凪(なぎ)
3 件の小説独り言
人生、それは人によって感じ方が違うものである。 裕福な家庭に生まれた人の人生は、楽しいのだろうか? 貧しい家庭に生まれた人の人生は、つまらないのだろうか? 俺にはわからない。 俺は裕福でも、貧しくもない。 俺のような凡人の日常は、ただ起きて学校へ登校し、くだらない授業(はなし)を聞かされる。 そこで何かしらのことをして、なんとなく時間を潰す。 やれと言われたことをやればより時間が進む。それが最も早い時間の経過を感じる生き方だ。 反論しても意味はない。ただ面倒くさいことが増えるだけだ。 人間関係?そんなの虚無感しか生まれない。 社会?そんなのはクソだ。 老いた奴らが国や経済などを動かそうが、どうせ何も変わらない。 退屈は刺激すると一見姿を表す。 身をよじれば痛みが響く。 食事はおいしいと感じるし、自分の楽しみの一つに入っていた。 しかし、そんなものがあったとしても俺の退屈は変わらなかった もういっそ死んでしまいたい。 生まれてきたと言うのに何もないなんて意味がないじゃないか。 人生の意味とは何なのだろう 違うな、人生に意味なんかないんだ。 どうせ何にもできないのだ。 それは神とやらが一番わかっている。 つまりあいつらは俺ら期待なんかしちゃいない。 もういいや。 目立たないアパートの部屋で俺は意識を落とした。 ただ、それだけの独り言を言いたかっただけだ。
妖怪少女
「人間なんて大嫌い!!」 どうして…私はただみんなと仲良くなりたいだけなのに… 私の正体を知った人間は、みんな私から離れてゆく 私を嫌い、 私を軽蔑し、 私を差別し、 そして、私をいじめる。 仲良くなったあの子もこの子も…そして、みんな…私の敵だった。 もう、私の仲間と居場所はどこにもない。 私が人と妖怪の間に生まれた半人半妖だから。 生まれつき人間よりも優れた能力を持っていたから。 でも私は、その能力を人間のために使ったんだ。 困っている人を助けたり、人間の子に笑顔を与えたりもした。 それなのに、人間は私を気味悪がった。私を『バケモノ』扱いしたのだ。 常人の域を超えたことができる私は、もう彼らに友達だと思ってもらえない。 誰も私に優しく接しようとしないんだ。 「もう…いいよ…」 私にはもう、人間を信用することはできない。 「みんな…みんな!死んじゃえばいいのに!!!」 もう、どうでもよかった。 罵声だけが甲高く響くのだった。
青夏
高校3年生の夏。 受験勉強の時期で疲れていた僕は親友と息抜きに公園に来ていた。 小学生らしき子供たちが鬼ごっこをしているようだ。 「炎天下でよくあんなにはしゃげるよなぁ」 親友がつぶやいた。 確かに気温は30度以上ある。こんな日にはしゃいで熱中症になったりしたら笑えたもんじゃない。 「てかさっきから水の音が聞こえるんだが?」 友人がつぶやいた。確かに聞こえる。 ずいぶん前から音が響いていたからか僕には何も聞こえなかった。 音がなっている方に視線を送ると、閉め忘れた水飲み場の蛇口から日光にさらされた水が輝き溢れている。その光景は妙に懐かしい感じがした。 小さい頃、あの小学生たちみたいに僕もこんな炎天下の日にはしゃいだ記憶がある。 日差しが強く、少しうるさいと感じるアブラセミが鳴り止まないこの場所はまさに僕の知る夏だった。 「隼人、ちょっと蛇口閉めてくるよ。もったいないし」 「おう」 水飲み場に向かって足を運ぶ。 日向に出たと同時にスニーカーを履いていても感じる地面の熱が足に伝わってくる。 鼻で呼吸するとサウナに入っているかのような感覚だ。 蛇口の目の前で足を止め、それをひねる。 ピタリと止まった水の音は公園に沈黙を生んだ。 ベンチで親友がこっちを見ている。 「颯太ー!お前喉乾いてないかー?」 「今水止めたばっかりなのに何言ってるんだよ。こっち来て水飲めばいいだろうが」 「いやぁ、いまジュースの気分なんだよな。ってことで、奢ってくれ!」 苦笑いしながらこちらにジュースをねだってきている。 こういうところは昔から変わってないな。全く、世話が焼ける。 「しょうがないな。今度何か返せよ?」 「俺がお前の期待に応えられない時なんてあったかよ。楽しみにしとけ」 たかがジュース一本だ。期待しないでおこう。 交差点を横切る。日光によって熱せられたアスファルトが遠いところで反射している。 たしか擬水面現象って先生が言っていた気がする。 「そういえばお前なに飲みたい?」 「僕はいらない。余計に金を使わない主義だからな。」 「面白くねーなぁ、お前ってやつは」 「勝手に言ってろ。」 交差点を抜けた先に坂がある。