霊界から戻ったんじゃねぇ。世界に選ばれたんだァ。』 ルクスの発言の直後、静かな風がラティエル達を撫でる。 ーーこの風に自分は呼ばれた。ミストはそう感じた。 『ここは神聖クラウゼル皇国。剣バカこと、『風の原初』イカロス・クラウゼルが作った国だァ。』 『ってことで、俺とリゲルは、戦いの時以外は隠れておく。』 「なんでだ?」 『この国は聖霊を神格化している。まぁ、見りゃわかる。ここは風が選んだ国だ。お前ェらにとっては居心地がいいだろうよ。特にリゲル。お前は絶対見つかるな。』 『わーってるよ。』 『聞きたいことがありゃ聞け。わかる範囲は答えてやるよォ。』 そう言ってライムの元にルクスは引っ込んだ。 『そんじゃあ、アタシも。』 そう言ってライムの懐に引っ込むリゲル。 「チッ!ずるいっすねぇ!」 怒るミスト。 「それじゃあ、進もうか。」 「はーい。」 城壁の真ん中にある巨大な門の前に来た一行。 「入国者か。この国にきたことはあるか?」 門の警備をする兵士が聞く。 「初めまして。この国にはきたことはないな。」 「後ろの奴らもか?」 「うん、ないよ。」 「ないっすね。」 「ないですね。」 「だ、そうだ。」 「ふむ。新入国者か。階級は、、、おっと、知らないんだったな。すまない。属性と職業を。」 「俺とこのミストは風。後ろの、ギル、、おっと、ライムとリヴィウスは光だ。」 「ほう。いい属性を持っているな。職業は?」 メモを取りながら兵士が言う。 「俺とミストとライムは冒険者。リヴィウスはそのギルドの受付嬢だ。」 「階級は?」 「俺はA級。ミストとライムはS級だ。」 「おいおい。とんだ大物だな。ライムっていうと、あの『神剣』か?」 「知っているのか?」 「ああ。もちろん。大物だぜ?前のエスフォートの大戦の英雄と言ったら、『神剣』だ。」 「へー。やっぱギル、、ライムってすごいんだな。」 「うっし、書き取り完了だ。不審なものは持ってなさそうだし、ギルドカードを一応見せてくれ。」 「ああ。」 ギルドカードを見せる面々。 「うおっ、ほんとにSじゃねえか。」 面食らう兵士。 「悪ぃな、疑ってたわけじゃないんだ、ビビっただけだ。ようこそクラウゼル皇国へ。ここは風の国。風魔術師は優遇されるぜぇ?」 「それにしても、相当な悪人ヅラだな。」 「あぁ?まぁ、よく言われる。これもバイトだしな。これでも一応S級冒険者だ。これ、許可証。」 そう言いながら許可証を渡してくる兵士。 「名前は?」 「ん?俺の?」 ラティエルが頷く。 「俺は、ガルド・ゼファ。風魔術師だ。 堅苦しいのは嫌いだ。気楽に行こうぜ。よろしくな〜。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード65開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 2.風が止まった国 【本文】 ここは神聖クラウゼル皇国。風を愛しすぎたために、風が止まっている国。 城壁の上では旗が風を待つように止まっていた。 「ようこそ。クラウゼルへ。」 ガレンが微笑む。 「改めて、俺の名前はラティエル。よろしくな。」 「そうだ、お前ら、来るの初めてなら、俺がこの街を案内するぜ?」 「いきたいところあったら言っていいんだぜ?」 「ーー。」 4人は、短く視線を交わす。 「じゃあ、よろしく。」 手を差し出すラティエル。 「ああ。任せな!」 ガッチリと手を握り合う2人。 「2人初対面なのに仲いいっすねぇ。」 「そうだね。同じ風魔術使いだし。」 「ギルマス。 あっちの方に大きい教会があります。 そこで話を聞くのは…。」 「うん。そうしようか。」 ライムが小さく頷く。 「ガレン殿。大きな教会とかってあったりするかな?」 「ん?教会ぃ? あぁ、あるぜ。向こうのほうにでっけえのがな。」 そう言ってリヴィウスが行っていた方向を指差すガレン。 「じゃあそこへ連れて行ってもらったりできるかな?」 「ああ、もちろんいいぜ。 ついてきな。」 ガレンの案内に従って歩いていく一行。 「風があんまり感じれないっす。」 「おっと、ミストって言ったか?それ以上は御法度だぜ。 忠告だ。ここで、風のことを悪く言わない方がいい。禁句だからな。」 ガレンが注意し、小声で4人に話す。 「まぁ、ここだけの話、俺もそう思ってる。城壁の上見ろよ。旗が動いてねぇ。……それに最近は魔素の流れも悪い。」 「魔素を感じれるのかい?すごいな。」 「まあいわゆる、特異体質ってやつでな。魔力に敏感なわけよ。」 「少し大変だろう?魔素に触れられているような感覚になる。」 「まあな。って、なんでわかんだよ。」 「ああ、知り合いに魔力過敏症を患っている人がいてね。彼から詳しく詳細を聞いたんだ。君もそうだろう?」 「ああ。この病気は治らねえ。付き合ってくしかないんだとよ。」 少し悲しげに語るガレン。 「おっと、ついたぜ。ここがクラウゼル1でっかい教会。クラウゼル教会だ。」 「案内ありがとう。」 「ああ、困ったらこれをそこらの兵士に見せろ。そしたら、大体の話は聞いてくれる。」 そう、渡したのは何かの紙だった。 「渡すのはお前が2人目だ。大事に使えよ。じゃあ。また会えたらな。」 そう言ってガレンは路地裏の方へと消えていった。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード66開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 3.教会での一幕 【本文】 「じゃあ入るか。」 そう言って、教会へ足を踏み入れた4人。 「こんにちは。おや、初めて見る顔ですね。この国にお住まいの方ですか?」 「いや、違うぞ。」 「そうですか。教会へは…何をお求めで?」 「ちょっと知りたいことがあってな。」 「そうですか。では何か質問があったら聞いてください。」 そう、細めで優男そうな神官姿の男が言う。 「じゃあ、あなたの名前。」 「私の名前ですか?私の名前はヴァルド・ゼファ。神官をこの教会でやらせていただいております。」 「ヴァルドさんか。よろしく。」 「ええ。よろしくお願いします。」 ヴァルドが微笑む。 「ちなみになんだが、ゼファっていうと、ガレンの関係者か何かか?」 「おや?兄をご存知で…って、知ってて当然ですか。」 「そうです、ガレン・ゼファは私の兄です。」 ヴァルドが答える。 「それで、他には?」 「この国では何を信じているんだ?」 「……この国は、風を深く信仰し、聖霊を神としています。」 ヴァルドは、祭壇の方へ視線を向けたまま語る。 「風は導きです。 時に人を救い、時に試す。 そして――選びます。」 「選ぶ、か?」 ラティエルが問い返す。 「ええ。風が強く吹く者。 風に愛される者。 それは、この国に必要とされるべき存在だという証です」 ミストは、無意識に拳を握った。 「……じゃあ、風に愛されない人は、どうなるんすか?」 ヴァルドは少しだけ考え、穏やかに答える。 「耐えるのですよ。 それもまた、信仰ですから」 にっこりと微笑むヴァルド。ミストにはそれが恐ろしく感じた。 その言葉に、教会の空気がわずかに重くなる。 「風が止まっているのも、かい?」 今度はライムが尋ねた。 「はい」 即答だった。 「我々は信じています。 これは罰ではなく、沈黙なのだと。試練でもあるのだと。」 「沈黙?」 「ええ。 神が言葉を失うほど、人が風を求めすぎた結果です。神はお怒りになった。その結果、沈黙し、我々に試練を与えた。」 ラティエルは、何も言わなかった。 ただ、空気に手を伸ばす。 ——風は、確かに、そこに在る。 だが、 祈られてはいない。動いてもいなかった。 「聖霊の中でも、風の聖霊リゲル様を特に信仰しています。伝承に残る愛くるしいお姿。あの方はもっと崇められるべきです。 しかし、いつになっても我々の前に姿を表したりはしません。ああ。私はこんなにも祈っているのに。」 『アタシはこんなの望んでねえ。イカロスの風が吹いていない国になるなんて。』 リゲルが呟いた。 教会には静寂のみがあった。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード67開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 4.風を信じますか 【本文】 「あぁ、そうだ、聞くのを忘れていました。」 一拍置いてヴァルドが問う。 「あなたは、風を信じますか?」 「ああ。でも、この国が信じる風と、俺が信じる風は違う。この国の風はただ在るだけだ。 俺が信じる風は、流れる風だ。この国の風は風とは言えない。」 「へぇ。ーーそれはこの国への宣戦布告ということでしょうか?」 「いや。戦いたいわけじゃない。俺が信じる風とこの国の風は違うって伝えただけだ。俺は質問に答えたつもりだったが。」 「まぁ、この件は上層部に伝えないであげましょう。あなたたちは兄の友人なのでしょう?見逃してあげます。 あと、ひとついいことを教えてあげましょう。この国ではそれ以上は異端に扱われます。兄がそこまで気にいる人は珍しいですからね。」 そう語ったヴァルドは、ミストへと視線を向ける。 「それで、あなたは?」 「うちも、ただ在る風は信じないっす。うちの信じる風は流れる風っす。」 「まあ、あなたたちは階級者の資格を持っている。あなたも見逃しましょうか。 そこの2人は、風が感じませんね。光、でしょうか。」 「ええ。そうですが何か。」 「扱える力は強いですが、風がないのなら、まあよくて3級といったところでしょうか。」 「随分と失礼だね。」 「風を持たぬ者を丁重に扱う必要があるのですか?」 その言葉の直後。教会の空気が冷える。 「ここの空気、変だな。」 ぼそっとラティエルが呟く。 「俺の名前はラティエル。覚えといてくれ。じゃあな。」 そういってラティエルたちは教会を出る。 「はぁ。なぜ兄さんはあのような異端に『友の証』を?理解ができません。」 ヴァルドは首を傾げながら兄に文句を言っていた。 「あの気さくそうなガレンさんの弟があれって… いっちゃあれっすけどちょっと驚いたっす。」 「僕も否定はしない。けど、あれは、ヴァルド殿の人格というより、 この国の仕組みに大きく影響されているように見えた。」 「ガレンも言ってたが、この国は風が止まっている。 多分、ここは風で縛るが故に、風が止まっているんじゃないか?」 「私も、そう思います。この国は聖霊を敬う。精霊の力の一端を知る私からすると、 ここの流れは不安定です。秩序を保っているように見えるけど、そうではない。そう感じました。」 4人で話し合う。 「まぁ、いったん、今日泊まる宿を探そうか。」 「そうっすね〜。」 4人は再び歩き出した。 「え、ここも空いてないのか?」 「悪いね。風魔術師でも今日は無理さね。そろそろ『風霊祭』の季節だからね。宿は多分どこも埋まってるよ。」 「そうか。無理を言って悪いな。」 「いいんだよ、泊めてあげられなくて悪いね。」 「どこも『風霊祭』っていうののせいで空いてないっすね。流石に野宿はきついっすよね。」 「どうしようか。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード68開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 5.ガレンとの再会。 【本文】 「ん?おお、ラティエルじゃねえか!」 急に後ろから声をかけられたラティエル。 「ん?誰だ…って、ガレンじゃないか!」 バシバシっとラティエルを叩く。 ガレンの顔は酒焼けなのか、赤くなっていた。 「酒でも飲んでたのか?」 「ん?ああ。」 「ーーちょっと思うところがあってな。普段より飲みすぎちまってよぉ。」 「何かあったのか?」 「ああ、この時期になると、どうもなぁ。」 そう語るガレンの顔はどこか悲しげだった。 「そうだ、ラティエル、俺の家まで連れてってくれよぉ。」 「え?」 「あぁ、でも宿取ってるか。宿とった?」 「いや、まだだ。風霊祭でどこも空いてない。」 「まじ⁉︎ちょうどいいや、俺の家に泊まってけよ。ってか、この国にいる間、俺の家にいていいぜ!」 「えっ、いいのか?こちらとしては願ってもない話だが。」 「ああ。どうせ家にいても1人だからな。どうだ?」 4人は軽く視線を交わす。 「じゃあ、お言葉に甘えて…。」 「おっし、そんじゃさっさと行こう!」 こうして一行は今日の夜をガレンの家で暮らすこととなった。 「着いたぞ。ここが俺の家だ。」 そういってガレンが指したのは巨大な豪邸だった。 「でかいなあ。ガレンって金持ちなのか?」 「ん?まぁ、それなりに稼いでるからな。色々と…。」 「おしゃれっすね、ガレンさんっぽくない家っすね。」 「あぁん?ミストの嬢ちゃん、そりゃねぇぜ。」 笑いながらガレンが抗議する。 「それはちょっとわかる気がするよ。」 「『神剣』まで?」 「ライムと呼んでくれるかな?お忍びでね。」 「ふーん、わかった、ライム。」 「ありがとう。」 「確かに、私もわかる気が。」 「白髪の嬢ちゃんまで?ひっでえなぁおい。」 直後、少し静かになる。 「まぁ、俺の趣味ではないのは確かだな。」 少し寂しげな顔で呟くガレン。 「そんじゃあ、お前らがこの国でいい思いできるように酒飲もうぜぇ!」 そうして宴会が始まった。 「そういえば、今日の昼間に教会でヴァルドに会ったんだ。」 「あぁ?ヴァルドに?あいつ、堅物でな。お前らに色々と失礼なこと言っただろ? あいつは俺と違って真面目でな。その分色々溜まってるんだよ。聞き流しといてくれ。」 「ヴァルドさんはこの家に住んでいないんっすか?」 「3年前に別居を始めたんだ。そう考えると、アイツと出会ったのはもう3年前になるのか…。」 呟くガレン。 「すまん、ちょっとトイレ行っていいか?」 「あぁ、いいぜ。場所わかるか?」 「まぁ、探すよ。」 「ほーい。」 席を立つラティエル。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード69開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 6.ガレンの家にて 【前書き】 少し重めなので、そういうのが苦手な人は注意。 【本文】 席を立ったラティエルは、トイレを探して屋敷の廊下を歩いた。 廊下は静かで、先ほどまでの宴会の喧しさが、嘘のように遠くなっている。 「……ここかな?」 そう言って扉を開ける。 だがそこは、トイレではなかった。 長年使われていない部屋――そう感じさせるほど、空気は重く、埃が舞っていた。 「なんだここ……。使ってないなら、片付けてないのか?」 違和感を覚えつつ、ラティエルは室内を見渡す。 正面に、机があった。 そして、その椅子に掛けられていたのは――一枚のマント。 背に刻まれた、炎の紋章。 「炎の紋章……?」 思わず、足が止まる。 「ガレンのものじゃ……ないよな?」 その時。 ギギギィ……と、扉が開く音がした。 「……ラティエル?」 低い声が背後から聞こえる。 振り向いた先に立っていたのは、ガレンだった。 「ガレン?ここは……?」 だが、返事はなかった。 笑ってもいない。 怒ってもいない。 ――ただ、無表情。 ガレンの視線は、ラティエルではなく、 ずっと、そのマントに向けられていた。 「……ここには、入らないでくれ。悪いな」 その声に、酒気はない。 酔いは覚めている。 それでも、視線の焦点は合っていない。 ラティエルは、直感的に悟った。 (……ここは、触れちゃいけない場所なんだ。) 「ここは……」 ガレンが、ぽつりと続ける。 「……片付けられない場所なんだ」 「……そうか」 ラティエルは、それ以上踏み込まなかった。 「わかった。すまないな」 「いや、いいんだ」 ガレンは短く答えた。 「トイレまで、連れて行くぜ」 踏み込まないようにしたが、どうしても気になった。 「ああ、ありがとう。……ちなみになんだが」 ガレンは、歩き出したまま、何も言わない。 一瞬、間が空く。 「……この部屋、誰か使ってたのか?」 その言葉に、ガレンの足が止まる。 ゆっくりと振り返り、 先ほどと同じ、感情のない顔で―― 「……“聞く、のか?”」 その声に、ラティエルはすぐ首を振った。 「いや。すまない、忘れてくれ」 ガレンは、何も答えなかった。 ただ、再び歩き出した。 そこから、丁度宴会がお開きになり、ガレンが独りで酒を飲んでいた。 「あ“あ“あ“ぁぁ!」 頭を掻きむしる。 いらつきを抑えるように酒を飲む。 「はぁ、あそこでラティエルに気を使わすんじゃなかった。そうすればあの部屋も見られなかった。 あぁ、だめだ。すぐ酔いが覚めちまう。この時期は酒が止まらねえなぁ。」 「風が止まり始めてからもう1年。アイツも戻ってこなかった。何が英雄だ。俺は人1人救えねえ凡人、いや、人ですらないかもな。 あぁ、風になって、全部、なかったことにしてぇなあ。」 ガレンの独り酒はまだ続いた。 風が止まっている夜の中で。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード70開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 7.ヴァルドとの再会 【本文】 ガレンの家で一夜を過ごした4人は。朝食を食べに、ガレンに断りを入れて、外出した。 昨日のことについては今は踏み込むべきではないと考えたラティエルは、4人には話さなかった。 「朝食何食べるっすか?」 「…」 「ラティエルさん?おーい、ラティエルさん!」 「ん?ああ、俺か。」 「そうっすよ!なんか考え事でもあったんすか?」 「あぁ、うん。」 少し上の空であるラティエル。 「おや?あなたたちは…。」 そう聞こえて来た方にいたのは、細めの青年だった。 「確か、ラティエルさん…でしたか?」 「ヴァルドか。」 「ええ、ヴァルドです。どうかしたのですか?」 「いや、、、」 「深く考え込んでいるようでしたから気になりまして。」 「ヴァルドは、ガレンの知人を知ってるか?」 「ええ、大体は。」 「じゃあ、この前まで、ガレンと暮らしていた人を知ってたりするか?」 「同居人?あぁ、フレミアさんのことですか?」 「フレミア?」 「えぇ、炎魔術師のフレミア。旅人で、この国に来たのは3年前。3年前に兄と出会い、2人は親しくなりましてね。」 (炎魔術師。あの炎の紋章か!) 「もう、2人は別れてしまったのか?」 「……いや」 ヴァルドは、ほんの一瞬だけ間を置いてから言った。 「別れたも何も、死にましたよ?」 「…え?」 少し、低い声が出た。 ヴァルドが淡々と言う。 「だから、死にましたって。去年の風霊祭に天風に吹き飛ばされて、あの強度では生きてないでしょう。 あの時の兄の悲しみと言ったらもう。なぜ階級権を持たない人間の死をあそこまで悲しむか。理解できませんでしたが。」 「…」 「知りたいことは知れましたか?それでは。」 「どうして…」 「はい?」 「どうしてお前は兄の大切な人間の死を悼むことをしない?」 「はは、悼みはしましたよ。最低限の。階級権を持っていない人間の葬式は開けません。兄はあの女を探そうとしましたが、 国は許しません。風の意思であの女は死んだ。しかも無階級の人間ですよ?国をあげて探す必要はあるのですか?」 ライムは何かを悟った目で、リヴィウスは怯えた目で、ミストは少し悍ましいものを見るような目で。 ーーそしてラティエルは、諦めたような目で。 ああ、この国は“違う“んだな。 ラティエルたちは理解した。この国は他とは根本的に違うと。 「それでは御機嫌よう。おっと、兄には私が教えたことを言わないでくださいね。あまり人に広めたくないとおっしゃっていましたから。」 ヴァルドは微笑んでその場を去った。 「うち、甘く見てたっす。この国のことを。」 「それを言うならみんなそうだ。今までの普通の国だと思ってた。でも違うんだ。僕らにとっての異常はこの国での普通。つまり僕の言いたいことは、わかるね?」 「この国にとって、俺たちが異常…。」 「うん。そういうことだ。そこらへんもひっくるめて、今後この国でどう動いて行くかを考えないとね。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード71開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 8.これからの方針 【本文】 「それじゃあ、この国でこれからどう動いていくかを話し合おうか。」 ラティエルは切り出した。 「ルクスとリゲルも。案を出してくれ。」 『わかった。』 「この国では僕は別れて動く必要があると考える。」 「それは…いい案じゃないっすか?うちは賛成っす。」 「僕とリヴィウスで動くのでどうだい?」 「だが、ライムとリヴィウスの扱いがひどくなる可能性が…。」 「それなら大丈夫さ。人が多すぎるか、少ないところで情報収集すればいい。」 『ならァ、俺はライムの方についていくぞォ。』 『ならアタシはラティエルの方だな。やったぜ!』 『あくまで任務だァ。色ボケんじゃねぇぞォ。』 浮かれるリゲルにルクスが釘を刺す。 『わーってらぁ!いちいちうっせぇな!』 「ならギルマスとリヴィウスは、今ここで起こっている事件と風霊祭ってのについて情報を集めて欲しいっす。」 「了解した。ならそちらは…。」 「イカロスについて調べようと思う。それとこの国の歴史についても。」 黙っていたが、口を開くラティエル。 「なら、エルフ王族の権限を使って、王城に入るっす。書庫とかなら多分情報も多くあると思うっす。」 「なら、それで決まりかな?」 「俺は大丈夫だ。みんなは?」 「いけるっす。なんでこの国の風は止まっているのか、確かめに行くっす!」 「大丈夫です。」 『あァ。』 『大丈夫だぜ!』 4人の考えが固まった。 ラティエルは一度、全員を見渡した。 「危険はある。でも、この国の歪みは一方向からじゃ見えない。 ……分かれよう。各自、無理はせずに。ガレンの家でまた落ち合おう。」 誰も反対しなかった。 それぞれが、同じ違和感を抱いていたからだ。 4人は店を出た。 ラティエル達side 「よし、行くか。」 「はいっす。でも、エルフ王族の権限って言っても、 信用してもらえるかわかんないっすね。」 『確かに、アタシも急に来た奴がエルフ王族を名乗っても信じれねえよ。 精霊界の扉みたいに、血統に反応した物もなければ。』 リゲルが同意する。 3人が考えながら歩いていると。 「おっ、朝飯は食えたか?」 背後から陽気な声が聞こえてきた。 「ガレンじゃないか。」 「ラティエル、昨日は悪かったな。ヴァルドに聞いたんだろ?また事情は説明する。」 ガレンがラティエルにぼそっと呟く。 「いや、いいんだ。ところでガレンはここで何を?」 「ん?俺?依頼の帰りさ。そんでお前らはどうしたん?」 「いや、この国について知りたくて、王城に行きたいんだ。」 「あぁ?王城に?そりゃ無理だぜ。」 「いや、ミストがいればいけるかなって思って。」 「あぁん?ミストの嬢ちゃんが?なんかあんのか?」 「ミスト、いいか?」 ミストが頷く。 「ミストはエルフの王族だから入れるかなって思って。」 「はぁ⁉︎王族?それが本当なら、あんまこんな街中で言うもんじゃねぇぞ? あと、敬語使った方が…いいか?」 「いや、大丈夫っす。」 「ほんとか?不敬罪とかねぇよな?」 「流石に大丈夫っす。」 「ならよかったぜ。」 ガレンが胸を撫で下ろす。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード72開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 9.王城までの事件 【前書き】 すいません、インフルなってたので、投稿休んでました。 【本文】 「王城に行きたいが、入城する方法がわからないってことだな?」 ガレンが問いかける。 「ああ。」 「なら、俺がついていくぜ。」 「ガレンが?」 「あぁ、これでもS級冒険者だからな。」 「それで入れるのか?」 「まぁ、国との関わりは深いからな。任せろ」 「じゃあ頼む。」 「じゃあ、ついてきてくれ」 ガレンがそう言った瞬間、爆音が街の広場に鳴り響く。 「何だっ⁉︎」 ラティエルが音のした方向に振り向く。 そこには、三体の翠色の巨人が立っていた。 「『風の巨人(アネモス・ゴーレム)』だと⁉︎なんでここにいやがる。」 忌々しげにガレンが呟く。 「知っているのか?」 「あぁ、忘れもしねぇ、一年前。奴らが来たせいで ーーフレミアは…死んだ。」 ギオオオン! 「潰す。『風鐘響く空想郷』!」 ガレンが選択した魔術は、風で物を作り上げる魔術。 