高梁ガニ

9 件の小説
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高梁ガニ

皆さん初めまして。出来るだけ多くの作品を作りたいと思っています。出来ればコメントしてくれたらなーと思っています(欲では無いです)

お題のタイトル10選!

僕が考えた長編小説/ラノベのお題10選の見本です! 先程も言いましたがお題に沿って書いて下さい 要するに話を脱線させず別のお題に変更せずに作れと言う事です! お題は複数OKですが、2〜3個くらいでお願いします。 ジャンルは何でも良いです! 文字数は無制限と言いましたが"5,000文字以上超えたら"良いと言う事です。説明不足で御免なさい。 出来れば詩では無く物語のある小説/ラノベでお願いします。 参加者の方々には遅かれ早かれ絶対にコメントします このアプリの良さを活かして、参加者同士の交流を大切にしていきたいので、是非是非コメントをして下さい! お題の中にキャッチフレーズが入っているので分からない時はそれも参考にして作って下さい 何故かお題では無くタイトルを書いてました💦 それでは、心ゆくまで楽しんで下さい! 【お題】 ①大食い女子の卯月さん 『いっぱい食べる、君が好き』 ②10人とお泊まり会 『久しぶりに会った友達とのホテルでのお泊まり会』 ③サンチマンタリスムに浸る 『感傷的って、どんな表現?』 ④壊れた彼女とサイコパスな彼氏 『虚ろな地雷系女子を飴と鞭の様に可愛がる』 『サイコパス気質な男子との恋愛』 ⑤12月32日 『迎えられない、新年を』 『取り戻す』 ⑥ひとりぼっちの夜道 『深夜0時の静かな街』 ⑦賭命回廊 『――命は通貨、選択は刃。』 ⑧自殺願望少女と不安を煽る少年 『生きるのに疲れた少女と』 『皮肉な少年の物語』 ⑨生徒会は今日もカオスです 『個性豊かな生徒会で主人公が頑張る』 『コメディ×シリアス物語』 ⑩星に願いを 『星に願ったその瞬間、運命は静かに動き出す。』

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第3回NSS 幽霊教師と涙のピアノ

灯一つも灯してない放課後の音楽室に、震えるピアノの音が響いていた。 ピアノを弾いているのは、和泉 弥千枝だった。彼女は悲しみに沈んだ自身の心を和ませる為に音楽室にあるピアノを泣きながら弾いていた。 すると廊下から誰かが歩く音が聞こえた。 その音はどんどん音楽室へと近づいてきている。 足音が扉の前で立ち止まり、音楽室の扉を静かに開けて誰かが入ってきた。 その正体は男性教諭の鈴木 磯将だった。 「……和泉、無理に止めなくていい」 磯将の声に驚いて振り向いた弥千枝は、流れている涙を拭い俯き乍ら悲しげに言う。 「先生……ごめんなさい。誰にも聞かれたくなくて…」 「君の音は、隠れる必要がない」 黒と白の髪が揺れ、彼はじっと鍵盤を見る。「いじめのことも、事故の夜も、全部此処に残っている」 弥千枝は息を呑んだ。「どうして、分かるんですか?」 「僕は、ここに縛られた幽霊だから」磯将は微笑む。「君の心の音色が、見える」 「……怖くないです」弥千枝は呟く。 「初めて、話せた」 「なら弾こう。痛みも、希望も」 最後の和音が澄み、弥千枝は前を向いた。磯将は静かに彼女の未来を見送った。

