鷺沢 夜透
40 件の小説本当の友達。
俺の名前は 高橋 朔夜 ( たかはし さくや ) 。 この学校の生徒会長を務めている 【 生徒会長、なんでアイツなんやろ 】 【 ほんまな、俺はお前がよかったわ】 「……」 教室に行くと、いつも俺の悪口ばかりだ 俺も生徒会長なんてしたくなかった。 だけど、 しっかりしているから という理由で、 先生が俺の事を推薦し、そのまま生徒会長になってしまった 「……おはようございます。」 【………でさ】 【…おもろ〜】 俺は生徒会長。 挨拶して当然だけど、いつもクラスメイトは返してくれない …なんでこうなったんやろ。 「………」 俺は自分の席に座り、本を読む 【ーーー!?】 【ーーー!!】 クラスメイトの話し声が響いて聞こえない。 俺も本以外の本当の友達が欲しかった。 一生、出来ないんだろうな… 先生 「みんな座れ」 先生の一言で、クラスのみんなが座る 先生 「今日は、転校生がやってきた」 【まじ!?】 その一言でクラスがやけに騒がしくなる 【イケメンかな】 【可愛い子一択だろ】 「……」 俺はその中で、今日の給食のことを考えていた 先生 「ほら、入ってこい」 ?? 『……』 【……え】 【…こわ……】 (……なんだこいつ…) 転校生というやつは、とても不良だった 服装もあまり良くないし 髪色も金髪。 ピアスも付けてる、そんな感じだった。 『…………』 先生 「新しくやってきた 佐藤 翼(さとう つばさ) だ みんな仲良くしてやれよ」 そう言った瞬間、クラスメイトがみんな騒がしくなった さっきまで物凄くウキウキしていた様子はなく、 皆が皆、翼くんのことを怖がっている様子だった。 【あいつ、怖くね…?】 【それな、ほんと怖い……】 【イケメンだけど、近寄り難いよね…】 【わかる……】 クラスメイトは皆、 「怖い」 と言っている どうせこの転校生の世話係は俺だ。 そう思いながら俺は、いつもと変わらず授業を受けた ──────────────── 先生 「朔夜、ちょっと来い」 「はい」 授業終わり、俺は先生に職員室に呼ばれた 先生 「……朔夜も思ってると思うが、皆翼を怖がっている。 だから、翼と 友達 になってくれないか?」 「………」 “ 友達 ” …… 響きがいいようで、良くない。 「……はい。」 俺は仕方なく、そいつと友達になってみようと思った 最近はずっと暇だし、いい暇潰しに出来そうだったから。 先生 「ありがとな!!助かったぞ。」 先生にとても笑顔でそう言われ、なぜかとてもイラついた ……イラついたって、仕方ないんだろうけど。 「………ありがとうございました」 俺は一言挨拶をし、転校生に話しかけようと思い教室に 行った。 ──────────────── 「……あれ」 教室に行くと、そこに転校生 翼くんの姿はなく、 鞄しかなかった 【……ねえ、ヤバくない?あれ】 【誰か先生に言いなよ……】 クラスメイトがみんな教室の窓を見て、ザワザワしている 俺はチラッと窓を見てみた 「……!?」 すると、他校の不良と戦っていた 転校生 翼 の姿があった 【やっぱあいつ、ヤンキーだったんだな】 【それな、関わらないようにしよーっと】 ……本当にアイツはヤンキーなのだろうか。 金髪にもしているし、ピアスもしてる。 だけど何故か、ヤンキーとは思えないし不良とも思えない 俺の目が腐ってんのか…? 【………!?!? やば、アイツ痛そ〜】 【思いっきりなぐられてる…案外弱くね?】 「……!!」 コイツ…絶対弱いくせに無理して戦ってる… そう確信した俺は、いつの間にか走っていた 「…………やめろ!!!」 俺は大声を出し、俺に注目を集める 《………あ?なんだ、お前》 《弱そ……》 ヤンキー達が続々と俺に近づいてくる 「…俺はここの生徒会長を務めてるだけだ。 うちの生徒に何か用か?」 俺がそう言うと、ヤンキー達は笑いながらこう言った 《オレらはそこにいる金髪が調子乗ってたからちょっと借りてただけっす〜》 《さーせんしたー。》 「…お前ら、反省しろよ。殴るのは犯罪だ」 俺が反抗すると、ヤンキー達はイラつきながら近づく 《あ?…誰に文句言ってんだよ》 『………』 《クソガリ勉が… だから友達も居ねえんだよ。》 俺の悪口を言いながら、逃げさせようとしているようだが 俺はかすってもない。 《………無視してんじゃねえよクソが…!》 ……ボコッ… 「……ぐっ……」 『……!! おい、やめろよ』 俺が殴られると、翼は立ち上がり俺のことを守ろうとした 《うるせえよ金髪野郎。》 そう言いながらヤンキー達は、俺の事を殴り続ける 「……ふっ…ぐあっ……」 痛いし、とても息苦しくなってきた 『……おい…委員長、やり返せよ…』 翼は俺の姿を見て、怖がりながら俺にそう言った 「………この学校を…汚したくない……から…。 他の生徒を……殴るなんて、犯罪…だ…。できっこなんて…ない。」 『………』 俺がそう言うと、翼は黙ってしまった 体育教師 「……おい!!大丈夫か!!?!」 少し経つと、ガタイがいい体育教師と保健室の先生がやってきた 体育教師 「…ふたりとも酷い怪我だ…。 みほ先生、お願いします。」 保健教師 「分かりました。翼くん、朔夜くん立てる?」 保健の先生にそう言われたが、俺はとてもフラフラして 立てなかった。 『……立てなさそうなんで俺保健室に運びます。』 保健教師 「あら、ありがとう」 そう言って、翼が俺の事をおんぶってくれた 『…痛くねえか』 「うん、大丈夫」 そう言って俺達は、保健室に向かった ──────────────── 保健教師 「給食取ってくるから、ちょっとまっててね」 「……はい」 みほ先生(保健教師)が給食を取ってきてくれる …でもその間、翼とふたりきり、だよな。 どうせ話さないから大丈夫か。部屋も別だし 『……なあ』 そう思っていたら、翼が俺の部屋に来てベッドに座る 「…どうした?」 『……』 俺が翼に聞くと、翼は黙ってしまった 『…あの、さ。』 「うん」 翼は緊張した様子で、俺に頑張って伝えようとしている 『……なんで俺の事、守ってくれたの』 「え?」 『お前が来なくても、別によかったのに。 俺のせいでお前が怪我しちまった。』 翼は、心配してくれてたんだ。 「…俺は委員長だから、翼を守っただけ。」 『委員長だとしても、……怖くなかったのかよ。』 「1ミリとも怖くなかったさ。」 そういうと、翼は黙ってしまった 『……俺が、強かったらお前に怪我させなかったのに。』 翼の顔を覗き込むと、翼は少し泣いていた 俺は起き上がり、翼を思わず抱きしめてしまった 『…なんだよ…!』 「翼は俺の事を守ろうとしてくれたじゃん。 十分つよいよ」 俺がそう言うと、翼は顔を少し俺の腕に潜り込んで 泣いてしまった。 「……翼、泣き虫なんだな」 『うるせえ…!』 見た目が怖くてヤンキーっぽい彼は、 とても人の事を想う 泣き虫 でした。
好き という感情
楓 「おい……ちゃんとしろって太陽」 『すんません!!』 楓 「……お前さ…」 『なぐられる!!凛都たすけて!』 「なぐられろ太陽」 太陽が戻ってきてから、約1ヶ月。 太陽もすっかり回復して、前の性格に戻っている 『ひどくね〜?俺のこと大好きなくせに』 「……! うっさい」 それから、何故か俺は太陽の顔が見れない 太陽の言う「大好き」って言葉も冗談だとわかっているのに、 何故か本気にしてしまう。 楓 「……」 伶 「ほら、みんなやるよ」 俺はドラムのところへ戻り、準備をする 『みんな、準備はいい?』 伶 「うん、OKだよ」 楓 「いつでも」 「ドンと来い」 太陽の合図で、曲が始まる 今日の歌練は スタートライン だ。 去年の先輩達が作った曲で、とても有名らしい 「さあ"スタートライン"!!!」 ドン…ドカドカドカ……ッ!! 太陽の歌声、最近ひとりで練習してるのかとっても綺麗。 でも、力強さは変わってないな… やっぱり、太陽はかっこいい。 …って、何思ってんだ 女の子みたいな感想、俺は男だ 伶 「太陽! めっちゃ良くなってる!」 楓 「な。初めの頃が懐かしく思うよ」 『そうっすか!? ありがとうございます!!』 誰とでも仲良くて、先輩達にも人気な太陽。 …でも、いちばん太陽のこと知ってるのは俺だし、 太陽の秘密も知ってるのも俺。 ……って、本当に何思ってんだ俺。 『……なー、りんとはどう?俺の歌』 なんで太陽にこんな思いしてるんだ。 『なー、りんと?』 あー、、もうバカみたい 『おいって!!』 「…あ、ごめん。どうした?」 太陽が俺の肩を激しく揺らす 『俺の歌、どうだった?』 「めっちゃ良かった。お前って 練習 って言葉知ってんだな」 『何バカにしてんだよ!!』 「ごめんって」 そう言いながら笑う太陽の目は、 とても可愛かった。 ──────────────── そして、部活が終わり 帰る時間になった 『ありがとうございました!』 「ありがとうございました」 今日の片付け担当は、伶先輩と楓先輩。 俺達は先に帰る日だ 伶 「うん、また明日ね」 楓 「太陽夜ごはん買っといて」 『おけっす!』 太陽と楓先輩は、まだ一緒に暮らしてるらしい なぜか羨ましく思ってしまう 伶 「…そういえばさ、明日って早いっけ?」 「確か明日は、来週の火曜日の音楽祭に向けて早い気が」 伶 「なら、みんなで太陽んち行くか」 …え、えええ!! まじか、伶先輩。たまには良いこと言ってくれるじゃん 『え、まじ?』 伶 「太陽、いいよね。あ、楓も」 楓 「俺はいいけど… 太陽は?」 みんなが太陽に注目する 『え、全然いいっすけど部屋汚いっすよ』 楓 「……じゃあ、」 楓先輩が俺の方を見る なんでこっち見てるんだろう。 楓 「俺と伶が同じ部屋 太陽と凛都が同じ部屋で寝れば」 『…!! いいっすねそれ!!』 伶 「まって、なんで僕と楓が同じなの」 楓 「なんでって、別にいいだろ」 ……!! やば、太陽と同じ部屋だ。 でもいいよな、友達…だし、親友だし。 なんもやましい事はない。 『凛都!!ゲームしような』 「………おう」 俺の方を見て笑うな。 自覚なんて、したくないんだ。 伶 「じゃあ、またあとでね」 楓 「じゃあな」 『はい!』 そう言って、俺と太陽は家に向かう ──────────────── 『ほんと、伶先輩急だよなー』 「分かる」 ていうか、楓先輩と伶先輩が来るまでふたりだよな なぜか緊張する… いつもはしないのに。 『でも嬉しいや。みんなで泊まるって』 「俺も嬉しい」 楓先輩がこっち見て部屋きめてたのは気になるけど。 なんで楓先輩俺の方向いてたんだろう… 頭がボーッとして、何も考えられない ドコッ……(転 「いってえ……」 ボーッとしてたのか、石に躓いて転んでしまった 『大丈夫かー?ボーッとしすぎ。 ほら、立って』 そう言って太陽は、俺に手を差し出してくれた 「……ありがとう」 ああ、今俺はとっても胸がドキドキしてる。 やっぱり俺は、太陽のことが “ 好き ” なんだろうか。 まだ気持ちが分からない俺は、その気持ちがよく 分からなかった。
名前の無い 感情 。