「風が槍になったのか?」 「ミスト、ラティエル、手助けくれるか?」 「ああ、いけるな、ミスト。」 「もちろんっす。『風霊の啓示(アネモス・シルフィード)』。」 ミストが宙に浮く。 「『空気顕現』『翠玉の剣』。」 ラティエルの詠唱が持ち手に翠玉がついた剣を生み出す。その剣は、膨大な風の力を持ちし剣。イカロス・クラウゼルが幼少期に使いし剣。 「おぉ、『翠槍の英雄』ガレン様だ!」 「ガレン様が来てくれたならもう安心だ。」 民衆たちが騒ぎ出す。 「チッ、相変わらずうっせぇなあ。」 「ガレン、いけるか?」 そんな声を気にせず、ラティエルはガレンに問いかける。 それを受けガレンは、嬉しそうに答えた。 「ああ!来い、『翠槍ヒュボルグ』!飛べ、『飛翔風』。」 ガレンが浮き、槍を携える。 「『空気』。足場を作れ。」 ラティエルは空気を固め、宙に立つ。 「いくっすよ!一発!『風王の巨拳(アネモス・ナックル)』!」 巨大な拳がゴーレムを襲う。 「『舞え。』」 ラティエルの体に向けて、“風が吹く“。 「心地良いな。『翠撃』。」 風がラティエルを後押しし、ラティエルの一撃が巨人を貫く。 「……来い。」 一瞬、風が集まる。 「我は風を統べる者。 我が歩む道に風は逆らわず、 我が立つ場所に風は集う。」 槍が、翠色に輝く。 「救えなかった命がある。 守れなかった約束がある。 だから――俺は、止まれねぇ。」 風が唸りを上げる。 「我は風に選ばれし者。 我は風に抗わぬ者。 我は風を振るう者。」 最後に、低く。 「聖霊リゲル。 俺の名を許せ。」 そして。 「――『星風の断撃』!」 詠唱を終え、巨人が切り刻まれる。 そこには、守れなかった約束を胸に残し、 人を救う。ひとりの英雄の姿があった。 「随分とオーバーキルじゃないっすか。」 「ま、鬱憤がたまってたんでな。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード73開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 10.王城へ 【前書き】 バレンタインですね。こんな日でも僕は意味がわからないぐらい暇です。 【本文】 「おぉー!ガレン様が討伐なさったぞ!」 ラティエルたちは歓声に包まれていた。 「危なかったな、ガレン。」 「そうか?まぁ、俺の場合若干あの魔術はオーバーキルにしか思えないが…、結果オーライだ。」 そういって見てる方向に親指を指す。 「見ろよ、向こうから来てくれたぜ。俺の魔術のおかげだな。 さすが俺!」 「自画自賛…。きしょいっすね。」 「おい、ミストの嬢ちゃん!酷すぎるぜ。」 「『翠槍の英雄』ガレン様ですね。そのお隣の方も。今回のこの事件の解決へのご尽力。 ーー誠に、ありがとうございました。」 その場にいた数十人の騎士がお辞儀をした。 「ああ、誰も怪我人はいねぇのか?」 「はっ。怪我人は1人もおりませぬ。」 「ならよかった。俺も1人で奴らの相手はきつかった。こっから王城か?」 「はっ、もしお連れ様の予定も宜しければ。」 「ミスト。」 「はいっす。」 2人は目線で喜び合う。 「大丈夫だ。」 「そちらの女性もですね?」 「はいっす。」 「それではご案内します。近いので、徒歩でも宜しいですか?」 「ああ。早く行こうぜ。」 「はっ。それでは行くぞ!」 そう言って、彼らは歩き出した。 「なっ?俺のおかげだろ?ちったあ褒めてくれよ。」 「はいはい。すごいっすねー」 「チクショー!」 「ははっ、でもすごかったじゃないか。」 「やっぱラティエルは優しいなぁ、どこかのエルフさんと違って。」 「あぁん?」 「すいませーん!!!」 そんな軽口を叩き合う3人は幸せに見えた。 そして、一行は王城に着いた。 「着いたぜ。ここが我らが神聖クラウゼル皇国が誇る、クラウゼル城だ。」 高く聳え立つ城壁。どこか翠を携えたその壁は堅固だった。 「すごいな。」 ラティエルは圧倒されていた。しかし、見上げた城の天辺にある剣の紋章が刻まれし旗。その旗は動いていなかった。 「相変わらず動かねえよ。ここの旗は。」 ガレンがしみじみと呟く。 「皆様。ついてきてください。」 そう騎士がラティエル達に言い、ついていった。 「こちらが王の間です。準備はできていますか?」 騎士が問う。 「ーーああ。」 ラティエルが息を呑み、答える。 門が開いた。 ギギギギィ。 「女王陛下!『翠槍の英雄』ガレン様をお連れしました!」 ラティエル達は中央まで進んだ。その間は、翠を基調に、豪華な絨毯や、装飾で飾られていた。 「面をあげよ。」 声が響く。 「ーーエスフォート王国からの客人だな。私の名前は、リンダ・クラウゼル。この国の王だ。」 見上げた先にいたのは美しい女性。 「ガレン。此度の報告を。」 「はっ。横の2人は私めの知人でして。彼らと街の広場で会い、談笑をしていたところ、『風の巨人(アネモス・ゴーレム)』が3体現れました。その場で交戦。2人も強い力を持つため、各個撃破したという形でございます。」 ガレンが今回の一連の出来事を報告する。 「そうか。客人に、そのような荒事を任せてしまったのは、我々の責任だ。すまぬな。 唐突な魔物の出現…か。やはりこの国には異変が起こっているな。早急に対策を立てるぞ。 ああ、3人とも、今回は本当に礼を言う。褒賞として金をよこそう。何か他に希望は?」 ラティエルが考え込む。 不意に、止まった旗を思い出した。 「……この国について知りたい。書庫を見せてもらえるか?」 「貴様ァ!女王様になんたる口の聞き方!」 リンダの隣にいた老人が、怒る。 「良い。やめろ宰相。彼らは英雄の友人だぞ。 相わかった。書庫へは後ほどそこの騎士に案内させよう。」 「ああ、ありがとう。リンダ様。」 【後書き】 もし良かったら、チョコがわりに評価ください。面白かったらでいいので。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード74開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 11.書庫での出来事 【本文】 「ラティエル殿、ミスト殿、こちらへ。」 そう、騎士服の男が案内を始めた。 「ありがとう。ちなみになんだが、あなたの名前は?」 「私ですか?私の名前はジークです。階級は二級。以後お見知り置きを。」 そう丁寧に会釈する騎士ジークの顔は非常に整っており、鋭い気が感じ取られた。 「もしよければ、敬語じゃなくて構わない。俺もミストも気にしないからな。」 「そうか。なら、そうさせていただこうか。」 「ああ、気軽に話そう。ガレンは?」 「ガレン様は、女王陛下と話をしている。」 「ガレンって英雄なのか?」 それを聞いたジークは眉を顰めた。 「知らないのか?一年前、風霊祭で街を救った『翠槍の英雄』だぞ?」 「そこらへんも含めて聞きたいんだが。」 「わかった。話そう。一年前の風霊祭。我々騎士の防衛をいとも簡単に、奴らは乗り越えてきた。」 「奴ら?」 「ああ。貴様らが倒した『翠の巨人』だ。100を超える奴らの軍団。それが、人々が集まる風霊祭にやってきたのだぞ?」 「防衛って言ったが、100もいたら目立つだろう?」 「……奴らは急に出現したのだよ。今日のように。まるで、“最初からそこにいたように“な。」 最初からそこにいたように。その言葉はラティエルの記憶に深く残った。 「最初から…か。」 「あぁ、急に目の前に100体の巨人が出てきたんだ。民衆はどうなる?」 「パニックになる…か。」 「その通り。だが、そんなところに現れたのが、ガレン様と、フレミア様だ。」 「フレミア?」 「あぁ、ガレン様のご友人にして、無階級にも関わらず、我々のことを身を呈して救ってくださった。」 「なのに、フレミアは探されなかったのか?」 「ああ。私は今でこそ、副団長だが、当時は何の力も持たない、小隊の隊長にすぎなかった。 あのお方を救うことができなかった。私の最も大きい後悔だよ。」 悲しげにジークが言う。 「もしあのお方が今も生きていれば…。この国はもっと変わっていたかもしれないな。」 「そうか。」 「ガレン様もお変わりになられた。あのお方の太陽がいないから。」 「教えてくれてありがとう。じゃあ、本を読ませてもらうよ。」 「ああ、何かあれば言ってくれ。力になろう。」 そう言ってジークは出て行った。 「うち、思ったんすけど。」 「どうしたんだ?」 「あの女王様、うちに似てないっすか?」 「言われてみれば確かに、面影があるな。」 「やっぱりなんか関係があるんすかね?」 「そのあたりも調べようか。」 「よし!頑張るっすよ!」 2人は気合を入れ、情報収集を始めた。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード75開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 12.皇国の歴史 【本文】 神聖クラウゼル皇国は、『人類最強』にして『剣神』であるイカロス・クラウゼルが建国した。 建国から100年後。イカロスが死に、階級制度が生まれた。階級は無階級、5級、4級、3級、2級、準1級、1級の7つに分かれている。数字が小さくなるごとに、階級は上となっていく。 建国から200年後。曖昧だった階級制度が詳しくなった。無階級は、貧民街に住み、風魔術以外を持つ者。 5級は、貧民街に住み、風魔術を持つ者。 4級は、風魔術を持つ平民。 3級は、強き力を持つ風魔術師。 2級は、S級相当の力を持つ風魔術師。貴族も含まれる。 準1級は、S級相当の力を持ち、貴族である風魔術師。 1級は、例外。国を救うなどの英雄的行為をしたものだけが、1級となれる。 建国から300年後。国を襲った龍を討伐したとして、『龍殺し』スレイ・ナーヴァが1級となる。 建国以来初の1級より、1級の利点が追加された。免税、国内での物の売買の半額化。1ヶ月に一回、金貨を2樽。英雄にふさわしき豪邸を下賜。 建国から500年。隣国である太陽帝国が攻めてきた。これを当時の軍団長であった『爆葬の軍人』エクス・バーミリオンが単騎で、二万の軍勢を退けた。が、当時の太陽帝国の将軍である『陽炎の斬人』フレア・キャストルが戦場へ出撃。国は、戦争に負け、六十年間、帝国の植民地として扱われた。 そこをエルフの里であるイ・ルルと交渉し、エルフの当時の英雄『木の愛し子』ラーク・トラエルが援軍として、帝国を退けた。 建国から1000年。我が国では、1年おきに風霊祭を行うようになった。風霊祭では、イカロス様と契約した風の聖霊『断魔』リゲル様を祀る。精霊に寿命はなく、我々を見守ってくれているであろう。また、大精霊様が、この国の守護霊となってくれることを誓ってくださった。階級は永遠に。風を一生愛すと我が国は誓った。 建国から1200年。大精霊様に異変が見られた。少し息苦しいと行ってらっしゃったため、この国一の風魔術師に、風を起こさせた。大精霊様の煬帝はマシになった。 建国から1400年。隣国で、大戦が起こった。エスフォート王国と、太陽帝国による争いだ。太陽帝国には苦渋を舐めさせられたが、恐らくエスフォート王国が勝つであろう。あそこには『星の守護者』がいる。負けるはずもない。 建国歴1420年。予想通りエスフォート王国が勝利した。これにより、太陽帝国は大きな痛手を負った。 建国歴1498年。風霊祭で、何人かの住民が突如出現した『風の巨人』と、何者かによる風で、吹き飛ばされ、帰らぬ人となった。だが、その場にいた2級の冒険者が、『風の巨人』の大軍を討伐。彼を1級とし、『翠槍の英雄』として、語られるようになった。 〜事故での死亡者〜 5級 ラミア カルト ラティア 4級 ハルト ローグ 3級 エアリア・トラーケン 「これがこの国の歴史…。ん?…フレミアが死亡者の欄にいない?」 「ラティエルさん、こっちでも色々あったっすよ!これは…イカロス様の伝記っすかね?建国からその後を書いてるみたいっす。」 「よし、読んでみよう。」 【後書き】 ミストって絶対可愛い。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード76開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 13.イカロスの伝記 【本文】 私は建国した。クラウゼル王国を。今日から一国の王になると考えると、少し緊張する。リアライズは元気だろうか。エルザ…。こんな心情でやっていけるのか。自分のことながら、心配だ。 最初の日記から、数ヶ月が経った。忙しかった。リゲルが私の元を去った。最高の相棒を…失った。リゲルは去り際に私に祝福を授けた。国民は、リゲルが天に帰ったなどと騒いでいるが、神ではないのだ。あの子は、優しい、私の相棒なのだ。 リゲルが去ってから、二週間が経った。この国は平和だが、どこか危うい。私の愛する風が、この国に吹き続けることを願っている。 アルノードが王城に来た。昔のことについて話は盛り上がった。話してる途中のアルノードの顔はどこか冷めていた。去り際、あいつは微笑んだが、去っていくあいつの背中には、影が宿っていた。何かしらの精霊と契約したのだろうか。 リアライズが、王城に見舞いに来た。私も歳をとった。リアライズも少し老けて見えた。でも変わっていない。あいつと話す時間は、みんながいた旅を思い出すようだった。リアライズと話していると、旅の仲間が来た。みんな元気そうだった。でも、どこか足りなかった。私たちを明るくさせた、あの存在が。リアライズも、「エルザがいれば、もっと楽しかっただろうな。」と、小声で呟いていた。私が、肩をトントンと叩くと、「聞こえていたか?」と聞くリアライズ。「声が風に乗ってきた。」私はそう言った。 &^*%が、見舞いに来た。こいつが来たということは、私も死の間際なのだろう。少し悲しくなった。いくつか言葉を交わした。リゲルの断片的な未来。この国の断片的な未来。&^*%は、死の前のサービスと言わんばかりに、私に言葉を残した。未来も知れた。もう悔いはない。 死にたくない。もっとみんなと笑っていたい。死にたくない。この国を守りたい。まだ、あの子の、リゲルの幸せそうな未来を見れてない。まだ死にたくない。死にたく、死にたく…ないんだよ。 日記の最後には、死ぬことへの恐怖と、未練が記されていた。 「英雄でも、死の恐怖はある…か。リゲル。」 『ああ。イカロス。訳も言わずに出て行っちまってごめんよ。 お前のおかげで今、アタシは幸せだぜ。ありがとう。相棒。』 リゲルが、目に涙を浮かばせながら、話した。 『良かったな。リゲル。お前は俺の最高の相棒だ。』 一陣の風が吹いた。風に乗って、イカロスの声が聞こえたような気がした。 「届いた…っすよね。」 「ああ。きっと届いてる。天国のイカロスの下にな。」 ラティエルとミストは、ただ見守った。 『もう大丈夫だぜ。ありがとよ。続けよう。』 「ああ。リゲルは、この&^*%っていう、単語について何か聞き覚えはないか?」 『恐らく、こいつが消したんだろう。名前の存在を。』 「名前の存在を?」 『ああ。創世の神。名前は知らん。でも、リアライズが、フィーユって呼んでた。』 「創世の神フィーユっすか。」 「本名かどうかはわからないけど、十中八九そうだろうな。」 「よし、じゃあ、別の本も見ていくっすよ!」 「ああ。」 3人の読書は、まだまだ続く。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード77開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 14.風に選ばれなかった者たち 【本文】 ライム達side 「よし。じゃあ、ラティエル達は書庫で表の情報を探すから、僕たちは裏の情報を調べよう。」 『いい考えじゃねェかァ。俺は賛成だァ。』 「私もです。でも、裏って言ってもどこに?」 「この国には階級がある。じゃあ、階級を持たないものは?そういうことさ。それじゃあ行こう。」 そう言って3人は歩き出した。 「ルクス。ここに来たことは?」 『リゲルに連れられて何回か。』 「じゃあ、ここは情報集めの場としてどうだい?」 『考えたじゃねェかァ。裏の情報を集めるなら、ホントに国の裏を探せってことかァ。 案外わかってんだな。オメェ。この場所がどんな場所か、それだけで国がどんなものか大体はわかる。』 目の前にあるは、スラム街。貧民街というものである。 「神聖クラウゼル皇国は私の中では、綺麗な国というイメージだったのですが、 やはり、どこの国にもここはあるんですね。」 「まぁ、ここがないと国が成り立たないからね。」 「オィ。オメェら何もんだ?」 そう、入り口の近くにいた柄の悪そうな若い灰髪の男が、ライム達を睨みながら、ドスの利いた声で聞く。 「そう言う君は?」 「あぁん?ぶっ殺されてぇのか?」 「おっと、怖い怖い。落ち着いてくれよ。」 「舐め腐った態度とりやがってぇ!ぶっ殺してやる!」 そう灰髪の男は激怒して片手に持っていた短刀をライム達の方へ向けた。 「そっちの女は高く売れそうだな。男、オメェはぶち殺す。ただぶち殺すんじゃ、美味しくねえな。 お前が背中に背負ってる、その剣をもらうか。ほら、抵抗しなかったら楽に殺してやるよ。」 「ギルマス。私を守ってくれるんですよね?」 「勿論。任せなさい。ルクス、バレちゃダメだよ。」 『わーってるよ』 「何ぶつぶつ呟いてんだ?どうせ、豪華な剣持って調子乗ってる風に選ばれたつもりのやつなんだろ? おっと、お前を出しにして、お前の親から金をもらうってのもいいなぁ。とりあえず、ーーただじゃ死なせねえぞ?」 そう言った瞬間、男が肉薄する。 「思ったより早いね。『光壁(ライトウォール)』。」 光の壁に男のナイフは弾かれる。 「チッ!光の魔術ぅ?階級者じゃねぇのかよ。出し惜しみはしねえ。『闇短剣アンダンテ』!」 「魔剣かな?じゃあ、『金帝剣ヤマブキ』。『雷光よ。迸れ。』」 ライムの詠唱により、雷が、地面を走る。 「なっ!なんだそれっ! ぐわっ!」 雷を体に受け、痺れた男は、その場に倒れ伏した。 雷が消え、静寂が戻る。 「……やりすぎましたか?」 リヴィウスが小さく問う。 「いや、ちょうどいい。」 ライムは倒れた男を見下ろした。 「彼は“入口”だ。本当に知りたいのは、その奥だろ?」 『だなァ。』 ルクスが低く笑う。 『こいつ一人でここ張ってるわけねェ。』 男は歯を食いしばりながら、呻いた。 「……クソ……」 「言っとくけどよ…… この奥は、風を持たねぇ奴が生きる場所だ。」 ライムは、目を細めた。 「ちょうどいい。」 「その話を、詳しく聞かせてほしい。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード78開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 15.スラム街での問題 【本文】 「そこの話を僕たちは聞きに来たんだよ。」 「話してくれるかな?」 「い、いいけどよ、まずは、あんたらが俺に危害を加えないことを約束してくれ。」 「情報教えたら用済みとか、そんな死に方俺はしたくねぇ。」 「うん、勿論。騒ぎになるだろうしね。 ところで、最初の質問だ。君の名前は?」 「俺の名前は、カヌス。階級は…無ぇ。あんたらは?」 「僕の名前はライム。この国には初めて来てるから階級はないよ。剣を使う。冒険者だ。」 「ーー属性は?」 「光さ。風ではないね。」 カヌスがリヴィウスの方を見る。 「私は、リヴィウス。属性は光です。受付嬢をしています。」 「2人とも光かよ。ーー悪ぃ、さっき風に選ばれた気になってるとかバカにしちまって。」 一拍置いて頭を下げるカヌス。 「いや、いいさ。それより、質問に答えてもらうよ。」 「あぁ、けど早くここを離れた方がいい。俺の拠点に行こう。早くしないと奴らが来る。」 「奴ら?」 「説明してる暇はねぇ、早く行くぞ!」 しかし、足音が聞こえてきた。 「チッ、まずいな。」 「どう言うことだい?カヌス。」 「このスラム街を仕切ってる奴らが来ちまった。」 「なるほど、チャンスじゃないか。」 「って、言ってる場合か!早く逃げんぞ!」 「おぉおぉ。カヌスゥ。そいつらは誰だ?ここの人間じゃねえよなぁ?」 そう、腕に刺青がある、先頭の男が聞く。 「よぉ、ヤール。見逃してくれねぇか?」 「嫌だなぁ、カヌス。お前、こないだもうちの店のもん盗ったよなぁ? ーーボスも、お怒りだぜ?」 「勘弁してくれよ、お前らだって盗品売ってるんだから、ちょっとぐらいいいじゃねえか。」 冷や汗を掻きながら、カヌスが話す。 「後ろの女、上玉じゃねえか。男もいい剣持ってんじゃねえか。」 見定めるような目でリヴィウス達を見るヤール。 「ボスがいるのかい?」 「お前らに関係あるか?まぁ、いるぜ。俺らのボスは、元々S級冒険者だったからなぁ、痛い目見ないうちに帰った方がいいぜ。ーー女と剣を置いてなぁ!」 そう言って、ヤールはライムに飛びかかった。 「死ねぇ!」 「カヌスより遅いじゃないか。つまらない剣だね。『蒼帝剣ラピス』『溢れろ』。」 ラピスから、水が溢れ、ヤールとその後ろの男たちを、包み込む。 「ぐぁっ、なんだっ、この水は!」 「ぐわぁっ!」 「溺れるといいよ。残念、痛い目を見るのはそっちだったね。」 「強いな、ライム。」 「どういたしまして。じゃあ、君の拠点に行こうか。こいつらも連れて行こう。」 「ああ、そいつら運ぶのは任せてもいいか?」 「ああ、任せてくれ。『水帝剣アイシクル』。『凍れ』」 男達が凍った。 「リヴィウス、運べるかい?」 「はい。『光よ(ルクス)』。」 光が氷を持ち上げ、動き出した。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード79開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 16.スラム街での一幕 【本文】 「よし、着いたぞ。ここが俺の拠点だ。」 「道中何もなくて良かったよ。」 「ああ、そうだな。」 ライム達の目の前に立つのは、少し寂れた家だった。 「ここには、いろんな空き家があるからな。 ーーここも元は空き家だったんだ。」 少し寂しげな表情で語るカヌス。 「ではここに。」 「『氷よ、溶けよ。』」 ライムの詠唱で、氷が解ける。 「起きるまで待とうか。カヌスはここで何を?」 「盗品の輸送とかだな。足には自信がある。後、追い剥ぎだな。 さっきみたいに、ここの前を通る人間を狙ってる。」 「なるほど、ここでは犯罪が仕事か。」 「ああ。俺みたいな小悪党もいれば、ここを仕切る奴らみたいなのもいる。」 「くっ、どこだここは!」 ヤールが目覚め、大声で聞く。 「あまり叫ばない方がいい。君も胴体と首を分けたくはないだろう?」 「おい、カヌス。いいのかよ。」 「な、なんだよ。」 「このままじゃボスが黙ってねぇぜ。お前も命が惜しけりゃ早めに降参することだ。」 「ボスはS級冒険者なんだってね。」 「あぁん?今更怖気付いても遅いんだよ!」 「いや、少し楽しみなんだよ。僕も契約して手に入れた能力を試してみたいからね。」 「契約ぅ?言っとくが小手先だけの戦いはボスには通用しねえぞ。」 「楽しみにしておくよ。ボスの名前は?」 「ボスの名前は『剣鬼』のゴルだ!知ってる名だろぉ?」 「ーーああ、よく知っているとも。 懐かしいね。僕が彼を叩きのめしたのも20年前ぐらいか。」 「はぁ?」 「彼は果たして強くなっているのか。20年前は結構苦戦したからね。楽しみだよ。」 「ふっ、ふざけんじゃねぇぞ!法螺吹きがぁ!ボスがお前みたいなほっそい男に負けるわけねぇだろ!」 「残念ながらそれが事実なんだよね。じゃあ、ボスのところに案内してもらえるかな?」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード80開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 17.因縁との遭遇 【本文】 「テメェがいくら虚勢を張ってもなぁ!」 「真に強え奴には勝てねぇんだよ!」 ヤールが叫んだ、その瞬間。 バンッ! 拠点のドアが、蹴り破られた。 「ボスゥ!」 「よぉ、カヌスぅ。」 強面の髭を蓄えた男が、低い声で言う。 「盗品と……俺の子分を、返してもらおうか。」 「ひっ…。」 「おぉ。」 ライムは、どこか懐かしそうに目を細めた。 「確かに、あの頃の面影があるね。久しぶりだ。」 「あぁ?」 男が眉をひそめる。 「何、馴れ馴れしく声かけてやが――」 そして、ライムの顔を正面から見た瞬間。 「……おい。」 「おいおいおい……まさか……」 男の表情が、みるみる青ざめる。 