夜透
30 件の小説感情がない僕は、泣くことを覚えた。
【 そんなしょうもないことする前に勉強しなさい!! 】 【 お前の顔、きもいんだよ!!しねやカス!! 】 【 お前なんていらねえんだ、早くどっか行け 】 「……っは、はあっ……」 またこの夢か… 僕の名前は 小林 港 ( こばやし こう ) 。高校1年生。 みんなが思ってるように高校はそんな簡単なところじゃない。 僕は入学して1週間が経った頃、虐められた。 理由はノリが合わないから だそう。俺はいつも放課後殴られている。 みんなが行ってる高校も、そんなところなんですか? 僕は 顔がキモい だけで罵りられ 僕は 空気を吸う だけで殴られ 僕は 言葉を喋った だけで蹴られる。 だけど僕は、そんなこと興味無いし、人間にも興味を示さない。 人間というのは悲しいもの。 誰かを虐めないと 誰かを罵らないと気が済まないただのマスコットキャラクターだ。 僕は、そんな人間がしょうもないし、僕が人間っていう事実も知りたくない。僕が人間なのも嫌だ。 人間 という ただのマスコットキャラクター を壊したい。 「……」 そう思いながら、僕はカバンを持って学校へ向かう。 寅 『おっと〜笑笑 また糞がやって来たぞ〜笑』 摩耶 『きもすぎ〜笑』 「……」 またか。 そう思いながら僕は自分の席に座った。 しょうもない僕の悪口を聴きながら。 摩耶 『…は?無視?』 寅 『懲りないなこいつは。ほんとつまんねえ。』 つまんねえのはどっちだよ。 摩耶(まや)とかいう女は僕の事をスマホで撮ってくるし 寅(とら)とかいう男はいつも僕の事を罵る。 僕の事を目立ちさせてるのはお前らだろ。笑 「…ほんと、しょうもねえ…笑」 あ、やっべ。 僕はやってる事がつまらない人間さんの目の前で思わず酷い言葉を話してしまった。 でも本当にしょうもないんだから、仕方がないと思うんだけど 寅 『あ?なんだ、ゴラ。文句か?』 摩耶 『あっれ〜?激アツ展開!?』 教室なのにも関わらず、寅は僕の事を殴る準備。 摩耶はスマホで動画を撮っている 他のクラスの人達は僕達のことを見ているだけ。 助けようとする人間なんて、そういなかった。 ガラガラ… 寅 『…くっそ。』 摩耶 『つまんな。』 僕を殴ろうとした瞬間、先生が入ってきた いつもは遅いのに、今日はどうしたんだろう 先生 「転校生 が入ってきた。 ほら、来い。」 転校生 か… どうせまたつまらないマスコットキャラクターだろう、とそう思っていた 『……』 モブ 「イケメン……」 寅 『……』 摩耶 『イケメンじゃん、アイツ…』 「……」 『…俺の名前は 齋藤 郁(さいとう かおる)です!よろしくね!』 そいつは呑気に笑う。 このクラスが、イジメをしていることも それを相談してもなんも言ってこない先生がいることも知らずに。 先生 「…えー、今日来てきたばっかの郁くんだ。みんな仲良くしてやれよ。」 先生はそれだけを言い残し、教室を出ていく。 なんて最低な先生なんだろう。 『…えっと……』 そしてなんでこの僕がコイツと席が隣なんだろう。 神は、僕の事を見ていないのか? 「…僕の名前は港。仲良くするつもりないから。」 俺は郁とか言うやつに聞こえるようにそう言う。 そう言うと、いつも通り寅と摩耶が笑いながら僕の所にやってきた 摩耶 『えー、冷た〜笑』 寅 『ひでえやつだよな、こいつ笑 あ、ちなみに俺の名前は 寅 で』 摩耶 『うちの名前は 摩耶 でーす』 そう言って2人はピースをする。 なんだ、そのポーズ。痛いやつだなほんと。 そう思い、僕はスマホを弄る 寅 『…こいつの事は奴隷として扱えよ笑』 摩耶 『こいつ殴っても蹴っても何も反応しねえから笑』 寅 『こいつマジキモい笑』 そう言って寅は僕の頬目掛けて殴る 「……」 寅 『ほらな?なんも言わねーだろ?なんでもしていいからな〜』 (寅が港の髪を掴む) 「……」 髪が痛むだろ と言いたかったが、それを止めた。 今は転校生の前だ。我慢我慢。 きっとこいつも、寅と摩耶の味方であり、僕の事を助けない。 『…そういうしょうもない事には俺乗らないよ』 「……!」 『港くん、大丈夫?』 コイツはそう言い、俺の前に手を差し出した。 なんだこいつ、悪趣味だな。 寅 『は…なんで、お前…』 摩耶 『こいつと同じ事してやろうか?笑』 寅と摩耶は転校生にそう言う。 この転校生もバカだな、大人しくコイツらに従えばいいだけの話なのに。 その方が安心だろ。 『…いや、なんで君達が決めるの? 俺がそうしたいからしてるだけだって。君達にもう用はない』 『行こ、港くん!』 「…は、」 コイツはそう言って、僕の手を掴んでそのまま教室を出た こんな事は初めてだ。 なんなんだよ、こいつ。 『港くん、大丈夫だった?』 僕と郁は、人影がないような場所に来た。 「……」 コイツも、同じ人間。 どうせ僕をいつか捨てる。 人間は、いらなくなったものをゴミにして捨てるんだ だから僕もいつか、こいつに捨てられる。 信じたらダメだ 『怪我してる…保健室どこか分かる?』 「……痛くないし、どうでもいいだろそんなこと。」 僕はいつも殴られてきた。 放課後も アイツらがイライラしてる時も 僕は殴られてきた。だからもうどうでもいい。 …痛みも、もう感じない。 『どうでもよくなんかないよ…!!港くん、保健室教えて。』 郁は、真剣な眼差しで僕の事を見つめた 僕は心配する人間を見たことがない。人間はいつも見て見ぬふりをする。 郁も、そういう人間なのだと思っていた。 …でもこいつは、違うのかも。 「…ついてきて。」 僕はそう言い、郁の手を繋いで歩く 『…先生、いないみたいだね』 「……保健室の先生、出張行ってるから。」 『でも任せて!俺前の学校で保健委員だったから怪我人の人の世話とか見てたからできる! 怪我、見せて。』 「……」 どの傷を見せればいいか分からなかった。 僕には、沢山傷があったから。 『…ごめん、触るね』 郁は何かを感じ取ったのか、僕の上着を脱がす 『……』 郁は僕の傷を見て、驚いていた。 まぁ、そりゃそうだよな。 僕は、学校の人にも虐められ 家の人にまで虐められる。 あの夢は、施設の頃の嫌な思い出だ。 僕はあの頃の夢を今でも覚えている。 『…これ、ずっと…前から?』 「……別に」 『そっか… じゃあもう慣れたんだね』 「……」 ソイツは背中の傷に消毒を付けながら話した 「って……」 消毒が染みて痛かった僕は、思わず口に出てきてしまっていた 『…! ごめん、大丈夫?』 「痛い」 と言えばいつも殴られる僕は、『大丈夫?』 と声をかけられた事がなかった。 昔から、痛いといえば無視をされ、殴られる日々を送ってきた。 だから僕は高校入学をしてから家を出て、一人暮らしをしている。 なのに、虐められて殴られる。 いつも殴られてばっかりだったのに、心配されるのは初めてだ 「……別、に。」 僕は少し、声が震えた気がした 『すいません!!遅れました!』 授業に20分も遅れたのは初めてだ。 そして保健室に行ったのも 湿布やデカい絆創膏を貼ってもらったのも、初めてだった 先生 「今度は気をつけろよ」 『はい!! 港くん、席戻ろ』 僕はそう言われ、コイツと一緒に席を座る 摩耶 『きっしょ… 味方作りやがって』 寅 『ほんと、気持ちわりぃあいつ。』 いつも通り、陰口をいわれる。 だが、いつもやってる僕の足を踏むのはしない。 郁が隣なのもあるのか。 別にやってもいいのにな。 『……気にしないでね』 「……」 気にしないで って、僕気にしてないのに。 そして気づくとまた放課後。 僕はいつも通りアイツらに呼ばれた 寅 『来い。』 「……」 いつものか、と思いながら僕はアイツらについて行こうとする 『……港くん!!一緒に帰ろう!』 「……!」 僕は初めて、誘われた。 でもアイツらはイライラしたように郁に言う。 摩耶 『…ごめんね〜郁くん。こいつうちらとのヤクソクがあるからさ〜』 寅 『そうなんだよ〜ごめんな〜?』 コイツらはヘラヘラしながら郁にそう言う。 逃げるだろうな、と思いながら聞いていた 『じゃあ、俺も行くよ。それならいいだろ?』 寅 『……それは困るな…』 『なんで?人に見られていいヤクソクなんだろ?なら大丈夫じゃん。俺も行くよ』 摩耶 『……寅行こう』 寅 『…クソが』 今日は…殴られないのか… 今日は、蹴られたりしないんだ… そう思うと、なぜか心が軽くなった気がする。 『…港くん!帰ろう!』 「……うん。」 ──────────── 『……あれ、もしかして同じマンションに住んでる?』 「……僕ここだけど」 『え、まって同じじゃん!!』 郁は飛び跳ねて喜んでいた。 僕とマンションが一緒なだけでそんな喜ぶ? 「……なんでそんな喜んでんの」 『俺友達いたことなかったんだ。』 「……」 こんなに笑顔が素敵な奴でも、友達いない事なんてあるんだな。 僕はそう思いながら郁の話を聞く 『…本当に港くんからしたら気持ち悪いと思うんだけどさ。 ……港くんが体に傷が多いのも、港くんがしょうもない奴らに虐められてるのも…俺…嫌なんだよね、』 「……なんで」 『…俺の……おれの、』 “ 唯一の友達なのに って思っちゃうから ” 「……!」 初めての感覚だった。 こんなに、こんなに…僕が唯一 人間になっていい と思ったのは 初めてだったんだ。 こいつの前でなら、泣けるかもって、 こいつの前でなら、笑えるかもって、そう思えた気がした 僕は多分、…… こいつのことが、 …… 好きだ。 『…じゃ、じゃあまた明日』 「…うん、また明日」 僕はそう言って、初めてこいつの前で笑う。 するとこいつは顔を赤らめて、急いで家へと帰っていった 僕も、急いで自分の家へ帰った。 ──────────── 僕は自分自身で 感情がない と思っていた 僕の大切な存在の人が亡くなっても、泣けなかったから。 僕は、学校で唯一の親友の 真琴(まこと) という男の子がいた。 僕の初恋で、好きだった。 バレンタインデーの時に、真琴は僕の為にチョコを買おうと外に出ると、信号無視の車に轢かれて亡くなってしまった。 僕のお母さんと真琴のお父さんが話してたんだ。 ……真琴は… “ 即死 ” だった。 医者も手に負えないくらいの被害だったって。 警察が見つけた時には、もう息を引き取っていたらしい。 それから僕は真琴の葬式に行った 葬式には、黒いスーツの人達が沢山いて、僕の両親も黒いスーツを着てた。 僕も、中学の制服を着た。 真琴の青くなっている顔を見て、死んだんだ と実感した。 したけど、泣けなかった。 両親や真琴の友達、真琴の両親、おじいさんは泣いてたのに 僕は泣かなかった。 それを見た僕のお父さんが、 「真琴くんが死んでいるって言うのに、なんで泣かないんだ…」 って、言った。 僕は泣けない自分自身が 憎かった 恨めしかった 呪いたかった なんで泣けないんだって、思った。 だけど、泣きたいと思うほど涙が出なくて、どうすればいいか分からなかった。 それから僕は、学校でも家でも孤立して、今この状況だ。 「……真琴…」 いつも寝る時に、葬式の頃の夢を見る。 「お前なんていらない」 と言われて、責められて。 でも僕は、 苦しい と言ってはいけない存在だから、 虐められて当然なんだ。 僕というニンゲンは、むしろ虐められていた方がいい。 そう思いながら生きてきた。 だけどもう、限界が来そう。 助けを求めたい。 苦しい って、その一言を言いたい。 でも、無理だ。 僕は、 「助けて」 って言う資格がない人間…いや、ロボットだから。 「……」 今日もまた、食欲がない。食べる気が起きない。 ピンポーン… 「……誰だ」 そんな時、家のチャイムが鳴る。 家のチャイムが鳴ったのはひさしぶりだ。誰だろう 『よ!!夜ご飯一緒に食わね? お母さんがせっかくならって!!』 郁か…親が来たのかと思ってビクッとした 「……」 本当は一人でのんびりしたかった。 だけど今日は、誰かといたい気分だった 「いいよ、食べよ」 『…! うん!!』 ──────────── 『港くんのリビング、広いね』 「……港でいいよ」 なんだ、この気分… ぼく、頭でも打ったか…? 『…港!』 「……」 【 最低だな 港。 】 「……!!」 なん…で、 『…大丈夫?』 【 お前は虐められても大丈夫な人間だもんな〜笑 】 「……っは、」 『…港…?』 【 港なんて、産まなきゃ良かった 】 「……ひっ…」 息が、苦しい。 なんで、ぼく、こんなに…くるしいの… 『…港くん!!俺はここいるから!』 手が震える。 声も出ない。 人間が、 怖い。 「……こわい、」 『…港…くん…?』 “ 真琴の代わりに港が死ねばよかったのに ” 「……っ…!!」 僕が…いちばん言われたくない言葉… 僕だってわかってるよ、真琴の代わりに僕が死ねばよかった なんて… だからいっぱい自分で傷を増やしたんだ…!! 『……港くん、大丈夫…大丈夫だから…』 「かお…かおる、怖いよ…」 なんでこいつがいる時に…フラッシュバックなんて、 なんで…なんでだよ… 『……ごめんね』 ギュッ… 「……!!」 『…好きな人が、俺の前で苦しがってるんだ 我慢なんて、できないよ。』 そう言って郁は、僕の事をギュッと抱きしめてくれた 初めて人の温もりを感じた。 こんなに、気持ちいいんだ、人の温もりって こんなに落ち着くんだ… 「……ごめ…」 『謝らないでよ。これは俺がしたくてしてる。港くんは、』 “ 悪くないよ。 ” 「……」 初めて、僕を、「小林 港」 という人間を認めてくれた気がした 僕は、目から涙が出そうだったけど、堪えた こいつには…僕の事を全て言える気がするって、 そう思った。 『…港くんが辛いことや苦しいことがあったら俺、話聞くから』 これで確信した こいつは僕の話を聞いてくれる。 そう思った俺は、口を開いた 「…僕…さ、大切な人が亡くなってしまったんだ。」 『……!』 僕がそう言うと、郁は悲しそうな顔をしていた 「…それでも僕、泣けなかった。 葬式の時に言われた。 「なんでお前は泣けないんだ」って。 それから、家でも、学校でも、そういう扱いになった。 ……だから、傷も多いし、虐められるのにも慣れてる。 僕は…… 虐められて当然なんだ、と思ってた。」 僕は僕自身が全て思っていたことを郁に話してしまった。 無意識だった 僕の話を聞いた郁のことを見ると、 …… 泣いていた 「……なんでお前が泣くんだよ」 『…ごめん。』 郁は涙を拭きながら、僕にこう言った。 『…俺はさ、大切な人…が、亡くなった事なんてないから、港くんの気持ち、分からない。』 