俺の名前は 林 純 ( はやし じゅん ) 。 ごく普通の社会人で、心理学を勉強している 今頃?だと思うかもしれない。 俺が心理学を勉強しているのは、理由がある それは、 “ 精神的に苦痛な子の為に、苦痛じゃない施設 ” を 作るためだ。 だから会社も頑張ってるし、昇進して部長にもなった。 後は頑張らないとな… そう思いながら、今日も家へ帰る (疲れた……) あまり時間がないので、近くのコンビニに寄って 晩御飯を買おうと思う 〜〜♪♪ コンビニに入り、俺はご飯を選ぶ (湊(みなと)くんは何が食べたいかな…) 湊 という少年は、俺が拾った訳アリ少年だ だが、今は楽しく高校生活を過ごしている。 《………》 キョロキョロしている少年が、俺の元へ来る 「…どうした?」 《……》 言葉が出ないのか、声が出ないのか分からないが 何も言ってこない。 こんなに小さくて、身体が細い…ということは、 “ 親に捨てられた…? ” いやいや、そう疑うのは失礼すぎる。 俺はその子が要件を言うまで待ってみることにした 《……》 その子は変わらず無言で俺の前にいる 俺はその子の前でしゃがみ込んだ 「……何かあった?」 《…………分からない》 俺がそう言うと、その子は 「分からない」 そう一言言ってくれた 一言言ってくれただけでも嬉しい。 質問したら受け答えしてくれる事を知った俺は、 その子に質問してみる事にした 「両親はどこにいる?」 《…………家》 「どうしてここに来たの?」 《………親に言われた》 「……そっか…」 この一言で分かった。 この子も、 “ 訳アリ ” だ。 「ご飯食べた?」 《……(首を振る)》 「俺の所、来る?」 《……(頷く)》 この子、言葉を発せれないのかな。 できるだけ質問をしてあげよう。 「どれ食べたい?」 《…………土》 「……え!?」 この子は…いつも土を食べているの、、? 俺は思わず驚いて、大声を出してしまった 「……土………」 《…………お母さんが、、……》 「……お母さんがどうしたの?」 《……これ食べれば…、…健康、だって……》 「……だから、食べてたんだ。」 《……(頷く)》 ………可哀想に… マトモなご飯を食べさせて貰えなかったのか… 湊くんはそういうのなかったな… 色々関わり方を考えないと。 「……食べ物は、食べた事がある?」 《………(傾く)》 「………食べ物、知らない?」 《………(頷く)》 食べ物知らないか……… とりあえず、健康そうなご飯とジュース。甘い物を買って行ってあげよう。 あと湊くんには、スパゲティとリンゴを買ってあげようっと 《………!》 俺が青リンゴを食べようと手に持つと、その子の目が光った 「……食べたい?」 《………(頷く)》 「じゃあ、2個買って行くね」 《…………ありがとう。》 真顔で ありがとう と伝えられた この子、さっきから真顔しかしてない…よな。 「お願いします」 店員 「はい」 ──────────────── 俺は袋を手に持ち、家へ帰ろうとする 「……着いてきてくれる?」 《…………(頷く)》 俺は少年と一緒に家に帰る 湊くんにも、説明しないとな… 「親の事は、好き?」 《………》 ………また…また、やらかした……!!!! また親のことを聞いてしまった… バカなのか? バカなのか、俺は… 焦っている俺を横目に、その少年は喋り出した 《…………好き。》 「……!」 この子も…親を愛してるんだ 大好きなんだって、その子の目と表情を見れば分かる。 ……本当に…こんなに親の事を愛してるのに虐待なんて… なんでするんだろう…… その子の姿を見ると、何故か胸がとても苦しくなる。 湊くんとは、別の感情だ。 「……そっか…。」 そう会話をしている間に、俺の家へ来た 「ここが俺の家!! さあ、入って入って」 《………(お辞儀)》 俺がその子の事を手招くと、丁寧に靴を脱ぎ揃えていた。 『…純さん、おかえ…って、誰ですか。この子』 そうこうしているうちに、湊くんが出迎えてくれた 「この子? ……分からない、道で拾ったんだ」 俺がそう言うと、湊くんは何かを感じ取ったように 俺に伝えてきた 『………この子も、…僕と同じ……?』 「……うん、そうだよ、多分ね。」 悲しそうな表情をしている湊くんは、久しぶりに見た 湊くんも、過去に同じような被害にあっているからな… そりゃ、悲しくなるよね… 《…………》 俺が少し、俯いているとその子は俺の前に立ち 《…………(撫)》 俺の頭を撫でてくれた 「……!! どうしたの…?」 『…………』 俺が驚きながら、その子にそう言うと その子は何故か申し訳なさそうな表情をしてこう言った 《…………お母さんと、同じ顔をしてた……から。》 「………」 …ああ、…そうか。 この子は、親の顔色を毎日毎日たくさん、見てきたのか。 ……なんで、こういう子ばっっかり酷い目に遭うんだろう。 俺は本当に理解ができない。 「………ごめんな、そう見えちゃってたな。 でも、もう大丈夫だからな」 俺はそう言い、笑いながらその子の頭を撫で返した ……すると、 《………》 「……」 『…、』 “ その子から、涙が溢れていた ” 「…どうした。思い出しちゃったか」 俺は咄嗟にその子の前にしゃがみこんだ 《…………分からない》 『………なら、なんで泣いてるのさ』 湊くんが、首を傾げながらそう言う 《………目から…水が垂れてるだけ。》 「………」 その一言で分かった その子は、 “ 悲しい、寂しい ” という感情が無いんだ。 俺は、教えようか教えまいか悩んでしまった (……) この感情を知ると、辛くて苦しい気持ちに なるかもしれなかったからだ。 この感情は、スッキリする時もあるし、しない時もある。 ……少なくとも、俺はそうだった。 涙を出して、人に助けて 俺はこんなにも悲しくて辛いんです そう表現すると、いつも嫌な顔をされてきたから。 泣く という感情を封印した事もあった。 …その子には、そうなってほしくない。 『………』 そうこうしていると、湊くんがその子の前に立っていた 『…この目から流れている水はね、自分が悲しい時や寂しい時に流れてくるの』 《………》 俺が、伝えたかった事を全て伝えている… 湊くんを止めようと俺は立ち、耳打ちした 「……この子は…教えたらダメだ。(小声」 『…どうしてですか?(小声』 「…………それは、」 『……純さん、大丈夫です。 純さんなら、大丈夫だと僕は信じてます。』 湊くんは、小声で俺に伝えてくれた 『…この子が 感情 という言葉を知らなかったら、 後悔、すると思います。僕も、幼い頃は知らなかった。 だけどそこに、純さんがやって来てくれたから、分かったんです。』 ……湊くんも、出会った当初は死んだ魚の目をしていたな… でも、この子は何か違う気がする。 いつも真顔だし、泣いている時も真顔だった。 …まるで、泣いているのに泣いてるって気ついてないように。 「……」 俺は覚悟を決め、その子に教える事にした 「…名前は、なんて言うの?」 《……朔(さく)。》 「………朔くん、よく聞いてね」 その子は頷き、俺の目を真っ直ぐと見つめる 「今朔くんの目から流れているこの水は、“涙”って言うんだ」 《……》 「この、でかいお兄ちゃんの言っている通り、悲しい時 寂しい時に出てくるものだよ。」 《…………涙を流してる…時は……スッキリ、するの……?》 「………」 『……純さん…』 この問いに、少し悩みながらも答えた 「……ひとりで泣いてたら、スッキリ出来ないと思うけど、 信用できる人に見せたらスッキリするよ。」 朔くんは少し考えてから、そう言った 《…………もし…スッキリ、しなかったら……?》 「………その時は、一緒にいるよ。」 そう言うと、朔くんは黙り込んでしまった それでも俺は、続けてこう言った 「………ひとりに、しないから」 俺がそう言うと、また朔くんは泣き出してしまった 《………ごめん、なさい……初めて…で》 そう言いながら、さっきよりも凄く泣いていた 「……大丈夫、大丈夫だからね」 俺はそう言いながら、朔くんの背中を摩る 今まで泣いたこと無かったんだろうな… そう思うと、何故か虚しくなってくる 《………………》 少し経つと、朔くんはいつの間にか寝ていた 「……夜ご飯も食べてないのに…疲れたのかな。」 『朝起きたら食べさせましょうか』 「そうだね」 湊くんとそういう会話をしながら、俺は自分のベットに 朔くんを運んで寝させていた 『……あれ、そしたら純さん寝れなくないですか』 「大丈夫だよ、ソファーで寝るから」 『だめですよ。純さんは僕と寝ないと』 「え、あ…え」 俺が困っていると、湊くんは笑いながら 『…一緒に寝ようね』 そう言った …ほぼ強制だ。 「……分かったよ…」 湊くんと付き合ってから、忙しくなって寝れなかった俺は 楽しみで楽しみで仕方がなかった。 でも、緊張ももちろんする。 俺は早く、 やることをやって湊くんと一緒に寝たい そう思っていた 『純さん、一緒に寝よ』 やる事も ご飯も終わり、さあ寝ようとしている所だ 「うん、寝よう」 ついに湊くんと寝るのか… 久しぶりすぎて、感覚も覚えてないや 《……っ……はあっ……》 寝ようとしていると、朔くんが息苦しそうになっていた 「……湊くん、ちょっとまってて」 『…分かった』 俺は湊くんを置いて、朔くんのいる俺の部屋に行く ──────────────── 「……朔くん!! 大丈夫!?」 俺はすぐさま朔くんの元へ行った 《…………あつい…》 そう言う朔くんのおでこを触ると、 「……あっつ、」 物凄く熱かった。 俺は近くにある体温計を手に取り、朔くんの体温を測ることにした 「…朔くん、触るね」 《……っ…》 いつこんなに体調が悪くなったんだろう… なんで朔くんの元にいなかったんだろう… 頭の中がグルグルする。 ピピピ…… 「……!! 38.9度…!」 ほぼ39度だよね… なんで俺に言わなかったんだ… 辛かっただろうに…… 「……湊くん!!!」 『どうしました、純さん』 「冷えピタ取ってきて。朔くん熱ある」 『……! 分かりました、今すぐ取ってきます』 俺は思わず焦って湊くんを使ってしまった 俺がすればよかったかな、なんて後悔しても遅いよな。 《…………迷惑、かけて……ごめんなさい…》 「……!!」 俺、多分困ってる顔してたよな… 「……大丈夫。辛かったな、ごめんな気づいてやれなくて」 《…………》 俺がそう言うと、朔くんは少し涙目になっていた 『持ってきましたよ』 「ありがとう、朔くん貼るよ」 そう言って俺は朔くんの前髪を上げた 「…………」 おでこ…とても酷い傷だ。 病院に行って、大丈夫か確かめないと この傷は…親にやられたんだろうな… そう思いながら俺は、朔くんに冷えピタを貼る 《………………つめた………》 冷たそうにしてる朔くんは可愛く見えた 「でしょ?これを貼ると、治るからね」 《………………(頷く》 朔くんも治ったところだし、多分ひとりで寝たいだろう。 「湊くん、寝ようか」 『…………! はい!!』 俺はまた、湊くんの寝室へ戻ろうとした すると… 《………………》 朔くんが 「まって」 と言わんばかりに、俺の手を握ってきた 「……どうした?不安か?」 朔くんにそう言うと、分からなそうにしていた 「…………今、朔くんの気持ちは 寂しい ? 悲しい ?」 俺がそう言うと、朔くんは 《………………さみ…しい、》 少し俺の目線が離れながら、そう言ってくれた 「そっか… なら、オジサンと一緒に寝る?」 『……!!!!』 思い切った行動をしてしまった… 絶対引かれたよな… 《………………ねる…、》 「……!!」 朔くんなりに、少し俺に甘えてくれてるのかな… 風邪の時は少し不安定だし、一緒にいてあげよう。 『……純さん、ぼくは』 やべ、湊くんのこと忘れてた…どうしよ。 「俺真ん中で寝るから、湊くん俺の左隣ね」 『…! 分かりました』 良かった… さっきよりも目が光った…… できるだけ朔くんを端にして眠らせたいから、助かった。 「……じゃあふたりとも、おやすみ」 《………………》 『おやすみなさい』 そう言って、俺達3人は眠りについた 3人で寝るベットは、温もりがとても暖かかった。
突然ですが、夢を諦め切れません。