「……『神剣』か!?」 「なんで……なんで、こんなところにいるんだよ!!」 「久しぶりだね、ゴル。」 「20年ぶりくらいかな。元気にしていたかい?」 「元気なわけねぇだろぉ!!」 ゴルは、ほとんど悲鳴のように叫んだ。 「一週間に一回は、お前の悪夢を見るんだぞ!!」 「何のために、この国に来たと思ってんだぁ!」 「なんで、こんなところに来てまで……お前と……!」 「とりあえず。」 ライムは淡々と言う。 「カヌスには、手を出させない。」 「貴重な情報源だからね。」 「……逃げても無駄、か。」 ゴルは歯を食いしばる。 「……やってやるよぉ!」 「――『鬼剣オーガ』!」 禍々しい気配を放つ剣が、ゴルの手に現れる。 「相変わらず、嫌なオーラだ。」 「僕は、その剣が嫌いだよ。」 「知ったこっちゃねぇんだよ!!」 「死んでもらうぞぉ!」 「――『火焔付与(エンチャント・フラメア)』!!」 オーガに、炎が纏わりつく。 「――『蒼帝剣ラピス』。」 「『水よ、我に祝福を。』」 ライムの体を、水が静かに包む。 「俺もお前の剣は嫌いだぁ!!」 「――『烈鬼焔刃』!!」 ゴルが、目にも留まらぬ速さで肉薄する。 「……少し、速くなったね。」 「炎も、強くなっている。」 ライムは落ち着いたまま、剣を振る。 「――『蒼帝斬』。」 紅と蒼の軌跡が、空間を切り裂いた。 「まぁ。」 「斬るだけだけど。」 次の瞬間、立っていたのは――ライムだけだった。 「……そんな……」 ヤールが呆然と呟く。 「ボスが……!」 「安心して。」 「峰打ちさ。」 「よくも、ボスをぉ!!」 「話、聞いてなかったか。」 ライムがラピスを持ち上げる。 「じゃあ、仕方ない――」 「待て、ヤール。」 倒れたまま、ゴルが言った。 「……俺は、生きてる。」 「おや?」 ライムが少し意外そうに言う。 「意識があるのかい?」 「なんとかな。」 ゴルは息を整えながら続ける。 「ヤール、落ち着け。」 「……ここで暴れたら、死ぬだけだ。」 「ボス……!」 「お願いだからぁぁ!!」 カヌスが悲鳴を上げる。 「俺の拠点で、これ以上暴れないでぇ!!」 拠点は、すでに戦いの余波でボロボロだった。 「おっと、失敬。」 ライムは剣を下ろす。 「さて、ゴル。」 「聞かせてもらおうか。」 「ああ……。」 ゴルは、諦めたように息を吐く。 「……俺も、頭が冷えた。」 「じゃあ。」 「質問には、正直に答えて。」 「危害は加えないよ。」 ――こうして、 ライムによる尋問が始まった。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード81開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 18.昨年の風霊祭 【本文】 「まず。」 ライムは静かに切り出した。 「この国に来てからのことを、話してくれるかい?」 「ああ。」 ゴルは短く頷く。 「俺は、知っての通り炎属性だ。」 「この国に来たのは……お前に叩きのめされてから、十年後だ。」 「それで?」 「ここは、治安がいい国だと聞いていた。」 「……だが、俺を待っていたのは――差別だった。」 重く落ちたその言葉に、部屋の空気が静まり返る。 「俺は、この国で信用を集めた。」 「多くの人間を助けた。」 「だが、返ってきたのは裏切りだった。」 ゴルは、拳を握る。 「助けた人間でさえ、俺を“無階級者”と蔑んだ。」 「どれだけ救っても、返ってくるのは罵倒だけだ。」 「……俺は嘆いた。」 「そして、諦めた。」 一拍。 「――その結果が、今の俺だ。」 語り終えたゴルの顔には、怒りよりも疲労が残っていた。 「風霊祭というのは。」 ライムが話題を変える。 「どういう祭りなんだいー?」 「風霊祭は、その名の通りだ。」 「風の精霊に祈りを捧げる祭りだな。」 「祭りから一年、平和に暮らせるように……それを願う。」 「去年の風霊祭について、何か知っていることは?」 「あ?」 ゴルが眉を上げる。 「……お前も、嗅ぎ回ってんのか?」 「“僕も”、ということは。」 ライムの目が細くなる。 「他にも?」 「ああ。」 「名前は知らねぇが、階級は高そうだったな。」 「やたらと、行方不明になった人間がスラムにいないか聞いてきやがった。」 「それで?」 「そいつが来たのは、風霊祭の二ヶ月後くらいだ。」 「一ヶ月前までは見かけたって答えて、追い返した。」 「その人物は、その後どうした?」 「性別、属性、行き先……一通り聞いてきたな。」 「ちなみに、そのスラムにいたという人物は?」 「ヒュートって名前だ。」 「依頼で向かった先で見つけた。」 「森に倒れてたから、体調が回復するまで、ここに置いてやった。」 「……そうか。」 ライムは、わずかに視線を落とす。 「では。」 「フレミアという人物を、知らないかい?」 「あぁん?」 ゴルが怪訝そうに顔を上げる。 「……なんで、オメェがあいつの名前を知ってる?」 「知っている、ということだね。」 「……ああ。」 「知ってるぜ。」 「一年前の事件で、行方不明になった。」 「捜索は……されなかったみたいだがな。」 「それは知っている。」 ライムは淡々と続ける。 「どういう経緯で知り合ったのか、聞かせてもらおう。」 「あいつは、A級冒険者だった。」 「同じ炎魔術師でな。交流はあった。」 「この国に来て、知り合ったのは……二年前くらいだ。」 「一年の付き合いだったが、楽しかった。」 「周りを楽しませる才能がある奴だったよ。」 ゴルは、ふっと息を吐く。 「……話が逸れたな。」 「依頼先で、一緒になったのが始まりだ。」 「なるほど。」 ライムは一つ頷き、次の質問へ進む。 「じゃあ、次だ。」 「この国そのものについて。」 「聞かせてもらおうか。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード82開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 19.ライムの尋問その2 【本文】 「それじゃあ、この国について聞かせてもらおうか。」 「この国では、知ってると思うが、階級が正義だ。階級を持たない者に、価値はない。」 「この国は、聖霊を信仰する国だ。特に、風の聖霊リゲルへの信仰は異常だ。」 そこまで喋り、ゴルは話すことをやめた。 「悪ぃな。話せるとしたらここまでだ。この国は、暗部があってな。異端を消すために存在する。」 「風の魔術を使って、どんな小さい声でも拾いやがる。音を拾えば、すぐに発生源に向かい、そいつを消す。」 「他の質問になら答えれるぜ。」 「じゃあ、去年の風霊祭について、あったことを説明してくれ。」 「わかった。俺はあん時は子分と一緒に街で遊んでた。風霊祭は無階級でも、ある程度の自由が設けられる。」 「俺が、子分と一緒に飯を食ってた時に、あの事件は起こった。」 「急に現れたんだよ。『風の巨人』がな。」 「『風の巨人』?」 「この国の横にある、『風の迷宮』の、下層に出現する大型の怪物のことだ。俺も一度だけ、2体の巨人と戦ったが、それなりに苦戦した。」 「なるほど。じゃあ、話を戻してくれるかな?」 「奴らは、足を踏み、地響きを鳴らした。その余波で、数人が吹き飛ばされた。その中にはフレミアも混じっていた。その後、その場にいた『翠槍の英雄』ガレン・ゼファが対処し、奴らを掃討した。」 「俺の子分は無事だったが、吹き飛ばされた中には、貴族も居たな。あぁ、後、巨人が足を踏んでないタイミングで物凄ぇ風が飛んできたな。フレミアが吹き飛ばされたのも、それが原因だ。」 「別のタイミングに吹いた風…か。 ーー情報提供ありがとう。じゃあ、僕は去るよ。」 少し考え込んだ後、ライムは告げた。 「あぁ。すまなかったな。」 「いいさ。後、カヌスには手を出しちゃダメだよ?これ以上は可哀想だから。」 「ああ。流石にな。お前にボコボコにされたくはねぇからな。」 「うん。懸命な判断だと思うよ。」 「待ってくれ、ライム。」 そう、呼び止めたのはカヌスだった。 「なんだい?」 「この剣、どういうものか知らないか?」 そう言って差し出したのは、ライム達と戦った時に使っていた、黒色の短剣だった。 「これは、闇かい?」 「うん。」 「剣の銘は?」 「闇短剣アンダンテ。これを拾った時に、頭に流れ込んできた。」 「懐かしい感じだね。君はこの剣に選ばれたんだ。 ーーおや?シグルドが光ってるね。」 ライムが剣を眺めていると、アンダンテに共鳴するかのように、シグルドが光り出した。 「ーーなるほど、そういうことか。」 ライムは笑いながら、カヌスを見た。 「ふふふ、この剣はウェポンが打った剣だね。あのドワーフ、まだ生きてたのか。 あぁ、懐かしい。良かったね、カヌス。君の剣は、最高の鍛治師が打ったものだ。」 感傷に浸りながら、告げるライム。 「僕のシグルドも、ウェポンの打った剣だよ。」 「そう…だったのか。教えてくれてありがとう。」 「うん、奪われないように気をつけて。剣は君を選んだ。君はそれに答えなくちゃ。」 ライムはそう言葉を残し、リヴィウスと共に、スラム街を去った。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード83開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 20.風霊祭の情報 【本文】 ラティエル達side 「ラティエルさん、こんなものが向こうにあったっす。」 『『風の巨人』出現事件参考書類』 そう、本の表紙には書かれていた。 「去年の風霊祭についてのものか?」 「そうみたいっすね。読んでみるっす!」 建国歴1498年。由緒ある風霊祭で、事件が発生した。 事件当時、現場では屋台が並び、広場で風の魔術師が風を起こしていた。 人々が騒ぎ、気分が高揚している時に、“それ“は現れた。 この国で最も巨大なダンジョンである『風の迷宮』の下層に出現する怪物である。魔物と定義するには、少し違う。 過去の遺物といった方が正しいだろう。神話の大戦で、風を司る魔神の部下『魔風神』セレディアの研究により生まれた巨人。現時点では、『風の巨人』とは、そういうものとしかわかっていない。 人々が巨人の足踏みによって起こった風で、吹き飛ばされた。 そこに、我が国の後の英雄である、『翠槍の英雄』ガレン・ゼファ様が現れ、奴らを撃退した。 その魔術は美しく、我々を魅了した。詠唱をし、民を救う姿はまさに英雄だった。 ガレン様の活躍により、事件は収まった。が、複数の階級者が散ってしまった。 『風の巨人』がどこから現れたのかはまだわかっていない。『迷宮観測者』の職を与えられているガムラ・フィルトによると、迷宮に動きはなかったそうだ。 「なるほど。あのデカブツはそういうものだったのか。」 「いろんな魔力が混ざってたっすね。あと、過去にも『風の巨人』が複数出現したことはあったみたいなんっすけど、それは全部、王都郊外だったみたいっすね。」 「なんとなく、わかってきたな。ガレンを呼ぶか。」 「そうっすね。」 そう出口に向かって歩くラティエル達。 「2人とも、もう調べ物は終わったのか?」 「ああ、ジーク。ありがとう。」 「構わん。 ーー貴様らは我が部下を救った。礼に1つ良いことを教えよう。」 一拍置いてジークが口を開いた。 「ーー貴様らは皇国の暗部に狙われている。ヴァルド神官は上に報告しなかったようだが、奴らは貴様らの発言を聞き逃さなかったようだ。ガレン様の近くにいるうちは来ないだろうが、離れれば襲いにくる可能性もないわけではない。 気をつけることだ。」 「ああ。最後までありがとうな。ジーク。」 「ふん、貴様らのせいで街が汚れるのが嫌なだけだ。」 そうそっぽを向きながら告げたジークは、扉を指差した。 「ほら、早く出ていけ。貴様らがいると汗臭くて敵わん。」 「そんな臭くないっすよ!」 そう軽口を叩きながら、ジークと別れた。 「よぉ、もう調べ物はいいのか?」 「ああ。ありがとな。」 「いいってことよ。去年の風霊祭について、まだ知りたいことがあんだろ?」 「俺の家で話してやるよ。『神剣』とリヴィウスの嬢ちゃんも知りたがるだろうしな。」 「ーーいいのか?」 「ん?ああ。そろそろ、過去を振り返り続けるのはやめようと思ってたとこだ。丁度いいさ。」 そう語るガレンの顔は少し悲しげだった。 「無理しなくても…」 「うるせー、俺がいいって言ってんだから、気にしてんじゃねえよ!」 そう、笑ってガレンはラティエルの背を叩いた。 「よっしゃ帰ろうぜ!晩飯は何がいい?」 「あぁ、帰るか。そうだな…。 この国でうまいのなんだ?」 「俺のイチオシはハヤテガニだな。うまいぜ?」 「よし、それにしよう!」 3人は、そんな会話をしながら、城を去った。 【後書き】 誕生日なので 誕プレ代わりに評価をください。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード84開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 21.ガレンの家にて 【本文】 ガレンの家にラティエル達が近づいているその頃、ライム達も近くまで帰ってきていた。 「おっと、ラティエルじゃないか。ガレンもかい?」 「ああ。ガレンには王城に入る手伝いをしてもらった。後…」 ラティエルがガレンを見る。 ガレンがそれに対して頷いた。 「去年の風霊祭での事故について詳しく聞かせてもらえるらしい。」 「去年の風霊祭?関係者ってことかな?」 「まぁ、そんなところだ。先に飯食おう。その後話すぜ。」 そう元気に言ったが、ラティエルにはそれが空元気に見えた。 ガレンの家に入り、一行はハヤテガニの鍋を食べた。 「へぇ、たまにカニは食べるけど、このカニは絶品だね。」 「だろ?俺おすすめのカニだ。ついでに、俺んち特製の調味料もな。」 「うん、美味しいっす!」 「本当に。美味しいですね。」 「ガレン。最高だ。」 にっこり微笑むラティエルだった。 「なら良かった。」 盛り上がる食事を終え、ガレンが酒を手に取った。 「悪いな。酒の力を借りないと俺は…耐えられねぇ。」 「ヘタレで悪ぃな。」 「大丈夫だ。じゃあ、頼む。」 「ああ。 ーーあれは3年前のことだ。」 ガレンは語り始めた。 当時、ガレンはA級冒険者だった。 「『翠槍』ぃ!今日も来てんのか?」 「お前は相変わらず仕事熱心だなぁ!」 そう、話しながらガレンの背中をビシバシと叩いている男は、先輩冒険者だ。 「よぉ。ウェルさん。まあね。弟の学費も払わなきゃいけねぇし。」 当時、ヴァルドは神官学校に通っていた。 「くぅーっ!泣けるねぇ。」 「冷やかしてんじゃねえよ。」 そう軽口を叩き、ガレンはギルドを出て行った。 「今日の依頼は、『風の迷宮の下層調査』か。骨が折れそうだな、こりゃあ。」 「それに合同かよ。どんなやつだろうなぁ。」 ガレンは、合同依頼の組む相手がどんな人間かを考えながら『風の迷宮』へと歩いて行った。 「ここが集合場所か。まだ来てないのか…っと、あれか?」 ガレンの視界に入ったのは、緋色の髪を持つ女性だった。 「おい、あんた。」 「ん?私?」 「あぁ、こんなとこで何してんだ?迷宮から魔物が出てきたらひとたまりもねぇぞ。」 「大丈夫、私冒険者だから。」 「なんだ、ってことは合同依頼のヤツか?」 「えっ、そうだけど…。あなたも?」 「ああ。俺の名前はガレン。よろしくな。」 「私の名前はフレミア。A級冒険者よ。」 「ふーん、最近この街に来たのか?」 「わかるの?」 不思議そうにガレンの顔を覗き込むその姿は、ガレンの目には可愛く映った。 ガレンは顔を少し赤くし、首を振った。 「どうかした?」 「な、なんでもねえ。いや、炎の紋章入りのマントなんか付けてっから。」 「ああ、これね。これは私の母の形見だから。手放したくないの。」 「そう…か。すまねえな、聞いちまって。」 「え?気にしてるの?」 首をこてんとかしげるフレミア。 「ガレンくんって、優しいんだね。見た目そんなに優しくなさそうなのに。」 「てめ、失礼だな!」 そして、今に戻る。 「それが俺とフレミアの出会いだ。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード85開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 22.ガレンの過去 【前書き】 すいません、テスト期間だったので、一週間ぶりの更新となります。更新が遅れてしまい、すみません。 【本文】 そして、ガレンとフレミアは『風の迷宮』へと足を踏み入れた。 「お互いを把握しておこう。フレミア、属性は?…って何だよその顔。」 フレミアは目を点にした。 「いや、ガレンくんってガサツそうな見た目なのに、そういうところはちゃんとしてるんだね。」 「はぁ?おめっ、ふざけんなよ!」 フレミアが笑い、ガレンも笑った。 「属性だよね。見ての通り炎魔術だよ。」 「俺は風。得意な型は?」 「んー、どっちかって言ったら火力型だね。ガレンくんは?」 「俺は臨機応変にやるけど、得意な魔術は武器を作る魔術だ。」 「武器?どうやってやるの?」 「こうだ。『風音響く空想郷』。」 その詠唱により、美しい槍が生み出された。 「わぁ、綺麗な槍。それにしてもとっても緻密な魔術式だね。硬い物質を生み出せるように、風を硬化させてる。属性効果も持たせれるんだね。」 フレミアが早口で語るその姿を見て、ガレンは意外そうに呟いた。 「わかんのか。」 「もっちろん!とってもいい魔術!これ独自式だよね?」 「ああ…。」 「だよねっ、これ組み立てるのに何ヶ月かかったの!?」 「“組み立てる“って、フレミアはわかる口か!」 「わかるよ、魔術式…大体、48個ぐらい?詰め込まれてる?」 「惜しいな、49だ。」 「うへぇ、キリ悪くない?」 「ーーまぁ、これが1番ちょうどいいんだよ。もう一個付け足すってなると制御が難しい。」 「ふーん、じゃあいいもの見せてもらったし、私の魔術も見せるね。」 「ーーいいのか?」 (俺の魔術を結構なところまで理解できてるんだ、いいものが見れそうだ。) 「うん、それじゃあ、行くね。『緋理演算(フラムフォーミュラ)』。」 詠唱され、生み出されたのは緋色の盤。 「なっ…。」 ガレンは圧倒された。その魔術に組み込まれたガレンの魔術を超える緻密さ。それを短時間で生み出すフレミアの魔術の手腕に。 それは、“才能“と呼べるものではない。才ある者が長年を賭けたもの。ガレンの目にはそう映った。 「ーーフレミア、この魔術を構築するのに何年かかったんだ…。」 「わかっちゃうよね。これは私のお母さんと私の2代に渡って構築された魔術なんだ。」 2代。ならすごく無いのか。それは否。50年以上の重みがその魔術にはあった。才能と努力。 「綺麗だ。一体幾つの魔術式が組み込まれてんだよ。50?いや、もっとあるな。 ーーなるほど、使い手の負担を軽減する魔術式!そんなものがあんのか!広いな…。世界は!」 ガレンは興奮していた。歓喜していた。世界の広さを知れたことに。自分の未知の世界を見れたことに。 「ガレンくん、面白いね。」 「この依頼が終わったら、飯食おう!その魔術式についてもっと聞かせてくれよ!」 「ーーうん、いいよ。」 フレミアは、微笑んだ。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード86開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 23.風の迷宮で 【本文】 「おっと、効果を聞くのを忘れたたぜ。」 「そうだね、この魔術は術者…私の視界を通して、状況を処理し、その解決の糸口となる魔術効果を放つっていうものなんだ。」 「ーーなるほど、大雑把に言うと、状況を打破する効果を放つってことだな。」 「まぁ、そうだね。」 (おいおい、すっげえじゃねえか。んな魔術見たことも聞いたこともねぇ。これが50年ちょっとで出来上がるってのかぁ?) 「頼りにさせてもらうぜ。フレミア。」 「こちらこそ、そうさせてもらうね。」 2人は微笑み合い、迷宮の奥へと足を進めた。 「……。」 (魔物が少ない。何かが起こってる?けどここで引き返すわけには。) 深く思考の海に沈むガレン。 「…ん、…くん、ガレンくん!」 「ん?あぁ、すまねぇ。」 「いいけど…。どうしたの?急に黙り込んで。 ここは迷宮なんだから、気を引き締めなきゃ!」 「ありがとう、ちょっと気になることがあってな。」 そう言ったガレンの顔をフレミアは見つめた。 「……なんだよ。」 「ちょっと疲れてるよね?そろそろ下層だし、一旦休もう。」 「そういうわけには…。」 「はい、いいからいいから。ここで無理して死んじゃったらどうすんの?」 フレミアは真剣にガレンを叱った。 (俺が死んだら、ヴァルドは…。) 「そう…だな。」 ホッと息をつくフレミア。 「よし、テント持ってる?」 「あぁ、小型だけどな。」 「じゃあ大丈夫。ご飯は?」 「あるって、迷宮初心者じゃねぇんだからよ。」 ガレンが苦笑いをする。 「ごめん、ちょっと心配でさ。」 フレミアがエヘヘと頬を掻いた。 (可愛い。) そう不意に思ったガレンは首を振った。 (そういうことを考えるのはいまじゃねえ。依頼に集中しろ。) そして2人は休み、食事を終え、仮眠をとった。 「先に俺が見張るよ。」 「わかった。時間になって私が起きてなかったら起こしてねー。」 フレミアはそう言ってテントの中へ入って行った。 「俺が、守るんだ。異常があったとしても。ヴァルドも、フレミアも、この国も。」 ガレンはそう堅く決意をした。 「おはよう、ガレンくん。」 翌朝、ガレンはフレミアに起こされた。 「おはよう。」 「よしっ、それじゃあ、進もっか。」 「ああ。行くぞ。」 2人は下層へと足を進めた。 「ぐっ…。デケェ。」 その数時間後。ガレンたちの前に立ちはだかったのは、巨人。4体の巨人と、その巨人たちを見守るもう一体の巨人。 「我が道に答えを。『緋理演算(フラムフォーミュラ)』ぁ!」 「おい、フレミア!魔力も厳しいだろっ!無理すんな。」 「これが街に来たら大変なことになる!今ここで…仕留める!『演算開始』!」 緋色の盤の上に、数字が浮かび始める。 「ーーならっ、俺が時間を稼ぐ!体現しろ。『風音響く空想郷』!」 詠唱により、ガレンの前に一振りの槍が降臨する。 「速さ勝負と行こうじゃねえの!デカブツゥ!」 ガレンは巨人に肉薄した。 ギオオオン! 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード87開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 24.迷宮での激闘 【本文】 「速さ勝負と行こうじゃねえの!デカブツゥ!」 ガレンは巨人に肉薄した。 「ガレンくん…。死なないでね!」 「お前もな!」 フレミアが演算を開始した。4体の巨人はガレンを圧し潰そうとするが、もう1体の巨人は佇んでいた。 否、フレミアを見つめていた。 「もう1体の巨人。あれは異質だね。特殊な個体かな?あれも演算しなきゃ。」 演算の速度が早まる。 そうしている間も、ガレンは巨人に突撃していた。 「おいおい、随分とノロマだなぁ!ギア上げてこうぜ!『最速の風撃』!」 ギオオン…。 少し動きが控えめになる巨人。 「その見た目にしては臆病ですってか!?笑わせてくれるじゃねえか!」 (チッ、俺の攻撃があんま通ってねぇな。あの奥のやつは…。フレミアを見てる?フレミアが狙われてんのか?そうはさせねえ。ーーちょっかいかけるか。) そう考えたガレンは、奥の巨人へと狙いを変えた。 「よぉ、余裕綽々か?悪ぃが邪魔するぜ?」 その狙いに気づいた4体の巨人が奥の巨人の方へと体の向きを変える。 「ガレンっ!下がって!『緋掌』!」 ガレンの体が緋色の巨大な手に掴まれる。 「っ、フレミア!」 演算を中断したフレミアに、巨人の魔の手が襲いかかった。 「えっ…、きゃあ!」 フレミアが悲鳴を上げる。 「チィッ!『飛翔』!」 ガレンは手を振り払い、飛行し、フレミアを助けに向かった。 (間に合え、間に合え!間に合えぇ!) 「フレミアァ!」 フレミアに近づき、手を伸ばす。 「ガレッ」 しかし、その手は届かず、フレミアは巨人に吹き飛ばされた。 「フレミアァッ! 死ね。『星穿つ風』ぇ!」 ガレンの詠唱により、巨人らが瓦解した。 「フレミア!生きてるか!」 ガレンはフレミアの元へ駆け寄った。 「な、なん…とか。」 フレミアは頭から血を流しながら答えた。 「チィッ、傷は深い…か。巨人は後1体…か。」 ガレンは考え込んだ。 (苦戦したが1匹ならなんとか…。いや、あれは不気味だ。