「……だよね、ごめん」 「…おかしいよね、やっぱり。泣けないなんてさ、笑」 僕はいつも通り無理に口角を上げる 元気だよ、ぼく。 『…知ってる? 人間ってね、1番苦しい事や辛い事があったら、想いを隠すんだ。』 「……どうやって、?」 『脳がね、「辛くない」「苦しくない」って、勝手に思い込むの』 人間って、苦しい事と辛いことがあったら想いを隠すのか…? 『…港くん、港くんが大切なこは、何が好きだった?』 「……漫画が好きで…アニメも、好きだった」 『何の食べ物が好きだった?』 「…漬物のキュウリを美味しいって言って、たべてた…」 それで…僕には合わなくて、真琴に上げたんだっけ… ……あれ、僕… 「……っ…(泣)」 泣けてる…? 『……港くん、その子はどういう子だった?』 「…元気、で…明るくて…こんな僕でも、友達になってくれて…」 「……それで…それで…っ…(泣)」 真琴は…誰よりも、人のことを想って… 僕の、好きなチョコレートを買おうとして… 「……っ…うっ…(泣)」 うどんが誰よりも好きで… 納豆は嫌いで… 「……っうっ…ふーっ…(泣)」 『……港くん、おいで』 優しい笑顔をしてる郁の元へ、僕は急いで行った 「…かお…る…っ…(泣)」 『……うん、港くん。しっかり泣けてるよ。』 『港くんは、虐められていい人間でも、感情がない人間でもない。 ただ、港くん自身が、 泣いたら壊れる って、勘違いしてただけなんだ。』 そっか… ぼく、泣いたらダメって、勘違いしてただけなんだ… 「……こんなぼくでも、泣いていいの…?」 『…いいんだよ、 だって港くんは、』 “ 人間 なんだもん。 ” 「……うっ…かおる…っ…(泣)」 『……つらかったね。』 僕は、初めて人間の前で思いっきり泣いた。 真琴のことも、摩耶と寅のことも、 本当は辛くて、苦しかった。 葬式の時も、本当は泣きたかった。 ただ、僕自身が 泣くな ってブレーキをしてただけなんだ。 郁は、こんな僕でも 泣いていい って、言ってくれた。 こんな僕でも 苦しくなっていい って、言ってくれた。 ニンゲンはただの マスコットキャラクター だと思っていた僕は 少しずつ、人間が好きになってきている。
ヒーローじゃなくても
朝5時、俺はいつもより早く起きてしまった。 「……」 久しぶりだ、ギターに触るのは。 今までスマホとイヤホンしか触らなかった ギターに触る余裕なんてなかったんだな、と初めて実感する。 「ヒーローじゃなくてもいい」 って、凛都はそう言ってた。 だけど、ヒーローじゃなかったら俺は何者なんだろう。 俺は弱くてもいいのか? 俺は強い方がいいのか? とはいえ、また強くなったら苦しくなる。 みんなにまた、心配をかけてしまう。 俺は、みんなに心配してほしくない。俺のことで負担をかけられたくない。 ……俺は一体、どうすればいいんだよ… そう思ったまま、俺はギターを膝に乗せた 「……」 考えることをやめた訳じゃない。 むしろ今も考えてる。 ただ、これ以上考えたら、また壊れる気がした。 弦にそっと指をかける。 力を入れすぎて、少し音が濁った。 「……下手だな。」 昔なら、ここでやめてた。 ここでやめて、音楽を聴いて、やっぱりしたくて。 完璧な音を出そう出そうって。 完璧じゃないと気が済まなかった。 でも今は、 やめなかった。 もう一度、同じコードを鳴らす。 今度も、お世辞にも 綺麗 とは言えない。 それでも、 「…音、出てる。」 誰かを救ける為じゃない。 誰かの太陽になるためでもない。 ただ、 俺がここにいる って確かめるみたいに。 歌わなかった。 声も出なかった。 それでも、ギターの音が朝の部屋に響いた。 理由は…まだ分からない。 だけど、 「…歌っても、いいのかもしれないな」 そう思えたのは、昨日以来だ。 アラームの音が鳴った。 「……いつの間にか寝てたんだ…」 朝5時に起きて、もう準備しようと思ってたのに 俺、いつの間にか寝てたんだ。 楓 「…太陽、あれ起きてる」 朝に見る楓先輩は久しぶりに見た。 「起きてるよ。」 楓 「今日、学校に行けそうか? 行けないなら先生に言っとくけど。」 昨日分かったけど、俺の休みの連絡は全て楓先輩がしていてくれたらしい。 ……絶対女の子にモテる奴だろ、この人。 「…途中から行ってみるよ。部活にも参加する。 凛都と伶先輩にもそう言っておいて。」 楓 「……分かった。」 楓先輩は少しニヤッとしていた。 俺が部活、そして学校に行く事が嬉しかったのかな、と思いながら楓先輩の作った朝ごはんを食べる。 今日も楓先輩の作る朝ごはんが美味しい。 楓 「…じゃあ、行ってくるね。」 「うん、また後で」 俺はそう言って、学校に行く楓先輩の事を見送った 「…準備するかぁ…」 本当に久しぶりの学校だ。 なんて言われるんだろう。 小学校の時も、中学校の時も、 こんなに俺が休む事はあまりなかった。 むしろ学校が大好きで、いつも7時45分に家を出て、朝イチで学校に行ってたくらい。 こんなに学校が憂鬱になったのは、高校が初めてだ。 だけど、凛都や伶先輩、そして楓先輩のおかげで、 少しだけ、学校が楽しみになって来たかも。 「……よし…」 制服も着た、歯磨きもした、風呂にも入った。 あとはスクールバックを持って玄関を出るだけ。 それだけなのに、スクールバックを持つのが怖い。 スクールバックを持つと、学校に行くっていうことになってしまうから。 それがなぜか、怖いんだ。 「……」 ピンポーン♪ 俺の玄関のチャイム音が響く スクールバックを持たずに玄関に行くと、そこには兄ちゃんがいた 昴 「お、準備してたんだな」 「うん、今日は行きたい、行きたいんだけど、」 昴 「…足が上手く出てこないんだろ?だから俺迎えに来た」 そういえば、今日は兄ちゃんの学年だけ休みだったっけ。 兄ちゃんが昨日言ってたな。 「…ありがとう、たまにはいい兄ちゃんも出てくるんだね」 昴 「おい、バカにしてんのか」 「してないよ」 昴 「ほら、スクールバックを持ってここに来い。 俺待ってるから」 兄ちゃんにそう言われて、俺はスクールバックの近くに行く。 俺は震えた手でスクールバックをもって、兄ちゃんのいるところに行く。 怖い、怖いけど兄ちゃんと同じなら俺は大丈夫。 そう思いながら。 昴 「……」 ギュッ… そう思ってると、兄ちゃんが俺の手をギュッと握ってくれた。 多分、手が震えてることがバレてしまったんだと思う 「…兄ちゃん、なんで、俺の手、」 昴 「…俺、太陽に言わないだけで太陽の気持ちたっくさんしてきた。 両親に影で 「太陽はいいのになんでお前は…」 って言われてきたんだ。」 兄ちゃんの…過去はこういうことだったのか。 昴 「だけど俺は、太陽の無邪気な笑顔が好きで、歌声も大好き。 兄としての責任が、俺のことを狂わせた。 嫉妬心で太陽の歌声を否定して、太陽の事を傷つけてしまった。 だから今度は、太陽の兄として、太陽を救ける。」 “ 久しぶりに手を繋いで学校に行こう、太陽。 ” そう言って兄ちゃんは俺に笑顔で言ってきた。 兄ちゃんは 兄としての責任 で狂って、嫉妬心で俺の歌声が嫌いって言っただけなんだ。 そしたら、兄ちゃんは悪くない。 両親が悪い。 「……うん、兄ちゃん学校行こう。」 昴 「…おう、行こう。」 久しぶりに兄ちゃんと手を繋いで玄関を開けて外に出た。 兄ちゃんと手を繋いで歩いたのは小学校以来かな。 兄ちゃんの手は暖かくて、デカい手。 俺は兄ちゃんの手が大好きだ。 昴 「……太陽、ここからは1人。」 兄ちゃんは俺の手を解いて、俺の前で屈んだ 昴 「太陽が不安で怖い時はいつでも迎えに行くから、連絡して」 「うん。」 不安で怖い時… 俺は本当に逃げてもいいのか。 逃げてもいい人間なのか? …くそ、また悩んでしまう、 昴 「……太陽!!」 俺が校門へ歩いていると、兄ちゃんが大きな声で俺の事を呼んだ 「………」 俺は兄ちゃんの方を向いて、兄ちゃんのことを見た 昴 「……逃げても、いいんだからな。」 「……!」 そうだ、俺も普通の人間だ。 辛い時、苦しい時、不安な時、怖い時は逃げてもいいんだ。 「…うん…!ありがとう…!」 昴 「……」 俺がそう言うと兄ちゃんは笑顔で家に帰って行った ここからは俺1人…いや、凛都や伶先輩、楓先輩がいる。 大丈夫、そう思いながら校門のドアを開ける 「……」 久しぶりの下駄箱。 久しぶりの上靴。 久しぶりだらけだ。 モブ 「お、太陽じゃね!?」 俺が下駄箱で上靴を履いてる途中、階段から俺の友達が出てきた 多分、この時間は音楽だった気がする。 モブ 「久しぶりだな!!お前のこと “待ってた” んだよ!」 「……!」 俺の事を… 待っていた 人がいるんだ… モブ2 「お前の歌声、大好きだからさ、またききてえ」 モブ 「それな!!このクラスだけでいいからまた演奏しろよ!」 俺の歌声を 好き って言ってくれる人がいる。 俺の歌声を 待ってくれる 人がいる。 それだけで俺は、十分だ。 モブ 「次社会で、教室だから来いよ!凛都もいるから」 「おう」 凛都…には、楓先輩言ってくれたよな…? そう思いながら俺は、教室へ向かう 「……おはようございます。」 教卓に座っている先生に聞こえる声で挨拶をした。 凛都 「……!」 席に座って本を見ていた凛都が俺の方をみて、俺のところに来た 凛都 「…太陽……」 ギュッ 「……!」 凛都は教室なのに、俺の事を強く抱き締めてくれた。 クラスのみんなにキャーキャー言われても、凛都は離さなかった。 凛都の久しぶりの温もりを感じる。 落ち着くなあ…ほんとに。 凛都 「……おかえり。」 クラスのみんなにキャーキャー言われていても、凛都は俺の耳元で 「おかえり」 って、一言言った。 これを聞くだけで、 「ああ、帰ってきてよかった。」 ってそう思った。 「……ただいま。」 俺はそう言って、凛都を強く抱き締め返す。 クラスのみんなは何かを感じ取ったのか、いつも通り友達と話す。 俺のクラスは感じ取る人が多いな、と少し面白かったし、 俺の事を強く抱き締めてきた凛都にも、少し 可愛い と思ってしまった 凛都 「おう、社会の準備して来いよ」 凛都はそう言って、俺の抱きしめる手を離した。 だけど距離は近かった。 いつもは俺が距離近いのに、今度は凛都が距離近い。 たまには、凛都が距離近いのもいいな。 「……うん、準備するね。」 俺は、自分のロッカーに行って教科書を手に取る。 ああ、今俺は学校にいるんだ。そう思いながら。 ──────────── そして、チャイムと共に部活が始まる。 俺は、凛都と一緒に久しぶりに第2音楽室に向かっている。 凛都 「久しぶりだよ、お前と行くの」 「俺も。」 何気ない会話をしながら、凛都と向かうのが本当に久しぶりだ。 意外とこの時間が好きだったりもする。 凛都 「…ほら、付いたぞ」 凛都はそう言って第2音楽室の扉を開ける。 俺は緊張して、腹がとても痛かった。 だけど俺は、がんばって声を出した 「……… 久しぶりです。」 昨日も会ったけど、ここで会うのは久しぶり。 ────俺がここで会いたかった場所だ。 伶 「……太陽くん… 久しぶり。」 楓 「……」 伶先輩は、一瞬驚きながらも、俺に笑顔でそう言ってきた。 今日もいつも通り、部活が始まる。
それでも歌いたい。
文化祭から1週間後、俺は未だに学校に行けていない。 部屋に引きこもって、歌詞ノートを眺めるだけ。 「……」 楓先輩はもう学校に行ってる時間だろう。 俺も行けたらなぁ。 いつも通り、凛都に途中で会って いつも通り、上靴を履いて いつも通り、廊下を歩いて いつも通り、教室に入る。 そんな事ができたらなぁ。 「…っ……!」 …やば、頭痛い… イヤホン…音楽聴かないと… 「……」 俺は急いでイヤホンとスマホを持ち、音楽アプリを開く 〜♪♪ 「……」 最近は音楽を聴いて俺の世界に入るのにハマっている。 なぜか落ち着くんだ。 音楽が、俺の事を 「大丈夫だよ」 って言ってる気がして。 ピロン♪ ピロン♪ 「…兄ちゃんか。」 最近は兄ちゃんからの連絡が多い。 「迷惑だ」 と何回も言ってるのに、なんで多いんだよ。 でも、初めてこんなにLINEの通知が溜まった。 こんなの初めてだ。 こんな時、ふと思ってしまう。 俺は、軽音部 の ボーカル としてちゃんとやって行けたのだろうか。 でも俺は、どうせ 軽音部 をやめる。 俺がいると、みんな苦しくなる。 伶先輩は自分の歌声が嫌いだ。 楓先輩は親に必要とされていない。 凛都は自分を責めた。 いや、責めすぎた。 俺がいる時に… 俺が、いつも助けたいと思ってる時に、こうなる。 実質 俺のせいじゃん。 全部。 文化祭の時も、勝手に家に帰った。 どうせ誰も必要とされていないだろう。 俺は、生きていてもいい存在 …なんだろうか。 「……」 机の上に、昨日使ったカッターが置いてある。 昨日使ったってだけなのに、何故か目が離せない。 これさえあれば、 俺の苦しみも 俺の悲しみも 俺のこの考えも 全て消えるんじゃないか って、そう思った。 「……」 でも、 それでも俺は 手が伸ばせなかった。 手を伸ばそうとした瞬間 急に頭から声が流れてきた。 「…… 歌うの、怖いんだ 」 伶先輩の震えた声。 「…お前…なんなん…」 初めて俺の前…いや、後輩の前で弱さを出した楓先輩。 「…全部、俺のせいだと思ってた。」 凛都のあの泣きそうな顔。 俺が救けた訳ではない。 俺が 助けよう としただけだ。 それでも、先輩達と凛都は変わらず、笑ってた。 歌えなかった日も 泣いた日も、 それでも前へ進んだ。 “ 俺が消えたら、みんな楽になるのだろうか。 ” その答えはまだ、分からない。 だけど結果は分かってる。 俺なんか、必要ない ってな。笑 そう思った途端、俺は玄関に居た。 何故か分からないけど外に行きたかった。 落ち着く為に。 ──────────── 「……」 あいつ、大丈夫かな。 凛都くんから話は聞いている。 あいつがあんなに追い込んでいるのは初めて見る。 だからこそ心配LINEを送るのに、既読無視をされるだけ 流石に兄ちゃんも腹立つぞ。 「…重いかな。」 弟の事が心配で堪らない俺は、太陽の家の前へ来てしまった ……弟で、家族だ。 他人じゃねえから大丈夫。 俺はそう思い、合鍵でドアを開けた 「…くっら……」 太陽の家に入ると、とても暗かった。 幽霊にでも呪われたのか くらい。 ……そういえば、太陽を見かけないな。 あいつ、バカなことしてないよな…? 「……」 そう思った俺は、太陽の部屋に行った。 