すうら

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すうら

LJK 将来の夢はこくごのせんせい。

第1話

「久しぶりだね、彩斗!元気にしてた??僕ね、」 目の前でペラペラと話し出したのは、間違いなく俺の記憶の中にある未来だった。少し上品な言葉遣いと、周りの女子からもかわいいと言われるようなくりっとした目、整った鼻、165cmという少し小さめの身体。ただ、記憶と異なるのは半透明であるということだけだった。 「あはは、聞いてるー?拍子抜けしてるのかなぁ?おーーーい!」 「お前、未来か?これは幻聴か?俺、もしかして働きすぎておかしくなったんじゃ…」 「だから、僕だって言ってるでしょ!未来だよ、君の友達で、恋人だった未ら」 「お前、なんで居なくなった。」 「え?」 「なんで俺の前から急に消えた。どうして居なくなったんだ。」 勢いに任せたまま怒鳴るように言った。その後、未来の顔を見て少しだけ後悔した。未来は悲しそうな顔をして言った。 「ごめんね。」 「まだ、まだ伝えられないんだ。あと少しだけ待って。」 そう言い残すと未来は消えた。 カレンダーには13日と書いてあった。

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第1話

プロローグ

なんでだよ。どうしてだよ。 お前がなんでここに居るんだよ。だってお前はさ、俺を置いていってその後さ、 _____なのに、そんな風に笑うなよ。

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プロローグ

消えてしまいたいと思う私へ。

忘れたくないから、また死にたいと思った時に見て欲しいから。これは私が自分のために記す物とします。 頭にこびりついて離れない記憶が、私にはあります。 ドラマで聞いたような電子音、嫌という程鼻につく薬品の匂い、柔軟剤が使われていないタオル、点滴が静かに滴る音。 祖母が、病院で息を引き取りました。私は信じられなかった。 私の中では強い存在であった祖母。癌にも負けずにきっとまた、笑いながら退院してくると思っていました。 点滴を打って、元気な声が聞こえてきたから安心したと祖父は言いました。転校の4日前のことでした。 選択制の食事のメニュー表に書かれた丸、相変わらずの達筆で色々と書き込まれたメモ。どれも祖母を感じさせるものでした。 最後に会ったのは、転校祝いにと食事を一緒にとったときでした。祖母が食べたのは海老と蟹。2貫でした。それでも美味しそうに、ゆっくりと食べていました。今思うと、きっと孫である私に心配をかけないため、なんとか頑張っていたのでしょう。食べ切るように。最後に抱きしめられたときを今でも覚えています。なぜなら、祖母は私たちを抱きしめることなんてしませんから。何かに私は気づいたんです。いや、悟ってしまっていたのかもしれません。認めたくありませんが。その2日後、祖母は入院しました。 祖母は優しい人でした。祖母が好きな花のように、強く、凛々しく、時には怒られることもありましたが、それでも私たちを思ってのことだったと思います。 祖母の身体を蝕んでゆく病は、私たちの願いとは反対方向を向いて、止まることを知りませんでした。何故、どうして、祖母だったのでしょう。まだ75歳という若い歳で何故亡くならなければならなかったのでしょう。 走った後に待つ、祖母の食事。海老といかの天ぷら。朝ごはんのふわふわの卵焼き。味噌汁。最後に作ってくれた朝食は、フレンチトースト。勘で作ったと言うのに、何故か今まで食べたフレンチトーストの中で1番美味しかったのをよく覚えています。 海で沢山遊びました。自転車の練習もしました。畑に一緒に行きました。料理も一緒にしました。お買い物も沢山しました。勉強も教えてもらいました。なんだって、祖母と一緒なら楽しかったんです。 今、何かが辛くて死にたいと思っていますね。 立ち止まってください。立ち止まりなさい。 祖母が大切に貴方を護ってくれているのに、貴方は祖母の元へと旅立とうとしています。 祖母はそんなこと、望んでいないのに。 再び祖母に会えたら、今まであったこと全てを土産話としてお話しましょう。 だからどうか。命を絶つのはおやめください。 祖母に私は元気でいましたと、 楽しく過ごしてきましたと、 極楽浄土で伝えましょう。 だから、頑張ってください。 負けないで。 祖母が亡くなったときの私より。

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