翌朝 俺はいつも通り起きたつもりだったが、 何故かいつもより物凄く緊張している。 多分、昨日のことだろう。 俺は昨日、母さんに 「夢を諦めないで」 と言われて、バスケ部の監督にも 「明日 ここで待ってる。」 そう言われた。 昔からやりたい事を諦めてきた俺は、それがとても 信じれなかった。 “やりたい” と思った物は、まず母さんの顔を思い浮かぶ それが当たり前だった だけど母さんも、 「続ける理由をちょうだい」 そう言ってくれた。 俺はようやく、したい事を出来る。 それが嬉しくて嬉しくて仕方が無かった 今すぐ、学校へ行きたい そんな気持ちだった ──────────────────── 母 「おはよう、あお」 リビング、珍しく母さんが朝ご飯を作りながら 俺の名前を呼んできた 母 「今日は部活に行くんでしょう? 頑張ってね」 弟 『……お兄ちゃん“は”いいんだ』 母 「ちょっと、蒼晴(あおは)!!」 「……」 蒼晴(あおは) は、俺の弟だ 蒼晴とは1個下で、高校1年生。俺と同じ高校に通ってる 昨日、母さんが俺の部活の事を蒼晴に言ったらしい そこから蒼晴の機嫌がとても悪いんだ。 そりゃそうだよな、蒼晴も羨ましいよな… 「…ごめん、、やっぱ俺、辞めた方がいいんじゃないかな」 俺は自信なさげそうにそう言う そうすると、母さんが慌てた表情でそう言ってきた 母 「あおは気にしないで 自分の夢に一直線、だよ。」 「……」 母さんの言葉が、とても胸に刺さる 弟 『……』 だけど蒼晴は、浮かない顔をしている その顔を見て、俺はとても申し訳ない気持ちでいっぱいだった 母 「……あ、!!遅刻するわよ!早く行きなさい!!」 「……! やべ」 時間を見ると、7時50分だった 遅刻しそうだった俺は、慌てて玄関へ行く 母 「ちょっと待ってあお!!」 「なに!?!!」 急いでるって言うのに、何故か母さんが呼んでくる 俺は急いでまたリビングへ行って、母さんの近くへ行く 母 「……あお、頑張ってね」 「……!」 母さんは涙目でそう言う 母さんも嬉しいんだ、俺がようやく諦めないでいてくれて。 「…うん、頑張るよ」 俺はそう言って、母さんの目を見る 母さんは、そう言う俺の事を安心したのか、また急かしてくる 母 「ほら、早く行っちゃいなさい」 「うん!!行ってきます!!」 俺はまた、いつも通り学校へ行く 弟 『………』 ──────────────── 『おはよう、あお』 「おう、おはよう」 朝学校に着くと、そうがやってきた 『あおってさ、バスケ部入るんだろ?』 「まだ決めてないけど、俺の親がワクワクしてた」 『でしょ? 監督もワクワクしてたよ』 「……え」 あの監督が…!?!? 俺から見た監督のイメージは、物凄く怖くて 人にあんまり期待しない人かなって思ってたのに、、!? 「まじかよ」 『まじだって。「逸材が来た」ってめっちゃ笑顔になってた』 いつざい… 逸材…!? 俺が…!? 「……え、俺が?」 『当たり前でしょ。俺気になってたんだよね、1年の頃から』 そうが俺の事気になってた? 俺はただの平凡な人間だけど…… 『…バスケを授業でやる時、めっちゃ人一倍 楽しそうにやってるし、何もかも上手い。』 『……正に、“バスケを愛し バスケに愛された”男だなって』 「………」 このセリフ、昨日も言ってたような気が… 「その言葉気に入ってる?」 『あおに合ってるんだもん、…あ、時間ないから早く行こう』 「あ、うん」 そうにそう言われ、俺とそうは教室に向かって歩く そうと歩いてる時、いつもより見られているような感じが して落ち着かない。 そう効果は凄いな…… ──────────────── 「……」 『…なにこの空気』 教室に入ると、気持ち悪い空気が漂っていた 何故か俺に目線が向いている。 …なにか、したっけ。 俺は頑張って昨日したことを思い出す そうに話しかけられたことか? それとも、この冴えない俺がバスケ部へ行ったこと? 何度考えてみても、やっぱり分からない。 何が起きてるんだ… モブ 「……なあ、これ見ろよ…」 「……?」 「……!!」 クラスメイトが見せてくれた画像を見ると、 そこには、俺の姿 があった。 俺は焦りながら、説明欄を読む 「 こいつは僕を騙した兄でーす。 僕を置いて逃げた奴。兄の夢なんてどうでもいい。 僕のことを昔虐めたくせに。まだ覚えてるんだからな。 」 この文章と俺の写真からして絶対、 “ 弟の 蒼春 ” だ。 俺は息を飲み込んだ 俺は蒼春を虐めたことなんてない。むしろ大好きだ それなのに…なんで… 「………」 鼓動が早くなる 『…あお……!!』 俺の表情を見て何かを感じ取ったのか、 そうはとても心配そうな表情をしている。 「……なん…で、おれ…」 言葉が出ない クラスメイトは俺の事を 部外者 として見ている 「……なん、ごめ…」 息ができない 息が苦しい。 ようやくしたい事を出来るようになったのに、なんで… 《 まじきも… 弟虐めてたなんて… 》 《 ほんとね…呆れる… 》 「……っは…」 嫌な言葉が聞こえる 俺は、この場から早く逃げたかった。 この地獄から、 早く… 抜け出したかった 。 『………』 「……!」 そんな時そうが俺の前に座り、両耳を両手で塞いでくる 『……お前ら、やめろよ。 まともに関わって来なかった人間が、家族虐めてると思うと こんなに沢山陰口を言うんだな。』 その瞬間、声が少し遠くなった 小さい声であまり聞こえなかったが、 多分そうは俺の事を庇ってる…気がする。 《 でも…弟が発信してるんだよ。しかもこいつの写真と共に投稿してる。》 《……な、俺もそう思う。》 俺は思わず、目を瞑ってしまった 『……お前ら…本当呆れる。 いつか分かる時が来るからな。』 そう言ってそうは、俺の両耳から両手を離し、 『あお、行こう』 そう伝えて、職員室へ行った ──────────────── 『…失礼します。』 「……失礼します」 俺達は職員室へ行き、バスケ部のコーチを呼んだ […お前らか。どうした?] そしてコーチがやってきて、俺はなんて言おうか迷った。 …絶対先生達もあの動画を見てる。 それが、怖かったからだ。 『こいつが今、拡散されてるの知ってますか』 […ああ。今さっき電話が来たところだよ。] やっぱり… 「……」 俺なんかがやっぱり、部活をやらない方がよかったんだ。 […で。お前の言い分はなんだ。 ] 「……」 やっぱり、コーチも怒ってる 俺は… ありのままをそのまま伝える事にした。 「……俺は、…訳の分からない事をSNSで発信されて、 よく分かってない…です。 ……言い訳になることなんて分かってます。 この学校が汚れる事をして本当にごめんなさい。」 [……すまん、そういう事じゃないんだ] お辞儀をしている俺を前に、 コーチは何故かそう言った。 そういう事じゃない…? なら、どういうことなんだ…? もっと謝れってこと? ……よくわからねえ… 迷っている俺を横に、コーチはこう話した […バスケ部に入るのかって。言いたかったんだ、ごめんな] 「………!」 今ここで俺が入れば、 何か問題になってしまうかもしれない。 今ここで俺が…… 「……」 俺はそう思う前に、俺の周りにいる人を見た 俺の事を誘ってくれる 監督 俺の事を初めて真剣に見てくれた そう …そして、一番の味方で一番の応援者の 母さん。 もう、誰かの為に夢を諦めたくない。 俺は俺の人生だ。 「……やります。」 […全て失いそうでも、か?] 「……」 俺は何故か、覚悟が決まっていた 「…全て失いそうでも、俺はバスケをやめられません。」 それを聞いたコーチは納得したのか、 [来い] 俺は、ようやく一歩を踏み出したような気がした。
突然ですが。
突然ですが、俺には夢があります。 キュッ キュッ… ドンドンッ… スポッ…… 【よくやった!!!】 [よっ…しゃアア…っ…!!] 「……」 俺の夢は “ バスケ選手 ” になること。 「……期待すんなよ…」 ピッ…… でも俺は、母子家庭で高校2年生 今頃バスケをやっても、何も残らない。 むしろ “ 迷惑 ” だろう 今はインターハイシーズン。 俺の高校のバスケ部は、すごい有名で強豪として噂されている そんな時に俺が入部する となると、とても迷惑だ。 なんだって俺は、 バスケ経験なし。ドリブル、シュートも授業としてしかやったことないし、むしろバレーの方が得意だ。 「……」 俺のこの夢は、中学生の頃からあった。 これは本当だ、本当。 中学一年生の頃、バスケ部に行こうとしてた だけど、無理だった 母子家庭だし、弟もいる。 スマホ代 水道代 ガス代… 親には色々払わないと行けないものがある。 そこに俺の部費代も増えると、もっと仕事を増やさなきゃ行けない。 ……母さんに、負担を掛けたくないんだ。俺は。 俺は、夢に向かうのをやめた 〈 情けない 〉 だなんて言うなよ? これが俺の本心なんだ。…いや、違うかもしれない。 「……学校、行くか。」 今日も俺は、いつも通り学校へ行く ──────────────── 『おはようございまーす』 《今日のエースが来たぞ〜!!!》 《すげえなお前!!》 「……」 …あいつ、そういえばテレビに出てたよな 確か… 俺の高校が今回勝ったんだっけ。 おめでたいな… でも、なんでだろう、この気持ち。 バスケ部でもないのに。 《なあ、やばくね。あお!! 俺の高校 しかも、クラスに エース がいるって。》 「……やばい、物凄くやばい」 今日はやけに騒がしいな。 やっぱり テレビにも映ってたし、勝ったからか… 凄かったもんな… あのシュートは 「……あいつの名前、なんだっけ。」 無意識に呟いていた 『…俺の名前?』 すると、いつの間にか目の前に エース がいた 「…うお、エース。」 『……なに?』 俺が エース と言うと、笑うエース。 こいつは女子にもモテる…らしい。 俺には程遠いな… 「……名前、なんだっけ。」 『あー、俺の名前は 蒼(そう) 。お前は?』 「……え」 俺は絶望した なぜかって? このエースの名前の漢字が、同じなんだ。 「…俺、蒼(あお)。」 『え、まじ!? 俺ら同じなんだな、漢字』 「……そうだな。」 あーー、なんでこんなに俺は運が悪いんだ エースとも名前の漢字が同じだし バスケ部にも入れない。 俺は世界一運の悪い男だ ……多分。 『………あお』 「…ん?」 急に顔が真顔になって、俺の名前を呼んできた 『…今日の4時体育館に来て』 今日の4時からは確か… バスケ部の練習だ。 「……4時からはバスケ部の練習だろ? 行って大丈夫なのかよ。」 俺は心配になってそうに伝える 『見学ならいいって監督が言ってる てか、たまに俺の友達も来るし』 見学ならいいのか… ならもっと早くに…… いや、ダメだ。 バスケ部の練習してる所を見ると、もっと入りたくなってしまう 「……俺、やめとく」 『なんで』 「…バスケ、好きじゃないんだよね」 俺は、俺自身に嘘をついた あと… そうにも。 『嘘つくなよ、1番愛してる癖に』 「……1番…?」 『…とりあえず来いよ、4時に。』 そう言って、そうが自分の席に座って行った 「………」 俺はどうするべきだ 行っても、いいのか? でも…… あーー…ほんと、なんでこんなことになっちまったんだよ… ──────────────── 夕方の4時。 冬だからか、少し暗いし寒い …そして俺は今、 “ 体育館 ” にいます。 《きゃーー!!かっこいいーー!!》 《そうくん、やっぱカッコイイな……》 「……」 隣には、恐らく後輩女子がいる やっぱりこいつ、モテるんだな。 まあ…当たり前か 【そう!!ゴールだ、ゴール!!】 今は練習試合をしている インターハイ予選に勝った後も、頑張っているのか。 本大会に向かう為…なのかな。 やっぱりすごいな、噂されてる強豪校は 物凄く練習がハードで、体からして筋トレもしてる。 『……っ…』 シュッ…… スポッ…… 《よっしゃ…!! そう、よくやった!!》 『……おう』 「……」 今見て思ったけど、こいつ物凄くテンション低くね? いや、喜べよ。 せっかく、インターハイ予選勝ったのに。 【集合!!】 《はい!!!》 うお… 部活っぽ。 【お前ら、本当によくやった。 無事インターハイ予選に打ち勝って 県代表として、本大会へ出れる。 この本大会に勝ったら、日本一の高校チームになり、会場で表彰式がある。】 