よかった、バカなことはしていなかった。 「…なんだこれ。」 そう思っていたら、太陽のベットの上にある 歌詞ノート を手に取った。 ……そういえば、太陽が曲を作ってるんだっけ。 どれどれ、見せてもらおうか。 「……!!」 そこに書いてあったのは、 歌詞なんかじゃなかった。 …いや、歌詞ではあった。 だけどあいつは多分、気づいて欲しかったんだ。 言葉にできない苦しみを 必死に押し込んだ感情を 「助けて」 と言いたかった想いを。 俺は、太陽の兄だからこそ分かる。 太陽がどう、 助けを求める か。 あいつは昔から 「助けて」 と言葉で言わない… いや、言えないんだ。 だから言えない代わりに 行動 文字 音にして言う人間だ。 それを俺は知っていたはずなのに… 「…なんで……っ」 胸の奥が、締め付けられた。 ──────なんで俺は…… “ 弟のヘルプに 気づかなかった んだ…!! ” 「…凛都くんに……」 俺は悔しさを抱えながらも、凛都くんに連絡をした。 凛都くんも多分、太陽の思ってる事がわかるだろうから。 ……もう、遅いかもしれない。 それでも、 それでも俺は、 今度こそ見逃さない。 太陽が、自分自身を壊す前に。 でも俺は、1人じゃ無理だ。 だから俺は、[ 凛都 ] というトーク画面を開く。 太陽は俺だけに救われるべきじゃない。 そう思った俺は、震える指で凛都に連絡をした。 ──────────── 楓 「……」 伶 「暇だね」 「うん…」 丁度部活帰り。 俺は楓先輩と伶先輩と帰っていた。 太陽のいない帰りはなぜか、寂しい。 そう思いながら。 ピロン♪ 「あ、俺だ。ごめん見るね」 伶 「うん!」 楓 「うん。」 「……!!」 久しぶりに太陽の兄、昴さんから連絡が来た。 どうせいつもの学校のことだろう とそう思っていた。 「……太陽…?」 そこには、太陽の歌詞ノートの写真が送られてきて、 昴さんの言葉も送られていた。 昴 [ 太陽 やばい。ごめん、俺守れなかった。] 「守れなかった」 この言葉で分かった。 太陽は、自分自身を追い詰めてるんだって。 そう思った途端、後悔と悔しさが堪らなかった。 楓 「…おい、凛都。」 伶 「どうしたの…?大丈夫…?」 「……」 これは 幼なじみ としての問題じゃない。 これは多分、 仲間 としての問題だ。 そう思った俺は、楓先輩と伶先輩にも文章を見せた。 歌詞ノートの写真も、昴さんの言葉もしっかり見せた。 それを見た楓先輩と伶先輩の表情は真面目で、俺と同じように 後悔している表情だったと想う。 「…やっぱり太陽は体調が悪いんじゃなかった。 これは俺が、止めなかった責任です。ごめんなさい。」 太陽を止めなかった。 太陽の気持ちをよく分からなかった悔しみで、 俺は思わず先輩達に謝ってしまっていた 楓 「…凛都だけのせいじゃない。これは、俺達の問題なんだ。」 伶 「楓の言う通り。これは僕達の問題。」 " 太陽くんの事、救けよう。 " 「……はい。」 伶先輩の言葉で 俺だけの問題 じゃないってことがわかった。 だけど俺があそこで止めていれば あそこで心配をかけていれば、 なにかが違ったかもしれない。 でも多分それは、楓先輩も伶先輩も思っているだろう。 ……俺は今、太陽を救ける事に集中する。 …太陽 待っとけよ。 楓 「…太陽、どこにいるかな。」 伶 「お兄さん、居場所分かる?」 「…多分、小林公園 だと思う」 楓 「……!」 太陽はいつも、小さい頃から何かがあると 小林公園 へ来ていた お兄さんと喧嘩した時も 親とぶつかって喧嘩した時も いつも 小林公園 でブランコをしていた。 …懐かしいなぁ… 伶 「…じゃあ、そこ向かおう」 俺と楓先輩は伶先輩の言葉に頷いた 太陽、お前には勘違いしてた事が3つあった。 1つ目 それは、太陽は意外と 弱い ところ。 2つ目 それは、太陽は意外と 無理してる ところ。 そして最後、3つ目は 誰よりも人を救けたい という気持ち。 俺は弱い太陽も、無理してる太陽も全部受け止める。 前の太陽は、俺にそうしてくれたから。 俺の事を遠回しに 必要だ と言ってくれたから。 今度は俺達が太陽を救う、いや… 救ってみせる 。 ──────待ってろよ 太陽 。 ──────────── 俺は今、なぜか分からないが小林公園に来ている。 懐かしいな、楓先輩が俺の家に来たのはここからだっけ。 確か、楓先輩は家庭問題で俺の事を呼んだ。 俺はなんであの時、あんな無責任な言葉が出たんだろう。 バカみたいだ。 でももう、全部、 どうでもいい。 どうせ俺は、 ボーカル じゃなくなるんだから。 「……帰るか。」 俺はそう思いながらようやく、重い足を動かし、家に帰ろうとした。 ────────その時だった。 「「「太陽…!!」」」 「…先輩達、凛都…兄…ちゃん…?」 なんで皆がいんだよ… この時間… 時計を見ると、もう夕方の18時だった。 「…何バカなことしてんだよ…早く帰れよ…」 明日は期末テストなんだろ? 俺の事なんか思わずに、自宅に帰れよ…! 伶 「…そんなこと…できる訳ないじゃないか…!!」 「…! 伶先輩…?」 そう思ってると、伶先輩が初めて声を荒らげた 伶先輩が荒らげた姿は見た事がなくて、焦った。 …でもどうせ、やめるんだ。学校ごと。 だからもう、どうでもいい。 楓 「……戻ってこいよ、俺らの場所に。」 楓先輩が普段言わない言葉を言う。 “場所” かぁ…笑 戻れやしないよ、俺は。笑 「…無理。」 凛都 「何でだよ…!!お前、あんなに楽しんで歌ってただろ…!!」 「……やる気が、見失った。 もういいだろ、?笑 俺はもう学校ごと辞める。」 俺は今、誰なんだろう。 俺なのに、オレじゃない気がするのは何でなんだろう。 凛都 「ふざけんな…!!一緒にバンドする夢はどうなるんだよ…」 「…ごめんな、情けなくて。笑」 笑う事しかできないのは何でだろう。 悲しむことが出来ないのはなんでだろう。 自分でも、理由が分からない。 楓 「……太陽。」 楓先輩が俺の名前を呼んだ。 楓先輩に名前を呼ばれるのは久しぶりだ。 楓 「…俺は、親に “生まれなきゃよかった” って言われた人間だ。 でもお前は、何も言わず 何も聞かず、俺を家に入れた。 理由も言わずに “ここにいていい” って言われた気がした。」 楓 「俺は最初、 この世にいなくなろう って、そう思っていた。だけどお前は、弱い俺をただバカにせず、救けてくれた。 ……あの時、初めて俺は 生きててもいいのかもしれない って、そう思った。 弱い俺を…情けない俺を、見下さずに受け入れてくれたのは…太陽だ。 だから今度は、」 “ 俺達が太陽を救ける番だ。 ” 「……」 …ずるいだろ。 そんな声で、そんな口調で、言うのは。 俺はただ、当たり前のことをしただけだ。 楓先輩の話を聞いて、 楓先輩の事を勝手に家にいれる。 「ここにいろ」なんて、声に出して言った覚えもない。 なのに、 それが楓先輩の 「生きていい」 に繋がっていたなんて。 胸の奥がジワッと熱くなって それと同時に痛い。 だって俺は、誰かを救った覚えなんてなかったから。 それなのに、俺が無意識でやった事で、 誰かが 「生きたい」 と思えたのなら。 …じゃあ、今の俺は…なんなんだよ… 伶 「…太陽くん」 伶先輩に太陽くんだなんて言われるのは久しぶり。 久しぶりに聞く。 伶 「僕さ、ずっと僕の歌声が嫌いだった。 僕の声は気持ち悪い 、そう思ってた。 同級生の言葉ってね、意外と頭に残るんだ。笑って流したつもりでも、脳内のどこかにはその言葉が溜まっていく。 だから歌うのも、話すのも、正直あまりしたくなかった。」 伶 「…だけどね、太陽くん。 太陽くんだけは僕の声をちゃんと聴いてくれた。 “いい声だね” って、軽く言った訳じゃない。 太陽くんは 本気 で、真っ直ぐ に言ってくれた。 その一言で、僕は始めて思えたんだ。 「この声で生きててもいいのかもしれない」 って。 太陽くんはさ、人を救けた自覚なんてないでしょ。 でもね、僕は太陽くんの声に救われた。 だから今度は、 」 “ 太陽の声が折れそうになった時、僕達が支える。 ” 「……」 ……なんでだよ。 そんなふうに、そんな顔で…そんな声で、言うなよ。 俺なんかが、伶先輩を救った? そんな訳ないだろ。 俺はただ、 本当の事を言った 思った事を言った だけだ。 「太陽くんの声に救われた」 って言われたことがない俺は嬉しいなんて言葉じゃ足りなかった。 否定したいのに、なぜかできなかった。 本当はここから逃げ出したい。 早く学校も、軽音部もやめたい。 それなのに、俺は少しだけ、 { 歌いたい } って気持ちが、まだ生きていることに気づいた。 それが、1番怖かった。 凛都 「…太陽。」 凛都が震えた声で俺の名前を呼びかける 凛都 「俺も最初、太陽みたいに居場所が分からなかった。 いや、分かろうとしなかったんだ。 俺が無駄に 必要ない って思い込んで、太陽にも無理に俺が願ってるって勝手に思い込んでた。 でも違ったんだ。」 凛都 「全部、俺が勝手に思ってた事で、太陽はそんなこと思ってなかった。 逆に俺の事を慰めてくれた。…いや、救けてくれた。 「お前は必要なんだ」 って、言われても言われてなくても分かったよ。俺は…俺達は、太陽の事が必要だ。 無理をする太陽も 弱い太陽も 全部受け入れる。 …全部…全部、太陽のしてくれた事だ。 …太陽、もうお前は ヒーロー じゃなくていい。 」 “ 太陽の弱い姿も見せろよ。 ” 凛都の言葉は、ちゃんと暖かい。 分かってるよ、俺だって。そんなこと。 でも、それを信じたら、 今までの俺が、壊れる気がした ヒーローじゃなくていい? 弱い姿も見せろ? ……無理だ、そんなこと、できない。 俺は、みんなが苦しい時に歌ってきた。 笑って、盛り上げて 「大丈夫」って顔をしてきた。 それを今更、 「俺は弱いです」 「助けてください」 なんて言ったら 今まで救けてきたつもりの全部が嘘になる。 「……そんなの、嘘だ。」 俺でも分かるくらい、冷たい声。 こんなに冷たい声を出すのは、学祭前以来かな。 「…俺の弱い姿なんて見せたら、また苦しくなるだけ。 俺の事はもう、気にすんなよ。笑 」 俺はそう言って笑う。 本当は違う、それは俺も頭では分かってる。 でも、心が、 それを許さない。 楓 「…うるせえ、お前…俺の弱い姿は見せたくせに、 お前の弱い姿は見せない? ふざけるなよ。仲間だろ、俺達」 伶 「そうだよ…僕達、仲間なんだ。太陽の事を ヒーロー だなんて、思ったことないよ… 太陽、戻ってきてよ…!」 凛都 「なんか言えよ…!!このメンバーで武道館行くんだろ!? お前がボーカルで俺がドラム 楓先輩がサブギターで、伶先輩がベースなんだ。 …太陽、戻ってきてくれよ。またお前の歌声が聴きたい。」 「……」 みんながみんな、俺の為に戦ってくれてる。 それは嬉しい、嬉しいはずなのに、まだ俺が俺の事を許してくれない。 勝手に無駄な言葉を言ったこと 文化祭途中に出ていった事がまだ、頭から離れない。 なんでだ… なんでなんだ… こんな時、兄ちゃんがいたら… 兄ちゃんがいたら…変わってるのかな…俺… ( 昴が太陽の耳を両手で塞ぐ ) 「……! 兄ちゃん…?」 そこには、俺の耳を両手で塞ぐ兄ちゃんの姿があった。 何してんだよ 受験生のくせに… 昴 「…太陽、ごめんな。俺、勝手に太陽の家に行った。」 「……」 勝手に家に行ったって…ストーカーかよ。クソ兄ちゃん。 昴 「…凛都くんがさ、太陽の曲素敵だよって教えてくれたから、歌詞ノートを見たんだ。」 そう言いながら、俺の隣に立った。 兄ちゃんは 「ここ座りな」 と俺を近くのベンチに座らせた 昴 「……そこには、綺麗で、太陽の想いのような歌詞が書いてあった。」 「……」 俺の想い… 確かに俺は、俺の想いを歌詞ノートに書く癖がある。 「それでも歌う」 という俺が作った歌詞も、全部。全部、俺の想いだ。 昴 「…太陽、太陽は自分の何を許してないの?」 俺の何を許してない…か。 「…全部。俺なんて、必要ないんだ。」 昴 「それはなんで?」 「俺は、軽音部のみんなのことの事情に入り込んで、俺の感情のままみんなの事情に言葉を言った。 お調子者で、ポンコツな俺に、踏み込まれて、挙句の果てには変な言葉もかけられて。それが、許せなかったんだ。」 無意識に口に出ていた。 本当は口に出そうとしなかった。だけど、無意識だったんだ。 俺なんて って、いっつもそう思っていた。 伶先輩が虐められて、伶先輩を助ける前のいじめっ子のあの言葉がまだ、頭の中でグルグルしてる。 昴 「…そっか。なあ、太陽。」 兄ちゃんは、俺の名前を呼んで、俺に言葉を言う。 昴 「…俺さ、いつも太陽とカラオケ行く時 「下手」 って言ってた。 それは嘘なんだ。俺、いつも感動してたよ。お前の歌が好きだった。 けどさ、その時は嫉妬してた。お前の才能に、お前の希望に。だから反抗していっつも 「下手」 って言ってた。本当はすごい好きなんだ、太陽の歌声。」 昴 「……だからさ、歌ってくれよ。 いつも通り 変わらず、ただ楽しく歌って欲しい。 凛都くんから話は聞いてる。お前めっちゃ楽しそうに歌ってるんだろ? お前が弱い時も苦しい時も、全部先輩達や凛都くん、そして俺に全部任せろよ。「言葉を言った」 って言ってたけど、あれは多分、この人達は太陽の言葉で今生きてる。」 「……!」 俺の言葉で…生きてる…? 昴 「…お前はもう無意識に誰か人を救ってる。 だから今度は、お前が救けられる番だ。 弱い時も、苦しい時も、全部俺達に任せろ。」 “ 太陽、もう弱くていいんだ。これ以上自分を責めるな。 ” 「……!!」 兄ちゃんの言葉を聞いた瞬間、なぜか涙が止まらなかった。 後ろの凛都達も、なぜか腕の袖で涙を吹いていた。 兄ちゃんの言葉に頷きながら、腕の袖で涙を吹いていたんだ。 兄ちゃんの最後の言葉で、俺の心の中の何かが壊れる音がした。 もう責めなくていいんだって、まだ俺は、歌ってもいいんだって、そう思える気がした。 「…おれ…うたってもいいの…?」 それでも不安だった俺は、みんなに聞いてみた。 俺はボーカルで本当にいていいのか。 俺はみんなの前で楽しく歌っていいのか。 凛都 「思う存分歌えよ」 楓 「…お前の歌声、俺大好きだ。」 伶 「うん、僕も太陽くんの歌声で何度も救われたよ。」 昴 「……太陽の歌声、大好きだよ」 それを聞いた俺は、さらに涙が止まらなくなった。 ああ、俺は歌ってもいいんだ。 俺は、幸せでいいんだって、そう思えた。 「……ありが…と、う…」 泣いて、泣きまくって言葉が出なかったけど、これだけは伝えたかった。 俺に生きてる希望をくれてありがとう って、伝えたかった。 俺の言葉を聞いたみんなは、泣いていた。 初めてだ、こんなに泣いたの。 俺がこんなに泣いたのは久しぶり。 でも、明日からはちゃんと笑顔でいられる気がした。