戦いに行って返り討ちになったら俺もフレミアも死ぬ。この迷宮に異常が起こっていることを知らせれなくなる。だが、ただの巨人なら…?考えろ。この場における、最善の択を!) 「ーーフレミア、撤退するぞ。」 「ガレンくん、それはっ…。」 「フレミアが言ったことだ。死んだらどうする。この場で最悪なのは、俺たち両方が死ぬことだ。 風の巨人が群れるなんて聞いたことねえ。俺たちのするべきことはこの情報をギルドに持ち帰ることだ。」 「でもっ。」 「うっせぇ、早く行くぞ!」 ガレンはフレミアを抱き、後ずさった。 「あばよ、デカブツ。次会った時はお前を潰す。」 “貴様らの魔術は…見たぞ。“ 巨人がそう呟いたように、ガレンには聞こえた。 「本当に奇妙なやつだ。」 2人は迷宮から脱出した。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード88開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 25.敗走の先にあった物 【本文】 迷宮から脱出したガレンとフレミア。 フレミアを病院で治療してもらい、ガレンはギルドへ向かった。 「だから…、何度も言ってるだろうが!ダンジョンを一度閉鎖して討伐隊を編成するべきだ!」 ガレンは相席していた禿頭の男に怒鳴っていた。 「俺は奴らの危険性を身を持って理解した。下層に個体で出現する風の巨人の存在は知っているだろう? 奴らは1体だけでも強い力を持つ。それが群れるんだぞ?いくら現場を離れていても危険性は理解できるはずだ!」 男はガレンの話を聞いて、ため息をついた。 「ガレン…、いいか?確かにその話が本当だったとしよう。もしそうなら、未曾有の危機だ。 ーーだが、誰がこんな話を信じる?それに奴らが群れることは確認されていない。」 「チィッ!この分からずや!俺はこの国のためを想って言ってるんだ!」 「お前、同行していた炎術師になんか吹き込まれたか?」 「…あ?」 「炎魔術師に、風以外の魔術師にろくなやつなんていねぇだろ。お前、ちゃんと依頼相手は確認した方がいいぜ?」 「テメェ、ふざけんじゃねえぞ?」 ガレンが激怒しながら席を立つ。 「ギルマスなら、冒険者を侮辱してもいいってのか?」 「おいおい、ガレン。俺とやるのか?俺を敵に回せば、文字通りこの国中が敵に回るぞ?」 「ーーおっとそうだ。お前の依頼同行者は今怪我をして病院にいるそうだな? …そういえば病院の近くには俺と仲が良い冒険者が何人かいたな?」 悪どい笑みを浮かべながら男が確認する。 「わかったな?」 「チッ。」 ガレンは座り込んだ。 「当分あんたの顔見たくねえ。」 「勝手にしろよ。」 男は吐き捨てた。 「ーーあ、ちゃんと依頼は受けろよ。お前宛の依頼は多いんだからな。」 「うっせえ!」 「よおガレン。今日はどうし…って、どうしたその面は?ギルマスとなんかあったのかよ?」 「ウェルさん。この前合同依頼に行ってきたんだけどさ…。そこで、いろいろあったんだよ。ギルマスに広めるなって言われてっから話せねぇけど。」 ガレンはウェルに風の巨人のことを省略し、迷宮で起こったことを話した。 「なるほどなぁ。そこまで炎術師を信じないのは、異常だよな。」 「俺も依頼先で何回かあたったことあるが、みんないい奴が多い。 それも、そいついいやつなんだろ?」 「うん。」 「なら信じてほしいよな。はっきり言ってこの国の風への信仰は異常だと思うぜ。」 そう2人は話し合った。 翌日。ウェルはギルドに来なかった。 以降、ウェルがギルドに現れることはなかった。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード89開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 26.フレミアとガレン 【本文】 「ウェル?今日は来てないぜ。」 「そっか、ありがとう。」 ガレンは今日の依頼を終え、家に着いた。寂れている小さな一軒家だ。 「ただいまー。」 帰ってきたのは静寂のみだった。 「ーーって、誰もいねえか。 …ヴァルドは学校の寮に。親父は逃げて、お袋は死んだ。」 「俺が何かを手に入れる日は来るのか。」 ガレンは小さく呟いていた。 コン コン 「ん?誰だ?」 扉から聞こえてきたノック音。ガレンは扉を開けた。 「はーい。」 そこにいたのは緋髪の女性。 「ガレンくん、治療費ありがとね。」 しかし、まだその体は傷を負っていた。 「フレミアっ!?治療はどうしたんだ…。」 「んー…、風術師でも無いやつに満足な治療を受けさせるわけには行かないって言われてね。ちょっとの応急処置で治療は終了だってさ。」 「あ?」 「はぁーっ、マジで腐ってやがるな。」 「ガレンくん、しばらく休めば大丈夫だから。心配してくれてありがとうね。」 「フレミア…。」 「じゃあ、私は宿に帰るから…」 ガレンは出て行こうとするフレミアの腕を掴んだ。 「ガレンくん?」 「フレミア、俺の家に居候ってのはどうだ?」 「え?」 「この国じゃどこに行っても差別が起こる。俺はお前を離したりはしない。」 「でも…。」 「お前、気づいてるか? ーーさっきから泣いてるぞ。」 フレミアの瞳から無意識に零れ落ちていた雫。 「怖いよな。やっとの思いで来た国で、差別されて、怪我も負って。 ーーすぐに信じろとは言わねえ。けど、約束する。 これは『契約』だ。ガレン・ぜファの名において、俺はフレミアを離さない。」 ガレンはフレミアに手を差し伸べた。 フレミアはガレンの手を取った。 「ガレンくん…。うぅ…。」 フレミアは再び泣きじゃくった。 いくら力を持つ魔術師でも。フレミアは少女なのだ。泣くこともある。 「安心しろ。約束は守る。」 翌日からフレミアはガレンの家に住み始めた。 「ってことでフレミア。実は俺、貯金しててな。」 「貯金?」 「ああ、将来す、好きな人と暮らすための家を買うっていうか…。」 「ん?」 「いや、なんでもねえ。家を買うための貯金があってな。それで家を買おうと思うんだ。この前の下層探索でも結構お金が貰えたし、家を買おう。ここもボロいしな。」 ガレンは、言い出すことができずに、その想いを胸にしまった。 「そんな、悪いよ。」 「いや、フレミアのためでもあるが俺のためでもあるんだ。断るなよ?」 「わかったよ…。じゃあ、これからもよろしくね。」 フレミアは新たに買われた家で療養した。家事はフレミアが。依頼ハガレンがこなし、2人は関係を築いていった。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード90開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 27.ガレンの幸せ 【本文】 今日は風霊祭。フレミアとガレンは一緒に風霊祭へと出かけた。フレミアとガレンが出会ってから2年が経った。 ガレンはS級冒険者『翠槍』のガレンになった。 フレミアは採取系の依頼をこなし、『緋演』のフレミアと冒険者の間で呼ばれるようになったが、ほとんどの冒険者が彼女を認めなかった。 「フレミア、出かけるぞー」 「はーい、ちょっと待ってー。」 ガレンがフレミアを呼ぶとフレミアは何か用意をしているようだった。 「わかったけど、なるべく急げよ。」 フレミアも完治まではいかないが、十分傷が治り、依頼もこなすようになった。 「お待たせ。ところで…どうかな?」 ガレンがフレミアの方を見た時、ガレンは固まった。 緋色の髪によく似合う、緋色の髪飾りに、ガレンがフレミアにプレゼントした緋色の服。緋色の天使がそこにはいた。 (いや、どうって似合いすぎだろうが。気持ちを率直に伝えんのも恥ずいし) 「まぁ、いいんじゃねえの。」 頬を少し赤くしながら素っ気なくガレンは言った。 「ふふっ、素直じゃないね。」 表情から読み取ったのか、フレミアが可愛らしく微笑んだ。 だが、2人の関係は同じ冒険者の友達だった。 「よし、行くか。」 「うん。」 2人は街に繰り出した。 「よお、ガレン、隣の嬢ちゃんはフレミアだったか?」 「ラムさん、やあ。」 「こんにちは〜。」 フレミアを見てラムとその周囲にいた冒険者がニヤリとする。 「おい、ガレン。お前依頼一筋みたいな顔してるけど、隅に置けねえなあ。」 「ほんとだよ、こんな可愛い子と同棲するなんてよー。」 「うっ、うっせえなあ、まだそんな関係じゃねえよ!」 「おいおい、“まだ“?お前ぇ、ならその気はあるってことだよな?」 ラムがニヤニヤと笑みを浮かべる。 「うっせえ!フレミア、行くぞっ!」 逃げるようにガレンは去っていった。 「逃げた逃げた。」 「待ってよーガレンくん。」 フレミアはガレンをゆっくりと追いかけていった。 「がははっ、若えなあ。」 「俺らおじさんには眩しいな。」 「違えねえ」 ガッハッハッとラムたちは声を揃えて笑った。 2人は色々な屋台を回った。 (お袋、俺はついに手に入れれたのかな?俺の幸せな時間を。) ガレンは幸せを噛み締めていた。 しかし、人の幸せはさまざまな要因で、容易に瓦解する。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード91開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 27.出現 【本文】 2人は屋台を回っていた。 「そろそろ祭りも終わりか。」 「うん。そうだね。」 フレミアが一拍置いて口を開く。 「ガレンくん。私、ガレンくんに言いたいことが…」 その瞬間。広場に突如“翠色の巨人“が現れた。 「なっ、いつの間に。チッ、フレミア、さがっとけ!」 ガレンは巨人を捕捉し、戦う準備を始める。 「騎士団第1小隊整列!総員!ここは突破させるな!」 騎士服の男が騎士を複数人引き連れて叫ぶ。 「騎士か、助かるぜ。」 「ガレン殿だな?助力を願えるか。」 「任せろ。あんたは…」 「私はジーク。行くぞ。」 「おう!『風音響く空想郷』。」 「騎士剣技。『瞬斬』!」 ガレンの生み出しだ翠槍と、ジークの剣が巨人たちを斬り裂く。 「状況は劣勢。2人と騎士さんたちだけじゃ、いずれ崩れる。 ーー私が、やるしかない。」 フレミアが詠唱を始めた。 そこに、ひと回り大きい巨人が巨人を数十体連れてやってきた。 「あれは、あの時の。やるしかない。私の道に答えを。『緋理演算』!」 フレミアが統べし緋色の盤に数字が浮かんだ。 しかし。 “もうそれに用はない。“ 巨人の目の前に、翠色の盤が現れた。 「あれは、私の?いや、もっと無機質な“なにか“。」 「デカブツゥ!性懲りも無く現れやがって!今度こそ潰す!『風の嘶き』!」 ガレンが速度を上げた。 「ジーク!合わせろ!」 「ああ。」 「『星断風』!」 「騎士剣技。『翠断斬』!」 2人の最高火力が合わさり、10体以上の巨人を葬った。 「でも、まだ足りない。そうだよね?フォーミュラ。」 『肯定します。主人(マイマスター)』 改めて説明しよう。フレミアの魔術『緋理演算』は、術者の視界から状況を判断し、その打破策となる魔術効果を打ち出すのだが、それだけではない。魔力意志が備わっており、現状の最適解を術者とともに出す。 「フォーミュラの見解だと、後何分後ぐらいに崩れる?」 『早くて3分。遅くて7分です。』 「それまでに解析を済ませれる?」 『肯定です。』 「よしっ、行くよ!『演算開始』。」 緋色の盤に数字が浮かぶスピードが上がる。 “演算速度を上げたか。だが、言っただろう。それに用はない、と。“ 突如、数字が止まった。 「演算が止まった!?命令は出してない。フォーミュラ!」 『主人の命令より、演算を停止します。』 「主人…?ーーまさか!」 フレミアが巨人を見る。巨人の盤もすでに停止していた。 「私の演算盤を乗っ取った!?」 “感謝する。愚かな人間。これで、また一歩近づける。“ フレミアの方に、大きい風が飛んできた。 「きゃっ」 ガレンが、風の動きに気付き、フレミアに手を伸ばした。 「フレミアァ!」 (2度と離さない!そう俺は誓ったんだ!) ガレンの思いも虚しく。フレミアは、吹き飛ばされた。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード92開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 28.悲劇 【本文】 「フレミアァッ!」 ガレンの手はフレミアに届かず、フレミアは吹き飛ばされた。 「ガレン殿。今はその場合じゃない。」 「わかってる。こいつら全員逃さねえ。」 ガレンの表情からは強い怒気が感じられた。 「『風霊の怒り』。」 「一つ、余談だ。デカブツ。俺の家はなあ。風の愛し子って言う家系でよ。文字通り、風に愛され、風を愛す家系なんだ。」 “突然何だ。“ 「だからァ、そういう血ってことだよ。」 ガレンが手に、翠の光を浮かべながら激怒する。 「俺はこの血のせいで小さな頃から自由じゃなかった。今、やっと。 ーー自由と幸せが俺の手元にあったんだ。あってくれたんだよ。」 「それをお前は手放させた。 ーー何が言いたいかわかるか?」 “わからんな“ 「死んどけってことだよ。」 長き歴史が唸りを上げる。 「我は風を統べる者。 我が歩む道に風は逆らわず、 我が立つ場所に風は集う。」 槍が、翠色に輝く。 「守れなかった誓いがある。 俺はそれでも風を愛そう。」 風が唸りを上げる。 「我は風に選ばれし者。 我は風に抗わぬ者。 我は風を振るう者。」 最後に、低く。 「聖霊リゲル。 俺の名を許せ。」 そして。 「――『星風の断撃』!」 風の聖霊リゲルの力を借りた、原初の一撃。 星をも断つその一撃は、空間そのものを裂くが如く走った。 轟音と共に、翠色の巨人たちは次々と崩れ落ちる。 十体、二十体、三十体――。 暴風が広場を飲み込み、石畳が剥がれ、建物の屋根が吹き飛んだ。 やがて風が止んだ。 そこに立っていたのは、ガレンただ一人だった。 「……ハァ、ハァ……。」 肩で息をするガレン。 だがその目は、まだ殺意を宿していた。 「終わり……じゃねえよな。」 煙の向こう。 瓦礫の中で―― ただ一体。 あの“ひと回り大きい巨人”だけが、立っていた。 その身体には深い裂け目が走っている。 だが、倒れていない。 「……マジかよ。」 「これでも倒れないのか…。」 ジークが息を呑む。 巨人は、ゆっくりと顔を上げた。 そして。 “傷を負った。ここで計画が途切れるわけにはいかん。撤退する。” 翠色の盤が、再び空中に展開される。 「やらせると思ってんのかぁ!」 ガレンが再び全身に魔力を漲らせる。 だが、全身から翠色の光が霧散した。 「なっ。」 「チッ、魔力切れかよ」 「ガレン殿、ここは引くべきだ…!」 「ジーク、ここで逃せばまた起こる!」 「だが、ガレン殿は魔力切れ。私ももう気力がない。」 「そういえば騎士剣技は気力を使うんだったな。」 「あぁ、向こうもおそらく戦うつもりはないだろう。ここは…退くべきだ。」 ジークが下した苦渋の決断。 「なら俺はフレミアを探そう。」 「ああ、私の小隊も同行しよう。」 「助かる。」 風の巨人はいつの間にか消えていた。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード93開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 29.撤退とその後 【本文】 ジークが下した苦渋の決断をガレンは飲んだ。 「俺はフレミアを探す。」 「私の小隊も手伝わせよう。」 「助かる。騎士団はお前らだけか?」 「今、上層部が事後処理に励んでいる。じきに負傷者を運ぶ小隊がやってくるだろう。」 「なら、行くぞ。」 ガレンは、ジークに渡された魔力回復薬を飲み、フレミアが吹き飛ばされた方向へ、風の魔術で飛んでいった。 「総員!我々、第一小隊は、巨人の攻撃を受けた者たちの捜索へ回る。私について来い!」 「はっ!」 ジークが率いる騎士たちも、走り始めた。 「フレミア、どこに吹き飛ばされちまったんだ。」 ガレンは不安でいっぱいだった。 「あの強さ、あの距離。死んじまった可能性もある…。けど俺は諦めねぇ。必ず探し出すぞ。」 ガレンは魔力が少なくなった体に鞭打ち、必死にフレミアを探した。 「フレミアァ!いるか!」 ガレンが叫んでいる周りで、騎士たちも走り回る。 そこから、時間が経った。 「ガレン殿…。今日のところは諦めるしかない。もう私の持つ魔力回復薬はない。 ーーそれに、今日中に探さなければいけないわけではないだろう…。」 「フレミアは依頼で大怪我を負ってそこからまだ完治してねぇんだよ。」 「それでも…だ。 ーー先程、上層部から、国から通達があった。ガレン殿を1級に認定し、この国の英雄とすると。」 ジークは淡々と告げた。 「おい、本気で言ってんのか。お前!」 ガレンはジークの胸ぐらを掴んだ。 「俺はあいつとの誓いを守れなかった。俺は2年前に、あいつをもう離さないと誓った。 ーー俺は、好きな女1人も守れねえ、弱い人間なんだ…!」 「ーーそんな俺に、褒章を受け取る資格なんてねぇ!お前もわかってるだろう!」 「私だってわかっているさ…!我々は救えなかった。目の前の小さな命も!だからこそなんだ。 ーーこの国の現状を知っている私たちが力を持つことで、フレミア殿のような犠牲者を減らせるんだ!」 ガレンは涙を溢した。 「俺の、大切な人なんだよ。あいつはぁ…。」 ガレンは泣きじゃくり、意識を失った。 ジークも隣にあった壁を殴り、拳から血を流した。 「隊長!おやめください。」 それを見た騎士が止めにかかる。 「私のことはいい。それよりも彼に治療を。私は王城に向かい、至急フレミア殿の捜索願いを出す。」 「はっ!総員、ガレン様を治療室へ運べ!迅速にだ!」 騎士が号令をかけ、ガレンは担架に乗せられた。 ジークは無言で馬に乗り、王城へと向かった。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード94開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 30.ガレンの頼み 【本文】 「それが、去年の風霊祭。 ーー結局俺はフレミアを見つけることができなかった。ジークが国に要請したフレミアの捜索は受理されなかった。」 「ガレン…。」 「俺はフレミアを救えなかった。そんな俺が英雄を名乗る資格は…ねぇ。」 「だから最初に会った時に、英雄って名乗らなかったんすね。」 「ああ。しかもな…ウェルさんはこの事故の被害者として扱われた。 ーーだが、真相は違う。俺は見た。黒装束の男たちが、騒動のどさくさに紛れて、ウェルさんを巨人の真横に横たわらせたのを。」 一同が息を呑む。 「この国は…、フレミアが死んだ騒動さえも、異端者の処理に使ったんだ。 ーーだから俺は、この国を変えたい。」 先日、ラティエルに見せた目とは違う。ガレンの目には光が宿っていた。 「悩んだ。悩みに悩んだ末、この結果だ。国の内側からはジークが。外側からは俺が変えようと話をした。」 「ジークが…。」 ラティエルは呟いた。 「だが、外側からの力はもっと強大じゃないとこの国は変わらねえ。いや、変われねえんだ。」 ガレンは頭を下げた。 「お願いだ。どうかこの国を…止まった“風“を、俺と一緒に変えてくれ!」 ラティエルたちは目を見合わせ、微笑んだ。 「そんな顔で頼まれちゃな。 ーーやろう。」 「僕も微力ながら助太刀させてもらおう。」 「うちは、できることを頑張るっす!」 「私はみなさんのサポートを!」 「ーーありがとう!」 ガレンは少し、涙を流した。 「まずは、この国の冒険者から。俺がギルマスになる。」 「そんなことができるのか?」 「本来なら急にはできない…が、俺には特権がある。」 「1級か!」 「ああ、その特権を使ってあのカスを引き摺り下ろす。」 ガレンが拳を強く握った。 「じゃあ俺たちは?」 「二手に分かれてもらいたい。1組は迷宮の偵察。もう1組は王城でジークとの情報共有。」 「なら、俺らはジークと知り合ってるし、王城へ行こうか?」 「じゃあ、僕らは迷宮だね。」 ラティエルはミストを、ライムはリヴィウスを見た。 「ああ。それで問題ないと思うぜ。俺が女王サマに謁見するついでにラティエルとミストの嬢ちゃんはジークと会ってきてくれ。」 「ライムとリヴィウスの嬢ちゃんは迷宮の下層に、奴らが数を増やしているかどうかを。」 「おう。」 「了解したよ。」 「それじゃあ、各々最善を尽くしてくれ。 ーー俺1人じゃ成し遂げられねえ。悪ぃが、俺に力を貸してくれ。」 「ああ!」 こうして、一国を変えるラティエルたちの作戦が始まった。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード95開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 31.再度王城へ 【本文】 「よし、俺らは今から王城へ向かう。ライムたちもすぐ向かってくれ。」 「了解したよ。」 ガレンが家の扉を開ける。 「行くぞ。」 「それじゃあ、また後でね。」 「ああ、ギルマスも気をつけて」 ラティエル達は王城へ向かった。 「ガレン様。城へ何か御用でしょうか?」 城の門の前に立つ衛兵が聞いた。 「おお、ヘルスか。マインは元気か?」 「ええ、あいつは元気です。」 「陛下に謁見したい。急で申し訳ないんだが、繋いでもらえるか?」 「わかりました。『風音』。応答せよ。こちらクラウゼル城門前。」 ヘルスは魔術を唱え、翠玉を生み出し、それに向かって話しかけた。 「ええ、そうです。……ガレン様が女王陛下に謁見したいとおっしゃっています。ーーはい。かしこまりました。それではそう伝えます。」 通信を終えたヘルスはこちらを向いた。 「陛下はただいま公務なので城の中でお待ちくださいとのことです。」 「そうか、悪いな。急になっちまってよ。」 「いえ。」 「今度マインも連れてきて一緒に飲もうぜ。」 「はい。」 「ありがとよ。」 3人はこうして、城の中へ入った。 「ジークは騎士団のところにいる。俺もついていくぜ。」 「ああ。」 歩いていた執事が、ガレン達に呼びかけた。 「すみません。ガレン様、こちらへ案内いたします。」 「ん?いやぁ、騎士団の方へ行こうと思ったんだがな。」 「それでは、ガレン様はそちらへお向かいください。ガレン様のお連れ様にも、客室を用意しておりますので。」 ラティエルとガレンは通信を始めた。 (どうするんだ、ガレン。) (どうもこうも…、ーー仕方ねえ。予定変更、ラティエルとミストはこいつについていってくれ。) (いいのか?) (ああ。女王サマも公務らしいしな。俺がジークのとこに行ってくる。) (わかった、頼んだ。) (ああ、そっちも警戒を怠んなよ?) 通信が終わり、ラティエルが口を開く。 「構わないぞ。」 「そうですか、感謝します。それではこちらへ。」 ラティエルたちは執事について行った。 「執事さん、道…あってるのか?どんどん降りていっているが。」 「ええ、客人をもてなすのに最適な部屋があるのです。少々お待ちを。」 (ちょっとおかしいっすね。最適な部屋なら目立つとこにあるはずっす。そういえば、書庫にあった王城の見取り図。確か地下には…) ミストが思考しているうちに、目的地についた。 「こちらでございます。」 そこには仰々しい扉。 「どうぞ。」 ーーギギギィ。 執事が扉を開けた。 「ーーラティエルさんっ!後ろっす!」 「っ!『空気』『壁となれ』!」 執事が短剣を構え、ラティエルの首に刺そうとしていた。 「執事…じゃなかったわけか。」 「道理でおかしいと思ったんすよ。」 「今のではやれないか。流石は冒険者の国とも呼ばれるエスフォート王国の冒険者だな。」 執事服を脱ぎ、黒装束となった男。 「貴様も悠長に構えている場合ではないぞ。」 ミストの後ろにも黒装束が着地した。 「2対2っすか。」 「いいや?5対2だ。」 ラティエルたちは黒装束に囲まれていた。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード96開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 32.黒装束との戦い 【前書き】 今日は3.11です、ご冥福をお祈りします。 【本文】 「いくら2人でも、なかなかの魔術師だ。近接で潰せ。」 執事だった男が指揮をとった。 「ーーお前らは、なぜ俺たちを狙う?」 ラティエルは重く口を開いた。 「なぜか…か。貴様らが風に反したからだ。」 「風の加護を受けているのにも関わらず、この国の風を否定した。それだけでなく、先人が作った階級制度を否定した。」 