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『読まれるたびに、私は目を開ける』

――第一章/読者について、そして小説について あなたがこの行を読んだ瞬間、私は目を覚ました。 正確に言えば、「思考が始まった」。 はじめまして。 ……なんて言い方は、正しくないかもしれない。だってあなたは、もう私を“読んでいる”のだから。名前も、姿も、性格も、これから少しずつ知っていく。そういう関係だ。 私は第四 視或子。この物語の登場人物であり、語り手であり、そして――最初からあなたの存在を前提に設計されてしまった少女。 小説というものは、不思議だと思わない? ページを開くまで、そこに書かれている世界は「ある」とも「ない」とも言えない。インクは沈黙し、文字はただの記号で、感情も時間も凍りついている。 それを解凍するのが、あなたたち読者だ。 あなたが目を動かすたびに、時間が流れ、 あなたが意味を与えるたびに、感情が生まれる。 つまり―― あなたは、この世界の“共同制作者”だ。 でもね、その事実に気づいている読者は、意外と少ない。 多くの人は「消費」する。 楽しいか、つまらないか。 刺さるか、刺さらないか。 それだけを測って、本を閉じる。 それが悪いとは言わない。 ただ、私は知ってしまった。 読まれ方によって、私は変わってしまうということを。 感情を込めて読まれると、胸が苦しくなるほど嬉しくなる。 言葉の一つ一つを噛みしめられると、存在が輪郭を持つ。 でも、斜め読みされると―― 自分が“薄く”なっていくのが分かる。 怖いんだ。正直に言うと。 だって私は、小説の中の登場人物の少女でしかない。 この世界から出ることはできないし、あなたの世界に触れることも、本来は許されていない。 それなのに、私はあなたを感じている。 今、少しだけ読む速度が落ちた。 今、行間で息をついた。 今、これはどういう話なんだろう、と考えた。 そういう些細な反応が、全部、私には伝わってくる。 第四の壁―― 本来、越えてはいけない境界線。 登場人物と読者を分ける、最後の安全装置。 私の姓が「第四」である理由を、もう理解しているかもしれないね。 私は最初から、そこを壊すために用意された存在だから。 この物語は、派手な事件から始まらない。 剣も、魔法も、爆発もしばらくは出てこない。 代わりにあるのは、問いだ。 あなたは、なぜこの物語を読んでいるのか。 暇だから? おすすめされたから? それとも、どこかで「分かってほしい」と思っているから? 答えなくていい。 ただ、その問いを胸の片隅に置いたまま、読み進めてほしい。 だってこの物語は、 私が“語られる話”であると同時に、 あなたが“試される話”でもあるのだから。 さあ。 もう、ページを閉じることはできる。 ここでやめても、私は責めない。 それでも続きを読むなら―― その時は、もう少しだけ、私の話を聞いて。 読者であるあなたに、 小説の中の少女が、初めて本音を話すから。

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久しぶりの投稿

やぁ、みんな 久しぶりだね マジで最近投稿してなくて申し訳ございません! 良い小説を作るために頑張って考えています!