それでも歌う。
「……朝か…」 歌詞ノートを書いてると、朝を迎えていた まともに眠れなかった。 楓 「…お前、寝たのか?」 「…少し寝たよ。」 俺はそう言って嘘をついた。 本当は眠れなかった。寝たくなかった。 そこで楓先輩に 寝てない というと、心配されてしまう 楓 「ふーん……」 楓先輩は怪しまれながらも、パンを焼いてくれた。 よく家事をしていたらしい。 本当に優しいな、楓先輩は。 「……」 夜寝なかったからか、昨日よりすごくボーッとする。 頭もクラクラする。 やっぱりオールはダメだな。 楓 「…大丈夫か。お前」 「…うん、風邪じゃないから。笑」 俺はそう言って笑う。 何度も言った通り俺は “笑顔” が取り柄だから。 笑ってる俺を見せて 安心させるんだ。 楓 「…ふーん… そういえば、文化祭。 新曲歌うんだろ。歌詞見せろよ。」 そういえばそうだ。 文化祭で新曲を歌うんだった。 思い出した俺は急いで歌詞ノートを持ち、スクールバックにしまう。 危ない、忘れるところだった 楓 「忘れもの、ないか」 「ない」 楓 「行くぞ」 そう言って家を出た。 久しぶりに身体が重くて、頭も痛かった。 これはきっと、オールのせいだろう。 凛都 「おはよう」 いつも通り、途中で凛都に合流した いつも通り。いつも通りだ。 「……おう、おはよう」 なんでだろう。 “いつも通り” が出来ない。 凛都 「…あれ、お前いつもと違くね?」 そう言って凛都は笑った。 すごく綺麗で 本当に笑ってる っていう笑顔。 それがなぜか、俺にはできない。なんでなんだよ…! 「……気のせいじゃね?笑」 そう言って俺は口角を上げた 楓 「……また部活で。」 凛都 「うん、またな」 「またな…!」 楓先輩には誤解も解けた…気がする。 あとは凛都だけだ。 「……」 いつもの 「おはようございます!!」 ができない。 体調不良ではないんだけどな… モブ 「…あれ、太陽いつもの調子できてなくね?」 凛都 「んな、なんか変だよな。」 俺の友達と凛都は心配そうに俺の顔を覗き込んだ 今顔を見られたら、なぜかダメな気がした。 「…で、出てるよ〜!!笑」 モブ 「いつものテンション高い太陽が戻ってきた!!」 凛都 「……?」 俺の友達は信じ込んでくれたが、凛都は信じてくれない。 やっぱり、幼なじみだからか。 「どうしたんだよお前、元気ないぞ笑」 そう言って俺は凛都に肩を組む これで完璧に怪しまれない、そう思いながら。 凛都 「……いやー、眠くてさ」 「なんだよそれかよ〜笑」 そう言って俺は笑い続ける 笑いたくなくてもただ笑う。 友達に俺の事で心配して欲しくないんだ。 凛都 「遅れたんだ寝るの」 また凛都は綺麗に笑う。 綺麗に笑えていいな。 いつもはそう思わないのに、なぜか思ってしまう。 俺、体調でも悪いのか…? 先生 「…おい、凛都、太陽」 「あ、はい」 凛都 「はい」 先生 「今日 “文化祭 前日” だぞ?」 …文化祭 前日だっけ。 俺はスクールバックの中にあったスマホを急いで出し、日付を見る。 …やばい…!今日、前日だ…!! ということは、楓先輩も伶先輩も忘れてるんじゃ… 凛都 「…!? おい、太陽行くぞ!!」 「…お、おう…!」 俺は凛都に手を引かれ、そのまま第2音楽室まで向かった 凛都 「……ごめんなさい、遅れました…」 「遅れました…」 そう言うと、急いで準備をする伶先輩と楓先輩がいた 伶 「ごめんね、僕達も勘違いしてたみたい…!」 そう言いながら、急いで演奏する準備をする楓先輩と伶先輩。 2人を見ると、なぜか 「俺がやらなきゃ」 と感じてしまった 「…俺も手伝う〜」 俺はそう言って、2人の準備を手伝う。 楓先輩と伶先輩は何故か目が点になっていた 楓 「…珍し、太陽がするの」 伶 「ね… 雷でも出てくるんじゃない…?」 俺だって手伝うわ とツッコミたくなったが、抑えて 演奏準備に集中した 凛都 「…お前こんなに綺麗に置けたっけ。」 幼なじみの凛都が驚くほど綺麗に置けた。 うん、これは俺でも驚く。 「…綺麗に置く動画見てさ〜」 そう言って無理に誤魔化す。 本当は違う。 俺が責任を感じて、先輩達の仕事を奪ってしまっただけだ。 伶 「珍しい事もあるんだね… そういう事で!練習はじめるよ〜!!」 練習を始めようとする前に、歌詞を見てもらおう。 そう思い俺は大声を出した。 「…ちょっと待って!!! 俺、新しく曲作ったから見て欲しい!!」 そう言うと、黙って皆俺の周りに集まってきた 俺の前の曲、 「消えない声」 が相当好きだったっぽい。 嬉しいな。 伶 「分かった、見るよ。てか見せて」 伶先輩がそう言ったので、先輩達+凛都の前に歌詞ノートを見せた。 するとまた、皆が皆真剣な顔をして見ていた 楓 「…これ、歌ってみないか」 凛都 「え、歌えるの?」 「うん、練習してたから歌えるは歌えるよ」 伶 「じゃあ1回やってみようか!」 そう言って俺達はそれぞれの席に着く 俺は真ん中 伶先輩は俺の右隣 楓先輩は俺の左隣 凛都は後ろ 「……ワン ツー ワンツー、せーの!!」 俺(ボーカル担当)がそう合図を言うのも慣れてきた。 俺がそう言うと、みんながみんな真剣になりイントロを円そうする。 歌う前の時間がなんだかんだ、大好きだ。 「……よる"が長くて 息がづまって 笑顔のりゆう"、数えてみだ 誰かの期待を抱えだまま じぶん"の声を後回しにしだ うまぐやれてるふり"は得意で 大丈夫 ってことばもなれ"た それでも"胸のながでずっと置いてげぼりの音が鳴っだ」 ここからはサビ… ここは盛り上がるようにしたいから合図… 「……(✌をする)」 楓 「…!」 伶 「…!」 凛都 「…!!」 「……それでもうだう!!! 声が震え"ても 正解なんでわからなくても 救えない自分"をかがえだままで! それでも今は" 歌う しがなくて!!!」 俺がピースをしたのは、 「盛り上がるぞ」 という合図。 文化祭でも 学祭でも 分かりやすいように そして、盛り上がるって分かるように、楓先輩からの提案。 意外だよな、楓先輩の提案。 「太陽だからこそできる」 って、凄く褒められたよ 伶 「力強い感じでいい。というか、成長してない?」 楓 「うん、最初の歌声も残ってはあるけど、完全に残ってるって訳じゃない。」 凛都 「うん、いい感じだよ太陽!!やったな!!」 「……うん…笑」 ダメだ。 こんなのじゃ、ダメなんだ。 もっとだ。もっと。 俺はこんなのじゃ、 ボーカル じゃない。 もっと、もっと上手くならないと行けないんだ。 人を、救う為には、 もっと…上手くならないと… 凛都 「……太陽?太陽ーー!!!」 「…あ、ごめん。考え事してた笑」 楓 「珍しいな。」 伶 「ほんとね… あ、練習するよ!!」 楓 「おう」 凛都 「おけー」 ────────そして文化祭 当日 先生達や生徒の皆 そして俺の両親 兄ちゃん が見に来てくれている 学祭の時は兄ちゃんだけだったが、今日は文化祭。 だけどなぜか、 緊張 はしなかった。 凛都 「ついにだな… 緊張する…」 楓 「……うん。」 伶 「い、息整えなよ…」 先輩達も凛都も緊張してる。 それが普通だと思う。 なのに、なんで俺はこんなにも緊張しないんだろう。 でも俺は 人を救う為ならなんだってする。 凛都 「……太陽も、頑張ろうな」 「…おう」 俺は凛都とグータッチをした。 グータッチをした時間が、1番安心した気がした 放送 「次は 軽音部 の皆さんです。どうぞ。」 そう言われ、俺達の幕が始まる。 ブザーの音がなり、赤色のカーテンが開く。 生徒のみんな 先生達はみんな興奮している。 ここで歌うのか。 俺なんかが歌っても、いいのかな。 伶 「……太陽…(小声)」 「…あ、」 俺は司会の人にマイクを持たされ、挨拶をしようと口を開く 「……こんにちは…!!ボーカル&ギター担当、太陽です」 いつもの調子が出ない。 だけど、いつも通りしてれば何とかなるだろう。 「今回は、俺が作った新曲を歌います」 俺がそう言った瞬間、生徒のみんなが盛り上がる。 校長も俺の事をまじまじと見ている 「…曲名 それでも歌う 。」 そして俺は曲名を言い、いつも通り合図を取る 「…… ワン ツー ワンツー、せーの!!」 俺がそう言うと、みんなイントロに入る。 俺はギターを最初はやらず、歌う体制へ入る 「……夜が長ぐて 息が詰まって 笑顔の理由"考えでみだ 誰かの期待を"抱えたまま 自分のごえを後回じにしだ うまぐやれてるフリは得意で"…」 やばい、なぜか涙が出そうになる。 でも、我慢しないと。 「大丈夫 っで言葉も慣れ"た それでも胸の奥でずっと 置いてげぼり"の音が鳴っ"た」 「……(✌️をする)」 俺がまたピースをすると、激しくなった 盛り上がるぞ、頑張れ俺 「…それでも歌う"!!! 声が震えでも 正解なんでわからなくても! 救えない自分を抱えたまま"で それでも今は、歌うしかなぐて…!!」 歌い切った。 あとはイントロだけ。 イントロを聴きながら、弾きながら、生徒達を無意識に見ていた。 ニヤニヤしながら聴いてる奴 真顔で聞いてる奴 中には涙目で聴いてる奴もいた。 だけど。 どうせ、 俺の歌声が嫌いだ。 心に刺さってもないだろう。俺の歌声なんて。 俺なんかが歌って、 ……ごめんな。 「……ありがとうございました!」 そういうと拍手が聞こえる。 そのタイミングでまた ブザー音 が鳴り、幕も閉じる 伶 「上手く行ったね…」 楓 「ん、太陽の歌声良かった」 凛都 「ほんとね。泣いてる人いなかった?」 伶 「いたいた!感動したんだろうね…凄いよ、太陽」 先輩達には失礼だが、 何馬鹿なことを話しているんだ。 と思ってしまった。 俺の歌声で救われた人がいる? そんな訳ない。 「……皆でやったからだな。笑」 そう言って俺は俺を比定する 俺はもっとできる。 伶 「……みんなで、だね」 凛都 「…そっ…か。」 楓 「…まあ結果も出たしな」 みんなは凄い。 すぐにドラムをする凛都も 才能がある伶先輩も 努力ができる楓先輩も。 すごい、俺以上に。 俺が居なくても、成り立つくらいに。 俺は努力もできない 才能もない。すぐにも出来ない、追いつくのが十分。 ダメダメじゃん、俺。笑 なあ。 「……俺、体調悪いから帰るわ。 伝えて欲しい。」 なんで逃げんだよ、俺。 逃げたって理由は変わんねえのに 凛都 「…どうした?大丈夫か」 伶 「……保健室行くこともできるよ…?」 楓 「……大丈夫か。」 「……うるせえ、なんだっていいだろ」 「……!」 …やってしまった。 なんで俺はいつもこうなるんだ。 バタン… 誰も、追いかけて来なかった。 多分そういう事なんだろう。 俺は、 いらない 。 …希望が無くなった。 今後どうすればいいんだ。 凛都にも 楓先輩にも 伶先輩にも顔向けができない。 俺自身が俺の事を助けたいくらい、胸の奥が苦しい。 「……」 そのまま俺の家に帰ろう。 どうせ、学校にも行かないだろうし。 ──────── 「……」 太陽が出ていった。 俺はどうすべきか分からなかった。 追いかけても良かったのか 放置にするべきなのか分からなかった。 幼なじみ として、俺は 放置 を選んだ。 だけど俺は今、後悔している。 太陽は、 “体調が悪い顔” じゃなかった。 楓 「…太陽、どうしたんだろう」 伶 「……心配だね…」 先輩達はいつも通り、話している。 言っていいのだろうか。 …ここで言わないと、もっと、後悔する気がする。 「……なあ」 伶 「ん?」 楓 「…どうした」 「…太陽、体調が悪い顔じゃなかった。」 楓 「…は?」 伶 「……どういうこと…?」 そりゃそうなるよな だけど 俺の事、信じてくれ。 「…多分だけど、太陽 逃げる顔 になってた。」 俺にも 「逃げる顔」 がどうか分からない。 だけど、本当に俺はそう見えた。 なぜかは分からない。 幼なじみの絆 ってやつなのかな 楓 「……俺、家帰ってから太陽に聞いてくる」 伶 「僕も、LINE送る。」 「俺も。 何とか戻そう」 俺は 太陽 に救けられた。 だから次はきっと、 俺達 が助ける番だ。
歌で救えるのならば