「何が言いたい?」 「ーー貴様らが死ぬ理由としては十分だということだ。」 その刹那。男はラティエルの懐に潜り込んでいた。 「なっ!」 (速いっ!受けきれない!) 「『風の戯れ』!ラティエルさん、対話は無理っす!戦うっすよ!『石礫の息吹(ラピスアモネス)』!」 ラティエルと男の距離を魔術で離し、その直後にミストが放った石の礫を孕んだ風が黒装束たちを襲う。 「ふむ、存外にやるな。…だが、男の方は大したことない。先に女の方を狙うぞ。」 「はっ。」 「じゃあ、対話は諦める。ーーでも、殺しはしない。」 「当たり前っす。」 戦うことを決めたラティエルから、異様な魔力が感じられた。 「っ!その異質な魔力。まさか貴様は『フォルティス家』の末裔か?」 「フォルティス?悪いが俺は…ただのラティエルだ!『空気顕現』『偶像召喚』!『風鷹イーグル』。」 緑色の魔力を全身に宿した鷹がラティエルの隣に顕現する。 「それは霊獣!?やはり『フォルティス家』だな?」 「だから違うって。『貫け、鷹。』」 イーグルが黒装束の男へと突撃した。 「くぅっ!」 突撃を喰らった男は倒れ伏した。 「ーーなんなんだ!何者なんだ貴様はぁ!『風襲(ヴェントス・レイド)』ォ!」 男はラティエルの目前に移動した。 「それ、さっきも俺に使ったよな?もう見たから通用しないぞ。『空剣エア』。」 ラティエルの前に降臨したのは、ただただ美しい、空の剣。 「これは初見せだ。」 短剣を防ぎ、斬り返す。 「『空よ。俺の手に。』」 指揮棒を振るように、エアを振った。 ーーその刹那。男を含んだ黒装束たちは動くことができなかった。 「っ!」 (なぜ、動けない!私だけではない。何かが、あの男にはある!) 「もう抵抗しないでほしい。抵抗のしようがないが。」 エアを霧散させ、語りかける姿はまさに空の王。大空を統べる者は、自分に降りかかった火の粉を払った。 「まだ、遠いっ。努力あるのみっすね!」 「とりあえず、俺の質問に答えてほしい。」 「…。」 男たちは無言を貫いた。 「はぁ。リゲル、頼めるか?」 『ああ!まかせろ!』 「なっ。」 降臨したのは、少女。まさに傾国の美少女。クラウゼル王国の神話に伝わる風の聖霊リゲルに酷似したその姿。 「リゲル様?リゲル様だ!」 『お前らはアタシと契約してるこのラティエルを襲った。ーー本来なら、許さないところだけど、ラティエルに止められたから許してやるよ。』 『アタシからお前らにいうことは一つ。ラティエルはアタシの契約者だからラティエルの言うことを聞け!』 「お言葉ですが、リゲル様。…この男はこの国を、イカロス様の作ったこの国を否定しました。」 『違えな。否定したのはお前ら自身だ。イカロスが望んだのは風が吹く国。みんなが風みたいに自由にできる国だ!ーーそれなのに、お前らはルールで人を、国を、風を縛った。イカロスはこんな国を…望んでいない!』 気付かされた。否、気づいてはいたのだ。でも、その違和感を正すことができなかった。だが、イカロスを誰よりも近くで見てきたリゲルが、その違和感の正体を教えた。 男たちは涙を流した。 「私たちはっ…風を知らぬ間に、縛っていたのか…。」 「でも、まだ間に合う。お願いだ。俺と、俺たちと一緒にこの国を変えないか?」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード97開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 33.黒装束の話 【前書き】 3月11日12時0分の更新をサボりました。 【本文】 「まだやり直せる…か。」 ラティエルの言葉を噛み締めるように、受け止めた男。 「……どうだ?」 「ーー分かった。」 「なら、俺の質問に応えてほしい。」 「なんでも聞け。知っていることは答えよう。」 「助かる。じゃあ、あんたの名前は?」 「私の名前はアラン。異端者抹消集団『風の影』の戦闘部隊筆頭を務めている。」 「『風の影』?」 「ああ。風に反する者を消す組織。それが『風の影』だ。」 「じゃあ、さっき言ってた『フォルティス家』ってのはなんだ?」 「本当に『フォルティス家』ではないのか?」 「ああ。俺は平民だから。」 「ーー『フォルティス家』はその家の当主が不思議な力を持つことで有名だ。」 「例えば、『霊獣使い』ゲイン・フォルティス。歴史の英雄である彼は数多くの霊獣を従えた。」 「ーー他にも、『魔術殺し』ラインハルト・フォルティス。彼は、一度見た魔術は構造を理解することができる。 という風に、『フォルティス家』の人間は特殊な力を持つ。」 「なるほど、けど、俺ではないな。」 「ふむーー。そうか、その眼、その魔力。貴様は『フォルティス家』だと思ったのだがな。」 「ああ、すまないな。ーーじゃあ、この国の騎士団について教えてくれ。」 「この国の騎士団は『風王騎士団』という名前だ。」 「かっこいい名前だな。」 「『風王刃』ゲイル・バトリアを団長に、『風聖騎士』ジーク・カラザを副団長にした、世界屈指の騎士団だ。」 「ゲイル?」 「ああ。世界でも5本の指に入る、騎士剣技の使い手だ。ジーク・カラザも奴には敵わんだろうな。 ーーだが、その性格は腐っている。犯罪者を摘発しても、賄賂を貰い、無罪放免とする。」 「……。」 ラティエルは黙った。 「奴が犯罪者を見逃すことは、我々『風の影』の中でも知られている。」 「そんな奴が騎士団の団長でもいいのか?」 「良くはないだろう。女王陛下もそこは理解しておられる。だが奴には、その蛮行を見逃されるほどの圧倒的な力がある。ーーこの国で奴と渡り合えるのはガレン様ぐらいだろう。まあ、貴様もおそらく負けはせんだろう。」 「……俺?」 「ああ、そちらの女もだ。先ほどの戦いを見る限り、貴様らはS級冒険者の中でも上位に食い込める力を持っているように見えたがな。」 「それは率直に嬉しいな。」 「でも、アランさんも、結構腕利きっすよね?」 「私にはこれしかなかったからな。」 少し悲しげな表情で語るアラン。 「とはいえ、貴様が先ほど我々に放った魔術はなんだ?あんな風の魔術、見たことも聞いたこともないが。」 アランが怪訝そうな表情で問う。 「あれは、俺のユニークマジックだ。」 「ーーなるほど、合点が行った。貴様はユニークマジック使いだったのか。ならあの面妖な力にも頷ける。効果はどういう物なのだ?」 「効果は、空気を操るものだ。」 「空気だと?魔素の入れ物だったか? それを操る能力か。聞いた限り、そこまで強力な物ではなさそうだが…。」 「そんなことないぞ?結構便利だ。空気を固めて壁を作ったり、空気で武器を作ったりできるんだ。」 「ふむ?貴様のあれは召喚術ではないのか?」 「いや、違うな。イーグルも空気から生み出したんだ。」 「なるほど、その能力は貴様の想像力次第で化けるのか。」 「まあ、そういうことだ。」 「ふむ、なら続けようか。どんどん質問してくれ。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード98開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 34.風王騎士団 【本文】 「いや、今のところはもういいぞ。」 「そうか。」 「ああ、俺はこれからガレンに合流する。」 「そうか。ーー定期的に貴様の方に連絡する。私はこの国を内部から調査しよう。」 「助かるよ。じゃあな。」 「部下さんにもよろしく伝えといてっす〜。」 ラティエルとミストは部屋を出て、上へと向かっていった。 「うちはなんとなくで騎士団の訓練場の場所わかるんで、一緒に行くっすよ!」 「助かる、流石はミストだな!」 「えっへん!」 ミストは胸を張る。 「いよっ、王都ギルドの頭脳!」 「はっはっはー!」 リゲルはそんな様子を見て心の中で微笑ましいなと思うのであった。 「多分ここっすね。」 2人が立つ扉の中からは掛け声が聞こえていた。 「うん。掛け声も聞こえるし、多分ここっぽいな。」 「よし、入るっすよ。」 ギギギィ…。 重々しい音が鳴り、扉が開いた。 「ん?誰だ…って、ラティエル達じゃねえか!待たなきゃいけないんじゃなかったのかよ?」 2人を見て驚きながら喜ぶガレン。 「久しい…と言っていいのかわからんが。ラティエル。」 「久しぶりってことにしようぜ、ジーク!」 仏頂面でラティエルに話しかけたのは、厳格な騎士服に身を包んだ男、ジークだった。 「ミストの嬢ちゃん、そっちは何があったんだ?」 「『風の影』に襲撃されたっす。それをうちとラティエルさんで撃退したっすね。」 「なっ、お前らなにやらかしたんだ?それにしても『風の影』を返り討ちにしたのか。今更だけど、やっぱラティエルって滅茶苦茶強くないか?」 「まあ、今代の剣聖も、規格外って評してるっすからね。」 「はぁ!?……そういうことか。そういえば『雷速の剣聖』はエスフォートのギルド所属だったな。』 「そゆことっすー。」 「それで?ガレンさんたちはどうだったんすか?」 「ジークと情報交換をした。今の宮廷はどんな感じなのか。騎士団内の勢力はどんな物なのか。とかな。」 「ならよかったっす。」 そこに、ドアが開いた。 「ーージーク。何故ガレン様以外の平民が入っている?」 重々しく告げたのは、金髪の男。 「団長。彼らはガレン様の友人です。」 「ーーはぁ。貴様は騎士団がどんな場所かわかっていないようだな。風を愛し、風に愛されたものだけが、国のために真摯に働く者のみがここに入れる。そこの平民たちは、何かそういうことをしたのか?」 「団長。あなたがそれを言いますか?贈賄を受け、犯罪を黙認。あなたは国のために真摯に働いているのですか? ーーそれに、先日、風の巨人出現事件が起こった際に解決に尽力してくれたのが彼らです。それでも文句が?」 「チッ、口の減らない若造だな? ーーだが、この平民どもにそのような力があるとは思えんな。もし私に文句があるなら、貴様らの力を証明すると良い。」 「なんか偉そうなデブっすね。」 ミストが小声で言う。 「そこのエルフ、何か言ったか?」 「いやいや、何も言ってないっすよ。」 「まあいい、私に女を斬る趣味は無いのでな、そこの地味な黒髪の男。こちらの模擬戦場に来い。貴様の実力を確かめてやろう。」 そう悪どい笑みを浮かべながらラティエルに呼びかけたゲイル。両者がーー激突する。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード99開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 35.VS風王刃の使い手 【本文】 「来い、平民。この私自ら本物の“強さ“を教えてやろう。」 模擬戦場に移動したラティエルとゲイル。 「改めて名乗りをあげよう。我が名はゲイル・パトリア。神聖クラウゼル皇国の風王騎士団団長にして、風王刃流第13代目免許皆伝。貴様も名乗りを挙げよ。」 「俺の名前はラティエル。エスフォート王国王都ギルド所属、A級冒険者『万喚』のラティエルだ!」 2人が名乗りを挙げ、戦闘体制に移行する。 「ジーク。開始の合図をしろ。」 「仕方ないですね。それでは、始め!」 ゲイルがラティエルに肉薄する。 「壱の風。『風王閃』!」 「速いっ。『空気』『壁となれ』。」 剣に風を纏わせながら近づくゲイルから、後退しながら空気の壁を立てるラティエル。 「ふむ、存外に良い判断。ただの平民というわけではないようだな。ギアを上げるぞ? ーー参の風。『風王斬』!」 翠色の斬撃が走った。 「『空気顕現』。『武装召喚』。『空武装』!」 ラティエルの新技。『空武装』。それは、その名の通り、空気の武装を生み出すもの。空武装を身に纏うことにより、詠唱なしに、空気を操ることができる。 「何もないところから、武装を?召喚士か。」 (召喚士相手の定石。それは、詰めるっ!) ゲイルは超接近戦を狙う。 「いいのか? ーーそこは俺の間合いだ。」 ゾクッ! ゲイルの体を悪寒が…、久しく味わっていない恐怖が巡る。 「『空断』。」 それは、防御不可にして、不可視の斬撃。空気を最大限まで固め、薄い空気の層を作り、空を断つ。 「なぁっ!肆の剣『風王縮』!」 本来、敵との距離を詰める技を、ゲイルは後退のために使用した。 (こいつはっ、今まで私が相手してきた弱者とは“何か“が違う!) (うん、新技の練習。いい感じだな。結構使える。) 「長期戦は危険だ。早急に仕留めるっ。伍の剣『風王断』ッ!」 ゲイルの持つ剣を緑色の光が覆う。 「鋭い一撃だな。」 ラティエルが空武装で生み出した盾に意識を集中させる。 「っ!」 剣を構えながらゲイルは思考する。 (空気が変わったっ。ーーまるで目の前に“巨大な盾“があるかのように。) ゲイルが剣を振り下ろした。 ーーだが、何もなく見えるところで、剣が止まる。 ギンッ! (硬いっ!断ち切れ…ない!) 光が霧散する。 「貴様は危険だ。ここで仕留めるっ!漆の剣。風王刃流奥義!『風神」 ゲイルが力を溜め、剣を持ち上げた。 ーーだが。 「団長。そこまでですよ。模擬戦場で奥義を使用するつもりですか?」 「ゲイル、そこまでにしとけ。それ以上は、“模擬戦“じゃ済まなくなるぜ。」 ジークとガレンがラティエルとゲイルの間に入った。 「ーーくっ、認めざるをえん。私は休憩させてもらうぞっ!」 剣を腰に仕舞い、扉を荒々しく開け、ゲイルは逃げるように去っていった。 「ラティエル、お疲れさん。」 「ああ、それにしても…。」 「どうかしたのか?」 「ーーあの人強くなかったか?」 ラティエルが意外そうな表情で呟いた。 「正直、あそこまでとは思わなかった。剣技も洗練されていたし、奥義があるんだったら、ちょっと危なかったかもな。」 「まあ、あれでもこの国屈指の実力者だからな。」 「でも、新技の感触も上々。どんどん使えそうだ。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード100開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 36.ガレンの願い 【前書き】 100エピソード記念!いつもより文字数を多くしました! 【本文】 ラティエルはゲイルとの模擬戦を終えた。 コンコンッ。 訓練場のドアからノック音が響いた。 「ジーク、訓練はそのままさせといてくれ。」 「ああ。」 「入ってきてくれ!」 ガレンが扉の外に呼びかける。 「はっ、失礼致します。」 そこに立っていたのは、城門の前に立っていた衛兵。 「ヘルスか、どうかしたのか?」 「女王陛下の謁見の準備が済みました。」 「おっ、ちょうどいいタイミングじゃねえか。」 「ガレン様のご友人方も、上階へ御案内します。」 ミストが不審そうな目でガレンを見る。 (また『風の影』じゃないんすか?) (疑う気持ちはわかるが安心してくれ。こいつは俺と飲み仲間だから、そういうことをする奴じゃねえ。) (なら、信じとくっすよ。) 2人は交信を終え、ラティエルを連れて訓練場を出た。 「お二人はこちらの階段をお登りください。ガレン様はこちらへ。」 3人は頷き合い、ラティエルとミストは階段を登り、ガレンはヘルスの開けたドアの向こうへ入った。 「女王陛下、ガレン様がおいでになりました!」 「ガレン、私も貴方の頼みにはできるだけ答えるとは言ったが、あまりにも急すぎるぞ。」 「すみませんね、陛下。」 「良い。それで、要件はなんだ?」 「以前から打診していただいていたギルドマスターの座に座ろうかなと思いまして。」 「……ふっ、ふざけるな!」 突如、怒号が飛ぶ。上階にいた禿頭の男が、怒り始めたのだ。 「そんな話は受け入れられない!」 「静粛に。現ギルドマスター、セティ・パリア。女王陛下の発言を待て。」 「ーーっ。」 セティは宰相の注意を受け、引き下がった。 「ーーふむ。私は問題ないと考えるが…。宰相はどうだ?」 「はっ、私も問題はないと考えます。」 「そうか、ならーー現ギルドマスターよ。反論はあるか?」 リンダが厳格に問う。 「反論も何も…!これまでギルドを盛り上げてきたのは俺の力があってこそです!それなら、そこのガレンより俺の続投の方が良い選択かと思います!」 「なるほどな。ーーだが、ギルドを盛り上げてきたのは貴様の力のみではない。ガレンという宣伝塔。その他の強力な冒険者たち。ーーそういうことだ。私は貴様の方がガレンより優れているとは考えれないが。」 「……っ!」 セティは拳を強く握り締め、ガレンの方を強く睨んだ。 「……覚えておけよ、ガレンッ!」 セティは荒っぽく音を立てて上階から出ていった。 「なんだったんだ?」 ラティエルがセティが出ていった方向を見て、首を傾げた。 「いろいろあるんっすよ。」 「ーーそれでは、私はガレンのギルドマスター就任に賛成する。皆の者、可決を。」 時間が経ち、投票の結果が出た。 「賛成、393!反対、107!よって、ガレンのギルドマスター就任を我々は認めよう!」 賛成していた貴族がワーッと歓声を上げた。 「計画成功っすね。」 「まだ一歩だけどな。」 だが、当初の目的を全て達成することができたため、これは小さくも、大きい一歩となったのだ。 議会は解散された。 「ガレン様、お連れの方々を連れて、こちらへ。リンダ様が待っております。」 宰相が3人を呼び止めた。 「ん?女王サマが?ラティエル、ミストの嬢ちゃん、いいか?」 「大丈夫だ。」 「大丈夫っすよー。」 「だ、そうだ。」 「ご厚意に感謝致します。どうぞこちらへ。」 3人は案内され、リンダが待つ部屋へと向かった。 コンコンッ。 宰相がリンダが待つ部屋の扉を叩いた。 「ガレン様をお連れしました。」 「入って良い。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード101開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 37.女王との対話 【本文】 「入って良い。」 部屋の中から凛とした声が響き、ラティエルたちは部屋の中へと入った。 「急に呼び立ててすまないな。先ほど、ガレンが急な訪問をしてきたお返しだと思ってくれ。」 申し訳なさそうにリンダは話した。 「大丈夫だ、女王サマ。そんで、用件は?」 「宰相、お前は下がっておけ。」 「はっ。」 宰相は部屋を出て行った。 「人払いも済ませたところで本題だ。ーーガレン、お前たちの目的はなんだ。」 「ーー目的?権力を持ちたいだけさ。」 少し冷や汗を掻きながらガレンはリンダの質問に答えた。 (バレ…てはねえな。おそらく向こうもまだ確信は持っていない。) 「良い、隠す必要はない。というか、私はお前たちの味方をしたいと考えている。ーーが、事と次第によっては、今すぐお前たちの首を刎ねなければいけなくなるかもな。」 そう、不敵な笑みを浮かべ、リンダは告げた。 「ーーなら、単刀直入に言おう。」 「俺はこの国を変えたい!階級制度も、極端な風の加護を持たない者への差別も…無くしたい。」 「なら、私も単刀直入に言おう。ーー不可能だ。」 ガレンの言葉をリンダは淡白に切り返した。 「……なぜだ?」 「階級制度による恩恵を受けている者は数知れず。お前もそのうちの1人だぞ?ガレン。」 「それでもだ。風は止まってる。あんたもわかってんだろ、女王サマ。」 「風はまた吹かせれば良い。お前という、風の愛し子がいれば、風は吹く。」 「ーーそうやって、人任せか?」 「何?」 聞き捨てならないというふうな表情を浮かべるリンダ。 「いつの時代もこの国はそうだ。 ーー1級の英雄に任せよう。上位階級の人間に任せよう。そうしてきた結果が現在(いま)だ。」 「力を持つ者は、力を持たない者を守る義務がある。ノブレスオブリージュ。お前にも、上位階級の人間にも、弱者を守る義務がある。」 「ーーあんた、変わったな。」 「何?」 「俺があんたと初めて会った5年前の時とは大違いだ。 ーーあんたはあん時、俺に人を守りたいって言ったよな?」 「……それがどうした。それは今も変わっていない。」 「そこだよ。あんたはこの国を自力で守りたかったんじゃねえのかよ。 俺に言ったよな?『私はこの国を守りたい。君はその手伝いをしてくれないか。』ってな。」 「……。」 「守りたかった。守ろうとした。けれど、守れなかった。あんたは俺と同じだよ。ーー俺も、フレミアを守ろうとした。けれど…守れなかった。」 リンダの瞳から、小さく、涙が溢れた。 「ガレン、私はお前とは違う。お前は、それをしようと努力をした。果てしない…努力を…。」 「けど、私は、諦めたんだ。お前はそのフレミアがいなくなっても、諦めずに努力をした。私はそれが眩しくて、お前を直視することができずに、公務に逃げた。」 「仕方ないと思う。」 ラティエルが小さいが、それでもその場にいた人間に聞こえるように呟いた。 「あんたも守ろうとした。それでも、女王っていう位置が、しがらみが邪魔をした。 その結果あんたは諦めただけで、今も必死に頑張ってるように、俺には見えた。」 「そう…か。なら、まだ報われるかもしれないな。」 リンダは涙を拭い、改めてガレンを見た。 「教えてくれ。いや、共に考えてくれるか?この国を変えるために必要なことを。」 「ーー女王サマ。」 「よろしくな。」 「ああ。」 こうして、ラティエル達はリンダの協力を得ることとなったのだ。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード102開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 38.国を変えるために 【前書き】 投稿頻度これから落ちると思います。 【本文】 「共に、変えよう。」 ガレンはリンダの手を取った。 「感謝する。」 「それじゃあ、女王サマ。階級制度を無くすにはどうするべきだ?」 「この国では、多数決で可決を取る。私が階級制度を無くすと言ったとしても、通らないだろうな。」 「まあ、そんなに簡単じゃねえわな。」 「まあ、な。やはり、風術師じゃない魔術師の有用性を証明するべきだと私は考える。」 「なるほど?」 ラティエルは首を傾げた。 「鈍いな…。その他の魔術師の実績を見せれば良いということさ。」 「おぉ、そういうことなら…。」 ラティエルがガレンを見る。 「ああ、女王サマ。実はな……」 ガレンがライム達が迷宮に向かっているということを話した。 「なんと。それにしても『神剣』か。それほどの大物がお前たちのバックについているとはな。」 「まあ、バックというかなんというか…。仲間っすかね?」 「ふっ、そういう関係も良いな。」 「……何言ってんだ?女王サマ。俺たちも今は仲間…だろ?」 「そう…だな。」 「よし、じゃあ、俺たちも向こうに合流するか。」 「そうだな。ラティエル、あいつらと交信できるか?」 ラティエルはガレンの方を見て、頷いた。 「任せてくれ。『空気顕現』『音響玉』。」 ラティエルの詠唱で、ラティエルの手元に、透明な美しい水晶が顕現した。 丁度其の頃、ライムたちの元にも水晶があった。 ライム達side 「これは…?」 『……ス?…マス?ギ…マス!ギルマス。』 「ラティエルさんの声…ですね。」 「ラティエルかい?聞こえているよ。」 『お、良かった!俺らの方は、女王の協力を得れた!今すぐそっちに向かうから一緒に迷宮を攻略しよう!』 「女王の?それはすごいね。了解した。無理はしないぐらいに進めるよ。」 『ああ、よろしくー…』 プツッ。 通信が途切れ、水晶が霧散した。 そしてラティエルたちに戻る。 「それじゃあ、女王サマ。俺たちはこれから風の迷宮に向かうぜ。サクッと攻略してくるぜ。」 任せろという風に微笑んだガレン。 「ああ、気をつけてくれ。迷宮は危険なところだからな。」 「ああ、ありがとう!女王様…リンダも頑張れよ!」 ラティエルは呼びかけた。 3人は部屋を出ようとした。 「そこのエルフの女子、少し待て。」 リンダはミストを呼び止めた。 「私とお前は似ている。どうにも他人とは思えない。また、迷宮から戻ってきたら、ともに話をしよう。」 「ーーはいっす!」 ミストがパァッと笑みを浮かべた。 3人は扉を軽快に出て行き、迷宮へと向かった。 「おっしゃ!サクッと攻略しようぜー。」 「おう!」 「うち、さっきは活躍あんましできなかったし、頑張るっすよぉ!」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード103開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 39.迷宮にて合流 【前書き】 更新久しぶりになりました。土下座できたらします。 【本文】 ラティエル達は王城から迷宮へ向かって走り出した。 「ちょっとまずいかもな…。」 