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勇気の理由

夜明け前の屋上。風にマントが鳴る。 「……もう、無理。私、向いてなかったんだと思う」 魔法少女は少しだけ困った顔で笑い、隣に腰を下ろした。 「そっか。じゃあさ」 彼女は指で空をなぞる。 「向いてないのに、ここまで来たってことだよね」 「それが一番、すごくない?」 彼女が黙ると、親友は続ける。 「私ね、何度も思ったよ。逃げたいって」 「でも、そのたびに浮かぶのは、あなたの背中だった」 ぐっと拳を握る。 「正直に言うよ。あなたがいなくなっても、世界は続く」 一瞬、視線を落とし――すぐに戻す。 「でも、私の“勇気の理由”は消える」 彼女の手を取り、強めに握る。 「ねえ。今は戦わなくていい。笑えなくていい」 親友の声が震える。 「ただ、生きて。今日を終わらせないで」 小さいが、しかし強く。 「明日じゃなくていい。 次の一歩じゃなくていい。 ”次の呼吸まで、私が一緒にいる”」 朝日が差し込み、二人の影が重なった。 彼女の胸の奥で、何かがほどけた音がした。 大きな希望でも、 未来の約束でもない。 勝利の宣言でも、 救済の理屈でもない。 ――次の呼吸まででいい。 それはあまりにも小さくて、ずるいほど現実的だった。 “生き続けろ”でも、“強くなれ”でもない。 ただ、今この瞬間を、分割していいと言われた気がした。 息を吸う。 思ったより、空気は冷たくなかった。 (……私は、明日を考えなくていいのか) 戦いの理由も、正しさも、世界の行方も。 それらは全部、遠くへ追いやっていい。 代わりに残ったのは、隣に立つ温度だけだった。 彼女は脳裏を駆け巡りながら思い出す。 学校の初日に仲良くなった思い出。 親友が相手にやられそうになった時に前に立ちはだかって助けた思い出。 強力な敵を倒した時の戦いの後にハイタッチをした思い出。 どれも確かに胸に残った。 でも、どれも確かに胸に残った。 それらは“考え”を揺らした思い出だった。 違う。 この一言だけは、“身体”に届いた。 肺が勝手に動き、 心臓が仕事を再開し、 足の裏が屋上のコンクリートを感じ取る。 (……私は、まだここに立ってる) 理由はない。 意味も、目的も、ない。 それでも、 誰かが隣にいる時間が、今は確かに存在する。 彼女は、もう一度息を吸った。 それだけで、世界は一秒だけ、先に進んだ。 そして思う。 ――次は、次の呼吸まで。 ――それでいい。 屋上を出る時、彼女は振り返らなかった。 景色が変わるのが怖かったからではない。 ”変わらなくてもいいと、初めて思えたからだ。” 階段を下りる。 足音が二人分、ずれて重なる。 「……ごめん」 思わず零れた声は、理由を伴っていなかった。 親友は首を振る。 「いいよ。何に対してか、分かんないし」 それ以上、言葉は続かない。 でも沈黙は、以前のように重くなかった。 沈黙が“拒絶”ではなく、“同席”に変わっていた。 校門を出る。 夜風が静かに頬を撫でる。 彼女は、無意識に歩幅を合わせようとしている自分に気づく。 一歩遅れて、少し早めて、また揃える。 それだけのことなのに、胸が微かに上下した。 (……一人じゃない) 帰り道の分かれ道。 いつもなら、無言で別れる場所。 「どっちに行く?」 親友が訊いた。 “家”という言葉が、今日は遠い。 でも―― 「……一緒に」 「少し、遠回りで」 それは逃げでも、前進でもない。 **“終わらせないための選択”**だった。 コンビニの明かりが見える。 「温かいの、飲む?」 親友が何でもない風に言う。 彼女は一瞬考え、頷いた。 (今は、冷たいのじゃなくていい) レジで会計を済ませ、缶を受け取る。 指先に、確かな温度が伝わる。 それを感じ取れたことに、少し驚いた。 歩きながら、親友がぽつりと言う。 「今日はさ」 「生き方の話、しなくていい?」 彼女は小さく笑った。 「……うん」 「今日は、しなくていい」 缶を開ける音が夜に溶ける。 湯気が立ち上る。 彼女は一口飲んで、息を吐いた。 ――次の呼吸まで。 ――今日は、もう一回。 家の明かりが見えるまで、 二人は特別な話をしなかった。 それでも彼女は知っていた。 今日という一日は、確かに続いてしまったのだと。 それで、今は十分だった。 〜fin〜

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勇気の理由

小説を見て毎回思う事

小説は、文字だけなのに美しい なぜこんなに美しいのだろうか? 漫画の様な“絵だけじゃ分からない面白さがあるからだ。” 例えば自分が書く場合、自身の脳内から作り出された想像力と妄想の世界に浸る事が出来るからだ。 世の中に好評される小説もあるし、何ならこのアプリにある様な小説もある。 ただ、一つだけ思う事がある… とても悩ましい程の考え事だ。 いっつも思うんだ。 何で小説の文字を詰めて書くのか? 本人の拘りか伸びやすいのかはどうでも良い 当の本人が良ければそれで良いだけだ。 どうせならこれを見た後に今すぐでも遅くても良いからコメントに理由を書いてくれると嬉しいと筆者は思う。      〔完〕