県代表として、本大会に出るの…!!? だからこんなに、ハードな練習してるんだ…… 本大会に行く とかはまだ知らなかった ……凄いしか出てこないや、本当。 【お前ら、この後も練習頑張るぞ。】 《はい!!!》 【休憩、入れ】 《はい!!》 「……」 そうか… 本大会か…… これに勝ったら、日本一の高校チームなんだ… いいな… 凄いな…… 俺がもし… このバスケ部に入ってたら… いいや、考えたらダメだ。 そうも来ないし…、帰ってもいいよな? 《……あれ、そうくん誰か探してる》 《誰だろう、彼女…とか!?》 《彼女いたらガン萎えなんだけどー。》 彼女か… そう、いそうだもんな… 『……!!』 「……!?」 《きゃー!!そうくんが笑顔で手を振ってる!!》 《え、え、誰に向けて!?》 《可愛い〜……》 「……」 ま、マジで誰? 俺じゃないよな、…いや、めっちゃ目合ってる 俺とか言うなよ… 本当に。 『あお〜〜〜!!来てくれたんだ!!』 「……うわ…」 俺だった… 後輩女子からの目線が痛い…… 『あお!!下、降りて来て』 「は!?え、いいのか!?」 『いいから!!早く!』 半強制で、俺は下(体育館)へ来た バスケコートがズラリと並んでいる こんな光景は、見た事がない。 「…すげえ……」 思わず口に出てしまった 『…口に出てるよ』 「…あ、ごめん」 そうがユニフォームを着ている姿を見るのは2回目だ やっぱり、エース って感じする。 俺が着たら似合わないんだろうな… 『…ゴール、入れてみる?』 「……え」 本物の体育館のゴールにボールを入れられる…だと…? 物凄くいい機会だけど… 「いや、いいよ… 俺には出来ないし」 俺には出来ないし、今ボールを持ちたくない。 『……はあ… いいから、ほら。』 「うわっ…」 そうは怒りながら、近くにあったバスケットボールを俺に渡してきた …ゴールに入れろってこと? 本当にそうは強引だ。 『…外してもいいから、やってみろ』 「……」 俺はその言葉を信じて、入れてみる事にした これで最後だ そう言い聞かせながら。 「……」 ゴールをよく見て… よし、出来る。 シュッ…… 『……』 「…」 どうせ出来ないだろ、 そう思っていたが、奇跡が起きた スポッ…… 『……!?』 「…え」 なんと、ボールがゴールに入ったんだ 《…あの子、幽霊部員だったのかな?》 《にしては見ない子だよね…》 周りの人がザワザワする声が、とても目立つ 『…今、ゴールした…よね。 初心者はほぼ入れられないんだよ、ゴールなんて』 そうが無表情でそう言う 「…初心者も、ゴールできるだろ」 『いやいや、早々無理だって。練習しないと』 そうは慌てて、俺にそう伝える ボールをゴールに入れる なんて、簡単だけどな。 「俺、バスケを体育でした後からバスケットボール触ってもないよ。練習も…… あんまりしてないし」 『ならもっと変だって』 そうが慌てている姿を見るのは初めてだ 教室でも、いつも無表情のまま本か友達と喋っているのに。 これ、そんなに凄いのか? 【…おい】 「…!?」 そうと話していると、後ろに監督がいた ザワついていた体育館が、少しだけ静まっているのが分かる 【今の、もう一回やってみろ】 「…え」 思わず、声が漏れた 周りを見ると、そうしかいないし、他の部活の人達は水を飲んでいるか、友達を話している。 この監督は、しっかりと “ 俺の事をまっすぐと見ている ” 。 【偶然かどうか、見ればわかる】 「…いや、俺は別に……」 【いいから。もう一本だ】 有無を言わせない声だった 『…ほら、頑張れ』 そう言って、そうがまたバスケットボールを俺に渡す バスケットボールが、さっきより軽くない むしろ、さっきより重く感じる (……無理だろ…) そう思っているのに、何故か手は止まらない ゴールを見る さっきと同じ距離 同じ高さ 同じ体育館 なのに、さっきよりずっと遠く感じた 「……」 息を吐く シュッ─── スポッ。 一瞬、音が消えた さっきよりも、はっきりと。 綺麗に… 入った。 【………。】 監督が、少しだけ目を細める 【…なるほどな】 小さく、誰にも聞こえていないような声 でも俺には、何故か聞こえた気がした 《…え、誰あれ… 初心者だよね?》 《だと思う… でも、めっちゃ綺麗に入ってたよ? 私ならできない。》 ザワつきが、さっきより大きくなる 監督はバスケットボールを見たまま、少しだけ沈黙してから言った 【お前、いつからバスケやってる?】 「授業でやっただけで、何もやっていないです」 即答だった 本当にやってない。 やってないはずなのに、 監督は、一瞬だけ笑った 【……そういうのが、1番厄介なんだよ。】 『……』 監督がそう言うと、そうが少しニヤッと笑った気がした 俺は一体、どうなるんだ…!? 【…お前、名前は】 監督に名前を聞かれ、俺は素直に名前を伝える 「えっと、… 今井 蒼 です。」 俺が名前を言うと、監督は俺の姿をまじまじと見て 【今井蒼……覚えた。 明日もまた、ここに来い。】 そう言われた 「……え、でも…」 『よかったな、あお』 そうに笑顔でそう言われた 【今日はもう帰れ。明日に向けて、な。】 「……はい」 『また明日な!!』 「…うん、また明日。」 俺はそう言って、体育館を出る 俺は 不安 しかなかった。 ──────────────── 家の玄関を開けると、いつもより家の空気が少し違っていた 母 「あ、あお!おかえり!」 母さんが、珍しく早く帰ってきていた キッチンから顔を出して、俺の姿を見ると一瞬だけ驚いたあと、すぐに笑った 母 「あおすごいね!!母さん、見ちゃった」 「…なにを」 靴を脱ぎながら俺は言う こんなにテンションが上がっているお母さんを見るのは、 久しぶりだ。 母 「今日ね、あおの面談があって学校に行ってたの そしたらバスケ部の監督に認められてるあおの姿が見えてさ…!」 母 「母さん、泣きそうになっちゃった」 母さんが笑ってそう言う 嬉しそう、というより、安心してる表情だった 「…でも、」 俺はカバンを置いて、目を逸らしながら言う 「またすぐ辞めるから」 母 「……」 一瞬、母さんの動きが止まった いつも通り、…ではないけど、冗談で言ったつもりだった でも口にした瞬間 自分でも分かるくらい軽くなかった 母 「……あお」 母さんはゆっくりと俺を見た 怒っている訳ではない。 でも、笑っていなかった 母 「辞めないで」 「……え?」 一瞬、意味がわからなかった 辞めないで ってなんだ? 母 「…辞めないで…いや、諦めないで。」 俺は少し黙ってしまった こういう言葉は、今まで一度も聞いた事がない 応援でも 説得でもなく、 ただ、止めてきた。 「…無理だよ」 母 「なんで?」 「俺、今からとか遅いし 迷惑…かけちゃうから」 いつも通りの理由を述べる 自分でも何度言ったのか分からない。 でも母さんは、息を吐いてから言った 母 「…迷惑って、誰に何をどうかけるの?」 「……」 母 「母さんは、別に迷惑だなんて思ってないよ。」 その言葉が、少しだけ重かった 母 「あおがやりたいなら、それでいいじゃん」 「……でもさ、」 言い返そうとしたけど、何も言葉が出なかった 母 「…何も出ないってことは、やりたいんでしょ? 夢に向かって 走りたいんでしょ?」 「………っ…」 母さんの表情は、笑っている気がするけど 少し涙も出てきている気がした 母 「辞める理由も あおが諦めて悲しんでいる表情も、もう何度も見たよ。」 母 「だから今度は、続ける理由をちょうだい、蒼。」 「……っ……」 母さんは、笑ってそう言った 諦めなくてもいいんだ 続けても…いいんだ。 そう思うと俺は、胸がとても暖かくなった 母 「…実はね、お父さんから貰った生活費、少しずつ貯めてたの。」 母さんがそう続ける 母 「だから…部費。払えるよ…!!」 「……っ…!!」 そう言われた途端、俺はなぜか涙がとまらなかった 今までしたい事はしたかった事へ変わっていった それでもなぜかバスケは諦め切れなくて、体育の授業でやる時に自主練をしたり 近くの公園のコートでひとりで練習したりしていた。 ひとりで部活をしている みたいな感じで楽しかった それが、本物の部活になるなんて。 俺が思いもしなかった。 母 「だから、頑張ってね、あお。」 「……うん…!!」 突然ですが俺には、夢があります その夢は、俺にとって出来っ子なくて 諦めていた夢でした。 だけど今 その夢が、 “ 叶いそう ” です。
もう、ひとりじゃない。
目が覚めると、見慣れた天井だった 「……」 身体が少し重いし、熱い。 ゆっくりと起き上がり、周りを見ると見覚えのある部屋だった 『……港くん、?』 声の方を見ると、郁がベットの横で座っていた 郁の部屋で、僕が郁のベットに横になってる…のか。 『……よかった…』 か弱い声で、郁が安心そうに肩の力が抜ける 「…僕、なんでここに…」 『校長先生が辛いだろうって、車で送ってくれたんだ。父さん達もびっくりしてた』 「……そっか…」 保健室であったことを思い出す 校長先生の言葉 泣いてしまったこと。 僕はなぜか、申し訳ない気持ちで押し潰されていた 「……ごめ、」 僕が謝ろうとすると、郁が僕を構わずこう伝える 『ありがとう。』 郁が涙目で僕に伝えてきた 僕はなぜ郁に感謝されたのか分からなかった 僕はただ、被害者でもないのに校長先生の言葉で 泣いてしまった。 むしろ許されないだろう、そんなこと。 「……」 僕が俯いたまま黙っていると、郁が続けた 『…港くんも怖かっただろうに、俺の事を守ってくれてありがとう。 怖かったのに寅…いや、港くんのことを虐めてた奴らに歯向かってくれてありがとう。 ……港くん、』 “ 本当に、ありがとう。 ” 「……」 僕は少しだけ俯いたまま、考える こんなふうに誰かに感謝されたことなんて、 今までなかったから。 いつも誰かを守っても 「当たり前でしょ」 で済まされる日々だったんだ。 「……僕、」 声が少し掠れる 郁が僕のことを静かに見つめている 「……郁のことを、ひとりにしたくなかったんだ。」 僕はゆっくり顔を上げる 「…それに、」 少しだけ言葉を探してから続けた 「……本当は、少しだけ怖かった。」 今まで言えなかった言葉。 でも郁は驚くこともなく、ただ小さく頷いた 『…うん。』 その一言だけだった。 コンコン… 僕と郁が話していると、ドアのノックがした 郁父 「…」 『……お父さん…?』 ドアを開けると、そこには郁のお父さんと 郁母 「……」 お母さんがいた。 僕は思わず、ベットから飛び出して立っていた 「…ごめんなさい、…僕、頑張って言ったのに。 最後まで守り切れなかった。ごめんなさい…」 僕は郁のお父さんとお母さんの前に急いで土下座をし、 謝った。 謝らないと、殴られる 蹴られる。 そう思ったから 郁母 「…!? ごめんなさい港くん、そう思わせたい訳じゃないの」 郁父 「港くん、顔を上げて」 そう言われて僕は顔を上げ、郁の両親の話を聞いた 郁母 「さっき校長先生から話を聞いたの。寅と摩耶って人は退学処分 寅と摩耶に便乗してた人達は停学だって。 担任の先生も地方の学校へ転勤 校長先生 教頭先生も反省して謝ってくれたわ。」 「……!!」 退学処分…!! 校長先生、してくれたんだ…!! 隣を見ると、安心している顔をしている郁がいた 本当によかった…… 郁父 「…港くん、これは誰のおかげか分かるかい?」 郁のお父さんにそう言われ、僕はすぐに 「大人の人達…いや、校長先生です。」 そう言った 僕は何もしていない、むしろ守られた側だ。 郁父 「いいや、違う。 郁が安心して学校に行けたのは、港くんのおかげだ」 「……なんで…」 僕は訳が分からなかった 僕のおかげで学校に行けた ? 行ける訳ないだろう、あんなに怖い思いをしたのに。 『…港くんは気づかなかったけど、俺港くんを迎えに行く時なぜか体が軽くてすぐ行けたんだ。』 「……!」 