ガレンが呟いた。 「どうかしたのか?」 「いや…、さっきの通信、向こうは気づいてねえだろうが、『神剣』の声が途切れ途切れだった。」 「あ!下層ってことっすね?」 ポンッと手を叩くミスト。 「ああ、通信は対象との距離が縦方向に離れれば離れるほど途切れ途切れになりやすいんだよ。」 「ん…?まあ、よくわからんが、とにかくギルマス達のところに早く行こうって話だよな?」 「ああ、急ごう!」 3人は速度を上げた。ーー一方その頃、迷宮では…。 ライム達side 「ギルマス、どうしますか?」 リヴィウスは冷や汗を掻いていた。 「翡翠色の巨体に、体を覆う魔力。 ーーこれが『風の巨人』か。ゴルから聞いていた通りだね。」 翡翠の魔力に覆われた巨躯。3体の風の巨人がライム達の前に立ちはだかっていた。 「ええ、単体でA級の力はありそうですね。遅くしましょう。『遅延(ディレイ)』。」 「助かるよ。」 ライムは剣に手を添えた。 「斬り刻む!『緋帝剣クリムゾン』。『我が敵に消えぬ焔を。』」 クリムゾンの剣身から緋色のオーラが吹き出し、巨人に纏わり付く。オーラが具現化し、炎となった。 「ーーこの炎は死ぬまで消えないよ。」 「ーー綺麗です…。」 その効果は凶悪。だが、その焔は美しく、敵を焼く。 巨人が炎を振り払い、足を上げる。 「ッ!ギルマス、下がって!『加速(アクセル)』!」 リヴィウスの詠唱によって、白色のオーラがライムを纏う。 「ああ、助かるよ。」 刹那、巨人が足を力強く下ろした。 ドゴオオン! 周囲に爆音が響いた。ライムがいた場所には土煙が舞っていた。 「おいおい、あんまり汚さないでくれよ。『翠帝剣ヒスイ』。」 剣から吹き荒れる風とともに、煙から飛び出した、翠色の閃光。 「『風の刃よ。』」 風の斬撃が巨人を斬り刻んだ。 「うん、まあまあ、3体程度なら、君のバフがあれば余裕だね。」 「ええ、ギルマスの剣技あってこそです。」 「ははっ、君は謙虚だな。それじゃあ、ラティエル達を待とうか。」 「ええ。」 ライム達は、リヴィウスが持っていたバックパックから、簡易テントを取り出した。 「ここに拠点を作って、ラティエル達の到着を待とう。リヴィウス、周囲に…」 「ええ、結界ですね。『時聖の結界』。」 「うん、流石の結界術だね。」 「いえいえ。」 2人は、小さな戦いを終え、微笑みあった。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード104開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 40.そこにいた 【本文】 ラティエル達side 「おっし、着いた。ここが迷宮だぜ。準備はいいな?」 「誰に言ってるんすか!」 「おう。」 「そんじゃ行くぞ。」 ガレン達は迷宮に足を踏み入れた。だが。 ザンッ! 「「「ッ!」」」 3人が感じたのは鋭い殺気。肌を刺すような殺気。 斬撃の発生元。そこには、1人の女性がいた。 「ーーおや?人…ですか。」 女性が振り向いた。 (さっき感じたあの悪寒は?見る限り、先ほど感じた殺気は俺たちに向けられたものじゃない。多分足元の魔物に向けてだ。ーーそれでも、あの殺気。只者じゃない。) ラティエルは深く考えた。 「どうかしましたか?」 「ーーああ、あんたは冒険者なのか?」 「……なんと答えればよろしいのでしょうか…。私は冒険者ではありません。が、私は逸れてしまった主人と合流したいのです。」 「主人?」 「ええ、主人は下層にいると思うのです。」 「なるほど、あんた、俺たちと一緒に下層に行かねえか?」 「ーーふむ。なるほど、あなたたちはここを調査しに来た冒険者といったところでしょうか?」 「まあ、そうだ。 ーーあんた、とんでもなく強え。あんたがいれば、俺たちも早めに下層に辿り着ける。どうだ?」 「ふむふむ…、なしではありませんね。ーー良いでしょう。私も1人で下層に行くのはめんどくさ…失礼。しんどいので。」 「あ、ああ。助かるぜ。」 (掴みどころがない女だな。こういうタイプは何を考えてんのかよくわかんねえ。) 「それでは急ぎましょうか。」 「ああ。」 3人に、謎の女性が加わり、4人となった。 4人は下層に向かって進み始めた。 「ところであなたの名前は?」 「私…ですか?」 ラティエルが頷く。 「私の名前はスレイド。」 「スレイド、良い名前だな!」 屈託のない笑みで微笑みかけるラティエル。 「少し似てますね…。」 その笑みを見たスレイドが小さく呟いた。 「お二人さん、早く行かねえと。」 「ああ。」 「ええ。」 しばらく進むと、魔物の集団が現れた。 「ゴブリンロードか。」 ゴブリンの軍勢を率いる、巨大なゴブリン。 「少し苦戦しそうだな。『空武装』『空弓』。」 ラティエルにしか見えない不可視の巨大な矢を空気で精製する。 「莫大な魔力ですね。では私も。『斬(スレイド)』。」 その一区切りの詠唱で、ゴブリンたちの半数が、霧散した。 跡形も無くすその斬撃は、洗練されていた。 ラティエルは巨大な矢を弓に番え、引き絞った。 「俺も負けてられない。『空射』。」 ゴブリンロードの体に大きな穴が空いた。 「うん、良い感じだ。」 「俺もだな。ミストの嬢ちゃん、合わせろ。」 「はいっす!『天風撃』!」 「『翠風槍ゲイボルグ』!」 2人の一撃が合わさり、ゴブリンたちが全滅した。 「まっ、ゴブリン相手ならこんなもんか。」 「そうっすね〜。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード105開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 41.地下では 【本文】 ラティエル達が下層に向かい進んでいるその頃。 ライム達は…。 「おや?緑の少年じゃないか!久しぶりだね、何年振りだい?」 金髪の男性がライムと対面していた。 「ーーなぜあなたがここに?」 時を遡る。 テントにリヴィウスとライムが入って、話をし始めたその数分後。 ザッ、ザッ。 階層の入り口の方から足音が聞こえてきた。 「おや?こんなところにテントが!」 演技臭い男の声が聞こえ、ライムとリヴィウスは目を合わせた。そして、ライムが剣を取り、立った。 「すまない、君は冒険者……。」 ライムが質問しようとしたが、あまりにその顔に見覚えがあったため、ライムは口を閉じた。 そして、今に至る。 「“なぜか?“か。緑の少年!僕がここにいるのには、理由が必要かい?僕がここにいるからいるんだよ。」 少し意味がわからない問答をする男。 「あなたは、相変わらず言動がおかしいですね。“師匠“。」 冷ややかな目でそう、師匠と呼んだ人物を見るライム。 「あっはっは!相変わらず君は変わっていないねぇ。」 「そういうあなたも。」 「ギルマス?出ても大丈夫ですか?」 「いいよ。」 リヴィウスがテントから出てくる。 「あ、少年。もしかして良いところだった?」 「何がですか!」 ライムが男の頭を叩いた。 「あはは、冗談冗談。」 「ギルマス、先ほど、その方を師匠と…。」 「良くぞ聞いてくれた!白色の少女よ! ーー僕の名前はカイン・グラディアス!『斬神』だ!よろしくね!」 「ギルマス。この人……。」 「うん、僕の師匠、ありえないぐらい強いんだけど、本当に頭が残念でね。まあ、可哀想な人とでも思っといてよ。」 「お、おーい。ひどいなぁ…。僕は君に剣を教えた偉大な先生なんだよ?」 「偉大…。」 白い目でカインを見るライム。 「またまたひどいなあ。君は年長者を敬う気持ちがないのかなあ。」 チラッ!チラッ! 泣くふりをしながらライムの方を見るカイン。 「おーい!ギルマスー!」 すると、階層の入り口の方から、ラティエルの声が聞こえた。 「あ、新キャラ登場!?」 カインが無邪気に微笑んだ。 「新キャラって…。」 「我が主人(マイロード)。こんなところにいたのですか?」 「あれぇ?スレイドじゃん。」 「おぉ、スレイド。この人がスレイドの主人って人か?」 「ええ、ラティエルさん。主人が名前ではないですが。」 「じゃあ、そこの人の名前は?」 「あっはっはっ!よくぞ聞いてくれた、黒色の少年!」 「ゴクッ。」 あまりにカインのためが長く、ラティエルは息を呑んだ。 「僕の名前はカイン・グラディアス!『斬神』にして、世界最強の剣士!」 背中に差していた剣を抜き、振るう。 刹那。迷宮の壁が“ずれた“。 「そして、そこにいる緑色の少年に剣を教えたのさ!」 そうライムを指差し、自己紹介した。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード106開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 42.『斬神』との出会い 【本文】 「おっと、自己紹介するだけにしていた。君たちはここへ何をしに?」 「さっきからも言っていますが、それはこちらのセリフですよ。」 カインがライムの口に指を当てる。 「まあまあ、緑の少年。僕はそちらの黒い少年とお話がしたいのだよっ。」 浮き足立つように喋るカイン。 「俺?俺たちは、この迷宮の調査に来たんだ。」 「ふーん、冒険者?」 「ああ。」 「ーーなるほど…ね。最低でも『王域』はあるみたい。『天域』にもう足を踏み入れてる感じがするねえ。」 ラティエルを褒めるカイン。 「その年で『天域』。素晴らしいね。」 「『天域』?なんだそれは?」 「あれ、知らないの?スレイド、説明してあげて。」 「ーーはぁ。良いですか?ラティエル殿。まずこの〜域というのは、階級を表すものです。実力の階級をね。」 「下から順に、人域、魔域、聖域、王域、天域、霊域、界域、神域とあります。」 「じゃあ、俺は上から4番目ってことか?」 「まあ、階級では測れないものもありますが、肯定します。」 「ふーん、じゃあ、ミストとか俺の仲間はどんぐらいなんだ?」 「我が主人(マイロード)。」 「ん?少年の仲間の階級?」 「ああ。」 「ーーそうだね、まず、緑の少年は『界域』。白のお嬢さんは『聖域』…、いや『王域』かな?難しいね。お次は、そこの金髪のお嬢さん。君は…。ーーへぇ。」 ミストの力を測ろうとし、ニヤリとほくそ笑むカイン。 「エルフっぽいけど、その年で『原初の領域』に足を踏み入れている。んー。『界域』かな?それと、そこのガサツそうなお兄さんは、『王域』かな?でも、人間にしては異常だよ。」 「そうか、やっぱりギルマスとミストはすごいな!」 「ん?ギルマス?緑の少年が?」 「え?ああ、そうだぞ。」 「すごいじゃないか、緑の少年!成長したねぇ。」 「そういうあなたはいつになったら自立を?どうせ僕がいなくなった後は、スレイド様によいしょにだっこだったんでしょう?」 「いやいや…そんなことは…。」 「その通りですよ。ライム殿。この人は本当に絶望的です。あなたがいなくなってからもっとひどくなりましたから。」 「でしょうね。」 「うえーん、黒い少年、あの人たちがいじめてきたぁ!」 「ラティエル殿、嘘泣きなので放っておいてください。いっつもその手なんですから。」 「ーーチェッ。まあいいや、そうだ、僕がここに来たのは、かつての弟子を弔いに来たのだよ!」 嘘泣きから一点。急に語り始めるカイン。 「弟子?」 「はっはっは、緑の少年!弟子は君だけではないのだよ。それでね、彼の墓はここの最下層にあるらしいからね。リアライズもそう言っていたし、間違いないよ。」 「それって誰の墓なんだ?」 「ああ、イカロス・クラウゼル。僕の弟子にして『風の原初』と呼ばれた男だ。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード107開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 43.斬神と原初 【本文】 「ということは、師匠。あなたは『風の原初』に剣を教えていたということですか?」 「そうだよー。」 あまりに軽快に伝えるため、ガレン、リヴィウスは状況を理解することができなかった。 「まあ、師匠なら納得ですね。」 「『斬神』様ならそういうこともあるんすかねぇ。」 「あれ、僕のこと知ってるの?」 「はいっす、ていうか、うちが小さい頃に会ったことあるっすよ?」 「ん…。ちょっと思い出させてね。」 こんこんと頭のこめかみを叩きながら首を傾げるカイン。するとぽんっと手を叩いた。 「あぁ!王族さんだっけ?そういえば見覚えがあるよ。当時いいモノを持ってるなって思ってね。 多分覚えてたのはそれじゃないかな。久しいね。」 「覚えて貰ってたとは思ってなかったっすね。」 ライムとミストはその力を知るがゆえに驚かなかった。 「うん、とりあえずすごい人の師匠ってことだな。」 1人で勝手にざっくりとした説明で納得するラティエル。 「あはは、マイペースだねぇ。」 「あなたがそれを言いますか、我が主人(マイロード)。」 しかし、迷宮とは思えない平穏さに異常が訪れた。 ドゴオオオォン! 迷宮の壁が打ち破られ、巨大な緑色のドラゴンが2体出現した。 「風龍!?」 ガレンが驚いた。 「おいっ、80階層の階層主(フロアボス)だぞ?ここはまだ75階層だろ?なんでこんなとこにいやがる!」 風の迷宮に詳しいガレン。 「ふむふむ。僕の長ったらしい話を聞いてくれたお礼に、ここは僕が相手をしよう。」 背中に背負った剣を抜くカイン。 「あっ、そうだ。2匹も相手するのは面倒臭いね。スレイド、そっちはよろしく〜。」 「仕方がありませんね。イエス、マイロード。」 スレイドが前に出て、カインと並ぶ。 「僕は右を。」 「なら私は左を。」 すると、カインの横から突如、風龍を超える大きさの龍が現れた。 『ーー私の前に立つなど、恥を知れ、痴れ者が!『斬息(スレイドブレス)』。』 斬撃を伴った風の吐息が広範囲に放たれ、龍を周りの空間ごと抉り取った。 「あはは、良い軌跡だね。腕をあげたね。それじゃあ僕も。」 カインがもう1匹の龍に向かって悠々と歩き出す。 「悩める若人たち。」 「一つ、偉大なる先人からの道標を上げよう。」 「斬撃っていうのはね、斬るまでの過程じゃないんだよ。」 カインがゆっくりと剣を構える。 「『斬』」 誰も、斬った瞬間を見ていない。誰も、その剣が振られるところを見ていない。気付くと、カインは剣を納めていた。 龍が遅れて倒れる。それと同時に、龍の直線上にあった壁が、斬り裂かれた。 「ーー“斬れた“っていう結果なんだよ。」 「これが、“頂点“!」 ラティエルはその軌跡を見て、何かを閃いた。 「衰えてないどころか、どんどん鋭くなっている。」 ライムは未だ追いつける気がしない師匠の偉大さに思いを馳せた。 「ただの斬撃じゃない、斬撃の収束によって、威力を上げてる……。」 ミストはその軌跡を見て、何かに気づいたように。 「これが“神域“…!」 リヴィウスは神域の遠さに驚いた。 「これは文字通り次元が違ぇ…!」 ガレンはその斬撃の格の違いに慄いた。 「これがーー斬撃だよ、諸君。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード108開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 44.斬神の教え 【本文】 「僕が今見せたのは、僕の研鑽の一端。君たちには…、いや、剣を持つ者には、そこ以上に立つ資格がある。剣を持つものなら」 一同は放心状態にあった。だが、ミストはその中でも深く考え込んでいた。 「金髪のお嬢さん、君はさっきから何を考えているんだい?」 「……。」 深く思考の海に沈んでいたミストは気付かなかった。 「おーい、おーい。」 ぽんぽんっとミストの肩をカインが叩くとミストは、はっと気付いた。 「は、はいっす!」 「やっと気付いた?それで質問なんだけど君は何を考えていたんだい?」 「え、えーっと。カイン様の斬撃ってなんか特殊だと思ったんすよ。普通の斬撃ってどうやっても散らばるけど、カイン様の斬撃は散らばるんじゃなくて集まってるというか…。」 「カインの斬撃は進むんじゃなくて、最初からそこにある感じ……発生させる斬撃だと思うんだ。」 急にラティエルが口を開く。 「そこに何本も斬撃を同時に発生させる。だから収束しているんだ。そうだろ?」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード109開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 45.斬神の教え その2 【本文】 ラティエルの推測を聞いたカインはニヤリとほくそ笑んだ。 「へぇ…。」 カインは拍手を始めた。 「正解!というわけではないんだけどね。 ーーでも、そこまで見えてるのはすごいよ。少年。金髪の少女もね。」 「ニアピン賞だからね、正解までのヒントをあげようじゃないか。実際僕は斬撃を集めている。」 カインは頷きながら話した。 「少女の言うとおり、基本斬撃とは、1本の軌跡として放たれる。僕の場合は、複数の斬撃を1本に束ねる…俗に言う収束というやつだね。そうすることによって、斬撃の密度を上げ、威力を上げる。ただ、少年が言った“発生“っていうのはちょいと違うんだよね。」 「僕の斬撃は斬るまでの過程を0にしているんだ。だから、発生とはちょっと違う。」 「……?すまん、あまりわからん。」 「うん、分からなくても良いと思うよ。物事にはたまに、理論にしない方が良い物がある。」 「でもそれって人為的に発生させれるものなのか?」 「うん、良い質問だ。本来ならできないよ。法則を超えてしまっているからね。 ーーけど、それを超えれる物がある。何かわかる?」 「ーースキルっすね。」 「ピンポーン!その通り!僕はスキルによってその芸当を可能にしている。僕のスキルは『無振』。剣を振るという過程を無くすスキルだよ。」 「え?でもそのスキルだったら、ただ剣を振らなくても斬撃が撃てるってだけじゃないか?」 「良いところに気付いたね。本当ならそれはできない。だから僕は、少し“ズル“をしているんだ。」 「ズル?」 「うん、みなまでは言わないよ。教育じゃないからね。あ、そうだ。改めて僕の従者の紹介を!」 そう言い、スレイドに目を向ける。 「この子はスレイド。1500年の間、ずーっと僕についてきてくれた、数少ない僕が名前を覚えていられる子。」 「覚えていられる?その言い方だと、無理矢理忘れさせられてるみたいな…。」 「うん。僕、呪いにかかってんだよね。」 そう言いながら腕を捲し上げるカイン。 そこには禍々しい黒い痣があった。 「『忘却の呪い』。それがこの呪いの名前。この呪いをかけられる前に関わっていた人のことは覚えて置けるんだけどね。それ以降、僕は人の名前を覚えれなくなった。だから、僕は特徴で呼ぶんだよ。」 「我が主人にこの呪いをかけたのは、焔魔神イフリート。我が主人が1人で奴を討伐した時、奴は死ぬ間際にこの呪いを残したのです。」 「人に物を教えることが好きな僕にとってこの呪いは1番嫌なことだった。だけど、今もこうして人に物を教えれてる。だからもう良いかなって。」 「……。」 「あ!忘れてた、緑の少年、これドワーフくんが少年にあったら渡してくれって。」 そう言い、カインが取り出したのは、1枚の紙と、それと一緒に包まれていた短剣。 「ウェポンから…ですか。」 よお、元気してっか、ライム。 今俺は訳あってアズマにいる。その短剣はお前へのプレゼントだ。俺の頼みを聞いてもらうためのな。お前がいらないんだったら周りの奴らにあげとけ。アズマに、ある素材を持ってきて欲しい。神器を作るのに必要なんだ。 虹龍の蹄 帝狼の牙 王鬼の毛皮 虹色の羽 これを持ってきてくれ。報酬は払う。武器でも金でもなんでもな。よろしく頼むぜ。俺らの仲だろ? 「ーーはぁ。」 ライムが呆れ顔でため息をついた。 「あの阿保、久しぶりに連絡が取れたと思ったら厄介事を…。まあ、できたらしようかな。 あ、師匠。ありがとうございました。」 「良いよ、別に。僕最近ずっと暇だしねー。」 「師匠は最下層へ用があるのですか?」 「いや、最下層の一個前なんだよね。王家の墓があるのは。」 「それでは僕たちもそこまで同行しましょう。丁度下層に用があるので。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード110開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 46.『斬神』と共に下層へ 【本文】 話を終え、ラティエルたちはカインたち共に、更に下った。 「最下層には何があるんだろうね。この迷宮は確か一度イカロスが踏破したはずなんだけど。」 「『斬神』さんよ、さっき出てきたあの龍は本来なら80階層のフロアボスだ。このダンジョンは全部で100階層あるって言われてる。」 「ふむふむ、それで?」 「これは俺の推測に過ぎないんだが、恐らくこの迷宮で何か異常が起きている。」 「龍が逃げてきた、つまり下層に龍をも超える怪物がいるってことっすね?」 「ミストの嬢ちゃん、そゆことだ。だからここからは心してかからないといけねえ。」 ガレンが改めて気を引き締めるよう促した。 「うんうん、君も良いね。僕という神域がいながら、一切頼る節を見せない。まあ、実際僕はここからは手を出すつもりはないよ。 ーーだって、後々の楽しみが消えてしまうだろう?ここで僕が干渉しないことで、世界はどう動くのか。楽しみじゃないか!」 無邪気に、告げるカイン。 「ま、これが神域の感覚だよ。師匠の古い友人に会ったことがあるんだけど、その人もこんな感じだったし。」 今更なんだと言う風にライムが言った。 「よし、それじゃあ、進もう!」 「「「「おう!」」」」 道中、現れる魔物を倒しながら、5人は成長して行った。 「あ、ふむ、白髪の子は回帰を操るのね。じゃあ、もう少し人体に対する造詣を深めたら、回帰が使えない状況に陥っても、普通の治癒でも治せるよ。」 「緑の少年は…、うん、神剣召喚をもっとスムーズにできるようにしようか。使った後に気絶しているようじゃ…ね。」 「君は、良い魔術式だね、それはスレイドが使ってる式を組み込むとさらに威力が上がるよ。やってみるといい。」 「少女、君は。うん、一回自分の力で考えてみるといいよ。自分で掴んだ答えは忘れないからね。」 「黒い子、君は斬撃のイメージを間違えている。ーー君の能力…、ああ、そういうことね。アイツも変なことするなぁ。君の能力なら僕の斬撃と一緒のことができる。考えてみるといいよ。」 カインは、ラティエルを鑑定し、興味深そうな表情をしてから、何かに気付いた。 「カインは俺の『空気』について何か知ってるのか?」 「うん、けど、それは僕が話すべきではない。面白くないからね。ーーでも、安心しなさい。君が進む道に必ず答えはある。それは心に刻みなさい。」 「ああ。」 こうして、あっという間に一向は90階層の手前までに辿り着いた。 「これから先も僕は干渉しないから。頑張ってね。」 90階層へと足を踏み入れた。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード111開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 47.カインとスレイド 【本文】 「よし、もう90階層の手前だ。ここには階層主がいる。一度休もう。」 ガレンが仕切り、テントを用意し始めた。 「ふー、ここまで良い経験になった、色々ありがとう、カイン。」 「僕も楽しいよ。暫くダンジョンなんていってなかったからね。」 こうして、一行は小休止を挟むことにした。ミストとリヴィウスはお湯に浸かり、カインとライムは、思い出話を。ラティエルとスレイドとガレンは焚き火を囲っていた。 パチパチッ、パチッ。 火花が弾けた。 「そういえば、スレイドとカインはどうやって知り合ったんだ?」 「俺も気になるな。」 ラティエルが切り出し、ガレンも同意した。 「私と主人の出会い…ですか?」 「ああ、良ければ話してくれないか。純粋に気になる。」 「そう…ですね。思えば、あの頃はもう1500年前にもなるのですか。」 当時私は『原初の龍』様から、下界の管理…いや、監視を言い渡されていました。 度々人間が私の元を訪れ、私を襲いました。 龍の血は人間にとっては秘薬なのですよ。あ、そういえば私まだ名乗っていませんでしたね。私は風を司る王域の龍。『斬王龍』スレイドです。 「龍よ。我が妹が瀕死の状態なのだ。貴殿は何も悪いことをしていないが、血を採らせてもらうぞ!」 たまに高潔な善人もおりましたが、大体が私の血を売り払おうとする、愚者ばかりでした。そんな所に現れたのが、我が主人です。 