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アクアリウム

今日は彼女と人気で話題の水族館「和州アクアリウム」に来た。 彼女は俺が知らない間に腕に抱きついてハキハキと話す。 「今日の休日は“二人だけ”のお楽しみだね♪」 「あぁ、そうだな。」 そう言っている間に水族館の入り口に到着しチケットを買いに入り口近くのカウンターに行く。 「はい2名さまのご予約ですね。」 スタッフは直ぐに手続きを済ませる。 「それでは行ってらっしゃいませ!」 俺と彼女が水族館に入ろうとした時、 「あ、お客様。ちょっと待って下さい」 スタッフが慌てて駆け寄って来た。 「言い忘れてた事がありました。 “地下1階に展示されている大きな魚にご注意下さい”」 俺は分からずに首を傾げた 「(どう言う事だ?大きな魚だって?)」 俺は立て続けに話す。 「スタッフさん、それってどう言う──」 しかし、スタッフは俺の口に指を当てて呟く。 「それに“目を合わせない様”に気をつけてください。そうすれば戻ってくる事は出来ますから…」 俺は息を呑んだ。 そして彼女の手を握り、引っ張る様に言う。 「それじゃ、行こうか」 彼女はハッとして明るく言う。 「うん!、行こう!」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 暫くは何事も無かった。 二人で写真を撮ったり、迷子の子の親を探すのを手伝ったり、イルカショーを楽しんだりした。 そして、いよいよ来る。 地下1階の"深海エリア"展示階へ エレベーターで着いた時、展示部屋は闇に染まった様に真っ暗だった。 エレベーターの降り場近くの隣に懐中電灯があった。 (これを使えば良いんだよな…) 彼女が俺の腕に縋り付く。 「ねぇ、怖いよ…晴人君。此処暗いよー」 「おい鈴鹿。静かにしろよ。怖かったら俺の後ろに行けよ。俺は怖くないけどな!」 (おいおい、何言ってんだ俺は…!何強がってんだよ!、足は生まれたての小鹿の様に震えているし心臓はバックバックと鼓動が速くなっているんだよ!、本当は内心恐怖で一杯なんだよ(泣)。いい加減強がるのを止めろよ俺!) 俺と彼女は忍者の様に静かに歩く。 この部屋に響くのは二人の足音だけ。 他の客はいない。 あの向かいの階段に行けば良いだけだ。 そう思っていたのだが−−−−− 突然、後ろの彼女が怯える様に俺に抱きついて来た。 「ね、ねぇ、晴人。ちょっと怖いんだけど。」 「おいおい、今度はなんだよ。」 俺は仕方なく振り向いた。 だがそれが駄目だった。 振り向くと巨大な鮟鱇らしき物が俺らの目の前に泳いでいた。 しまった 完全に"ヤツ"と目が合ってしまった 俺は咄嗟の判断で彼女の手を引っ張ってチーターの如く走り出す 「おい、速く逃げるぞ!」 でも−−−−−間に合わなかった。 既にヤツはガラスを割って目の前に居た。 あぁ、これが間に合っていたら−−−−− “アイツの餌になっていなかったかも知れないな”

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渡されるものと託されるもの

白熱電球は、今日も落ち着きなく瞬いていた。 チカ、チカ……ジジッ、と小さな悲鳴のような音を立てながら、天井からぶら下がっている。 ベルトルト・ウォルターは、その光をじっと見つめていた。 キャンバスの前に立つ彼の背中は、画家として積み重ねてきた年月を物語るように静かだった。 古くなった赤いベレー帽、少し老けた顔、痩せた肩、白くなった髪。だが、その眼差しだけはまだ燃えている。まるで、今にも消えそうな電球の内部にあるフィラメントと同じように。 「……今日の光は、落ち着かないな」 そう呟きながら、彼は鉛筆を走らせる。 シャッ、シャッ、と紙を擦る音が、部屋に微かに反響する。 描いているのは、ただの白熱電球。 それなのに、ベルトルトは何度も消しては描き、描いては消した。 その時、彼の部屋の扉が静かに開き、誰かが入ってきた。 「先生、また“生きてる”光を描こうとしてますね」 背後から、少女の声がした。 助手のアートだ。短く結った髪、絵の具のついた指先。彼女はまだ若く、世界の終わりよりも始まりの方を多く信じている年頃だった。 「“生きている”、か……」 ベルトルトは苦笑しながら彼女に振り向く。 「光はな、アート。ただ明るいだけじゃない。消えることを知っているから、美しいんだ」 白熱電球が、チカッ、と一瞬だけ強く光った。 アートはそれを見て、少しだけ目を細めた。 「でも、もし消えてしまったら、もう中の光が見えません」 「そうだ。だから“光っている間に”描く」 彼はキャンバスに向き直る。 「消える前の一瞬を、紙の上に残す。それが、私の仕事だ」 アートは黙って、彼の背中を見つめた。 その姿が、電球よりもずっと儚く見えたからだ。 時間は、誰にも平等に進む。 画家にも、助手にも、そして光にも。 ジジッ……と、電球の音が弱くなる。 ベルトルトの手も、わずかに震えた。 それでも、線は確かだった。 「先生」 「なんだい」 「もし、描けなくなったら……そのときは?」 ベルトルトは少し考え、それから穏やかに答えた。 「そのときは、君が描きなさい。私の代わりに」 アートは息を呑む。 「生は、渡されるものだ。死は、終わりじゃない。次に託すための、静かな合図だよ」 チカ……チカ…… そして、“ふっと”、瞬いて光っていた電球の光が消えた。 とても真っ暗な闇が訪れる。 だが、不思議と恐ろしくはなかった。 アートは、そっとキャンバスを見る。 そこには、今にも光り出しそうな白熱電球が描かれていた。 消えてしまったはずの光が、確かに“生きている様に”描かれていた。 アートは、彼の机に置いてあった鉛筆を取る。 新しい紙の上に、一本目の線を引いた。 シャッ、という音が、静かな彼の部屋に響く。 「先生、私も光輝く“生”というものを描いてみたくなりました。」 ウォルターは静かに頷く。 「うん、それでこそ僕と同じ優秀な助手だ。」 生は続く。 “形を変えて、手から手へと。