そうだ、あの時… 確かに、郁保健室に来た 郁父 「お昼くらいかな、学校から電話が来たんだよ 俺も お母さんも忙しくてさ、よし行こう ってなった時に郁がいなかったんだ。」 郁、僕の事を心配して… 郁父 「郁はいつの間にか学校へ行っていたんだよ、それも港くんのおかげなんだ」 「……」 僕はなぜかまた泣きそうだった。 こんなに褒められたのは人生で数えられるくらいしかないから。 郁父 「だからね、港くん」 “ あまり自分を責めるな。 ” 「……!」 郁のお父さん、 僕が僕自身を責めてる事をなんで知って…! 郁父 「こんなに人の為に自分を犠牲にする子はいない。 港くん、」 " 本当に、ありがとう " 郁母 「私からも言うわ。 ウチの息子を護ってくれて ウチの息子の為に自分を犠牲にしてくれて、」 “ 本当に…本当に、ありがとう。 ” 「……」 言葉が出なかった 胸の奥がグチャグチャで、嬉しいのか 苦しいのか分からない。 ただ、 こんな風に誰かに " ありがとう " と感謝されるのは 久しぶりで 「……っ…」 涙が出そうになる でも、今度は我慢しなかった。 「……僕、」 声が震える 「…なにも、できてないです」 そう言ったのに、 郁の両親 郁は首を振った 郁父 「郁は港くんがいたから安心できたんだよ。」 郁母 「ちゃんと、守ってくれたわ。」 『……港くんがいたから、俺がいるんだよ。』 「……」 胸がぎゅっと締め付けられる でも、その 痛さ は、前と違った 少しだけ 暖かい。 「……」 そして、ゆっくりと息を吐く 「……ありがとう、ございます…」 初めて、 ちゃんと受け取れた気がした。 郁父 「よし、じゃあみんなでご飯食べるぞ」 郁母 「そうね、港くん 郁リビング来なさい。お母さん頑張っちゃった」 『うん、行こ!』 「……うん…!」 ……ああ、僕は 今、こんなに… “ 幸せ ” だ。 ──────────────── 翌朝 僕は郁のベットで郁と一緒に寝ていた 久しぶりにぐっすりと寝たな… 郁母 「起きなさーい!!」 下から郁のお母さんの声が聞こえる 昨日は郁とスマホゲームをして、寝るのが遅くなったんだっけ 「…郁、起きろ」 僕がスマホのライトを郁の顔に当てる 『うわ、ちょ眩しい…』 「はは、起きた」 『リビング行こうか……』 残念そうに、郁が言う 「うん。行こう」 僕と郁は、リビングへ向かう ──────────────── 郁母 「おはよう、港くん 郁」 郁父 「おはよう」 リビングへ行くと、仕事の準備をしている郁のお父さんと 朝ご飯の準備をしてるお母さんがいた 「…郁、制服着て来よう」 『……うん』 校長先生には、「無理するな」 と言われた郁だったが 郁が 「行きたい」 と言って聞かなかった。 無理せず、行かなきゃいいのに… 『…うわー、久しぶりの制服とジャージだ』 「僕も久しぶりかも。」 案外久しぶりだな ジャージしか着れなかったんだよね。 郁母 「ほら、朝ご飯食べなさい」 郁のお母さんにそう言われ、僕と郁は朝ご飯を食べる 郁父 「今日学校頑張れよ〜!」 朝ご飯を食べてると、郁のお父さんが満面の笑みで応援をしてくる。 こんなお父さんが欲しかった… 「ありがとうございます」 郁父 「敬語じゃなくてもいいのに…」 郁母 「ね、郁が気になってる人なのに…」 『ちょ、やめろよ!』 郁が牛乳を吹き出しそうになり、顔を赤くなりながらも 両親を止める姿が面白い。 「……ははっ、」 思わず笑ってしまった 『…港くん、今笑った?』 郁父 「俺は見たぞ、笑顔可愛かった」 郁母 「写真撮れば良かったわね…」 そうか、今思えば僕 この家族の前であんまり笑った事ないな。 『俺も見たかったな… 港くんの笑顔』 テンション下がってる郁が言う かわいいな、ほんと。 「郁は、沢山見れるでしょ」 『…! そっか、学校があるもんね』 そう言ってお父さんにドヤ顔をする 郁父 「うわー、郁嫌われるぞ」 『いいもーん。港くんがいるし。』 朝って、 こんなに楽しかったっけ。 そう思いながら郁のお母さんが作ってくれた朝食を食べる 幸せ だな… ──────────────── 朝の準備を済ませ、郁のお父さんと一緒に出る 『じゃあ、行ってくるね』 郁母 「ええ、無理しないでね。」 郁の顔が少し青い。 緊張しているんだ… 「……」 僕は思わず、郁の手を握ってしまった 『え、港くん…?』 「緊張してそうだったから」 そう言うと、郁の両親はニヤニヤしながら 郁父 「ラブラブだな〜」 『うるさい』 顔を赤くしながら照れてる様子が何故か可愛くて。 「…じゃあ、郁のお母さん お父さん 郁は僕に任せて下さい」 そう言うと、郁のお母さん お父さんは安心して 郁父 「おう、任せたぞ」 郁母 「任せたわ、港くん。」 こう、言ってくれた 「行ってきます」 『行ってきます』 僕達はそう言って、玄関を出た ──────────────── 『………』 いつもはイヤホンをして、音楽を聴きながら学校へ行くんだけど、 郁が緊張しすぎてる。 「…郁?」 『ごめん、…トラウマが』 やっぱり、怖いよな… 襲われそうになったんだもん。目線が怖いよね。 「トラウマが激しいなら家に帰れる…けど」 『それはやだ。』 郁は即答でそう言う 「なんで、その方が楽だよ」 『……港くんと、学校行きたいんだもん』 小さい声でぼそっと言う 「…かわいい、ありがとう。」 僕は郁の前で控えめに笑った 『…早く行くぞ。』 郁は顔を赤くしながら、早歩きになってしまった 「ちょ、郁早いって」 こんなに楽しい登校は 初めてだ。 ──────────── そして教室 いつも静かだった教室が、今日はやけに騒がしい。 『……』 郁は、ドアの前で止まっている 「…郁……」 郁の肩が、少しだけ震えているのが分かった 怖いよな あんな事があった場所だ。 簡単に入れる訳じゃない 「……」 もし、逆だったら 僕が怖くて動けなかったら。 郁は、どうするんだろう 『……港くん、』 小さい声 振り返らないまま、そう呼ばれる 「……どうした」 『…やっぱ、無理かも』 その言葉に、 “わかる”って思ってしまった 無理でもいい 逃げてもいい そう言ってあげたくなる …でも、 「……それでもいい」 『…え』 少しだけ間を置く 「…… 一緒に行くから。」 郁がゆっくりと振り返る 「ひとりじゃないなら、少しだけマシだろ。」 そう言って僕は笑う 『……っ…』 郁の目が少し潤む 僕は、そっと手を差し出す 「…行くか」 『……うん。』 郁が、その手を取る ガラッ…… 教室のドアを開ける 騒がしかった教室が、一瞬で静まる 「……」 少しの沈黙のあと、 モブ 「……なあ、」 誰かが、ぽつりと口を開く 郁の前に、無意識に行ってしまった モブ 「……この前、校長先生に怒られたんだ」 「……」 また、教室の空気が静かになる モブ 「…止めなかったやつも、同じだって。」 「……」 モブ 「……俺、止めなかった。」 少しだけ俯く モブ 「……ごめん」 『……』 郁が少しだけ目を伏せる すぐには言葉が出てこない。 でも、 「…うん」 小さく頷いた 「……行こ、郁」 『…うん』 ふたりで歩き出す 視線はまだある でも、 前みたいなものじゃなかった。 席に座る 教室の空気が、少しずつ変わっていく 誰も大きなことは言わない。 でも、 それだけでよかった。 『…港くん』 「……ん?」 『…ありがとう。』 「…別に」 少しだけ間を置く 『…ひとりに、しないから』 「……」 一瞬だけ息が止まる でも、今度はちゃんと分かる 「……うん」 窓の外を見る 太陽の光が、少しだけ眩しい。 でも、これだけは分かった “ 少しずつでいい。 それでも、前に進める ” 僕達は少しずつ、前へ進む。 そして、 もう “ 1人 にしない。 ”
ひとりじゃない 。
「……」 そして朝の5時、僕は久しぶりに学校に行く緊張感と隣に郁がいるドキドキであまり眠れなかった …でも、いつもより深く眠れたかもしれない。 「…まだ寝てる」 郁は隣でまだぐっすりと寝ている 郁を起こさないように身体を動かし、イヤホンとスマホを手に取る 僕はいつも学校に行く前音楽を聴いている とはいえ、登校中も聴いているんだけど。 …今日は、SaucyDogの曲を聴こうかな そう思い、僕はSpotifyを開く。 「……」 いい曲だ。 SaucyDogの曲を聴くと、本当に落ち着く。 心が穏やかになる 曲を聴きながら、郁の家族が起きるまで待っていた ──────────── 「おはようございます」 郁父 「おはよう」 郁母 「おはよう、港くん」 朝7時、僕は朝ご飯を作る音が聞こえたのでリビングへ来た 郁父 「よく寝れたか?」 「寝れました」 郁父 「それならよかった」 郁のお父さんとも仲良くなって、郁のお母さんとも仲良くなった なんだか、本当の家族みたいで嬉しいな。 郁母 「トースト作るから、座って待ってて」 「わかりました」 朝ご飯なんていつぶりだろう、 そう思いながら僕は椅子へ座る。 郁父 「そういえば、港くんの夢ってなんかあるの?」 夢か… 考えたこともない… けど、僕は昔からやりたい事がある それを夢と言っていいのか分からないけど。 「……学校の先生です」 郁父 「学校の先生…! それはどうして?」 「……それは…」 僕は学校の先生になりたい理由を話した 「…この世の中、先生というものは残酷な生き物で 虐められている と言っても助けない先生や見て見ぬふりをする先生が多いと思うんです。実際、僕の担任の先生がそうだったので。 だから僕は、虐められてる子を助けたい ので学校の先生を選びました。」 我ながら上手く説明できた。 郁父 「…物凄くしっかりしてるね。きっと港くんなら叶うと思うよ」 「ありがとうございます。」 郁のお父さんと話していると、郁が起きてきた 『…港くん、学校行くの…?』 「うん、行こうと思ってるよ」 不安そうな表情で僕を見てくる 『……本当に無理しないでね』 「分かってるよ、ありがとう。」 本当は、虐められるんじゃないか って不安だったけど 郁を安心させるためにも、そう言うしかない。 郁母 「朝ご飯できたよ」 「ありがとうございます、いただきます」 『いただきます』 ────────────── 「…じゃあ、行ってきます」 朝ごはんも食べて、制服も来て鞄も持って今は玄関にいる。 『行ってらっしゃい、港くん』 郁父 「行ってらっしゃい」 郁母 「また帰っておいで。」 郁と郁の両親が見送ってくれたおかげで、 今日は音楽を聴かなくても行けそうだ。 「行ってきます」 僕はそう言って玄関を開けて、外へ出た ──────────── 「……」 久しぶりに教室のドアを開ける。 まだ変わらない空気感。 寅 『あ、港いたんだ』 摩耶 『空気がなさすぎて気づかなかったよ〜』 こういう奴には言わせといた方がいい。 殴ったら殴ったで反論され、先生に嘘をつかれるだろう。 僕は無視をした 寅 『…何無視してんだよ』 先生 『授業始めるぞ〜』 手を挙げそうになった所で先生がやってきた 寅 『……くっそ…』 本当はダメなんだろうけど、 ざまぁみろ と少し思ってしまった ──────────── そして少し時間が経ち、昼休みになった 寅 『そういえば、あいつどうなってんだろうな』 摩耶 『あの転校生でしょ?怯えてる顔可愛かったな〜』 「……」 郁のことだ。 僕は小説を読みながら、摩耶達の会話に聞く耳を立てていた 寅 『ほんと可愛かったよな〜 “ゲイ” って事はきもいけど。』 摩耶 『ほんとに教室で“犯せば”よかったじゃ〜ん』 「……」 僕はいつの間にか席から立ち、摩耶達の前に出てきていた 摩耶 『どうしたの〜?』 寅 『…きも』 僕はいつの間にか、寅の机に手をついていた 「…もう1回言ってみろ。」 教室が少し静まるのが分かる 摩耶 『は?何ムキになってんの』 「…名前、出して言えよ」 空気が少し変わり、ザワザワし始めた 寅 『なんだ?