今日も朝が始まる。 太陽のこと 部活のこと 先輩達のこと 学校のことを考えると、 あまり眠れなかった。 いつもこうだ、考えてばっかで気づけば朝。 俺は、……何かの病気なのか? ピロン♪ 太陽 [ 今日は来れそうか〜? ] 太陽からLINEの通知が来る。 あいつはいつも朝が起きれない俺の為にって、家に来てくれる 親には 「太陽とか言うやつと関わるな。痛い目見るぞ」 と言われた。 俺は、 “ゲイ” だ。 太陽が俺の事を ゲイ だと分かったらどうなるんだろう。と、 考えただけで頭が痛くなる。 太陽の事は 友達として好き なのに、いつか本当に好きになるんではないか って、不安になる。 昨日は、頭痛いから休んだんじゃない。 怖かった。 自分自身がゲイなのも、太陽に全てを背負わせた自分も、 ……怖かったんだ。 だから俺は 逃げる選択 をした。情けないよな。本当。 ピンポーン… 玄関からチャイムの音が聞こえた。 親も丁度仕事なので、俺が出るしかない。 そう思い、重たい足で玄関に向かった 太陽 「よっ!!一緒に行こうぜ!」 楓 「……」 そこには楓先輩と太陽がいた 太陽はわかるけど、なんで楓先輩が…? 「…なんで楓先輩が…」 小声でぽつりと言ってしまった。 しまった と思ったが、楓先輩が俺の前に来てこう伝えてくれた 楓 「……太陽に救けられた。 多分お前も、太陽に救けられると思う。」 太陽に…救けられた…? でも、少し分かる。 こいつは人一倍人の感情を読み取れる思考がある だから、無意識に人を救ってしまう。 だけど俺は、何にも才能がない。 ゲイだし、音楽もまともに出来ない。 こんな俺が、太陽に助けられる…? バカ言うな。俺は太陽に弱った姿を見せたくない、いや、見られたくないんだ。 太陽 「何の話してんのー?早く行こ!」 こいつは笑顔で俺にそう伝える。 今日も笑顔が可愛いな。そう思いながら俺は制服に着替え、 スクールバッグを持つ 「…うん、行こう」 今日はなぜか、笑えない。 モブ 「おはよ!」 「おう、おはよ」 今日もいつも通り、太陽と一緒に教室へ行く。 いつも通りの事なのに、今日はそれをするのが精一杯。 神は俺の事を見てくれない。 救けて、なんてこと、言えるはずもない。 太陽 「……今日お前、変だぞ」 「……」 太陽に真顔でそう言われた。 ああ、やっぱり分かってしまうよな。 やっぱり、太陽は人を救うんだ。俺には何もないのに 「…気のせいだよ。」 俺はそういい、できる限りの笑顔を作る 太陽 「…ふーん。」 こいつは少し拗ねた顔をして、前を向く。 正直な事を言えなくてごめん。 そして放課後、皆は部活へ向かっている 今日、休もうかな。そう思いながら、廊下を歩く 太陽 「…凛都、今日休みだって」 「…え、なんで」 太陽 「楓先輩が言ってた」 「ふーん……」 いつも部活なのに、今日は休みなんだ 珍しいこともあるんだなって、そう思った 太陽 「…凛都、ちょっと来て」 「……え、ちょなんだよ!」 俺はいつの間にか手を引かれ、第2音楽室へ来ていた 俺のドラム、目立つな…そう思いながら、ドラムを見ていた 太陽 「…お前、どうしたんだよ。」 「何もないって、うざいよ。お前」 しまった 無意識に口から出てしまった。 怒られる、いなくなってしまう… 太陽 「…うざい…かー。俺にはそんな言葉効かないよー? …なんかあったんだろ、言ってみろよ。」 俺は太陽にそう言われた。 無邪気な笑顔が、真剣な顔に変わった。 俺の事を 救けたい って思ってるのか…? なら、言ってみるのも、悪くないよな… この瞬間だけ、弱い俺で居てもいいよな… そう思った俺は、太陽に全てをぶつける事にした 「…俺、辛い。」 太陽 「……」 「太陽に全てを背負わせて、満足になってる自分自身が怖い。」 太陽 「……」 ゲイ って事も、話していいのか…? ここで話さないと、もう一生話せないような気がする俺は、 言ってみる事にした。 「……それと俺…ゲイ、なんだ…」 言う時、俺は少し声が震えた気がした。 それを言った時、太陽は少し驚いてた そりゃそうだよな、幼なじみが ゲイ なんだもん。 そりゃ離れていくよな。 そう思いながら、太陽の言う言葉を待ってた。 太陽 「…」 太陽 「…そっか。それ言うの怖かったろ」 太陽は優しい声で俺にそう言ってくれた。 なぜか目の奥がジーンと暖かくなった 太陽 「全部背負わせてるとか、俺思った事ない。 むしろ支えてくれて嬉しいよ。」 人を救う事って、こういう事なんだと感じた。 だけど俺は…! 「…なんでだよ…なんでそう言えんだよ…! 太陽みたいに綺麗な笑顔にもなれない 音楽が大好きでもない。 なのにお前は…どうしてこんな俺にこんなこと言えんだよ…! 無視しろよ…助けんなよ…気にすんなよ…!! 俺なんて才能がない一般人なんだ、いなくて当然なんだ なのになんで……」 俺は思わず、俺の想いを全てぶつけてしまった。 太陽のことを見ると、太陽は怒って、俺にこう伝えてきた 太陽 「……何言ってんだよ… 音楽が好きになったのも、こうやって歌えるのも、俺が笑顔なのも…!!」 “ 全部お前のおかげなんだよ…!! ” 「……!」 太陽は少し怒りながらも俺に伝えてくれた。 太陽 「無視しろって言われても無理だし、助けんなって言われてもできないよ、そんなこと…! いなくて当然 だと思ってる人間を放っておけるほど、器用じゃねえんだよ…!! だって俺らは……」 “ 仲間 だろ…? ” 「……っ…」 そう言われた途端、俺は涙が止まらなかった。 太陽 「…凛都…!」 太陽がすぐ俺のところに来てくれた。 太陽が俺の事を抱き締めてくれた。 やっぱり俺は、 太陽が好きだ。 楓先輩が言ってたあの言葉も分かった気がする。 俺は救けられたんだ、と思ったら、なぜか気が軽くなった 「お前……ずるいよ…」 太陽 「…何がだよ…」 太陽のことを見ると、太陽も少し泣いていた。 弱音を吐く ってこういう事なんだな。 初めて弱音を吐けた…気がする。 本当に、こいつには感謝しかない。 太陽 「……落ち着いたか?」 「…うん」 太陽 「帰るぞ。」 「うん」 俺はそう言い、いつも通り太陽と帰る。 楓先輩は先に帰っていたらしい。 太陽が幼なじみで本当によかった。 ──────────── 楓 「おいお前、寝ろよ」 「あ、ごめんごめん、でもちょっと歌詞書きたいから!」 楓 「…先寝てるからな」 「……うん。」 深夜、俺は自分の部屋で歌詞ノートを書く。 偶然家に2つ部屋があって、楓先輩は俺の部屋の隣で寝ている 俺は本当に、皆を助けられたのだろうか。 楓先輩は親に 「いらない子」 だと思われていた 伶先輩は同級生の子に 「キモい声」 と言われていた 凛都は自分自身が嫌いになっていた。 俺だけじゃん、大して辛くないの。 なんで俺は、幸せなんだよ。 なんで俺は、恵まれてるんだ 俺なんて、兄に酷い言葉を言われてるだけ。 親にも、友達にも言われたことない。 これはただの 兄弟喧嘩 じゃん。 凛都は初めて俺の前で泣いてくれた。 あんなに泣いているのは、多分初めてだろう。 辛かったんだな と俺でさえ分かった。 多分、学校を休んだのもそのせいだろう。 ……なのに、なんで俺は気づかなかったんだ。 楓先輩の事も 伶先輩の事も 凛都の事も なんで…分からなかった…? なんで、助けられなかった…? 皆、みんな自分自身の事で悩んでたのに、俺はただ歌詞ノートを書いて 歌っていただけ。 【 お前の歌う曲なんて聴きたくねえわ笑 】 なぜかそのセリフが、脳内で繰り返される。 初めて兄ちゃん以外の人に、俺の歌を否定された。 大丈夫だった、最初は。 なのに、なんで今こんなに苦しいんだよ… 文化祭だって、近いのに。 本当 ウザい。 初めて 「幸せで恵まれてる自分」 が嫌いになった。
歌で救えるのならば 5話
楓 「…太陽、起きろ」 あれから、楓先輩は少しの間俺の家で暮らす事になった。 楓先輩の父親は地方に住んでいるらしく、ここに来ることは早々ないらしい。 だから俺と楓先輩はシェアハウスをすることになった 「……おはよ、楓先輩…」 久しぶりだな、誰かに起こされるっていうのは 楓 「学校の準備するぞ。」 「うん…」 俺は目を擦りながら制服を着る。 昨日は歌詞カードに没頭しすぎて3時頃寝たんだっけ… 楓 「…お前昨日没頭しすぎな。」 朝ご飯の食パンを食べながら楓先輩がこう言った 確かに、俺もそう思ってる 「……めっちゃいい曲ができた」 だけど仕方ない。 深夜が1番捗るんだ、なんでか分からないけど この人生で一番自信のある曲ができたんだ 楓 「…マジか、部活の時見せろよ」 「当たり前じゃん!見せるよ」 楓 「……あ、やば、行くぞ」 「うん!」 そう言い、俺達は自宅を出る 別々の時間で行く という選択肢もあったが、楓先輩が こうしたい と言ったから断れなかった 「おはようございます!!」 そう言って教室を開ける。 凛都は頭が痛いらしく、学校を休むらしい。 久しぶりのひとり… いつも凛都といるから安心できたけどいないから安心できない まあ、気楽に行くかー。 モブ 「お、太陽おはよ〜」 「おはよう!」 モブ 「あれ、凛都は?」 「休みだって〜」 モブ 「へー…残念だな」 凛都と俺はクラスのみんなにニコイチとして思われてるらしい。 まあ思われても 変 だとは思わない。 モブ2 「太陽、泣かないよな?大丈夫か?笑笑」 「うぜえー!泣かねえよ!」 いや、泣きそうだ。 安心感がない。全く。ニンゲンってこんな怖いっけ モブ 「そういえば今日、2年と合同体育あるぞ」 モブ2 「うわマジ?だる」 2年… 確か伶先輩と楓先輩も2年生だっけ 楽しみだな、何するんだろう 「え、何すんの?」 モブ 「いや分からん。バレーじゃね?」 モブ2 「うわありえる」 バレーか… 俺の得意種目だ!!どんどん楽しみになってきた 「バレー!?やったー!!」 モブ 「朝からうるせえなこいつは」 モブ2 「それな」 クラスの皆にそう言われているけど俺は気にせずどんどん叫ぶ それが俺の 魅力 だから そして少し経ち、5時間目になった。 そして5時間目はついに2年生と合同体育!! 2年生vs1年生でバレー大会をするらしい。勝ってやる! 楓 「あ、太陽〜」 「楓先輩!!こんにちは!」 楓 「…元気だな。そういえば凛都は?」 「頭痛いから休み!」 楓 「へー…珍しい」 楓先輩にもニコイチだと思われてる… 俺達 幼なじみ だよ、幼なじみ!! 「…あれ、伶先輩は?」 楓 「伶ならあそこ。学年で一番人気だからな。あいつは」 楓先輩が指差すところを見ると、伶先輩が女子や男子に囲まれているところを見た。 男子にも、女子にも人気なのすげえ! やっぱり、部長様々だな〜! 「やっぱり、某SNSで?」 楓 「うん、去年は伶が歌ってたからね。そのせいかも」 去年は伶先輩が歌ってたんだ… え、でも学祭の時は楓先輩が歌ってたよな… 「なんで学祭の時楓先輩が歌ってたの?」 楓 「それは知らん。急に振られたからな」 「へー……」 ここで学祭のことを思い出した。 俺の聞き間違いだと思ったあの言葉は多分、伶先輩に向けて だ。 伶先輩の顔を見ると、少し曇ってたのもあった。 もしかして歌を歌わないのも、そのせいなのか…? 先生 「おら、授業始めるぞ!!」 楓 「あ、じゃあ戻るわ」 「うん、ばいばーい!」 楓先輩と別れたあと、伶先輩の方を見る。 伶先輩は学祭と同じ顔をしていた。 そこで俺はすぐ何かを感じ取れた 伶 「…すみません、体調が悪いので保健室行ってきます」 モブ 「俺も心配だからこいつのこと付き添いします」 先生 「わかった。任せたぞ」 初めて伶先輩の怯えてる顔を見た。 あの顔を見て俺は、思わず先生のところに行った 「……俺もトイレ行ってきます」 先生 「わかった、早く済ませろよ」 「はい」 そう伝えてから、俺は伶先輩について行った。 外から見ればストーカーみたいだけど、許して欲しい ──────── 僕は今、保健室にいる。 何故かと言うと、僕の事を少し弄ってくる奴にそう言われたからだ。 命令しないと、酷い目に遭う。それが怖いんだ。 情けないよ、本当 モブ 「…イライラしてたんだよ。ここなら誰も来ねえな笑」 偶然、保健室の先生がいなかった。 多分僕の学年が1年生と合同のバレー大会だから、体調悪い人がいたらすぐかけ連れられるように体育館にいるのだろう。 僕は何でこんなに運が悪いんだ。 モブ 「…何よそ見してんだよ、クズ」 ボコッ 「……」 痛い。だけど命令に従わないと、何されるか分からない 最近何度もされる。 たまに大人数。基本はこの人だけ。 世間は多分、これを いじめ だと言うだろう。 だけどこの人は いじり と言っている。 これの何が いじり なんだよ、殴ったり蹴ったりしてくる癖に モブ 「…このまま死ねばいいのに」 「……」 本当に死にそうだ。 こいつは学年一力が強いで有名。 1発1発が重い。たまに傷を隠せない時もある モブ 「顔行くか…笑」 「…! 顔は、やめて…下さい、」 顔は、顔だけはやめてくれ。 後輩達 そして楓に心配されたくない…! モブ 「は?何断ってんだよ。もういいわお前。 このまま死ね。」 この人はそう言って、俺の頭目掛けて殴ろうとした ───────その時だった。 太陽 「……やめろ!!!!」 モブ 「…は?」 「太陽…くん…?」 何故か太陽くんが来ていた。 なんで、なんで…?体育館に居るじゃなかったの…? 太陽 「おかしいと思って付いてきたんだ」 モブ 「…ストーカーですか?笑」 太陽 「……そう思っとけ、クソ野郎」 モブ 「は?」 ダメだ、って言いたいのに何故か声が上手く出ない。 何でなんだ、本当に情けない… 太陽 「伶先輩…!!大丈夫…?ほら、こっちにおいで!!」 太陽くんは後輩。 そう思っているのに、なぜか 「おいで」 に安心を覚えてしまった僕は太陽くんのところに行ってしまった モブ 「…は?おめえ、殴られたいのか!!!」 「……っ!!」 殴られる、怖い。 太陽 「……っ…ふーっ…」 殴られる、そう思っていた。 伶 「…太陽くん…!?」 そこには頬を殴られた太陽くんがいた。 そんな、僕の代わりに… モブ 「…意外と弱いんだな。笑 ヒーロー気取りのつもりか?」 太陽 「……」 モブ 「お前、学祭で歌ってたよな笑 お前の歌う曲なんて聴きたくねえわ。」 「……!」 太陽くんが言われたくない言葉… こいつ… 「……もうやめて!!先生呼ぶから!!」 モブ 「…は、はあ!?…くそ、覚えとけよ!!」 寒い捨て台詞を言ってあの人は去っていった 太陽 「…大丈夫?伶先輩」 「大丈夫、助けなくても良かったのに。」 僕なんて、助けられる価値なんてない人間なのに。 何で太陽くんは…僕の事を、助けたんだよ。 太陽 「助けなくてもよかったって……」 「僕の事を助けなかったら、あんなに苦しくて辛い言葉なんて言われなかったし、殴られもしなかった。 それは事実でしょ。ほっといてよかったのに。そのまま逃げて行っても、よかったのに…!」 僕は思わず、太陽くんの前で本音を話してしまっていた。 本当に、無意識だった 太陽 「……」 太陽くんは少し黙ってから、僕にこう伝えた 太陽 「でも俺、伶先輩のこと救けられて良かったって思ってる。 もし俺があそこで救けなかったら伶先輩、辛い思いしてばっかりだったろ。」 太陽くんは僕の事を思って救けてくれたんだ… そう思うと、目の奥がジーンと熱くなった 太陽 「伶先輩がここに居てくれて、俺は助けられた。 伶先輩、」 “ 辛かったな。 ” 「……!!」 そう言うと、太陽くんは僕の頭を優しく撫でてくれた それがなぜか嬉しかった僕は、思わず泣いてしまった 「…僕…辛かった…」 それを聞いた太陽くんは何も言わず、ただ隣に居てくれた。 ──────── 俺が合同体育で張り切ってる時、伶先輩は辛い思いをしていた 俺の予想だと、 暴力 暴言 …だと思いたい。 それだけでもダメだけど、もしこれだけじゃなかったら俺は多分気絶すると思う。 伶 「………」 「…落ち着いた?」 伶 「うん、ありがとう。」 やっぱり伶先輩、疲れてる。 どうせ楓先輩に相談できなかったんだろうな。 伶 「…僕、去年ボーカルだったんだ。」 「……」 楓先輩が言ってたことか… 何があったんだろう。 伶 「だけど、同級生から キモい声 とか もう歌うな って言われたとき、僕の中の何かが壊れる音がしてさ。」 “ 僕、歌えなくなったんだ。 ” 「……え…?」 歌えなくなった…?それって、 伶 「今も…なんだけど、歌おうとしても声が出ないんだ。 喉に声が突っかかって声が出ない。 歌うのが怖い。…ごめんね、部長なのに。」 伶先輩が歌わなくなった理由…こんな事だったんだ。 こんな事って言ったら迷惑なのは分かってる。 だけど、伶先輩、こんないい声してるのに歌わないなんて…変だよ… 「……ごめんって、言うなよ…」 伶 「…え?」 俺はありのままの気持ちを伶先輩に伝える事にした 「…部長だから 歌わなきゃ なんて決まりないだろ。 声が出ない日があっても、怖くて歌えなくても、それで 部長 という肩書きが無くなる訳じゃない。」 少し間を置いて、こう伝えた 「それに、無理に出して壊れるなら、出ないまま生きていいと思う。 だからボーカルの俺がいるんだろ!」 俺は元気だけが取り柄だ。 元気すぎて うるさい とも言われたことがあるが、 俺は誇りに思ってる。大好きな俺の部分。 それを伶先輩にぶつけた。 俺がこういうキャラだから言える言葉。 迷惑なのはわかってるけど、元気になって欲しい。 そう、願って。 伶 「……そうだね、太陽くんがいるもんね…」 伶先輩は目をウルウルしながら、俺にこう言った 伶 「……なら…安心だ…!」 「……!」 ようやく 本当の笑顔 を見せてくれた… 今までの伶先輩の笑顔は、目が笑ってなかった。 だからこそ嬉しい。 「…笑顔可愛いよ!!伶先輩!」 伶 「……ありがとう…!」 伶先輩が笑顔で居てくれて、本当によかった。 ──────── 俺の名前は 佐橋凛都 。 太陽の幼なじみだ。 「……」 今日、頭が痛い と言って休んだが、それは嘘。 初めてズル休みって言うのをした。 まあ、中学の頃、太陽に誘われて1回したんだけど。 今日は何故か、行けなかった。 いや、行きたくなかったんだ。 どうせ今日も 部活 がある。 俺は、太陽が辛い思いしてるのを見たくない。 俺は太陽に ボーカルやってみろよ と背中を押した 俺は太陽に 軽音部に興味ない? と言って、軽音部になった。 中学の頃、俺と太陽でバンドやりたい と言ったのも俺。 いつもは強がってるし、太陽がしたい事は応援もする。 だけど、太陽に全てを背負わせすぎた。 太陽が苦しんでるところを見ると全て 俺のせい と感じてしまう。 「……なんでなんだよ…」 俺は 自分自身 が嫌いだ。