「やあ、君が無敗の龍さん?」 『あなたは…エルフですか。』 「うん、そうそう。何やら面白い龍がいると聞いてね。ちょっと遊びに来たのだよ。」 『そうですか、何の用ですか?』 「僕と戦ってくれよ。孤高の龍よ。」 『あなたが…私と?』 「うん、君、退屈じゃない?こんなせっまいところで来た人を追い払うだけで。 ーー世界はもっと広くて面白いものが沢山ある。」 『それがどうかしましたか?人間というのは愚かで汚い。私は人間と関わりたくありません。』 「その通り。それが人間だよ。ーーだけど、人を助けるために全力を出せる。それもまた人間なのだよ。」 『……。戦わなくても決着はついているでしょう。あなたは『原初の龍』様を超える実力を持っている。』 「あちゃー、バレるか。うん、あいつとは知り合いだよ。」 『なら尚更ではありませんか。あなたは、自分より弱い者と戦うのは楽しいですか?』 「皮肉のつもり?なら、君は僕からちょっとズレてる。」 『あなたとの違いなんて気にしません。私は下界を監視するのみ。それ以外を知りません。』 「寂しくない?それに君は分かっていない。僕、教えるのが好きでね。今も人間の弟子がいるんだけど、君、彼を見た時ぐらい、僕をドキドキさせてるよ?風の龍なんだよね?じゃあ、斬撃使えるよね?」 目を光らせながら、無邪気に問う。 『……ええ。そうですが…。』 「ならもっといい!僕と旅をしないか?僕、1人じゃ何もできないからさ、丁度仲間が欲しかったんだよね。」 『ーーなぜ、あなたは頑なに拒否する私を誘うので?』 「きみ、名前は?」 『スレイド…です。』 「スレイド、僕がいっちばん楽しみにしていること、何かわかる?」 『強者との出会い…ですか?』 気づけばスレイドはカインと話すのが嫌ではなくなっていた。 「いいや、違う。教育の醍醐味はね…。弟子が師匠を超えることなんだよ!僕が教えた子が、僕を追い越していく。さいっこうにワクワクしない?だから僕は人に物を教える。それが、間違った方向でも。世界の未来を曲げても。“僕“という好奇心は、世界だって止められないっ!もし世界が止めるなら、世界も斬って魅せようじゃないか!」 『あなた…、異常ですね。』 「異常でいいじゃないか。誰も違いなど気にしない。違いを捻じ伏せる強さがあれば、誰も文句など言わない。僕が好き勝手できてるのがそれの証拠さ。ーーで、返答は?」 『そうですね、なしではないかもしれません。』 「へぇ。」 『あなたの話を聞いた瞬間、なぜか胸が高鳴るんです。こんな体験初めてなんです。』 「ーースレイド、それはね。ワクワクしてるんだよ。世界はどんな広さなのか。どんな人間がいるのか。僕も今、ワクワクしてるよ。」 『そう…ですね。役目を放棄しても良いんでしょうかね。』 「役目もしがらみも、全部壊すためにあるんだよ。道を開きたかったら、自分の力で斬るんだ。どう?」 『行きましょう。あなたの名前を聞いてませんでしたね。』 「僕の名前は、『斬神』カイン・グラディアス。スレイド、よろしくね。」 『イエス、マイロード。』 そして、現在に戻る。 「これが、私と主人の出会いです。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード112開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 48.カインとライム 【本文】 「いやぁ、懐かしいね。少年とエルフの里で別れてから、もう随分経つのか。」 「ーーあ、そういえば師匠、里での仕事はどうしたんですか?」 「ん?仕事?……あぁ、そんなものもあったね。めんどくさかったからサボって来ちゃった。」 咎めるように呆れた顔でライムが言う。 「はぁ、長老に怒られますよ?」 「うーん、国王くんと違って、長老はうるさいからねえ。ま、僕の方が長生きだけど。 にしても、あれももう30…40年前ぐらいか。」 ライムと出会った頃、カインは街をぶらぶら歩いていた。 「『斬神』様だー!」 当時、カインは街の子供達に簡単な剣術を教えていた。 「やっ、少年たち。元気にしてるかい?」 「カイン様、いつもありがとうございます。」 子供を連れてきた母親が、カインに頭を下げた。 「あ、構わないよ。僕も退屈しないよ。子供の考えることは面白いからね。」 そんな所に、1人の少年が現れた。緑色の髪をした、木剣を持った少年。 「あんたが、『斬神』だろ?」 「あなた…、あ、あの屋敷の子ね?苗字があったとしても、カイン様にそのような態度を取っては…」 緑髪の少年を叱ろうとする母親を、カインは手で制した。 「まあまあ、面白そうじゃないか。いいねぇ。ーーキミ、名前は?」 「ライム。僕と戦え。もし僕が勝ったら、母さんに薬を買え!」 少年は手にしていた剣を構え、カインを睨みつける。 「あははっ、いいね。僕相手に物怖じもしない。怖いもの知らずってのもあるかもしれないけど…、久しぶりにワクワクしてきた。」 カインは喋りながら、木へ歩き始めた。 「逃げるのか!」 「ん?若いねえ。逃げなんてしないよ。これで君の相手をするだけ。」 そう、木に生えていた、細い枝を手に持ち、ライムに枝先を向けた。 「舐めてるのか!」 「少年、かかってきなさい。まずはその態度を直そうか。」 「なっ。」 カインがいつの間にか、ライムの目の前に立っていた。 「さっ、僕がその気なら君は数えれないぐらい死んでるよ。ま、そんなつもりないけどね。」 「くっ、どうやってあれを?」 「そらぁ!」 またもや、目と鼻の先に、カインが立っていた。 「なんとなくわかった。こうだ!」 ライムも、カインに近づき、剣を振ろうとする。 「へぇ、ちょっと近づいてる。いいね。」 カインの腕が“ブレた“。 「おりゃぁ!……えっ。」 木剣が真っ二つに折られていた。 「うん、及第点。どう?僕に剣を教わる気はないかい?」 「…。」 「もちろん、君のお母さんが治るだけの努力をしよう。」 「あんたについていけば、僕は強くなれるのか?」 「ーーん、君の努力次第だね。僕はできるとは言わないよ。絶対なんてないのだから。ーーけど、今よりはマシになると思うよ。」 ライムは首肯し、カインについていった。 ーー現在、ライムの母親は、カインの知人により、快方へと向かっている。 「師匠、僕はあなたに感謝している。だから、あなたをいつの日か、必ず越えましょう。」 一拍置く。 「ーーそれが、最高の恩返しになるから。」 ライムは誓った。神域を。自分に、力を、幸せを得るための道標を与えてくれた、最高の師匠を、超えると。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード113開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 49.いざ、90階層 【本文】 休憩を終え、ラティエル達は、戦いの準備を始めていた。 「よし、ここからは過酷だ。まず、90階層のフロアボスなんだが…」 ガレンが説明を始めた途端、ガラガラッと迷宮の壁が崩れ、白が露出する。 「なっ、もう嗅ぎつけやがったのか。」 白く、片手に巨大な剣を持った骨の怪物。 「これは…骨か?」 「ああ、こいつが90階層のフロアボス、『巨骨騎士』マグヌス。」 マグヌスが咆哮を上げた。 「『空武装』。」 ラティエルが空気の武装を展開する。 「『颱』」 ミストが、風を纏い、構える。 「『断剣召還』。『断闇剣』。」 黒い闇に反対した、白い剣がライムの元に降臨する。 「俺はリヴィウスの嬢ちゃんと援護に回るぜ。『風音響く空想郷』。」 「私も支援に。『加速(アクセル)』」 各々が自身のやるべきことを瞬時に把握。先に動いたのはミスト。 「ぶち壊すっす!」 風を体に纏うことで加速するミスト。 「『天嵐(テンペスト)』!」 旋風を伴った嵐が、マグヌスの体を斬り裂いていく。 「ーーっ、小さいマグヌスッ!?」 しかし、斬り裂けば斬り裂くほどに出てくる、小さなマグヌス。 「ミスト、落ち着いて!多分マグヌスの能力は、増殖。斬れば斬るほど厄介になる!」 ライムが、小さいマグヌスを一掃し、ミストに呼びかける。 「チッ、面倒っすね!」 「『空剣』。斬ってダメなら、押し潰す!」 空剣を持つことで、空を操る。不可視の層が、マグヌスを取り囲んでいく。 パリンッ! しかし、マグヌスが空気の層を破り、ラティエルに剣を振り下ろす。 「『断闇』!」 ライムの放った斬撃が、マグヌスの腕を斬り落とす。しかし、また、マグヌスは増殖する。 「ギルマス、助かった!」 「構わないよ。にしても、どうするか。」 「恐らく…、この魔物には核があるはず。そうですよね、ガレンさん。」 「ーーそうか、あいつはアンデッド。アンデッドモンスターには核が必ずある!」 「核を狙う。でも肝心の核の場所は…。」 「『空気顕現』『万視鏡』。」 万物を見通す魔道具が、ラティエルの手にはあった。 「ギルマス、核は左胸!ーーけど、分厚い骨の装甲に覆われている!」 「それを破壊するには、それまでにある装甲の破壊が必要。けど、装甲を破壊すれば、増殖する。」 「八方塞がりってわけかよ。」 ガレンが悔しそうに呟く。 「核を装甲ごと一撃で貫く一撃が必要だ。核には破壊の仕方がある。スケルトンの核は貫くことだ。」 「でも僕たちは、斬撃の火力に特化しているから、今のままでは倒せないってことだね。」 「けど、こんなところで、諦めてられねえんだ!『翠槍ゲイボルグ』!」 ガレンが、槍を片手に突進する。が、装甲を少し削って、突進が止まる。 「チッ!とんでもなく硬え。並の一撃じゃ貫けねえぞありゃ。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード114開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 50.VS巨骨騎士 【本文】 マグヌスの核をガレンが貫こうとするが、失敗に終わった。 「うんうん、ただ突っ込むだけでは勝てない。さて、どうする?」 カインは後ろで見守っている。 「なら、断つ!」 ラティエルが空剣を構えた。 「リゲル、合わせろ!『空断』!」 『応!『断魔』!』 ラティエルの放つ、不可視の斬撃とリゲルが放った魔を断つ風が合わさり、マグヌスを穿つ。 「これでも…か。」 「ーーいや、恐らく核が削れてる。奴の動きが遅くなっている!」 ガレンが言った。 「一つの攻撃じゃ、相手に止められる、でも、さっきみたいな複数なら…!やる価値があるっす!」 ミストが、魔力を練り始める。 「ラティエルさん!壁作ってくださいっす!」 「ミスト?ーーあぁ、任せろ!『空盾』。」 一瞬、ミストの方を見たが、すぐに意図を理解するラティエル。 「ガレン、この盾、当分は守れるけど…、魔力をくれ!盾に魔力を纏わせる!」 「ーーわかった。持ってけラティエル。ミストの嬢ちゃん、決めてくれ!」 「僕も渡そうか。」 「私はマグヌスの動きを止めます。『遅延(ディレイ)』。」 「『魔力纏装(マナコーデ)』。」 不可視の盾を魔力で纏う。 マグヌスが、大剣を振り下ろすが、盾に弾かれる。 「当分は持ちそうか?」 「ああ、一概には言えないけどな。」 マグヌスが、黒い魔力を全身から迸らせる。 「なんて、禍々しい魔力っ…。」 リヴィウスが慄く。 闇を纏った黒い巨剣が盾に振り下ろされる。 「グゥッ!」 ラティエルが魔力を盾に供給し続ける。 パキッ! 盾に、ひびが入る。 「やらせるかァッ!」 ラティエルが必死に魔力を注ぎ続ける。 「『翠槍ゲイボルグ』!」 魔術によって槍を形成し、それをガレンが投げ、マグヌスの気を散らす。 槍は、黒い魔力を貫くが、マグヌスの硬い装甲を撃ち破るには至らない。 「『断闇剣』!」 闇を断つ斬撃がマグヌスに放たれる。 「『空気顕現』、『聖槍ロンギヌス』!」 神々しい槍がラティエルの手元に顕現する。その効果は、魔を祓うというもの。 「『魔祓』!」 マグヌスの体を纏う闇の半分が、霧散する。 「ミスト!」 「収束式固定。魔力装填。術式具現。穿て、『原初の風砲』!」 収束された風の砲撃が、マグヌスを穿った。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード115開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 51.戦闘を終えて 【本文】 ミストの風の砲撃が、マグヌスの核を穿ち、破壊した。 グ、グオオオオオオオ! 断末魔を上げ、マグヌスがバラバラになった。 「ーー終わりっすかね?」 ミストが尻餅をついた。 「ああ、完全にコアが破壊されてやがる。いい素材になりそうだ。冒険者ギルドに持って行くか…。」 ガレンがマグヌスの残骸を漁りながら、言う。 「うんうん、素晴らしい!」 パチパチと拍手をするカイン。 「本当は、危なくなったら助けようかと思ってたんだけどね。 ーーまさか、自分で答えを掴むなんて!素晴らしいよ!」 ミストの方を見て、褒め称えるカイン。 「それに、金髪の子以外のみんなの連携も良かったね。特に黒い少年。『魔力纏装』を身につけるなんてすごいね。」 「ん?ああ、あれは…とにかく勘だった。前にギルマスに、炎を剣に纏わせる人について教えてもらったから……」 「うんうん。他人の言葉から着想を得るってのは良いねぇ。…って、少年?」 ラティエルが倒れていた。 「なっ、ラティエルさん?どうしたんっすか!?」 ミストが駆け寄る。 「『回帰』。」 リヴィウスが魔術を使うが、一向に目覚めない。 「僕が看よう。スレイドは周りの警戒を。」 「わかりました。」 カインがラティエルに手を当てる。 「うーん。ーーうん、やっぱり。これか。」 「典型的な魔力欠乏症だね。命に別状は無いし、ちょっとしたら目覚めると思うよ。」 「……はぁ。良かったっす…。」 ミストがほっと息をつく。 「よし、みんな怪我はねえな。一回ここで休憩を挟むぞ。下層には何があるかわからねえしな!」 ラティエル、カイン、スレイドを除いた4人が野営の準備を始めた。 「にしても、無茶するよね、この子。」 「ええ、魔力欠乏症とは…。稀にしかならないですから。」 「魔力欠乏症って、魔力を限界まで使うだけじゃならないんだよね。限界まで使った後の、搾りかすも使わないとならない。相当無理するね。搾りかすを行使するのって、結構精神にダメージが入るから。」 「精神の傷は先ほどの治癒で治っていますが…、当分全力では戦えないでしょうね。」 「まあ、勿体無いし、あれ、しようか。」 「ーーわかりました。では、近づいて来ないようにしておきますね。」 「うん、よろしくー。 ーーさ、やろうか。」 カインがそう言い、背中に背負っている剣を抜いた。 「『神剣』グラディアス。」 「『神癒の剣』。」 グラディアスに魔力を流し込む。グラディアスの色が変わった。 「癒せ。」 カインは、目にも止まらぬ速さでラティエルの体を斬った。 「よし、これで体は大丈夫かな。」 「終わりましたか?」 「うん、無事に成功!」 「それでは、行きましょうか。」 「うん、そうだね。」 スレイドが先に行き、カインは1人で呟いた。 「魅せておくれ、ここからが大変だよ。ーー空の血。」 カインは、ラティエルを見ながら、そう言った。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード116開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 52.再度進む。 【本文】 『巨骨騎士が…れた?そん…在がなぜ…へ?』 そこは暗闇。暗闇の中に一つある、光からノイズを伴った音声が流れた。 『こ…来る…は定か…ないが。警…るに越…とはない。』 音声が途絶え、光が消えた。 「よし、お前ら!進むぞ!」 ラティエル達は休憩を終えた。 「ラティエルさん、もう大丈夫なんっすか?」 「ああ、頗る調子がいいぞ!」 「よかったっすー。」 「俺たちの目的地は99階層。今は90階層を超えた『安全地帯』にいる。ここから9階層降る。できれば1週間以内には降り切るぞ!」 「おう!」 安全地帯を抜け、一行は階段から91階層に足を踏み入れた。 「この階層はっと…。」 ガレンが、本のページを捲る。 「それは?」 「ん?あ、こいつは『迷宮の書』だ。この迷宮の監視者の任を与えられているガムラ・フィルトっつう奴が書いた迷宮記録書だ。」 「実際にここに来たってことっすか?」 「いや、やつは『神の眼』を持つからな。たとえ迷宮の中だとしても、視えるんだよ。」 「『神眼』のガムラっすね。クラウゼル唯一の界域っすよね?」 「ああ。掴みどころがないやつではあるが、いいやつだぜ。」 「ふーん、強いのか?」 「いんや、戦闘職ではないからな。弱くはないけどな。確か…素の戦闘力は魔域ってとこか。」 「ーーッ!」 ラティエルが表情を変え、後ろを振り向く。 そこには、ぬらりぬらりと歩く、二足歩行の狼。人狼がいた。 「鋭い殺気。こいつ、強いぞ!」 各々が戦闘準備をする。 「本にねえ魔物。新種か?」 『……ア〝ァ。』 人狼が喋る。 『何者ダ。ここは我の縄張りダ。』 「喋る魔物…か。」 ラティエルが思い返すのは『魔』。魔物ではなくても、記憶に新しい難敵。 「お前、名前は?」 ガレンが槍を携えながら、質問する。 『我の名前カ?我は『颶風狼』オル、ダ。』 「俺らは、下の階に用があるだけなんだ。通してくれないか?」 『ふム。なおさら通せないナ。ここから先の3階は我の縄張リ。貴様らを通す訳にはいかン。』 「そうか…なら。」 ガレンがゆっくり返答する。 『ッ!』 「実力行使…だよな!」 いつの間にか姿を消していたラティエルがオルに向けて、手にしていた短剣を振り被る。 「殺(と)った!」 『ガッ…』 オルの首が落ちた。 「ふぅ。助かった、ガレン。気を引いてくれたおかげだ。」 「ああ、案外あっけなかった…って!」 首が落ちた死体がガレンに向けて爪を振るう。 「危ないよ。」 ライムがオルの手を斬り落とす。 「助かった。にしても、どう言うことだ?」 「ああ、俺は確実に殺したが…。」 『よくもやってくれたナ。』 オルが首を拾い、自身の頭にくっつける。 『不意打ちを卑怯だと咎める資格はお前にはないゾ。オル。』 そう、オルがいる逆方向から、声が聞こえてきた。 『油断していた貴様の責任ダ。』 『まあ、そうだナ。』 「どう言うことだよ、本当に。めんどくせえなあ、オイ!」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード117開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 53.風を司る狼 【本文】 『我はオル。』 『我はロス。』 『『3階層を統べし、風を司る人狼。ここを通しはせン。』』 オルとロスが構える。 「2匹を相手にしなきゃいけねえか。…が、さっきの再生はなんだ?不死身ってわけにはいかねえだろうし。」 「取り敢えず、俺とガレンでオルの方を倒すぞ。 ーーギルマス、任せた。」 「うん、リヴィウス、ミスト。僕らはこっちだ。」 「じゃあ、僕は上で〜。」 カインはそう言って、スレイド共に、空中に浮かぶ。 2人はオルと対峙する。 『さっきは油断していただけダ。本気で殺ス。』 「また、首落としてやるよ。」 ラティエルは血に濡れた短剣を構える。 「チッ、ラティエル、力が未知数だ。慎重に戦うぞ。」 「ああ。」 すると、ラティエルの体が、視界から消えた。 「時間はかけられん。手早く殺す。」 「さ、お前の相手は俺だ。」 『お前も、黒髪の人間も、1人残さず喰ってやル。』 『『颶風吠』。』 オルが吠え、口から風の一撃が放たれる。 「『翠盾』。」 ガレンが、魔術で盾を形成し、攻撃を防ぐ。 「ここだ。」 ラティエルがオルの背後に姿を現し、短剣を振り下ろす。 『二度も喰らわン。』 が、オルが爪で防ぎ、ラティエルを弾き飛ばす。 「動きが素早いから、空断も当たらないだろうな。」 「一筋縄じゃいかねえな。」 「『空気顕現』『霊弓』。」 精霊の装飾が模られた弓。ラティエルが、弓に矢を番える。 「『風に乗れ(エアランス)』」 『ッ!』 通常の矢のスピードでは考えられない速度で、矢がオルを狙う。 『グッ!』 オルが防ごうとするが、腕に矢が刺さる。 「こいつは『霊弓』。弓に精霊が宿ってるもんだ。」 『チィッ!面倒ダ。』 「ガレン、俺はこいつに矢撃ち続けるから、直接やってくれ。」 「おう。『風音響く空想郷』。『風武万来(ヴェントス・ベリアル)』。」 ガレンの背後に、百を超える武器が宙に浮かぶ。 「こんだけあったらテメエも死ぬかぁ!?」 ガレンが疾駆する。 「『翠槍』!串刺しにしてやるよ!」 『『颶風牙』!』 オルはガレンの槍を牙で噛み砕く。 「隙だな!貫け!」 ガレンの背後に浮かぶ武器全てがオルの体を貫く。 『ガッ。』 「まだまだぁ!」 「これも喰らえ!」 ラティエルが最大限まで引き絞った矢を放った。 『グッ……』 オルが体に武器が刺さった状態で倒れ伏す。 「流石に死んだか。」 「ああ。」 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード118開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 54.再戦 【本文】 ラティエルとガレンが、オルへの攻撃を終える少し前、ライム達は苦戦していた。 『そんなものカ?『颱爪』。』 風で形成された、巨大な爪がライムたちを襲う。 「リヴィウス、下がれ!『水帝剣アイシクル』、『凍れ』。」 アイシクルから冷気が漂い、壁となる。 「ミスト、魔力を。氷壁は当分崩れないから。」 「はいっす。リヴィウスさんは、ギルマスの治療を!」 氷壁の影に隠れたライムたち。ライムは腕に傷を負い、ミストは顔に傷が入っていた。 「あんたの相手はうちっす!魔力装填!術式具現!『始風砲』!」 不完全な原初の風砲が放たれ、ロスを貫く。 『『颱具』。』 風がロスに纏わり付き、硬質化する。 『ふム、颱具を破る威力。侮れんナ。』 颱具がミストの攻撃によって霧散する。 (チッ、魔力があれば原初の風砲で仕留めれるけど…。術式構築の時間がないっす。ギルマスの復帰まで時間を稼ぐっす!) 「『颱』。」 緑色の魔力がミストに纏わり付く。 『ほウ、速いナ。』 ミストが肉薄する。 「『嵐剣』!」 『先ほどの男と違っテ、貴様は火力がないナ。』 「余裕ぶっこいてられるのも今の内っす!」 『ン?ーーあの馬鹿、やられたカ?』 「ギルマスッ!」 「『神剣解放』!『神閃』!」 ライムの切り札が解放される。 『ナッ!ここで受けるのはまずイ!『絶対防御(イージス)』!』 ライムの剣がロスを斬る。が、ロスは無傷だった。 「なぁっ!?」 「参ったな。切り札が効かないとなると…。」 『ガァッ。』 ロスが口から血を吐く。 すると、その瞬間、ロスの背後に風が集まる。 『オル、ヘマをするナ。』 『あア。奴らは強かっタ。先にこっちを殺しテ、2人で奴らを殺スゾ。』 ラティエル達が倒したはずのオルがライム達の目の前にいた。 「ラティエルの方にいたはずじゃ。」 『『颶風爪』。』 『『颱爪』。』 オルとロスが同時にライム達に襲いかかる。 「『空盾』!」 ライムたちの目の前に不可視の盾が形成され、攻撃を防ぐ。 「ラティエル!」 「ライム、こいつらを殺す条件は!」 『『颱砲』!』 ガレンが告げようとするのを邪魔するロス。 「『壁となれ。』」 「同時に討伐。多分5…、いや、10秒ってとこか。」 「その間に殺せば、こいつらは死ぬ。」 『……なゼ、わかっタ?』 「簡単なことだ。お前を殺してから、お前の死体が消えるまで、大体7秒くらいだった。なんのリスクもない不死身ってのは成り立たねえからな。さあ、ラウンド2と行こうじゃねえの!」 再び、激突する。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード119開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 55.VS風人狼オルとロス 【本文】 「さ、ラウンド2と行こうじゃねえの!」 ラティエル達がライム達に合流し、同時撃破を目指す。 「神剣技『神縮』!」 ライムが神剣を片手に、一瞬でロスとの距離を縮める。 『ナァッ!?』 「神剣技『神斬』ッ!」 洗練された斬撃が、ロスを襲う。 (“今は“絶対防御が使えん。わざと受けるか。いや、ここで死ぬとオルも死ぬ。守り一択!) 『オルッ!守レ!『颱鎧』!』 『あア!『颶壁』!』 斬撃が壁を断ち、オルの右腕、ロスの左腕を落とす。 ライムが、神斬を放ち、気絶する。 「ギルマスの治癒は私が!それに並行して支援も行います!