その上に自販機が一つだけ設置されているのだが、控えめに言ってジュース一本のためにここを登るのはしんどい。 「もうちょいマシなところにおいてくんねーかなぁ。」 何気に初めてこいつと気が合った気がする。 「そうだね。でも他に自販機ないからな。」 「まぁ軽い運動と思って登ればいいっしょ。」 ポジティブだなぁ。まぁでも、俺もこいつのこういう一面で救われたことあるから否定はしない。 「...お前のそういうところ、嫌いじゃないよ。」 そうつぶやくと、そいつは顔色を変えて言った。 「何だお前急に...気持ち悪いやつだな..」 「ぶん殴っていいか?」 「やめろ。」 勇気を出して言ったつもりが、こいつごときに勇気を出した俺が馬鹿みたいだ。 ガランと、飲み物が落ちた音がした。 「いけね。落としちまった。」 手が滑った、というよりかは手に力が入っていないように見えた。 「お前大丈夫かよ。昨日ちゃんと寝たか?」 「寝たよ。ちゃんと。舐めんじゃねぇ」 「何時間?」 「0.5時間」 「30分だけじゃねぇかよ!何してたんだよ。あと0.5って、ややこしいわ。」 「アニメ見てた。」 …馬鹿だ。正真正銘の馬鹿だ。 受験勉強をせずに徹夜まで後一歩手前のところまでアニメを見てやがる。受験の時期なのに。 「お前なぁ、これじゃあ志望校どころか滑り止めすらも危ういぞ?」 本心からこいつのことを心配する。 「大丈夫大丈夫。無問題よ!俺は絶対受かる方法を知っているからよ」 「絶対受かる?ははっ。じゃあ教えてもらおうか?その方法とやらをな」 絶対受かる方法なんてあったらみんな使っている。そもそもそんな方法本当にあるのだろうか。 「その方法とは...颯太!受験の時、席隣になってくれ!」 目を見張った。まさかこいつ 「お前...カンニングするのか..?」 「当たり前じゃん。お前、俺がガチで自分の能力で大学入れると思ってんの?」 「正直微塵も思ってない。」 これは本当だ。こいつが大学に入ること自体危ういのは事実だ。 「お前までひどいじゃないか!」 「人の解答用紙見ようとしているやつなんかにいわれたくないね!おい待て、お前まさか俺と同じ大学選んだ理由って...カンニングするためだったりしないよな...?」 まさかとは思った。こいつがカンニングのためにわざわざ志望校を僕のと同じにするなんてありえないと。 だが現実は 「お前みたいな感の鋭いガキは嫌いだよ。」 図星だった。 信じていたのに、信頼していたのに。 あとガキじゃねぇし、お前と同い年だよ。 「...受験まで残り6ヶ月だ。今から猛勉強したらワンチャンあるかもしれないぞ」 「めんどい、やりたくない。」 「絶交な?」 「冗談です!やりますやります!何なら君のためにカンニング用紙を作ってあげましょうか!」 「いらねぇよ!そんなもん作る時間があるんだったら勉強しろ!」 「サー!イエッサー!つーか受験ごときに何ムキになってんだよお前は」 そんなくだらない会話が繰り広げられる。 僕はそんな時間が好きだった。仲のいい友人といつも通りのくだらない会話をし、青春を味わう。これが僕たち学生でしか味わえない幸せだと思う。 このいつも通りの日常が、ずっと続くと思っていたのに。 「はじめまして。颯太先輩」 聞いたことのない声が響いた。恐る恐る振り返るとそこには小柄な少女が立っていた。 「颯太、お前の知り合いか?」 「いや違う。僕も知らない。」 そう言うと彼女は少し悲しそうな顔をした。 「えっと、なんかごめんね。で、僕に何の用かな?」 彼女は少し悩んだ末、顔を赤くして僕にとんでもないことを言ってきた 「好きです!付き合ってください!」 硬直した。あれ?僕は今何を言われたんだ? 確か...付き合ってほしい ..?..ん?…僕と? 「えっとぉ、ごめんね、僕君のこと知らないんだよね。自己紹介してくれる?」 「あ!すみません!えーっと、私高校二年生の九条鈴音といいます!先輩に一目惚れしました!」 一目惚れとかいうのやめてくれ... 気づけば、親友が僕に向かって殺気をむき出しにしていた 「お前...いい度胸だな..?」 あーもうめんどくさいことになった。 僕は彼女の耳元へ行き 「おい!どういうつもりだよ!イタズラなのか?罰ゲームなのか?もうなんでもいいから誤解を解いてくれ!」 ギリギリ聞かれないほどの声量でそう言うと、彼女はぽかんとした表情を見せた。 こいつ...マジだったのかよ... 「罰ゲームとは失礼ですよ!私は自分の素直な気持ちを伝えているだけです!」 それがだめなんだよ... ふと隼人の方を見ると、もはや鬼も涙目になるほどおっかない顔をしていた... あぁ、サヨナラ。僕の人生...今まで楽しかったぜ。 と、変な妄想をする僕であった。