歌で救えるのならば 4話
今日は久しぶりに 凛都 と遊ぶ日だ。 俺は8時半に起きて、今から凛都の家に行く たまには俺の実家…って言うのか分からないけど、 実家に行こうかな って思う日もある。 だけどなぜか足が踏み出せない。 それは俺にも分からない ピンポーン… 凛都の家のチャイムを鳴らす 凛都 「太陽…おはよ…」 眠そうに目を擦りながらやってくる凛都。 こいつは本当朝が弱いな。 「…両親は?」 凛都 「…いない、たいよー…きて…」 凛都はそう言って俺の手を引いて、凛都の部屋に連れて行かれる。 こいつは朝眠い時甘える癖が昔っからある。 変わんないな 「お前寝ぼけてるだろー」 凛都 「……なに寝ぼけるって」 ああ、手遅れだ。 「……早く起きろおおお!!!」 俺は凛都の耳の前で叫ぶ すると凛都は驚いた様子になっていた 凛都 「…うわっ、なんで手繋いでんだよ。」 「いやお前が手を引いてきたんだろうが。」 いつもの凛都に戻った。よかったー… ピロン♪ [ 楓 ] という名前の通知が凛都のスマホから来る。 もしかして、楓先輩か…? 「…楓先輩とLINEしてんのかお前」 凛都 「え、当たり前じゃん。してるけど」 「はあ!!ずるい!俺もしたい!」 やっぱり。 俺も楓先輩と伶先輩と一緒にLINEしたい!! 凛都 「はあ…?自分で聞けよ」 「やだよ、先輩に聞くの難しい」 凛都 「…じゃあ俺から言うから。待ってろ」 「うん!!ありがとう凛都!だいすき〜」 そう言って俺は凛都のことを抱きしめる 凛都 「おーーいやめろアホ」 「……いてっ」 俺は軽く凛都に頭を叩かれる ピロン♪ 凛都 「……楓先輩、いいよだって」 「まじ!?QRコードみせて!」 凛都 「ほらよ」 凛都のスマホを見せてもらって、楓先輩のQRコードを読み込む [ 楓 ] というプロフィールが見える。 ああ俺、楓先輩とLINEするんだ…俺はそう思いながら 楓先輩の事を追加した 「…そういえば、伶先輩のは?ないの?」 凛都 「うん、俺も持ってないんだよね。色んな人達にも聞いたけど、伶先輩とLINE繋げられる人はあまりいないらしい」 「へー…… てか人気なんだね、伶先輩」 色んな人に聞いた…ってことは、人気者なんだ。伶先輩 そりゃそうか、軽音部部長で某SNSでも人気だったもんな 凛都 「そうらしいね。あー…俺も人気になりてえ」 人気者…か。 俺もなりたいな。伶先輩 みたいな 人気者に 「俺もなりたい」 人を救う存在に、なりたい。 凛都 「……じゃ、また月曜日な」 「おう、またなー!!」 19時に凛都の家を出た 久しぶりにこんなに遊んだな、とルンルンで家に帰る ピロン♪ 楓 [ 少し、会えないか。] 楓先輩からLINEが来た 「会う」? まあ、いいけど… たいよう [ いいよ😆どこ集合? ] 楓 [ 近くの小林公園。来て欲しい] 「…珍し」 楓先輩から俺の事を誘うのはない。全くない。 遊んだ事もない。 要件はなんだろう…楓先輩の事だから悩みとか…かな。 いや、そんな訳ないか。 「楓先輩どうかしたの?」 小林公園に来ると、ベンチに楓先輩が座っていた この時間はいつも家にいる…って伶先輩が言ってた気がするけど 楓 「…まあ、隣座れよ」 理由も言わず、ただ俺は 「隣に座れ」 と言われた 「……え、うん。」 俺は楓先輩の隣に座った なんだかんだ楓先輩の隣になった事があまりないので 少し緊張している 楓 「……」 「……」 なんの時間だ、これは 少しの間沈黙が続く。 なんの目的で俺を呼び出したんだろう ────楓が太陽を呼ぶ少し前… 俺の名前は 如月楓 。 軽音部の副部長だ。 「………これはこうで…」 俺はサブギター担当をしている メインギターは1年生の 太陽 がやってる。 うるさい奴だけど、いいやつなんだ。 トントン…(ロック音) 「……なに?」 練習してると突然母親が入ってきた いつもは突然に入らないのに、どうしたんだろう 母 「…あんた、まだ 軽音部 とかいうバカが集まる事やってんの?」 今日は不機嫌の日か。 俺の親は気分によって態度が変わる。 よりにもよって、今日は不機嫌な日。最悪だ 「…やってる。で、なに?」 文化祭も控えてて大変なのに。 本当に親はうざい。将来の事しか考えてない 母 「…“将来の為に” 勉強してなさい。 学生は勉強するのが仕事なんだから。 」 母親はそうやって、俺を無理やり机に座らせようとする 「……やめろよ、文化祭控えてんだよ。 勉強なんて、する暇ないし。」 俺はギターの才能も、歌の才能も本当はない。 努力したからこそ今上手くできてるのに。 母 「………親に向かって何なのその態度は!!!」 あーー、始まった。 俺の親は突然ヒステリックになる。 突然ヒステリックになる何かの病にかかってんのかってぐらい、 嫌になる。 「…何なのって、学生は努力するのも仕事だから。」 母 「ギターとかいう訳分からない物買って音楽やろうだなんてお母さん許さないんだからね!!!」 そう言って俺の母親…いや、他人は 俺のギターを捨てようとしてきた。 「……やめろって…!!」 俺は思わず、ギターを他人から取り返した その時にギターの持つ所が他人の頬に当たってしまった 母 「……もう…あんたなんか産まなきゃよかった!!!」 「……!」 「ウザい」 「キモい」 「あんたなんて死ねばいいのに。」 などは言われたことがあるが、「産まなきゃよかった」 は言われたことがない。 いつもは しょうもない と思うけど、今日は違った。 なぜか目の奥がジーンとなって、目から涙が出そうだった 「………っ……」 母 「…あ、ちょ!!待ちなさい!!」 涙が出そうだった俺は思わずギターを持って家を飛び出してしまった。 俺の親は母親の浮気で離婚した。 お父さんと一緒に暮らしたかったけど、俺の母親が弁護士の前で嘘泣きをして、親権は 母親 となったらしい。 こんな話、嘘だと思うよな。俺もそうだと思いたい。 「……」 久しぶりだな、この公園に来るのは。 この公園はいつも家族で来てた場所。伶とも行ってた。 「……身体…ダルいな。」 このタイミングで風邪引いたか。 神様は俺の事、嫌いなのかな。 「……なんで…こうなるんだ…」 いつも母親、先生、友達から 「完璧だ」 と言われてきた。 でも俺だって人間だ。 俺の夢は バンド 。軽音部のみんなで武道館へ行くこと。 それなのに、 勉強勉強 って。頭可笑しくなりそう。 ────俺だって、「完璧」 なんかじゃないのに。 ピロン♪ そんな時、仲間の 凛都 からLINEが来た 凛都 [ 太陽に楓先輩のQRコード見せていい? ] そういえば太陽とは友達追加してないんだっけ。 どうせならと俺は 「いいよ」 と返事をした。 どうせあいつも、俺のことを 完璧人間 だと思ってる 少し経つと、 [ 太陽 ] というアカウントの通知が来た 意外と普通なんだな と驚いた。 時間は18時50分。流石に寒い。 そして19時、俺は無意識に太陽に 「少し会えないか。」 という文を送っていた。 なんでなんだろう、俺は伶にも頼れなかった人間なのに。 太陽には何故か、俺の弱い所も見せられるってそんな気がした そして今、俺は太陽と無事会い、今はベンチに座っている 困惑している姿が 少し可愛い と思ってしまう。 太陽 「楓先輩、なんかあった?」 太陽はそう言って俺の顔を覗き込んで来る 泣いていたのがバレそうな俺は、思わず顔を伏せた 太陽 「…!? ご、ごめん」 俺はいつも人の前では笑わない。というか笑えない。 完璧に演じないと行けないから。 だけどこいつになら、弱音を吐ける気がする 「…俺さ、親に将来の夢をバカにされたんだ。」 そう言うと太陽は驚いていた そりゃそうだよな、と太陽を見ると俺の話を真剣に聞いてくれていた。 「……でさ、 産まれてこなきゃよかった って言われちゃって。 ほんと、バカだよな。俺。」 後輩に助けを求めるなんて、俺はバカだ。 情けなくてだらしない。 太陽 「…」 太陽は黙り込んだ口を開けて、俺にこう伝えた 太陽 「それ、言われたら一生残る言葉じゃん。」 太陽は俺の言った言葉を否定せず、肯定もせず、こう言った 俺は少し わかってもらえた ってそう思った 太陽 「…でもさ、楓先輩が悪い理由にはなんないじゃん。 生まれてきたかどうか決めたの、楓先輩じゃないでしょ」 腹立ってるところ、初めて見た。 俺の為にこんなに怒ってくれてる…のか…? 太陽 「俺、それ言われたら何も言えなくなる。 だから、楓先輩が今ここにいるだけで十分だよ。」 少し置いてから、太陽は俺の目を見てこう伝えてきた 太陽 「…ここまで言われて逃げないだけで、もう十分だよ」 “ よく頑張ったね ” 「……!」 「完璧人間」 という鎖が壊れた気がした。 俺はちゃんと、人間なんだ。 太陽から見ると、普通の人間なんだ。 泣いても、いいんだ。 「…お前…なんなん…」 俺は思わず、太陽の前で泣いてしまった 俺の泣いた姿を見た太陽は、少し驚いてたけど、ただ隣に座ってくれた。 ──────── 少し経った頃、楓先輩は俺の肩で寝ている。 相当辛かったんだろうな、とお調子者の俺でもわかる話だった さあ、ここからだ。 俺はどうするべきなのだろうか。 このまま家に連れてく…いや、楓先輩の事をおんぶして俺の家に連れていくか。 俺はそう思い、楓先輩の事をおんぶした 「…ええ、かる…」 少しスラッとしている体型だなとは思っていたが、 ここまで軽いとは思っていなかったので少し驚いた 今日は驚くこと、多いな。 そう思いながら俺の家に帰る。 楓先輩のこと、救けてあげられたかな。
歌で人が救えるのならば 3話
今日は学祭前日の練習…らしい。 いやー、早かったな。 先輩に学祭の事を詳しく聞くと、学祭は 新一年生に向けて、演奏をする というものらしい。 だから最初、凛都と俺は出ないで、最後の最後に出るんだって あー… 緊張する。 凛都 「…おはよ。太陽」 「凛都ぉ……」 凛都 「うわ、なんだよ」 俺は朝イチで凛都に抱きつく。 あーー、安心する。 「緊張するんだ…」 凛都 「そうだろうと思った。 でも学祭前日、練習ある生徒は授業受けなくてもいいんだって」 「え、!?まじ!!!?」 びっくりして思わず凛都から離れる え、まじで!?学祭前日ってやっぱいいものなんだな 凛都 「だからこのまま部室行ける。サボれる」 「うっしゃあああ!!!このまま走って行こうぜ!!」 凛都 「ちょ、待てよ太陽!!」 俺ははしゃいで、上靴をまだ履ききれていないのに 走って第2音楽室へ向かっていた。 伶 「やめ………」 「はやくはやく!!」 凛都 「…まてって!」 この頃はまだ、伶先輩がこんな事をされているとは 思いもしなかった。 「……」 伶 「太陽くん…ってあれ、なんか元気ない?」 凛都 「あーこいつ、朝弱いんですよ」 「それはお前だろ!」 それを言って、凛都の頭を軽く叩く 凛都 「いって。」 楓 「へー、凛都朝苦手なんだ」 凛都 「うるさい、楓先輩。」 は!?こいつ先輩にタメ口使ってる!! いいのかよ…! 「タメ口いいの!?」 伶 「あれ、太陽くんにはいってなかったっけ。 タメ口でも全然いいよ!」 「やったー!!よろしく!伶先輩、楓先輩!」 楓 「…タメ口だとこいつ、余計うるさいな。」 「なんだとー!?!?」 伶 「はいはい、喧嘩はいいからやるよ〜。」 その声を聞くだけで、明日が 学祭当日 だと分かってしまう 俺が嫌だ。あーー…緊張する。 伶 「太陽、声掛け頼む」 俺はまた、声掛けをする。 「ワン、ツー、ワンツー、せーの!!」 また同じイントロが流る。 「…すーっ…」 息を吸う。 「…はあーっ…!!」 あれ、声が出ない。 凛都 「…ちょっと待って。太陽、声出てないしイントロもズレてる。どうした?」 なんで…? いつもは気持ちよく歌えるのに 伶 「もしかして、緊張してる?」 楓 「……それはなんでだよ。俺はいいと思ってる。」 本当になんでだろう。 いつもは気持ちよく歌えるし、声も出るのに…!!! 「…すいません、上手く声が出ないんです。 いつもはスーッと気持ちよく…出る、のに」 ここで泣いたらダメだ、ダメなのに。 情けなくて不甲斐ない自分になぜか涙が出そうになる 楓 「……ほら、もう1回。時間はあるんだから大丈夫だ。」 普段とは違う楓先輩に驚きつつも、 昔両親に教えられていた 緊張しないおまじない をする 大丈夫…大丈夫… 俺は歌える人間だ。 