お前あいつの彼氏気取りか?お前もゲイなのかよーきもー。』 寅が笑って誤魔化す 僕はいいんだ、何言われたって構わない。 僕は、寅の目を逸らさずにこう伝えた 「証拠もある。録音もある。」 ここで、寅と摩耶の顔が固まっているのが分かる 「教育委員会にも言う。大人も動いてる。」 教室がザワつく 寅 『…証拠だぁ…?笑わせんなよ。』 次の瞬間、視界が揺れた。渇いた音が教室に響く 一瞬僕は、何が起きたのか分からなかった 頬が熱い。 摩耶 『ちょ、寅……』 寅 『調子乗んなよ。』 僕は倒れない。 フラつきながらも、寅を見上げる 「…だから、お前は怖いんだよ」 ザワッ、と空気が変わる ……その時、 校長 「…何をしている。」 教室が静まり返った 振り返ると、そこには校長先生がいた。 言い訳の余地はない 校長先生の目は、全部見ていた目だ。 校長 「……」 校長先生はクラスの周囲を見渡す 校長 「目撃者は全員、後で話を聞く。」 教室の空気が変わる 校長 「保健委員、港くんを保健室へ」 モブ 「分かりました」 モブ 「港、行こう」 「…うん」 僕は保健委員に肩を任せ、保健室に行こうとする 校長 「…よくやった。」 その言葉は小さくて、でも確かだった。 頭に置かれた手の重みが涙をこぼしそうにさせる 「……!」 僕は唇を噛んで、頷いた ──────────── モブ 「先生!港お願いします!!」 保健 「港くん…!?」 僕はそのままベットへ横になった 保健 「どうしたのその傷…痛むでしょう…」 「……」 保健室の先生は変わらず僕の事を心配してくれている 「…寅と、揉めました。」 保健 「…え」 驚いたような表情をする保健室の先生を前に、 僕はきちんと伝える 「……僕の大切な人が、僕の世界で一番嫌いな人にやられそうになった。僕はそれが許せなかったんです。だから、…大人が動いてる と言ったら、殴られてしまって…身体も、だるいし…」 校長先生が来た後から、僕は体が何故かだるかった 体も、物凄く熱い。 保健 「そうだったの…大変だったわね…。体だるいなら、熱測りましょうか」 「……はい」 先生は深掘りせず、僕に体温計を渡した 「……」 本当に体がだるいし、体も熱い。 いつもはこんなことになんてならないのに… 今日はどうして? ピピッ…… 「……」 体温計が鳴り、保健室の先生を呼んだ 保健 「……え、38.5℃…?ちょ、ちょっと待っててね」 「…はい、」 保健室の先生は慌てた様子で職員室に行った 体が熱い 息も熱い 体が重い。 初めてだ、こんなことは 校長 「港くん、大丈夫かい?」 「…はい…」 校長先生がマスクをして、僕の傍にやって来た 校長 「今日はもう帰ろうか。今港くんのもの持って来てもらってるからね」 「…ありがとうございます……」 殴られたところが痛む… 校長 「…湿布かなんか貼ろうか。港くん」 「わかりました」 僕はベットから起き上がり、校長先生に湿布を貼ってもらった 結構殴られてたんだな… 頬とか、おでこや唇、 思ったよりも、たくさん絆創膏や湿布を貼られてしまった。 今日は迷惑かけてばっかりだ。 校長 「……港くん。」 「…はい」 校長先生が真面目に僕の名前を呼ぶ 怒られるのかな、と不安になった。 校長 「…君はよく頑張った。でもね」 少し間を置いて、静かに言った 校長 「子供が体を張って守らないといけない世界は間違っている。」 「……」 校長 「だから、ここからは大人の仕事だ。」 その言葉を聞いて、胸の奥が少しだけ軽くなる 校長 「…君は、」 “ もう十分やったよ。 ” 「……!」 何か言おうとしたけど、言ったら涙が出てきそうだ。 ──その時、 ガラッ 『…港くん…!』 「…郁……」 郁は僕の顔を見た瞬間、息を止めた 『……なにそれ、誰にされたの』 校長 「落ち着きなさい、郁くん。」 校長先生が静かに言う 郁は眉間にシワを寄せながら静かに校長先生の言う言葉を聞いていた 校長 「もう話は聞いている。心配しなくていい。」 校長先生は僕達を交互に見てこう言った 校長 「…君達は、よく勇気を出した。」 「……」 校長 「……もう、独りじゃないからな。」 校長先生がそう言いながら、僕達の頭を撫でる 僕は何故か、初恋で大好きだった 真琴 を思い浮かべていた。 真琴もよく、僕が落ち込んでる時にこうやって慰めてくれた。 僕が苦しい時も、辛い時も悲しい時も。 ずっとただ、隣にいてくれた。 僕よりも大きい手で、僕の頭を撫でてくれた ああ、なぜだろう。 なんで僕はこんなに、泣いてるんだろう 「……っ…」 校長 「…港くん」 被害者じゃないのに。 何もされていないのに。 なんで、…なんでこんなにも、涙が… 「…ごめんなさい、僕おかしいみたいです…」 そう言いながら僕は、笑いながら袖で涙を拭う 『……港くん…』 郁が心配そうに僕の事を見つめる 止めたいのに、止められない。 泣きたくなんてない。人に涙を見せたくない。 「……っ…なんで…」 なのに、次から次へと涙が出てくる 出てくるな って、思ってるのに。 「…泣きたくなんて、ないんです… 自覚してます、今は僕じゃないって、郁なんだって。 それなのに…ごめんなさい、許してください」 僕は校長先生と郁から顔を背けて、止まらない涙を何とか止まらせるために、頑張った。 校長 「…港くん、」 それなのに、校長先生が僕の前に座った 「見ないで、僕の泣いてる姿なんて誰にも見て欲しくない。」 校長 「…僕の友達にもいましたよ、そんな友達が」 「……?」 校長先生は僕の事を慰めずに、昔話を始めた 校長 「人前で中々泣かない子でね… いつも明るくて、元気な子でしたよ。辛くないの? と聞いても、 辛いって何? って言ってくる子でした。」 校長 「…でもね、その子大分心がやられてたみたいで、…腕に傷が多かった。多分、自分でやったんだろうね。 夏でも、長袖だった子だったからさ。」 腕に傷…か…。 校長 「僕、言いましたよ。 “辛い時は泣けばいい” って。そしたらその子、僕の前でワンワン泣いたんです。 “辛くても、苦しくても元気な姿でいないとダメになる” って叫びながら。」 「……」 “ 辛くても、苦しくても元気な姿でいないとダメになる ” …僕も、親にそう言われてたな… 校長 「僕は、その子みたいになってほしくない。 港くんも、辛ければ泣いてもいいんです。赤ちゃんのようにワンワンと泣いてください。」 「……!!」 大人に慰められたのは、初めてだった僕は その言葉でまた泣いてしまった。 「……っ…ごめん、なさい…」 止めたいのに、止められない涙が頬に流れる 校長 「…そう、そのまま泣けばいい。」 校長先生の優しくて真としている声が、僕の耳に響く 僕は今日、目が無くなるほど泣き続けていた。
安全な場所
それからというもの、僕は いじめ と 過去の記憶のフラッシュバック で辛くなってしまい、学校を休んでいる。 郁には何度も感謝された。 「休んでくれてありがとう」 って、何度も言ってくれた。 やっぱり僕は、僕を気にかけてくれる郁がすきだ 大好きとまでは行かないけど、郁のことを信用してる。 ピンポーン…… 「誰だ」 今の時間は…朝の8時半…? こんな時間に誰だろう。 ガチャッ 僕は家の玄関を開けた 『……』 すると、そこには郁がいた。 ボロボロな姿をして立っていた 「…どうした?なんかあったの」 『…俺、学校停学になった』 「……え?」 あんなに優等生な郁が…停学に…? まあ、退学にならないだけいいけど…なんでこんなボロボロなんだ…? 「……とりあえず、中入って」 『うん』 ──────────── そう言って僕と郁は、家の中に入った。 「座っていいよ」 『ありがとう』 僕と郁は、近くのソファーへ座る 僕は郁が自分から話してくれるまで待ってみることにした。 『……港くん』 「…ん?」 震えた声で僕の名前を呼ぶ郁。 本当に何があったんだ。もしかして、摩耶達に何かされた…とか…? 『…俺、男がすきなんだ』 郁…僕と同じで男の子が恋愛対象なんだ… 少し安心した。 「それでどうしたの。」 『……摩耶達に、俺が男がすきなのバレちゃって。 そしたら、寅にさ、…犯されそうになって…教室で。』 その言葉の続きを言わなくてもわかる。 郁は、反抗して寅の事を殴った。その場面だけ先生に見られてて、寅達も嘘をついて、停学になったんだ。 それを言われた途端、僕は郁でも被害者でもないのに 頭が真っ白になった。 ……まただ。 僕はまた、大切な人を守れなかった。 僕が休んでたから。僕が、よわいから。 ぐちゃぐちゃになる。 でも、いつも余裕そうな郁が、今日は震えてる。 指先、僕でも分かるほどギュッとしてる。 あれほど怖かったんだろう。 「……郁は、わるくないから」 『……!』 郁は悪くない って言った途端、郁に表情の柔らかさが出てきている気がする。 親にも言ってないんだろうな… 「怖かったな、郁。 僕は郁のこと、何も変わらないよ。恋愛対象が男でも、郁は郁だ。」 そう言った途端、郁の目に涙が見えた。 「……触っても、いい?」 『……』 頷く郁に、僕は思わず静かに抱きしめた。 今強く抱き締めるのは、違うと感じたから。 『……っう…っ…』 それと同時に、郁が泣いている 親にも停学の理由を責められて、辛かったんだろう。 …そりゃ、理由も言えないよな。 同性が好きで、その同性に教室で犯されそうになったって。 言えるはずもない。 「……落ち着いた?」 『……うん、』 その言葉を確認して、僕は郁から離れる。 ……次は、どうしよう。 「……親には、言ったの?」 『…停学になったとは、言った。理由は言ってない』 やっぱりそうか。 僕の思っていた通り、郁は理由を言ってなかった。 親に引かれたら…終わり、だもんな。 「……言えないよね。無理に言わなくてもいいし、郁がひとりで背負う必要もない。……僕が、一緒に考える。」 『……』 もし、僕が郁と同じ立場だったら、 大人の人にも相談できないし、ひとりで背負うと思う。 だから僕はあえて、一緒に考えることを選んだ。 「親に言うなら、僕も一緒に行くし言えないなら 代わりに言う。」 郁は今、大人の人も怖いと思う だって、先生に理由を言わなかったから。 先生にも寅達にも、責められて停学にされて。 言えるはずもないだろう。 『……ありがとう、親に理由言いたいから、一緒にいてほしい』 「わかった。今言うか?」 『…うん、言いたい』 そう言われ、僕は郁と玄関に向かいドアを開ける。 郁は本当にかっこいい。 親に理由を言うのも怖いのに、言うのはすごい。 僕は郁の傍にいられたらそれでいい。 『……ここだよ、入って』 「うん。」 そう言われ、僕は郁の家に入る 郁母 「おかえりなさい…ってあれ、誰?この子」 『俺の友達』 郁父 「郁友達いるんだな、よかったじゃん」 この家族は、理由を言っても責められなさそうだ。 安心した。 「……お邪魔します。」 郁母 「ええ、ぜひぜひ。」 郁、手がとても震えてる。 言うの、怖いよな… 「……郁、頑張れ。(小声)」 『……うん…手繋いでもいい…?(小声)』 不安なんだろう。 僕は郁の手を郁の両親にバレないように繋いで、郁が両親に話すまで待っていた。 『……母さん、父さん。俺、停学になった理由話すよ。』 郁母 「……分かった。この子はどうするの?」 『俺が不安だから呼んだんだ。』 郁父 「…2人とも、ここに座りな。」 「ありがとうございます」 僕と郁は、両親が座っている椅子に向かい合わせで座った。 手を繋いでるのをバレないように座るの大変だ。 …それにしても、久しぶりだな こうやって向かい合わせで座る行為なんて 『……俺…さ、昨日普通に学校行ったじゃん。』 郁母 「そうだね」 郁頑張れ、頑張ってくれ。 『……っはあ…』 「…郁…」 郁が泣いてしまった 思い出すだけで怖いもんな。そうだよな… 「……僕が、代わりに話しても大丈夫?(小声)」 『……』 郁が頷いた事を確認して、僕は郁の両親にこう伝える。 