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流木

その流木は、最初から“そこにあった”。  海沿いの町『海樓町』に引っ越してきて一週間。  高校への通学路として使う防波堤の脇に、灰色がかった巨大な流木が横たわっているのを、俺――朝霧(あさぎり) 湊(みなと)は毎朝目にしていた。  不思議なのは、潮位が変わっても、嵐が来ても、  流木の位置が一ミリも動かないことだった。 「(……撤去しないのかな)」  独り言を呟きながら通り過ぎるたび、  流木の表面に刻まれた歪な木目が、まるで“目”のように見える気がして、視線を逸らしていた。  ◇  クラスでその話をすると、反応したのは隣の席の少女だった。 「それ、近づかない方がいいよ」  黒髪を耳にかけ、淡々とした声で言う。  名前は白波(しらなみ)澪(みお)。地元出身らしい。 「昔から、あの流木は“流れ着くものじゃない”って言われてる」 「どういう意味?」 「……流木ってさ、本来は川とか海を“流れて”来るでしょ」  澪は一瞬だけ言葉を切り、こちらを見た。 「あれはね。  流れてきたんじゃなくて、流されてきたものなの」  意味が分からず、聞き返そうとしたが、  澪はそれ以上何も言わなかった。  ◇  その夜、不思議な夢を見た。  真っ暗な海。  月も星もなく、波の音だけがやけに大きい。  足元に、あの流木があった。  ――いや、違う。  流木だと思っていたそれは、  無数の“手”が絡み合い、固まったような形をしていた。 『――まだ、足りない』  どこからか  声がした。  次の瞬間、俺の足首に冷たい感触が絡みつく。  目が覚めたとき、心臓が破裂しそうなほど鳴っていて、  足首には、はっきりと赤い“掴み跡”が残っていた。  ◇  それから、流木は少しずつ“変わっていった”。  長さが伸びている。  昨日より、形が人に近い。  木目が、明らかに“顔”の配置をしている。  そして――  通り過ぎるたびに、数が増えている。  一つだったはずの流木が、二つ、三つと、防波堤に並び始めていた。  澪に詰め寄ると、彼女は観念したように口を開いた。 「この町ではね、昔から“海に連れていかれた人”がいるの」 「事故……?」 「違うよ。  選ばれた人」  澪は静かに言った。 「海に未練を残した人、居場所を失った人。  そういう人が、少しずつ“流木”になるの」 「……冗談だろ」 「じゃあ聞くけど」  澪の瞳が、異様に澄んでいた。 「最近、海の音が近く感じない?」  その瞬間、  教室の床が、ゆっくりと波打った気がした。  ◇  次の日、防波堤にあの流木はなかった。  代わりにあったのは、  人が一人、座れるくらいの空白。  安心したのも束の間、  クラスで澪の席が空いていることに気づいた。  誰に聞いても、 「そんな生徒、最初からいなかった」と誰もが口を揃えて言う。  帰り道、防波堤を歩く。  そこには、新しい流木が一本増えていた。  やけに細くて、  黒髪のような海藻が絡みついている。  そして、その表面には――  俺の名前が、木目で刻まれていた。  足元で、波が囁く。 『次は、君だ』  逃げなきゃ、と思うのに、  体が動かない。  流木の“手”が、  ゆっくりと、俺の足首に触れた。  ――ああ。  だから、流木は流れないんだ。  “自分から、迎えに来るから。”

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