「…すー…… 行くぞ!!!!」 俺がそういうと、皆が準備をする。 伶先輩はベースギターを持ち、 楓先輩はギターを持ち、 凛都はドラムのスティックを握る。 俺はその瞬間に息を整える。 俺は行ける。大丈夫。 「…ワン、ツー、ワンツー、せーの!!」 俺の声掛けと共に、イントロが流る …声が出そう、大丈夫だ。やれ、やるんだ。俺 「…っ、うるさいごえ"がまだのごっでる!! うまぐうたえ"ってだれのばなし!! ぎだーのおとにおれがまけて、それでもとめかだがわがらん! へだでいい"って、いわれたいわげじゃない!! ぎえたいよる"に…きごえないごえでここにいるっでつだえたいだげ!!!」 よし、歌い切った。 偉い、偉いぞ俺。 伶 「……いいね、いつもの調子出てる。」 凛都 「やっぱお前はそれでこそお前らしい。」 「これでいいの…ほんと?」 俺の学祭に兄ちゃんが見る。 だからこそ俺はもっと上手く見せたい。 楓 「……」 「…楓先輩。」 楓 「…どうした?」 「歌を上手く歌いたいのでアドバイス欲しいです。」 楓 「アドバイス?」 楓先輩は考えてから、俺にこう伝えた 楓 「…歌は力じゃなくて 気持ち を乗せるんだ。 息の使い方も大事。」 「…息の使い方…?」 俺が首を傾げると、楓先輩は説明してくれた 楓 「歌ってる時に途切れたり、かすれたりするのは息をちゃんとコントロールできてないから。 ギターに合わせて歌う じゃなくて ギターと呼吸を感じながら歌う。 そうすると、声も自然に伸びる。」 楓先輩は、なんだかんだ俺の歌声を よく聴いていたらしい。 すごいな… 先輩 って。 「…すげえ…ありがとう楓先輩」 楓 「俺のギターに合わせて歌ってみろ。」 楓先輩はそう言って、ギターを持ち、イントロを弾く。 「……!?」 急だな… まあ、楓先輩はそういう人間だもんな そう思いながら俺は息を吸い、楓先輩のアドバイス通りに 歌を歌おうと努力する 「……うるさい声がま"だのこってる! うまぐうたえ"ってだれのはなし! ギターの音におれ"がまけてそれでも止め方がわがらん! 下手でいい"っていわれだいわげじゃない!! ぎえたいよるに、ここにいる"って伝えたいだけ!!」 楓 「…!」 伶 「…!!」 凛都 「…!?」 俺が歌い終わると、みんなが俺のことを見てきた 歌うのに必死で自分自身の歌声が聞こえなかった俺は、 なんで俺のことを見たのか分からなかった。 「……喉少しだけ痛いだけだ!…ってみんなどうしたの?」 凛都 「いやいやどうしたの? じゃなくて相当成長してるぞ」 伶 「うん、ちょっと裏返ったりしてたけど上手かった。」 凛都は俺の肩を組んで 伶先輩は俺の事を撫でてくれる。 楓 「…太陽はこのままでいい。 太陽の力強い歌声が、俺は好き。」 楓先輩は自分のギターを持ちながらこう伝えてきた 俺の 力強い歌声 が好き…なんだ。 だから目も潤んでたのか?…感動したのか! 「ほんと!?やったー!」 楓 「…お前は一生そのまま純粋に生きろよ。」 楓先輩はそう言って、俺の頭を撫でてくれた。 「純粋に生きろ」… どういう事なんだろう、 伶 「楓が後輩の頭撫でるなんて珍しい」 楓 「うるせえ」 凛都 「楓先輩のお気に入り?」 楓 「うるせえ」 「……」 学祭前日、俺達は楓先輩を弄りながら沢山練習をした 何度も、何度も、音合わせをした。 俺はたまに楓先輩に どう上手くなれるか を聞きながらメモに 書いた。 いつまでも練習が出来るように。 なんだかんだあり、今日は学祭当日だ。 「……」 凛都 「固まってるぞ。」 楓 「大丈夫かよお前」 学祭の時は部活で分けて座るらしい。 俺は楓先輩と凛都の真ん中に座っている。 緊張しすぎて、言葉が出ない。 「緊張する。」 伶 「リラックスだよ、リラックス!」 伶先輩はそう言って、凛都の隣から顔を出す 伶先輩の笑顔見ると癒されてきた… モブ 「…あいつの笑顔きも…(小声)」 「……は?」 きもい…って言ったよな? 楓 「…どうした?」 「いや今悪口が。」 伶 「……気のせいじゃない?」 伶先輩はそう言って あはは と笑う。 気のせい…ならいいか。 放送 「次は、合唱部による たいせつなもの です。」 放送委員会の声掛けと共に、ブー と幕が開く。 俺達の番は最後らしい。 校長先生が俺らのファンで、最後の最後に盛り上げて欲しいから 最後にしたんだと。 合唱 「空に光る星を……」 俺とは違く、綺麗な歌声だ。 とても綺麗で、消えそうな声。 天然水みたいな声…って言えば、分かりやすいかな。 「…綺麗だ…」 思わず心の声が出てしまった。 俺もあんな声だったらな と少し思うが、楓先輩の 「太陽の力強い歌声が、俺は好き。」 という言葉が脳内で繰り返し再生される。 楓 「…ふっ。」 凛都 「……笑」 そんな俺を見て、凛都と楓先輩は笑う。 どんな事を思っているんだろう…と俺は少し緊張する。 そしていつの間にか、吹奏楽部の音楽が終わった。 次はついに 軽音部 。俺達の番だ。 「……緊張…する…」 俺と凛都は先に裏にいる。 楓先輩と伶先輩は楽器の用意をしていた 凛都 「お前、そういえば曲名言うのか?決めてただろ?」 「うん、言うつもりだけど」 凛都 「よし!俺そう言うと思って、もう伶先輩に言っといたから!! 期待してるぞ!」 凛都はそう言って、ニコッと笑う。 ああー…他人事だと思って… と少しイラッとしたが、 笑顔が可愛いからもうなんだっていい。 放送 「最後、軽音部の皆さんです。」 そう言うと、先生達や生徒のみんなが盛り上がる。 そのタイミングで幕が開く。 ああ、俺達の番なんだ。と少し怖くなっていたが、 先輩達の方を見ると冷静で真剣だった 伶 「……生徒の皆さーーん!!初めまして! 部長の 神無月 伶 です!!」 部長の伶先輩が自己紹介をすると、皆が フォーー と騒ぐ。 ああーー、無駄に緊張する 伶 「今日はあまり時間が少ないので、あの人気曲。 「スタートライン」の1番を歌います」 この学校では 「 スタートライン 」 という曲が有名らしい。 俺は少しSNSで聞いたくらいだったな。 伶 「…楓。(小声)」 楓 「……曲名 「スタートライン」 。」 楓先輩がそう言うと、伶先輩がギターをする。 ドラム担当がいなくて少し大変そうだけど先輩達は楽しそう 楓 「…踏み出すために 揃えた靴紐 同じ速さで 息を整えて 振り返らない、それが正解だと教えられてきた 今日までを背に」 「……!」 楓先輩は サブボーカル らしい。 昨日急遽決めたのに、何だこの綺麗な声は。 俺とは大違いじゃん。 楓 「遠くで鳴った 合図の音 迷いは置いていこう ここに立つ理由は もう 十分すぎるほどある」 楓先輩がそう歌うと、少しギターが激しくなった すごい、やっぱり先輩達はすごい。 楓 「……さあ!!スタートライン 同じ空を見上げて!昨日の不安は 後ろに置いて さあ!!スタートライン! 躊躇いはいらない 走り出す今が 答えになる!!」 楓先輩がそう歌うと、イントロに入って曲が終わる。 今度は 俺達の番 だ。 伶 「最後は、僕達の後輩の子達に任せます!!」 凛都 「…行くぞ、太陽」 「……おう」 俺達はステージに出る。 俺が伶先輩と楓先輩の真ん中に出て、凛都は俺の後ろの ドラムの所に行く。 真ん中だと、兄ちゃんが見やすい… 伶 「……太陽、挨拶よろしく(小声)」 そうだ、俺が挨拶するんだ。 俺はマイクを持ち、息を整える 「……こんにちはーー!!!初めまして!! 俺の名前は 吉田太陽 !ギター、ボーカル担当です!!」 挨拶は上手くできた。 よかった… ドンドンドン…ッ! (ドラムの音) 凛都 「…ドラム担当、佐橋凛都です」 よし、凛都も上手く行った。 伶 「今日は1年生の太陽が新曲を持ち出してくれました。 静かに、よく聴いてください。」 伶先輩がそう言うと、生徒のみんな、そして先生達までも ステージの方を静かに見ていた。 「……俺の歌は短くて、少しうるさいです。」 それを俺が言った瞬間、少しザワついた。 兄ちゃんに関しては同級生と共に少し笑っていた 「だけど、聴いて欲しいです。」 「……曲名 「消えない声」 」 そう言うといつも通りイントロが始まる。 こんなに緊張するのは初めてだ。 だけど仲間がいる。 俺は歌える。 「……うるさい"声がまだ残っでる!」 俺が歌った瞬間、またザワついて笑い声も聞こえた。 兄ちゃんの方を見るとまだ笑っていた。 俺は少し、 舐めんな と思ってしまっていた 「上手く歌えって"、誰の話 ギターのおどにまけて、それでも止めかだが分からん!!」 俺が気にせず歌い続けると、何故か客席が静かになる。 「下手でいいって言われだい訳じゃない"!!」 楓先輩に言われた 気持ちを出す を参考に、 頑張って歌う。 例え笑われても、嫌われても、俺は歌い続ける。 「消えたい夜に"「ここにいる"」っで伝えたいだけ!!」 1人でも俺の歌、曲で救われた人がいれば それでいいんだ。 そう思いながら歌うと、イントロが流れる。 俺も伶先輩の真似をしながらイントロを弾く。 「……ありがとう、ございました!!!」 俺がそう言って、見ないようにしてた兄ちゃんの事を見る すると、兄ちゃんは俺の事を笑わずにただ黙って見ていた 初めてだ、黙って見られるのは。 ブーーー… ブザー音と共に、幕が閉じる。 学祭の時は どうなるか 怖かった。 だけど先生達も生徒の皆もただ黙って見てくれていた。 凛都 「よくやったぞ」 伶 「ほんとね、理科の先生泣いてなかった?笑」 理科の担当の先生の 松崎先生 が泣いてた!? あの人感情ないで有名じゃなかったっけ… 「え、まじ!?」 楓 「うん、涙出てた気がする。笑」 「俺の歌声で泣いたのかな…そんな訳ないか。」 そう思うと調子乗ってしまう。 どうせ目にゴミが入った…っていう、つまんない事だろう 凛都 「…俺お前の歌声に弱いわ…笑」 「え?なんで?」 楓 「……太陽は向いてるよ。バンドに」 先輩に褒められたのは初めてだ。 そういえば、凛都にも言われたんだっけ 「……ありがとう、楓先輩!」 俺は嬉しくて思わず楓先輩に抱きついた 楓 「お前、やめろ笑」 伶 「あれ、嫌そうじゃないね」 楓 「うるせえ」 凛都 「嬉しいのかなー?」 楓 「うるせえ」 幸せだな。 こうやって騒ぐのは。 楓 「じゃあ、またな。太陽、凛都」 伶 「じゃあね!」 「ばいばーい!!」 凛都 「また明日〜!」 先輩達は後片付けで学校に残るらしい 俺と凛都はまたいつも通り同じ道で一緒に帰る 凛都 「……凄かったな。」 「楽しかった」 学祭前日は 嫌な事しかないだろう とそう思っていた なのに、楽しかった。 凛都 「…なあ、太陽」 「…どうした?」 いつもとは違う凛都の様子に少し驚きつつも、 聞く体勢に入る 凛都 「……お前はやっぱり、」 “向いてるよ。” 「……!」 2回目だ、これで。 本当にそう思ってるのかは分からない。 だけど、幼なじみの絆で分かる。 多分これは、ガチで言っている …と思う。 「…ありがとな、凛都」 凛都 「…おう、じゃあまた来週な」 「明日家行っていい?」 凛都 「別にいいけど」 明日は休み。 何しようかな〜なんて呑気な事を考えている 「じゃあまたな!!」 凛都 「またなー!」 あーー…今日はいつもより疲れた。 「疲れた……」 ピロン♪ 「…うわ、兄ちゃんからだ。」 また言われるのかな、とドキドキしながらトーク画面を開く 昴 [ お前マジ自分の声嫌いすぎ笑 でも今日の歌嫌いじゃなかった。 お前が歌やめたら、俺が1番ムカつくから。] 「……言われなかった。」 言われなかったからなのか、そうじゃないのか分からない。 だけど今俺は凄く嬉しい。 「上手い」 とは言われなかったし、褒められもしなかった。 だけどそれが兄ちゃんらしい。 「……また歌お。」 俺はギターを持ち、息を整えて歌う準備をする。 俺は ボーカル だ。
歌で救えるのならば 2話
今日も今日とて練習! 今日は初めての音合わせらしい。俺上手く歌えるかな〜 「こんにちは!!」 伶 「今日も元気だね太陽くん!」 楓 「……」 俺が歌を歌ったあの日から、先輩達がとても楽しそうに笑っている。 俺の歌で元気になってくれたのかなって、 そうじゃないかもしれないけどもしそうならとても 嬉しい 。 凛都 「……遅れました。すいません」 伶 「全然大丈夫!やろうか、練習」 「はい!」 最近、凛都が遅くなるのが多い。 俺が呼びかけても 「後で行くから」 って言うことが、 多くなっている気がする。 伶 「…太陽、声掛けお願い」 「はい!!ワン、ツー、ワンツー、せーの!!」 俺の声掛けで、音が聞こえる。 この後に俺が歌う事を知ったら、胸がぎゅっと苦しくなる だけど、俺は ボーカル 。 歌うしかないんだ、俺は。 「……すーっ… うるさい声がまだ残ってる"!! 上手く歌え"っで、だれのはなじ"!! ギダーの音に俺か負けて"、それでも止めがだがわがらん!! へだ"でいい"っで、言われだいわけ"じゃない!! きえだいよるに消えないごえでここにいる"っでいいたいだけ!」 ああ、今日もダメだ。 気持ちよく歌えたらダメだ。上手く見せなきゃ。 楓 「……もう1回。」 「……すいません…!」 俺ってやっぱり、下手なのかな。 …いや、下手なのは分かってる。 じゃあなんで、 もう1回 なんだ。下手なら もういい って 言うはずだろ、多分。 よく分かんねえ。ほんと。 伶 「……太陽くん、声掛けお願い。」 「…はい、ワン、ツー、ワンツー、せーの!!」 また俺が声掛けして、イントロが流れる。 俺はまた息を吸って俺が作った歌を歌おうとする。 「……うるさい声がまだ"のごっでる!! 上手くうだえ"っで、だれのはなじ!!! ぎたーのおどにおれがまげで、それでもどめがだがわが…」 凛都 「……ストップ。」 俺が歌う途中に、凛都が止めた。 俺、やっぱり変か? そう思いながら、水を飲もうと立つ 凛都 「…お前、音ズレすぎだろ。」 珍しいな、凛都が俺に引っかかってくるなんて。 「…え?」 凛都 「だから、ちゃんとやってんのかって。」 前とは少し違く、少し優しい口調で俺にこう伝えてきた 「やってるよ、ちゃんと。」 凛都 「…そっか。」 そう言って凛都は少し黙って、また口を開けた。 凛都 「でも今のままじゃ届かない。 もちろん太陽が頑張ってやってんのは伝わる。でも、 歌になってない。」 「……!!」 俺だって分かってるよ。 俺は 下手 で、人を救う才能がない。 だけど… 伶 「2人とも、やめよ…」 「…それでも俺は…!」 