「……僕が代わりに話しても大丈夫でしょうか。」 郁父 「…本人が言えないなら、大丈夫。」 郁母 「むしろありがとうね。」 郁の両親にもそう言われ、僕は郁の言った事を言葉を選んで慎重に言うことにした。 「…僕も、さっき言われて困惑していました。 郁は昨日、いつも通り学校へ行っていたんです。ですが、…僕を虐めていた人達に、郁の恋愛対象がバレてしまい、教室で襲われかけたそうなんです。」 それを言うだけでもあの場にいなかった自分に腹が立つ。 それを言った瞬間、郁の両親は驚いていた。 息子が襲われかけたんだから、そりゃ不安だよな… 『……それで俺…反抗して殴ったんだ。 ………そしたら…それを丁度見てた教頭先生に、「職員室来て」って、そいつらと俺が言われて、そいつらに嘘言われて…停学になった。』 郁は泣きながら両親に伝えてくれた 怖かっただろうに、泣きながら伝えるだけで本当にすごい。 郁母 「そうだったの…そりゃ、言えないわね。ごめんね、責めたりして。」 郁父 「…許せないな、そいつら。いや、教頭先生もだけどさ、本当に許せない。」 両親もちゃんと対処してくれそうで助かった。 もう僕が言うことは何もない。よかった。 郁父 「俺明日学校行こうか。教育委員会に電話したり」 郁母 「いや、教育委員会に電話するのは私やるから、学校行くのはあなたやって」 郁父 「わかった」 本当に仲がいいんだな。 こういう両親、欲しかった。 郁父 「……それにしても、君もその子らに虐められてたんだろ。説明してた時言ってたよな。」 「……あ…」 やばい、説明してる時にどう例えればいいか分からなかったから無意識に言っちゃってた。 怒られる…かな…。 郁父 「……辛かったな」 「……」 初めて大人に「辛かったな」 って言われた。 僕の気持ちを知られて欲しくない。 「…慣れたので、大丈夫ですよ。今は息子さんを支えてあげてください。」 それを言った瞬間、郁の両親にも郁にも驚かれた。 郁には救われた…と言っても過言じゃない。 だから今は迷惑かけたくないんだ 今の状態が1番辛いのに、僕のことを気にかけて欲しくない 郁父 「…君も、その“今”にいるだろう。」 言葉を一瞬見失った。 郁母 「今日は泊まっていきなさい。 息子を支えてくれる子をひとりで帰らせる親はいないわ」 そう言って笑う郁のお母さんに、僕はこう言った 「……迷惑かけるんじゃ…」 郁母 「迷惑な訳ないでしょ!息子が1人2人増えても、変わらないんだから。郁も喜ぶし」 『俺も嬉しいよ、港がいてくれる方が嬉しい』 視界が少しぼやけた気がした でも瞬きをして、息を飲み込んだ 「……そういうの、簡単に言わないで下さい」 そう言った瞬間、郁の両親は目を見合わせて、郁は驚いてしまった。 「……すいません、ありがとうございます。」 引かれる、と思った。 だけど郁の両親は、僕に心配している表情を見せた 郁母 「布団用意するね。郁と同じ部屋だから教えてやってよ〜?」 『分かったよ』 ああ、家族だ 僕の理想の、家族だ。 …だけど今は、郁を助けることに集中しなくちゃ。 ──────────── 久しぶりに風呂に入った。 今は郁が風呂に入ってる リビングには、郁の父親と僕だけ 郁父 「…お茶、飲むかい?」 「……いただきます」 ソファーに座り、湯呑みを両手で持つ。暖かい。 郁父 「ごめんな、急に泊めちゃって」 「……全然です」 気まずい空気になる 少し経ってから、郁の父親が僕にそう言う 郁父 「…さっきの、簡単にいわないでください っていう言葉さ」 「……!」 胸が小さく跳ねる 「…ごめんなさい」 郁父 「謝らなくていい。」 即答ではなかった それでも、僕を見ながら郁の父親はこう言う 郁父 「君は信じるのが怖いんだろう。 郁を支えてくれて、本当にありがとう。」 初めて大人に感謝された 郁には助けられてるから、当たり前だろ とも思ったが、嬉しかったのが答えだと思う。 郁父 「…でもね、君もまだ子供だ。 全部ひとりで抱え込むな。」 その言葉が、僕の心にジワッと染みる 涙が出そうだったが、すぐ我慢した 郁父 「家にいる間は、遠慮しなくていい。 迷惑なんて思わない。」 “ 今日は、ただ安心して寝なさい。 ” 「……はい」 僕は、視点を落としてこう言った 泣かずには居られなかった。 「……っ…」 泣きたくなんてなかったのに、涙が出てくる 今は郁だ。そう思ってたのに涙が一滴落ちてしまう。 「……すいません」 そう言うと、郁のお父さんは何も言わず、僕の前にティッシュを置いてくれた。 「……泣きたくなんて、なかったのに。」 初めて大人の前で本音が零れた。 そう言うと、郁のお父さんは僕の近くに来てくれた 郁父 「泣いてもいいし、我慢なんてしなくていい。」 そう言われた途端、郁のお父さんが僕の頭を優しく静かに撫でてくれた。 大人の手が怖い と思っていた僕は、少しビクッとしたが、すぐ目を閉じてしまった。 「…僕、親にいらないって言われたんです」 それを言うと、撫でる手が止まった気がした。 郁父 「…今日は何も考えないで。ここは安全だよ」 「……っう……」 そう言われた途端、僕はまた涙が止まらなかった。 もう寝ないと行けないのに涙が止まらなかった。 僕はこの家族を一段と好きになってしまった。 『…父さん?』 郁の声。リビングの空気が少し変わる 郁がタオルで髪を拭きながら入ってきて、そこで止まる 『……港くん?』 僕は慌てて顔を背ける 「…なんでもない。」 郁はすぐ分かったような表情をしたけど、 何もからかわない。 郁のお父さんも何も説明せず、まだ隣にいてくれた。 郁父 「…この子疲れただけだから」 そう言って郁のお父さんは、優しく微笑んでくれた 微笑むな、更に胸がじわっとくる…。 『……泣いた?』 「泣いてない」 僕がそう言うと、郁が少しだけ笑う そして小さく言う。 『…郁も、泣いていいんだからな。』 「……今は、郁だろ。」 郁が辛い思いしたんだから、僕は我慢すればいい 僕はもう助けられたんだから。 郁父 「違う。今日は君達の日だよ。虐めをする奴も、恋愛対象をバラして行動に移すのも、全部ダメな行為だから。 君も、郁も。よく大人に言ってくれたね」 そう言って郁のお父さんは、僕の頭と郁の頭を 撫でてくれた。 『……っ…』 郁は僕の隣で安心したのか泣いている そりゃそうだよな、男とはいえ怖いもんな…郁はすぐ分かったような表情をしたけど、 何もからかわない。 郁のお父さんも何も説明せず、まだ隣にいてくれた。 郁父 「…この子疲れただけだから」 そう言って郁のお父さんは、優しく微笑んでくれた 微笑むな、更に胸がじわっとくる…。 『……泣いた?』 「泣いてない」 僕がそう言うと、郁が少しだけ笑う そして小さく言う。 『…郁も、泣いていいんだからな。』 「……今は、郁だろ。」 郁が辛い思いしたんだから、僕は我慢すればいい 僕はもう助けられたんだから。 郁父 「違う。今日は君達の日だよ。虐めをする奴も、恋愛対象をバラして行動に移すのも、全部ダメな行為だから。 君も、郁も。よく大人に言ってくれたね」 そう言って郁のお父さんは、僕の頭と郁の頭を 撫でてくれた。 『……っ…』 郁は僕の隣で安心したのか泣いている 僕は無意識に、郁の手を繋いでしまった。 やらかした、と思い外そうとしたが、郁の力が強すぎて離せなかった 郁父 「じゃあ、もう寝るから部屋戻りなさい」 「ありがとうございます、おやすみなさい」 『おやすみ』 郁父 「おやすみ」 明日、僕は学校へ久しぶりに向かおうと思う 明日は郁もいない、僕だけだ。 そういえば僕は、ここに帰ってきていいのだろうか。 そのまま帰った方がいいのかな…? 郁母 「…あ、待って待って。港くん…だよね?」 「はい、そうですけど…」 なんで郁のお母さんが僕の名前知ってるんだ? 郁母 「やっぱり!この子郁が紹介してた子よ」 郁父 「あ、港くんか!」 郁が紹介した…?どういうことだ…?? 『もういいって!寝る前だよ!港くんも困っちゃうじゃん!』 「……??」 状況が上手く飲み込めない… どういうことだよ… 郁母 「港くん、明日多分学校行く…と思うんだけど、学校帰ってくる時にここに戻ってきてくれない?」 戻ってきても、いいのか…? 郁母 「郁も、港くんがいた方が気が楽だし、後少しだけ、」 “ ここにいてくれない? ” 「……はい」 初めて言われた。 ここにいてくれない? なんて、言われたことがない むしろ、僕は 来るな とかだった気がする。 初めてなことだらけだ… 郁母 「じゃあおやすみ!」 「おやすみなさい…」 ──────────── そして僕は郁の部屋に来た 郁のベットの隣に、布団が置いてある。多分それは僕のだろう。 『ごめんね、急で』 「大丈夫だよ」 郁に辛い思いはして欲しくない。 だから僕は、そう選んだんだ 『……ねえ、一緒に寝ない?』 「え、大丈夫なの」 『…うん、その方が暖かいでしょ』 「そうならいいけど…」 僕はそう言って郁のベッドに行った 郁と距離がこんなに近いのは初めてだ… 『じゃあおやすみ』 「…お、おやすみ……」 この状態で寝れる訳ないだろ、そう思いながら僕は無理に目を瞑る …明日は多分、寝不足になりそう。
[ 特別編 ] 大人の余裕。
『大学のサークル友達と飲み行くんで、遅れます。』 「わかった、楽しんでこいよ」 『ありがとうございます』 月日が経ち、湊くんは無事第一希望の大学へ合格し、進学。 俺は上司がいなくなり、代わりに上司になる事になった。 そして俺達は、ようやく正式に 付き合える事になった 。 もちろん告白は湊くんからしたんだけど… 最近本当に忙しそうにしている。 「……」 それと同時に、俺の中で不安が積もっている。 大学にはもちろん、可愛い女の子やかっこいい男の子がいる。 …それに比べて俺は、20後半のいいおじさんだ。 多分、奪われて別れるだろう… もう俺一途の湊くんではないのかもしれないから 「…まあ、いい…けど。」 湊くんも、大学の同じ年の子と付き合いたいと少しは思うだろう 俺はいつもビクビクしながら生活している 「……俺も行かないと」 俺は、今日もいつも通り会社に行くために玄関のドアを開け 車に乗り会社へ向かう。 ──────────── 「おはよう」 華奈 「おはようございます!」 こいつの名前は 華奈(かな) 。 覚えてる人もいるだろう。こいつは元カレの被害に困っていた俺の友達…みたいなもんだ。 華奈 「…なんかテンション低いですよね、何かありました?」 「……いや、いつも通り…だと思うよ」 この子は、人一倍周りを見れる超能力者みたいなもんだ。 これのせいで苦労もしてきたんだろう。 華奈 「……もしかして、恋人と何かありました?」 「……え」 華奈は俺がゲイな事も、湊くんの事も知ってる。 本当は華奈に湊くんの事を知らせたくなかったんだけど、 湊くんと喧嘩した時とか、いつも相談に乗ってくれている。 もう湊くんの顔写真も見せたり、「告白して正式に付き合った」 とも言ってある。 「え、まだ正式に付き合ってなかったんですか」 って驚かれたけどな… 華奈 「…その反応、図星ですね…」 そう言いながら、華奈が苦笑いをする 「…いや、俺が一方的に不安なだけだからさ…」 華奈 「なら尚更相談乗りますよ!今日お昼一緒に食べましょ」 「ありがとう」 華奈にはいつも感謝してる 俺がいつも落ち込んでる時にすぐ気にかけてくれるからな。 こいつ…普通にいい奴なのになんで彼氏いないんだろう。 ──────────── 「……」 華奈 「それで…どうしたんですか」 俺と華奈は今、会社の中にある食堂の席に座っている 「……湊くんが、無事第一希望の大学に合格してさ。 サークルにも入って、サークルの友達もできたんだよ」 華奈 「おめでたい事ですね… それで?」 「それと同時に、サークルには可愛い女の子もかっこいい男の子もいるじゃん。 