『加速(アクセル)』」 ラティエル達を橙色の光が包み込む。 『チィッ!『颶風爪』!』 オルが巨大な爪でリヴィウスを襲う。 「させないっすよ。『無流風』!」 流れを伴わない風がオルを吹き飛ばす。 「そうら、追撃だ!『風武万来』!」 ガレンが数十本もの武器を生み出し、飛ばす。 「『風に乗れ』。」 ラティエルも霊弓でロスを牽制する。 『クッ!』 (左腕を失ったのが大きいか。思ったように動けん。弓もまともにかわせん。一度“死ぬ“か。いや、もうタネが割れている。) ラティエルの弓から逃げながら、思考するロス。 『こうなったラ、オル!やるゾ!』 『ーーあア!』 オルとロスが近付く。 「何をするつもりだ!」 『『颶風』』 『『颱』』 『『『風よ、合わされ。』』』 風が吹く。 風が止んだ場所にいたのは、“2つ“の頭を持った狼。 『ここからが本当のラウンド2ダ。』 『我が名は『颶颱狼』オルトロス。貴様らを喰らう者の名前ダ。』 「合体ってことか?」 「警戒を緩めんな!」 ガレンが促す。 『『颶颱吠』』 空間を抉り取る威力の咆哮がラティエル達を襲う。 「ッ!『空盾』!」 ラティエルが不可視の盾で必死に守るが、パキパキとヒビが入っていく。 「グッ、『魔力纏装』!」 必死に盾を魔力で纏い、耐えるラティエル。 「おっと、少年。それはNOだ。」 「『斬』。」 カインがラティエルとオルトロスの間に入り込み、咆哮を斬る。 「さっきした君への治療は、君への負担がかかるものだ。」 そう言い、背中に背負っている剣を抜く。 「ーーさ、ここからは僕が。この『斬神』カイン・グラディアスが、相手をしようじゃないかっ!」 カインは、まだ見ぬ敵を前に、楽しみで仕方がないという風に、微笑んだ。 『貴様が神域の人間カ。』 「あれ、僕のこと知ってるの?」 『あア、よーク聞かされタ。』 「ふーん、またまた、終わった後の楽しみができたよ。」 ニヤリと不敵に微笑むその姿はまさに神域に足を踏み入れし者の姿だった。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード120開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 56.『斬神』と『颶颱狼』 【本文】 「さ、ここからは僕が相手を。この『斬神』カイン・グラディアスがねっ!」 カインが名乗りを上げ、背負っている剣を抜き、構える。 『我は『颶颱狼』オルトロス。貴様を喰ウ。』 刹那、カインがオルトロスに肉薄する。 「『斬』。」 剣を振るわずに、斬撃を放つ。 『そんなものではないだろウ。『颶颱壁』。』 が、風の壁が形成され、斬撃を阻む。 「うんうん、想定内だね。じゃ、ギア。ーー上げようか。『神貫の剣』。」 グラディアスが、形を変える。 「『貫』ッ!」 (攻撃が変わった。斬撃ではない?恐らく、貫通力に特化した一撃。ーーチッ、核の位置もバレているな。明確に狙われている。) 『『颶颱足』!』 足に風を纏い、視認できない速度で、カインの攻撃を回避する。 「いいねぇ。『封貫』!」 聖なる魔力を纏った一撃が、オルトロスに迫る。 『芸がないナ。『颶颱』ーーっ!?』 風を纏わせようとするが、風が霧散する。 「僕は聖属性の魔力を持っててね。封貫は相手の魔力を封じることができる。」 『ガァッ』 急所は避けるが、足に一撃を喰らってしまう。 『ーー限定的な条件があるナ。』 「……へぇ。ほんとに面白いっ!」 見抜いたことを意外と思うのと同時に、賞賛の表情を見せるカイン。 「御名答。が、そこまで言っちゃうと面白くないよね。」 『死ネ。『颶颱牙』!』 「『神護の剣』。『護』。」 カインが、またもや剣を変形させ、防ぐ。 『『颶颱砲』!』 「『神の護り』。」 『攻撃が通らないカ。』 「そろそろ終わりにしとくかい?『神滅の剣』。」 『ーーなんダ、その禍々しい剣ハッ!』 「ーー『神滅』。」 カインが、剣を振る。その瞬間、迷宮の壁も容易く壊れるような…。異質な一撃が、オルトロスを襲った。 『ガハッ…。』 オルトロスは満身創痍。右手はちぎれ、左腕には裂傷が多く刻まれている。片目が抉り取られている。 「へぇ、殺さないように手加減したつもりだけど、まあまあ耐える」『『颶颱封』。』 カインが、ボロボロのオルトロスに近付くと、オルトロスが詠唱し、背後から巨大な手が現れ、カインを捕える。 『貴様を一度閉じ込め、こいつらを殺ス。』 「うーん。ーーあとはよろしくね。」 カインは脱出できないか悩むが、すぐにラティエル達に後を任せ、その場に留まった。 「師匠っ!?」 ライムが取り乱す。 『『颶颱狼』。』 自身の名を冠する、風の狼が具現化する。 『これで、終いダ。』 「ーーいや、始まりだ。」 風の狼の一撃をラティエルが防ぐ。 『ナァッ!?』 「お前は強いよ。でも、俺はそれでもっ。ーー空気に、干渉する。 ーー『空気(プネウマ)』ーー」 風が止まった。空間が静止する。空気が、空が、ラティエルに応える。 風の狼が、停滞し、じわりじわりと後退していく。 『ーーなぜダ! 脅威は封じタ! 風も我に従っタ! ーーそれが…なぜェ!』 「俺の空は、誰にも汚させない。」 風の狼を後退させる速度が上がる。ラティエルは、一歩ずつ、オルトロスに近付く。 「終わりだ。」 静寂。 「ーー『空絶』」 『いやダァッ……』 オルトロスの核を、ラティエルの攻撃が絶った。 風が、また動き出す。空の支配者は、もういなかった。 【リアクション】 0件 ------------------------- エピソード121開始 ------------------------- 【エピソードタイトル】 57.戦いを終えて 【本文】 ラティエル達はオルトロスを倒した。カインも、拘束を斬り、下に飛び降りた。 「うんっ、素晴らしい!」 拍手をしながら、ラティエルを称賛する。 「流石は空の血…だね。」 ボソッとカインが呟いた。 「カイン、あの拘束は大丈夫だったのか?」 「ん?ああ、あれの効果魔力を封じるだけのものだからね。本当はすぐ脱出できだんだけど…。」 「少年、閃いてるみたいだったからね。無理はちょっとしたようだけど。」 「ああ、というか、気になったんだが、その剣はどう言うものなんだ?」 「ん?ああ、これ?」 と、カインが背中に背負っているグラディアスを抜く。 「これは『全能の神剣』グラディアス。便利な魔法の剣って思っとけばいいよー。」 「ふーん、そういうもんか。」 「ーーみなさん、私魔力そこまで使ってないので、治療しますね。」 「助かるよ。」 ラティエルが感謝を述べる。 「いえいえ。『時霊の祝福』。」 時の精霊の祝福がラティエル達を癒す。 「これ、魔力も回復するんっすね!」 「はい。私も成長してるんですよ?」 と、リヴィウスが誇らしげに言った。 「だが、あの狼の言うこと信じるんだったら、こっから3階層は安全ってことだよな?」 「まあ、そうだろうね。」 ガレンの言葉に、ライムが応じ、首を傾げる。 「オルトロスの情報も、迷宮の書には無かったんだよね?」 「ああ。」 「この迷宮で何か異常が起こってるってのは間違いなさそうだ。」 ライムが、冷静に考え、述べる。 「ああ、そのために、慎重に進む…だろ?」 「そうだね。」 こうして一行は強敵を退け、次の階層へと足を踏み入れた。 『オル…スもやら…と?』 『何者…ない…この階…こと…げ。』 ノイズを伴った不穏な音声が、密室に響いた。 「94階層。なんつーか…。圧巻だなぁ。」 ガレンが呟いた。それもそのはず。ラティエル達の目の前には、20を超える風の巨人がいた。 「 2年前のあん時は、数数えてる暇とか無かったが、こう改めて見ると…なぁ?」 ガレンは激情せず、落ち着いていた。 「どうする?」 「もちのろん、ーー殲滅だ。」 ガレンとラティエルが不敵に微笑み、魔力を練る。 「2人とも、意気込んでるとこ、悪いんっすけど。ーーうちに任せてもらってもいいっすか?」 ミストは、そう言い詠唱を始める。 「術式解放。螺旋定義。術式成立。魔力充填。術式具現。」 工程を踏み、魔力を練る。翠の魔法陣が完成する。 「ーー出力最大。『原初の風葬(アネモス・レクイエム)』!」 風が吹く。 死の風が吹く。 風を受けた巨人は、瓦解し、解ける。 巨人はいつの間にかいなくなっていた。 「ふぅ。成功っす。」 静寂。 「ーーこ、こりゃまたすげえな。」 「さすがはミストだな!」 「えへへっす。」 ミストは照れ臭いのか、頭を掻きながら、笑った。 「ーーけど、ちょっと疲れちゃったんで、こっから先は任せていいっすかね?」 「ミストさん、『時霊の祝福』をかけましょうか?」 「いや、魔力温存で大丈夫っす!いざとなったらお願いしますっす!」 「わかりました。無理はしないでくださいね?」 「わかってるっすよ!」
I.1.どうして俺がアバターに?
前書き Iが異世界。Gが現実世界です 「」は異世界側の人間のセリフ。 『』は陸人のセリフ <>はナレーターのセリフ はラックのセリフです。 「ラック、お前は都会で働いてくるんだぞ!」 小さい頃から親に刷り込まれた。両親は俺に都会で働いてこいと言ってくるのに、田舎暮らしで、碌に畑仕事もしない阿呆だ。 「いいわね、ラック。あんたは将来ここに通うのよ。」 そう言ってお袋が見せてきたチラシは変な名前の学校だった。 「あばたーいくせいじょ?」 「そうよあんたはここで知識を身につけてアバターとして働くの。私の友人が言ってたの、仕事の内容は機密だけど金払いがいいって言ってたのよ。」 「おお、それはいいな!ラック、俺たちは育ててやってんだから将来は俺たちを楽させてくれよ!」 バカみたいな親父だった。今考えて見ると家庭環境は割と悪い方だったと思う。碌に働かないのに楽させろと言ってくるバカ親父。友人に金払いがいいと聞いてすぐさまそこで働くように言ってくるバカお袋。 「うん。」 当時、考える頭が足りてなかった俺は、両親の言うことに頷くことしかしなかった。あの時、断っていればこんなことにはならなかっただろう。こんなバカのサポートなんて、する必要はなかったのに。 『やあみんな!Vtuberの篠海テラだ!こんてらー!』 <こんてらー <今日なにやるのー <きました! <初見ですこんにちは! 後ろの『すぴーかー』から聞きなれたバカの声が聞こえ、俺の目の前にある『ぱねる』2文字が浮かんでいく。 それに乗じ、俺は『かめら』に笑顔を作り手を振る。 アバター育成所で刷り込まれた最初の挨拶だ。 <さて、もう勘が良い方はわかっていると思います。お察しの通り、ラックはVtuberのアバターとして活動しています。日本の陸人が所属するVtuber会社『YOURTIKE』の上層部は、異世界の存在を知っており、異世界のエスフォート王国の国王に掛け合い、日本の硬貨と知識と引き換えに、アバター育成所を建てさせた。その結果絵師などを雇わずに、知識を提供するだけでアバターを手に入れれるようにしたのだ。> 『今日やっていくのは最近話題のRPGFPSゲーム『R(ロイヤル)M(マジック)F(ファンタジー)』をやっていくぞ!』 未来視の魔術で見通したこいつの言動を見て口を動かしながら表情を作ったり、手を動かす。 <きたー! <テラのRMF待ってましたー! <テラゲームうまいからな <5000/いつも応援してます、RMF頑張ってください! 数字の横に『こめんと』が流れる。これを『すぱちゃ』と言うらしい。この数字分、こいつの懐に金額が入るシステムらしい。 『500円スパチャありがとう!頑張るぞ!』 表情を作りながら口を動かす。この一連の業務が俺の仕事だ。 こうして、配信も時間がたった。 『みんなー!今日もありがとう、次の配信は明後日だ!楽しみにしといてくれよ!』 <おつてらー <おつてらー <おつてらー 『おつてらー!』 手を振りながら笑顔を作る。こうして今日の俺の仕事が終わった。 「おう、ラックお疲れさん!飯行こうぜ!」 そう言って俺を誘ってきたのは俺の育成所時代からの友人であるエイトだ。 「ああ、飯行くか。」 <こうして移動する2人。> 俺たちは行きつけの酒場へと向かった。 <酒を飲みながら話す2人。> 「エイト、俺の担当ときたらさ、アバターに遅延がないと思い込んで結構早口で喋るから上手く合わせないといけないんだよ。」 「ラックの担当はいつも楽しそうでいいじゃないか。それにお前からしたら口パクなんて余裕だろ?アバター育成所主席卒業の天才さん。」 「その呼び名はやめてくれぇ」 「ははっ、高精度の未来視魔術に先生からは口パクのテクニックが天才と言われたりしてたお前がなぁ」 「最近副業で疲れがなぁ。大将、焼き鳥3本」 「あいよ。」 「ん?お前副業なんかやってたっけ?」 この店の焼き鳥は絶品だ。酒によく合う。 「あれ?言ってなかったっけ?冒険者。」 「は?」 「あれ、今日はエリンはいねえの?」 「エリンは仕事だ。ってかお前なんで冒険者なんかしてんだよ!」 「ん?稼ぎが足りない。」 「そんな理由で?お前っ」 「あ?そんな理由?お前にもわかってるだろう?金がなきゃ飯も食えねえ。満足した家にも住めねえ。だから金を稼ぐために、冒険者してんだよ。」 「だがなぁ、お前が死んだらどうすんだよ。」 「未来視のおかげで今の所以来達成率100%!」 <にっこり微笑むラック。> 「お前成功率100%の冒険者って。今巷で噂になってる冒険者『万視』ってやつってお前なのか!?」 「知らん。」 「はぁ、まあ気をつけろよ。」 「あーい。」 こうして俺とエイトは別れ帰路に着く。 「明日も頑張りますか!」
〜異世界アバターは今日も働きます〜苦労人は冒険者をしながら真面目なバカを支えます。
舞台は日本。この話はちょっと不思議な高校生の物語。まず、前提として、世界最大級の動画配信サイトEOtubeがある。そこを舞台にEOtuberたちが日々動画を投稿する。みなさんご存知の通り、そのEOtuberの中に、アバターを使い配信をするVtuberというものがある。この話はVtuberが主人公の話なのである。 舞台はエスフォート王国。エスフォート王国王都には『アバター育成所』という場所がある。そこで育成されたある1人のアバター。この物語は彼が主人公の話である。 皆さんは、この物語に踏み込む準備はできましたか?ちょっと抜けたVtuberと、それに振り回される1人の新人アバター。そんな2人のコメディ。最後までお楽しみあれ。
ありがとうございました。
今までありがとうございます。本日をもちまして、星降夜は、noveleeでの活動を終えさせていただきます。最近暫くこちらのサイトで何もしてこなかったので、誰やねんっていう方が多いと思いますが、お気になさらず。今まで僕の小説を読んでくださった方々。小説の文脈が幼稚ですみません。もしかしたらたまーに帰ってくるかもしれませんが、多分浮上はしません。気が向いたら短編を上げるという形になると思います。このサイトで小説を上げる日々。本当に楽しかったです。それでは、また。 よかったら別サイトも見てくださいね!
え、誕生日じゃん。
なんかいつの間にか誕生日を迎えていました。これまで応援してくださった皆様、本当にありがとうございます。これからは別サイトでの活動が主になりますが、こちらのサイトでも活動を頑張っていきますので、これからも応援よろしくお願い致します。
どうかこの夢よ覚めないで
あるところに元は人間だった一匹の怪物がいた。そのものは闇に堕ち怪物と化した。そして、数々の村を襲い、燃やした。ついた異名は村食い。 そんな怪物にも、あるとき、不幸が訪れた。人間の中で、勇者と謳われる者が怪物の前に現れた。 そのあとすぐ戦いになった。怪物はその戦いを通して、一つの感情を取り戻した。死への恐怖である。 そうして決着が着く。 「あなたにも人の人生を歩むということはなかったのか?」 勇者が怪物に問う? グルウウウ? もう考えるということが出来ない体になっている怪物にとってそれは理解出来ないものだった。 「返答は無しか。ならせめてあなたが安らかに眠れるよう祈ります。」 『聖天衝』 そうして勇者の聖なる一撃を受けた怪物。 もともと人間だったためか、かろうじて生き残った怪物は、人間の姿を取り戻した。 そして、森をたまたま歩いていた修道女に助けられ今になる。 「おはよう、ヴァルさん。」 「おはよう。シスター。」 そうして彼は人間の温かさに触れた。 「今日は月に一度の隣村の子達がやってくる日なの。」 「へえ、そうなのか。そういえばシスターは1人で暮らしているようだけど、両親はどうしたんだ?」 「私の両親は『ある怪物』に村を滅ぼされた時に死んでしまったの。」 「なっ。何奴か知らないがひでえことをするやつだ!」 「ありがと。」 こうして、ヴァルはシスターに淡い恋心を抱いていた。 「ごめんくださーい。」 「あら、来たようね。」 「シスターさん、今日は勇者様も一緒なんだよ!」 ヴァルは距離が遠かったため、シスターと子供が何を話しているのかが聞こえなかった。 「失礼します。勇者のエルレインと申しますが…!村食いがなぜここに⁉︎」 「は?俺はもう改心した。今はここでシスターと一緒に…」 そんな時にヴァルの頭に強い衝撃が走る。 「は?シスター…?何を…」 「あんたが数年前に滅ぼした村の娘よ!忘れたとは言わせない!」 そう、シスターの村を滅ぼしたのはヴァルであったのだ…彼は気付けなかった…人間の心を取り戻したとしても、悲劇は戻らないのだと…
【折セカ企画企画】キャラクター案
遠宮真衣(トオミヤ マイ) 神山高校 2年D組 女 いっつも静か。でも怒ると怖い。 2月20日 174cm freccia di luce ちょっと渋めの物。天ぷらとか。 甘いもの。いちごなど うるさくすること 読書、編集、ゲーム 電子機器の扱い方を網羅している。衣装作りもできる。 緑化委員会の委員 映画部部員 「私は〜〜なんですよ…」、「はい?なんで私ががそんなことしなきゃいけないんですか〜」、「別に良いでしょう?」、「は?あんまり怒りたくないんですよ…」 一人称 私 二人称あなた 三人称あなたたち 過去は、昔から本を読んだりするのが好きで、いつしかは電子機器などを触る習慣にもなっていた …ある日、街中であるポスターを見かけた…『誰かの希望になりたい』そのポスターを見て遠宮は本格的に動画を編集することを練習すると決めた。 関係 夏色サイダー様の雨宮仁奈さん 彼女の衣装を作っている。 白色のアズミオ様の春藤迅助さん 映画友達。 せな様の降星瀬名さん 家族馴染みで仲がよく、時には叱ってあげる存在。 サンプルボイス…「本は面白いって?面白いに決まってるじゃないですか…」、「動画編集ならお任せください…」「どう聞いてもここの音程ズレてません?私の気のせいですか?」 以上です。関係はまたできたら付け足します。サムネが見た目です。
世界最強のだじゃれ使いは、黒歴史とともに偉業を作っていくようです。0.プロローグ
僕の名前はオルト。ジョブは祝詞(だじゃれ)使い。魔法型だ。この世界には魔法型、武闘型、生産型、特質型の四つがある。僕のジョブはその中でもユニークジョブという1人にしか発現しないジョブだ。 僕はそのジョブを使って色々な魔物を倒してきた。その功績が買われ14歳で宮廷魔導士に就任、そして今に至る。 「え?」 「聞こえなかったのか?平民。お前は宮廷をクビになった。これは僕様の決定だ!」 と、僕の目の前で追放を言い渡した男は第二王子ムノー。この国の王子。そしてその横にいるのは… 「おほほ、平民ごときが良い気味ですわ〜」 僕の婚約者のツイーホ。婚約者と言っても形だけで、このバカップルはあろうことか婚約者の僕の目の前で浮気をしていたのである。 「恐れながら申し上げます、ムノー殿下。私を追放するということは対魔物宮廷魔導士がいなくなるということですよ?」 「ああ、そのことなら安心しろ。」 その時、僕の後ろから声が聞こえる。彼はバカデーイ。宮廷魔導士の1人で僕を敵視していた。 「俺がお前の代わりを務めてやるよ。」 もう手遅れなのか。そう悟った僕はもう諦める。 「わかりました。ではおとなしく宮廷を離れますね。」 「そうすると良い。二度と僕様の前に現れるな。」
第五回N1 不老の泉と滅亡の帝国。
ギリギリで申し訳ありません。 あるところに『帝国』と呼ばれる国がありました。 帝国は戦争が強い国で、ドンドンと周りの国を滅ぼし、帝国の領土としてきました。 しかし、無敵の帝国でも勝てない国がありました。その国には、噂によると不老の泉というものがあり、その泉の水を浴びると、不老になれるというものでした。不老になれるだけではありません。細胞の自然回復力も底上げする力がありました。 いくら斬っても立ち上がり、また向かってくる。 戦場ではかず多くの死者と怪我人が出ました。 そんな時に私は帝国によって調査を命じられた記者の一人でした。 決して安全な場所ではありません。国の秘密を探るとなると、バレたら首が飛びますからね。 実際行ってみると、そこまで危険ではなさそうな国でした。皆人当たりがよく、本当に戦争中なのかというほどでした。そのため、より一層恐怖を抱きました。 「おや、あなたは外国から来られた方ですか?」 人当たりのよさそな男性がそういう。 「は、はい。ここには不老の泉というものがあると聞きましたが…」 「不老の泉などという名前ではありません。神の泉です。」 「は、はあ…。ではその神の泉に連れて行ってはいただけないでしょうか?」 「はい。もちろんです。それでは、この国の民になるという覚悟がおありで?この国は神王国と呼ばれるほど神に対する忠誠心が高い国です。神が恵んでくださった神の泉の効能だけを得て元いた国に帰ろうという不届き者なのであれば容赦は致しませんよ?」 と、恐ろしい顔で言われる。 「い、いえ、そんなことは決してありません。私もこの国の神は素晴らしいと思っていたところなのです。矮小なる人間に神の力の一端を恵んでくださるとはなんたる優しさ。その神格はとても高貴なのでしょう。」 「おお、分かってくれますか!あなたは見込みがありますね。それではこちらへどうぞ。」 男がそう言い、呪文を唱える。 「『解錠(ロック)』」 後ろの大きい扉が、キキキイと、軋む音を鳴らして、開く。 そこには、たくさんの人がおり、その中心には透明度がとても高い、泉がありました。 「こちらが神の作った都。『理想郷(ユートピア)』でございます。」 「お、おお…」 神の泉を中心とした都はその名の通り理想郷だった。人が笑い、鳥が飛ぶ。色々な音で溢れ、幸福に満ちた都。それが理想郷なのである。 「それでは、あなたも紙の泉の近くに寄ってください。そうすればあなたに神の祝福が授けられるでしょう。」 「は、はい。」 そう言って私は恐る恐る泉に向かって足を伸ばした。近くに寄ってみれば、なんということだろう。視界が真っ白になったのである。 『こんにちは。あなたは新しい国民?いや、あなたは帝国の方ですか。』 「なっ、何故それを?」 『そうですね。話してみてもいいかもしれません。私は決して神などではありません。少し魔法が得意なだけの人間です。』 「なっ、魔法⁉︎遥か昔に滅びたとされるあの伝説の魔法ですか⁉︎」 『ええ、そうです。私は昔から帝国とただならぬ因縁がありました。あなたも帝国の恐ろしさは身に染みているでしょう?」 「なっ…」 『言い返せないでしょう?何故なら、あなたの記憶の奥底には忌々しいものがあるのですから。』 「だからなんだというんだ!失われたものは二度と戻らない。」 『本当にそう思っているのですか?かつて魔法の中には、『蘇生(リザレクション)』というものが存在いたしました。文字通り死者を復活させるものです。』 私はあるはずのない魔法に心が少し傾いた。私は帝国と皇国の戦争時の被害者だ。昔、私の家族や友人は生贄にされた。私を強化するという方針で。私がここにきた理由は契約でもあり、希望でもあったのだ。不老の泉があるのであれば、彼らも生き返ってくれるのではないかと。今の帝国の国王は知らない。私がこの国のエネルギー源を支えているということを。当然私が帝国から逃げ出せば、縛りによって私は死ぬ。だが賭けてみたいと思った。本当にできるのなら、いいんじゃないかと。 『あなたに覚悟があるのならこちらへきなさい。ないのであれば今すぐ引き返すのです。』 「私を舐めないでいただきたい。とうの昔に覚悟などできている!」 そう言って私は一歩声のする方向へ踏み出した。 そして今私は、幸せに暮らしている。そうして帝国がどうなったかは、皆さんの想像にお任せする。では、またこの不思議な不思議な国にあなたも訪れてみるといいでしょう。この『理想郷』に。
鳴り響く
響く。響く。響く。響く。 響いて仕舞えば万人恐怖 響いて仕舞えば万人絶望。 響いて仕舞えば犯人逃走。 響いて仕舞えば喪服着用。 響いて仕舞えば警備到来。 響いて仕舞えば… 何が響くのかわかりましたか?