俺は、歌に自信がある訳でもない。 人を救える なんて、綺麗事ができる訳でもない。 そんな事はもう、分かってる。 分かってるけど、俺が下手なのも、届かないのも。 それでもここで黙ったら 俺は今後、一生歌えなくなるって、そんな気がしたんだ。 「……歌いたいんだよ…!!」 凛都 「…!」 なんで凛都にぶつけたのか、俺にも分からなかった。 誰かに否定されても、才能がないって言われても それでも俺はようやく、歌いたいって自覚したんだと思う。 「……す、すみま…」 伶 「太陽くん本気なんだね。よく気持ちが伝わったよ」 凛都 「……」 楓 「…ほら、もう1回すんぞ。」 「…はい!!」 また俺は定位置についてまたマイクを持ち、声掛けをする。 今度こそまた、上手く…いや、気持ちよく歌えるように。 今回は止めも入らず、ただ皆が皆俺の歌を黙って見ていた ……気がする。 相変わらず俺は下手で、希望のないただの音痴ボーカルだ。 だけど俺は、誰かが見てくれればそれで十分。 ようやく ボーカル らしくなってきた気がする。 伶 「……初めての部活疲れたね〜…」 楓 「お前はいつもやってんだろ。」 練習が終わったあと、伶先輩が俺のところに来て 世間話をする。 楓先輩のツッコミに少し笑いそうになった 「…はい!疲れました。」 伶 「だよね〜……あ、そういえば話があるから集まって!」 そう言って伶先輩が楓先輩と凛都を集合させて、口を開く 伶 「この学校には、5月に学祭があるんだ。 1年生は知らないでしょ?」 5月に学祭あるんだ… なんてそう思いながら、 伶先輩の話をよく聞く 伶 「そして学祭の日は、“必ず”軽音部が出るんだ」 軽音部が必ず出るんだ…… …ん? てことは俺、全校生徒の前で歌う…のか?! 伶 「だから、学祭の日まで全力で練習するぞー!! 円陣組む為に呼んだ!」 ちょっと待て。 理解ができない。 全校生徒の前で歌うのか?俺が? ボーカルとギター担当…は俺。 ドラムは凛都。 ギターは楓先輩。 ベースは伶先輩。 やっぱりボーカルは俺担当… 「…それって、保護者も来ていいんですか?」 伶 「もちろん!簡単に言うと、文化祭が2回ある…みたいな そんな感じ!!」 文化祭が2回ある…ということは俺、2回歌うのか!?!? ちょっと待てよ。 兄ちゃんの前で2回も…? ああ、やばい。トラウマが蘇ってきそうだ。 伶 「ほらほら、太陽くんもボーッとしてないで! 円陣組むよ〜!?」 そう言って、伶が俺の隣に来る。 そのついでに楓先輩も俺の隣に来る。 俺はまだ、頭の中が真っ白だった 伶 「…文化祭と学祭……」 楓・伶・凛都・太陽 「「「 頑張るぞ〜〜〜!!!」」」 楓 「おい、声小さいぞ太陽。」 そう言われても、頭の中が… 伶 「急に言ってごめんね、太陽くん。 僕たちとボーカル、頑張ろうね!!」 部長さんよ、否定しないのか… 「……できるだけ、頑張ります…」 俺は俺の気持ちで。 下手でもそれでもいい。 誰かの心を刺せば、救えば、それでいいんだ。 「……じゃ!お先に失礼します!!」 伶 「うん、気をつけてね〜!」 そう言って俺と凛都はまた、第2音楽室を後にした。 凛都 「…太陽、ごめんな。」 外へ出ると、凛都が俺に向かって謝った。 カバンを握りしめながら、言ってきた。 それだけで俺は 「ああ、後悔してるんだな」 って分かった 「……俺も言いすぎた。」 凛都 「…俺、初めてお前の歌声について強く言った。 前はあたふたして、頼りない太陽だったのに、 覚悟があった。」 「…………」 凛都 「お前は向いてるよ。」 言葉が詰まる。 なんて返せばいいか分からない。 「…ほんとか〜?もしそれが嘘だったら 俺もう歌えなくなっちゃうからな!」 凛都 「……はは、そうかよ。」 よかった。笑ってくれた。 俺はすぐ冗談へ進む。 まあ、その癖が俺らしいからいいか! 「学祭頑張ろうな!!」 凛都 「おう!!」 パチッ… そう言って、俺達はグータッチをする。 相棒らしい。笑 「……またなー!!!!凛都!!」 凛都 「またな!!太陽!!」 大きな声で挨拶をする。 俺達はまだ、子供だな〜… 「疲れた……」 ピロン♪ 通知が来て、スマホを見る 「…うわ。」 すばる 「お前、あともうちょっとで学祭だろ?😹😹 楽しみにしてるからな〜😄」 「……」 嫌な奴からLINEが来た。 そうだ、兄ちゃんとは同じ学校なんだ。学年は違うけど 兄ちゃんからいわれる言葉は怖い。 だけど俺には仲間がいる。 …頑張らないと!!!!
歌で救えるのならば
俺の名前は 吉田 太陽( よしだ たいよう ) !!歌で人を救いたい新高校1年生だ ?? 「たいよー…おはよう…」 「おう!!おはよう!!」 こいつの名前は俺の小さい時からの幼なじみの 佐橋 凛都( さはし りんと ) !! こいつは朝が弱いんだよなー、意外と。 凛都 「お前は朝から元気だな…俺は死にそうだと言うのに…」 「朝が弱いお前が悪いだろうが」 そういえば今日は 高校の入学式 がある ついでに、 部活紹介 も…! 勿論俺は 軽音部 に入る 「なあなあ!!お前ももちろん、軽音部に入るよな!!」 凛都 「…当たり前だ…その為にドラム買ったし」 そう、こいつは ドラム担当 !! 小さい頃から ドラム をするのが好きだったらしい。 流石俺の幼なじみ 凛都 「お前はギター買ったのかよ」 「当たり前だよ!」 俺は ギター担当 ……になりたい。 ギターってなんかカッコイイだろ?なんというか、主人公みたいな、そんな感じで 凛都 「どんな先輩達なんだろうな…」 「な… 気になるよな…」 俺達が入る 軽音部 では、いつも賞を取っているらしい。 某SNSにも拡散されており、とても有名のようだ 凛都 「着いた…入学式めんどくせえ…」 「いいから!!早く行こうぜ!!」 そう言って俺は凛都の手を引く。 一刻でも早く、軽音部 に入りたい!!! そして 放課後 。俺と凛都は今から 軽音部 に行く 「ありがとうございました!」 凛都 「ありがとうございました」 先生にも軽音部の場所聞いたし、あとは行くだけ… 緊張する… 凛都 「…お前、震えすぎじゃね。小鹿やん」 「うっせーわ!緊張すんだろ!!」 凛都 「にしても、緊張しすぎやん。」 凛都と世間話をしながら軽音部の活動場所の、第2音楽室へ行く 先輩達がどんな人か、まじで気になる!! 上手い人達なのかな~… 「………着いた…」 凛都 「…」 凛都は俺の事を無視してドアを開ける 「は!?おい何してんだ……」 俺が凛都に大きな声で怒る瞬間が先輩たちに聞こえてたのか、 先輩達にとても冷めた目をされた。 …そういえば、ふたり…しかいないの…?? ?? 「……見学者ですか?」 「は、はい!!」 部長らしき人物から、話しかけてくれた よかった、この空気から逃れられて 伶 「そうですか…僕の名前は 神無月 伶 ( かんなづき れい ) と言います。よろしくお願いします。」 神無月…珍しい名前なんだな… 楓 「…俺の名前は 如月 楓 ( きさらぎ かえで )。」 如月楓…!なんかカッコイイ名前だな… というか、この先輩達雰囲気めっちゃかっこいい…!! 凛都 「俺の名前は 佐橋 凛都 です。よろしくお願いします」 「お、俺の名前は 吉田 太陽 です!!よ、よろしくお願いします!!」 伶 「あ、焦りすぎ…落ち着いてね」 「す、すみません…!」 この人、名前の割にフワフワしてるな… 凛都 「そういえば、2人しかいないんですか?軽音部って」 楓 「…うん。他の先輩達はみんな卒業して行ったよ」 凛都 「へー……」 どんだけ先輩達いたんだろう… 2人…?いや、3人かな… 「…な、何人いたんですか?」 伶 「えっとねー、5人かな」 「え、ご、5人!?!?」 伶 「うん、2人辞めちゃって3人になっちゃったけどね。流石に5人で文化祭の時に歌ってたよ!!」 「へえー……」 5人もいたのか… やめちゃってたらそりゃ、2人になるよな… 楓 「…世間話はここまでにして、2人は何の担当希望だ」 「……!!」 ようやく 軽音部 っぽい会話ができる!! 凛都 「俺は ドラム です」 「俺は ギター やりたいです」 そう言うと、先輩達の顔が曇った。 え、なんかあったのか? 楓 「実は俺も ギター やってんだよ」 「え、まじですか!?」 え、ギター いるの!?せっかくギター買ったのに… 伶 「うーん…どうしようか。そういえば ボーカル がいないんだよね…」 「…!?!? え、待ってください、ボーカルは嫌ですおれ」 楓 「は?部活入らせないぞ。」 どうしようどうしよう、ボーカルは無理だ。 歌で人を救いたい とは思ってる。だけど ボーカル だけは避けたい、絶対に。 凛都 「……やってみるだけやってみろよ。好きな曲あるだろ」 「…でもやだよ俺。」 俺は笑おうとして、口角だけ動いて止まる。 伶 「……」 楓 「……」 先輩達はアイコンタクトをして、伶先輩がこう言った 伶 「……今日はここまでにしようか。明日からは正式に 軽音部 として正式に部活として始まるから、みんな楽器の用意は忘れずにね!」 やっぱ部長ってすごい。 空気を変える力がある。 「…分かりました!」 凛都 「分かりました。今日はありがとうございました」 楓 「遅刻すんなよ。」 「はい!」 俺の はい! を最後に第2音楽室を後にした 凛都 「……明日遅刻すんなよ、太陽」 「は!お前こそ遅刻すんなよ!!」 久しぶりに凛都と帰る時会話しなかったな。 凛都 「うるせえわ、またな」 「またなー!!」 そう言って凛都は歩いて行った。 なぜか俺は凛都が見えなくなるまで凛都の後ろ姿を眺めていた 「……何してんだろ。」 本当に何をしているんだろう。 眺めたって何も変わらないのに 「…俺のベットやっぱ最高……」 俺は高校に入ってから一人暮らしをしている。 とはいえ、実家とは近所なので安心はする 「…歌 を歌う…か。」 曲を聴く事は大好きだし、曲を書く事も大好きだ。 だけど、兄ちゃんとカラオケに行くたびに言われる 「歌が下手」 という言葉が頭の中で繰り返す。 俺は別に 歌いたくない っていう訳でもない。 なのに何故か、人の前では 歌いたくない んだ。 「…どうしよ、ほんとに。」 これも何かの 使命 なのだろうか。 神様が俺に歌って欲しいのだろうか。 無責任だ、神様は。 そうして、俺は机の上にある紙を取る。 昨日俺が紙に殴り書きした歌詞だ 「……」 歌ってみようかな、そう思って俺はギターを持ち、歌う。 「…うるさい声がまだ残ってる!! うまく歌えって、だれのばなじ! ギダーの音におれがまけて、それでも止めかたがわがらん!! へだでいい"っていわれだいだけじゃない!! きえたいよるに、きえない声でここにい"る"っていいだいだけ!!」 「…っはあ…はあ…」 ああ、ダメだ。 これは俺でも分かる。ダメだ。 「どうすればいいんだよ……」 今夜、俺はよく眠れなかった。 そして翌日、結局俺は朝まで歌の練習をしてしまった。 「…あー…寝れなかった。」 朝の7時。終わりだ。 そう思いながらも、準備を始める 「…制服も着たし、ご飯も食べた。歌詞ノートは…」 机の上にある 歌詞ノート に目がいった 一応持って…行くか。 昨日歌った曲も見せたいし 「行ってきます!!!」 誰もいない家に 行ってきます と挨拶をして家を出た 「凛都〜おっはよー」 凛都 「おはよ、なんかお前眠そうじゃね」 さすが幼なじみ。 俺の変化すぐ気づいてくれる 「……歌詞ノート書くのに気が済まなくてさ」 凛都 「また書いてたのか。後で見せろよ?意外と凄いんだから」 「…おう」 部活の時になったら歌おうかな。 その方が都合いいし。 そしていつの間にか、放課後になり第2音楽室に向かった 「…伶先輩!」 伶 「お、どうした、凛都は?」 「トイレに行くって言ってました!」 楓 「…凛都きたら練習するか。ドラムもあるし」 「その前に、俺歌詞を書くのが得意で…よかったら見てくれませんか?」 伶 「そうなの!?じゃあ凛都きたら見せてもらおうかなー」 楓 「ちょっと楽しみ。」 「楽しみにして…ください」 凛都。 ちょっと遅く来てくれ。お願いだ。 そんな事も願わず、数分後凛都が来た 凛都 「遅くなりました」 伶 「あ、ようやく来た!太陽くんが、歌詞書いたみたいでさ今から見るんだ〜」 凛都 「ついに見ることができるのか…!こいつ、中一の頃から思いつくたびに歌詞ノートで歌詞書いてるんですよ。しかも意外と凄くて…」 「はあ!?お前余計な事言うな!!」 あいつ何言ってんだよ…!! 無駄な期待抱くだろうが… 伶 「ほんと?楽しみだなー」 ほら!!!! 楓 「見せろ〜見せろー」 「分かりました、見せますよ〜…」 俺はそう言って自分のカバンから歌詞ノートを取り出し、伶先輩に渡した 伶先輩、楓先輩、そして凛都は俺の歌詞ノートをただ黙って見ていた 「…ど、どうですか…?」 伶 「…」 楓 「……」 凛都 「………」 伶先輩は眉を少し寄せて 楓先輩は無表情で文字を目で追って 凛都はニヤニヤしながら俺の歌詞ノートを見ていた。 ちょっとまって。これは俺歌うタイミング…だよな。 「…これ、もしかして俺歌う…感じですか。」 楓 「逆になんなんだよ。」 伶 「…(静かに頷く)」 凛都 「…(太陽の肩を軽く叩く)」 ああくっそ。見せなければよかった。 「…歌っていいですか。」 伶 「うん、いいよ。」 伶先輩が優しくそう言ってくれたから、俺はようやく歌う覚悟ができた。 そして俺は、ギターを持ち、息を吸う。 「……っすうっ……」 歌うんだ。 大丈夫。 「…うるさいこえがまだのごってる!! 上手くうだえって…だれのはなじ!!! ぎだーの音にまげてそれでも…とめかたがわがらん!! へたでいい"っていわれだいだけじゃない!!!」 伶 「……」 楓 「…」 凛都 「……」 「きえたいよるにきえない"ごえでここにい"るっていいたいだけ!!!」 楓 「……っ…!!」 伶 「…!」 凛都 「…」 「っはあ…はあっ…」 相変わらず下手くそだ。 だけどなぜか、楓先輩の目は潤んで見えて、伶先輩は開いた口が塞がってない。 凛都は よくやった という顔で俺を見てくる。 楓 「……」 伶 「…ボーカルは、太陽くんで決定だね。」 「…え、どうしてですか!?!?」 凛都 「まあまあいいから。お前がボーカルだ。」 「…ええ…」 なんで俺がボーカルなんだ。ってそう思いながら練習を始める 楓先輩がなぜ目が潤んだのか俺はわからない。 だけど俺の歌ってる声で救われたのかな。 ……いや、そんな訳ないか。