だから……いつか、「こんなおじさんとは嫌なので別れます」って言われないかなって…怖くなっちゃってさ…」 俺はそう言いながら口角を上げる すると、華奈がご飯を食べる手を止めて、俺にこう伝えた 華奈 「……もう正直に言っちゃいましょうよ」 「……え」 正直に…言う…? 年齢20後半のおじさんが、縛るような言葉言って気持ち悪くない……!? 華奈 「…私もそういう時ありました 元彼が丁度サークルの飲み会が多くて、女の子もいるって時に、不安でたまらなかったけど聞かなくて。 そしたら、「素直さがないから」っていう理由で別れちゃったんです。」 華奈にもそんなことがあったんだ… 素直さがない って理由で別れることあるの? 華奈 「…湊さんは純さんが縛るような言葉を言っても、受け止めると思います。」 …そうか、今まで俺は湊くんに、 苦しい時 嬉しい時 悲しい時 寂しい時 いつも湊くんが支えてくれていたし、受け止めてくれた。 素直に話しても…大丈夫なのかな。 「…本当に素直に言って大丈夫だと思う?」 華奈 「はい、…好きな人の不安になってる姿、見たくないと思いますよ」 そう言って華奈は、笑う。 でも、いつもの笑顔じゃない気もする… 「…分かった、正直に話してみるよ。ありがとう」 華奈 「……はい!」 華奈に相談して助かった… 「じゃあ食べ終わったし、戻ろうか仕事に」 華奈 「戻りましょ戻りましょ」 華奈 「………」 ( かなわないなぁ… ) ──────────── 「じゃあ帰るね」 隣に座って仕事をしている華奈に一言言う。 華奈 「頑張ってください!」 「ありがとう」 いつも応援してくれる華奈が本当に頼りになる。 「先失礼します」 「「「お疲れ様です」」 部下達にそう伝え、俺は会社を出る 「……」 湊くんに正直に思いを伝える事は、多々あったかもしれない。 だけど今日は、思い ではなく 想い を伝える。 始めて正式に付き合って、俺から想いを伝えるから、本当に緊張する。 気持ち悪がられないかな とか 迷惑じゃないかな とか。 勝手に思ってしまう。 だけど俺は今日、素直に湊くんに想いを伝えるんだ。 ──────────── 「……ただいま…」 『おかえりなさい。』 いないはずの湊くんが、何故か家にいる。 え、なんで? 「なんでいるの」 『早く帰りたかったからです。』 早く帰りたかったからって…俺の事好きじゃん… 「……そっ…か……」 だからこそ、捨てられる時が来たら怖いし。 俺からもちゃんと言わなきゃ。 『…なんかありましたか、元気ないですけど』 そう言って湊くんは俺の顔を覗き込んでくる。 俺は思わず反射で、身体をそのまま背けてしまった 『いつもそんなことしないのに。なんか言われました?』 「……何も言われてない。」 『…ならなんで背けるの』 湊くんは自分の荷物を片付けながら、俺にそう伝える。 今がチャンスだ と思った俺は、ゆっくり口を動かす 「……俺…さ」 『……なに?』 「…最近湊くん飲み会多いじゃん。」 『…そういえば…そうですね』 湊くんが片付けをする手を止めて、俺の話をちゃんと聞いてくれている。 「……サークルにはかわいい女の子とか、かっこいい男の子とか、同年代の子もいる…じゃん。」 俺がそう言うと、少し湊くんがニヤついた。 それを気にせず、俺は話を続ける 「…こんな、いい歳の俺は…いつかすてられるんじゃないか、って…不安で…さ。 いや、分かってるんだよ!?湊くんが友達出来て嬉しいし、嬉しいけど……」 俺が話の続きを言おうとすると、 湊くんが強く抱きしめてきた。 「……み、湊くん…?まだ続きがあるんだけど…」 『…ごめんなさい、我慢できなかったです。』 我慢できなかった…?どういうことだ… 『…純さんのこと、愛してます。』 「……湊くんは、俺が離れても…大丈夫なのか…?」 思わず聞いてしまった。 無意識だった。 『…当たり前じゃないですか。離れるつもりないです。』 『……純さん。』 「離れるつもりない」 って言われて、本当によかった… 胸の中がボワッと暖かくなった 「どうした?」 俺がそう言った途端、 湊くんが俺をソファーに押し倒していた。 突然の事で理解ができなかった俺は、頭の中が真っ白になった 『…僕、もう大人です。高校生、子供じゃないです。』 「……そうだね…それがどうかしたの?」 子供じゃない年齢って事、しっかり分かってるよ。 だからこそ“正式に”付き合えたし。 『僕が、純さんの初めて、僕がもらっていいですか。』 「……え、…だ、大丈夫なの…?湊くん…」 湊くんは昔、お父さんに無理やり行為を迫られた事がある。 それを昔 トラウマ だと言っていた。 …もちろん大人だし、俺が責める…んだよな。 トラウマが蘇らないかな… 『…大丈夫ですよ。僕が“責めるんで”。 』 ……湊くんが責める…!?!? 普通大人の俺が責めるんじゃないの…!? 「な、なんで…俺が責めるんじゃないの」 『純さんは初めてだし、責められないでしょ。 僕の方がやり方知ってるんで。』 やばいやばい…俺、やられる… 確かに、俺は初めてだからそんなこと分かんないけど… だと言っても、俺も頑張れば…! 「俺も頑張ればできる…し…」 『……できないでしょ、ひとりでやったこともない癖によく言いますね』 「うるせえ!!」 俺が反抗している間、俺は湊くんにお姫様抱っこをされ、無理やり風呂場へ連れて行かれそうになる。 「ちょ、まてって!」 『待たない。ていうか、待てない。頑張ろうね。』 そう言って湊くんがイジワルな笑顔になる。 あんな表情を見るのは初めてだ… 少しゾクッとした。いい意味で。 「……湊くん、優しくしてね… 一応、初めて…だし…」 『…それは純さん次第かな。』 そう言われ俺は風呂場に強制的に入れられ、 湊くんも風呂場に入ってきた。 『今夜は楽しくなりそうですね、純さん』 「……う、うん…」 俺にはどうやら、 “大人の余裕” というのはないらしいです。
[ 特別編 ]今は僕のはずなのに。
真斗 「純ー、これ美味そうじゃね」 「食いもんじゃねえよそれ」 『……』 俺達は今、水野水族館にいる 湊くんがいつもより黙っているのは真斗がいるからだ。 ……多分。 真斗 「そういえば、本当に大丈夫だった?俺いても」 「大丈夫。婚活してるんでしょ?その気晴らしにでもしてよ」 そう、真斗はこの前離婚し、ちゃんと裁判をして慰謝料請求して真斗に親権も渡った。 だけど流石に、相手さんがいないと子供としても心配すると思うからっていう理由で婚活をしている。 真斗 「まじ!?子供も俺の親に預けといてよかった。」 「それならよかった。」 真斗の久しぶりに思いっきり笑ってるところをみて 少し安心した。誘ってよかった… 『…早く行きましょうよ、純さん』 「あ、ごめんね、行こうか」 真斗 「はーい」 ──────────── 「うわ!クラゲだ!!」 真斗 「お前クラゲ好きだったよな。"昔"は暗いの嫌って泣いてたくせに。」 「うるせえよ」 クラゲ見ると、俺の施設時代の頃思い出すな。 外出許可を受けて、真斗と真斗の親と一緒に水族館に行ったんだっけ… 『…昔一緒に行ったんですか』 「そうだよ、でも泣いてはいないから!」 真斗 「嘘だよ、純めっちゃ泣いてて可愛かった」 「まじでうるさい」 まあ、泣いてたのは事実なんだけどさ…… 湊くんの前であまり言わないで欲しい… 『……』 「…? 湊くん、次どこ行きたい?」 『マンボウでしたっけ。そこ行きたいです』 「分かった、行こうか」 真斗 「ほらー、早く行くぞ〜」 ( 真斗と純が肩を組む ) 「……!?」 流石にやばい 真斗テンション上がりすぎ。。 『……』 「…?!」 やば、嫉妬してる…のかな。 めっちゃ手繋がそうとして来る… 『なんで僕と手繋いだらダメなの。手繋ごうよ 恥ずかしいの?(小声)』 「……ご、ごめんって」 湊くん、怒ってる…? ──────────── 真斗 「綺麗な魚だな!!」 「そうだな」 真斗 「この魚とか、"昔"の純にそっくり」 「おい、やめろって」 本当にこいつは… くだらないことしか言わない それにしても、湊くん物凄くテンション低いけど 大丈夫かな…? 真斗 「綺麗だな、久しぶりに水族館"デート"を純としたわ "昔"はいっぱいしてたよな〜」 「うるせえ、昔だろ。今に集中しろ」 真斗 「はーい」 『……』 やばい、湊くんめっちゃ真顔だ。怒ってる。 …まあ、大丈夫…だろ、多分。 ──────────── 真斗 「今日はありがとうな、また行こうな」 「うん、また行こう!」 『……』 「ほら、湊くんも」 『…はい、行きましょう。』 真斗 「うん、またね!!」 「またな!!」 なんだかんだ、ご飯を食べる時も、お土産屋にいた時も 真斗と距離が近くて、昔を思い出したなあ。 楽しかったな…またこうやって、行くのもアリだな 『……』 「…どうした?」 『早く家帰りましょ。』 「あ、うん、わかった」 湊くん、やっぱり怒ってる… 今思えば、真斗めっちゃ俺と距離近かったな… 肩組んだり、手繋いだり… もしかしてそれか?原因。 ということは……めっちゃ、怒ってる…やばい。 ──────────── 家の中、なんとなく悪い空気が漂う 「……今日楽しかったな!」 『……そうですね。』 湊くんが上着を脱いで、振り返らずに言う 『…純さん』 湊くんはいつもより低くて冷たい声で 俺の名前を言った。 『あの人といる時の顔、少し赤かったです。照れてたんですか』 「て、照れてないよ!?」 俺、湊くんに分かるほど顔赤かったのか…!? 『…昔の話沢山されて、正直妬きました。』 「……ご、ごめん…」 『距離も近かったし。最近なぜか純さんに近づいたらガードされるのに、あの人はいいんですか』 「…そ、それは……」 『…肩も組んじゃったりして、手も繋いでました。』 こんなに嫉妬してる湊くんの姿を見たのは初めてだ… 『…純さん、ぼくじゃ足りませんか』 「……そ、そんな事ない!」 『じゃあなんで、僕が近づいたら距離置くんですか』 くそ、湊くんがこんなに悩んでるなら、言うしかないじゃないか…!! 「…湊くんが俺の隣に来ると…なんというか、意識しちゃうんだよ…ドキドキするっていうか… ほら、湊くん進級して高二だろ、?大人っぽい湊くん見たらなんかドキドキしたんだよ。でも湊くん、トラウマあるし…だから離れるようにしてたんだよ…!!」 よく言った。偉いぞ、俺… 『…へー…じゃあ頭の中僕でいっぱいだったんだ』 「え、は、そういうことじゃない!!」 『は?他の男のこと考えてたの?』 「そういうことでもない…って…!」 『じゃあなんなの』 「…考えてたよそりゃ!考えてた」 『誰のこと?』 ニヤニヤしながら言いやがって… 湊くんわかってるくせに… 「湊くんのことだよ…!」 『…かわいすぎ…僕が困るのでその可愛さどっかに捨て…』 『……は』 大人の余裕を見せないとね… …俺が悪いけど、言われっぱなしは嫌だ…!! 「うるさい口を黙らせた」 『……もう限界です、ごめんなさい』 「……!?」 「………ふっ……はっ、……」 『……』 湊くん……やりすぎだろ…… 頭がふわふわする… 『……』 「…はあ…は、」 『……ごめんなさい、やりすぎま…』 『……!』 湊くんが俺の顔を見た途端、力強く抱き締めてきた 「なに…みなとくん…」 『……奪いたくなるから、あまり煽らないで。』 「…な、なに言ってるの…」 『……僕、ちゃんと待てるので。』 待てるって…そういうことなのか…!? 将来は湊くんと… いや、そんなことない…よな。 「…まあ、湊くんが成人したら大人の余裕ってものを見せないとな」 『……純さんの責められて赤くなってる顔早くみたいな〜』 「…うるさいよ湊くん。。」 こんなことをするのは成人になってから… 結構時間がある…と思うから、随分先になると思うけど… 『…あいしてます、純さん』 「…俺も、あいしてる」 『可愛い…』 相変わらず今日も、充実した一日でした。 続く。