杜
40 件の小説最高の物語
小説を書くのが得意な彼に教えて貰った小説の書き方。 もう意味はない。 君が褒めてくれるから君に読んで欲しかったから書いていたのに。 ーーやっぱり私は君に会いたい。 君が驚くぐらいに、私のこの胸の中にある想いを君に伝えたい。 君がこの小説を読むことはないけれど、もし君がこれを読んでくれるなら、この小説に書いた想いを全て君に伝えよう。 もし君がこの小説を読んでくれたら私は嬉しい。 ――本当に嬉しい。 いや、違うな。 本当に言いたいのはそんな簡単な言葉じゃない。 この言葉は、私が君に贈る大切な言葉なんだ。 この小説の題名は君がくれた言葉そのままだ。 それは紛れもない事実だ。 そして君がいなくなったのも紛れもない事実だ。
寸前
君が羨ましい。 どうしたら君みたいになれる? どうしたら僕は救われる。 涼しげに笑う君にそう問いかけた。 「そんなの簡単だよ。僕の方においで」 「大丈夫、もう大丈夫だよ」 君の手を掴んでいいのか。 どうして、どうして僕は悩んでいるんだ。 ――! 懐かしく、暖かい声に呼ばれた気がした。 ふと我に帰ると僕は、学校の屋上の上に立っていた。
いつかのあいつ
いつかのあいつに彼女ができたらしい。 今度は上手くいってるのかな。 いつかのあいつが結婚するらしい。 別に興味はないけどさ。 いつかのあいつからメッセージが来たっぽいんだけど、なんでか 怖くて読めそうにない。 いつかのあいつから結婚式の招待状が届いたみたいなんだけど。 行きたくないな。 いつかのあいつには、最後まで振り向いてはもらえなかった みたい。 いつかのあいつに子供ができたらしい。 「子供の名前、お前から一文字取っていいか」そのメッセージに 未だ、既読をつけれずにいる。
枯れた花
俺は彼女に惹かれていた。 物静かで、真っ直ぐで、そんな彼女が俺は大好きだった。 彼女の残り香が俺の頬をそっと撫でる。 「……」 俺はしばらく、その場から動くことができなかった。 それから彼女は1ヶ月後に亡くなった。 病気だったそうだ。 俺は葬式に参列した。 棺に入った彼女は、花で埋め尽くされていた。 眠っているように安らかな彼女の表情を見て俺はそっと涙をこぼした。 俺の初恋はこうして幕を閉じた。
あの時の約束
ねぇ、覚えてる? あの時話した会話の内容、二人で行こうと約束したあの南の小さな島。 私は今でも覚えてるよ。 確かに楽しかったあの時が、ずっと頭から離れないんだ。 次の恋なんて到底できそうにないんだ。 ねぇ、覚えてる? あの日歌った恋の歌、私たちが初めて出会った場所。 もう忘れてもいいよね。 だってもう、あなたは居ないんだから。 ばいばい。好きだった人。
大切な君へ
泣かないで大切な人。 君が傷つかないように。これ以上苦しまないように。星に祈ろう。大丈夫、私は君の味方だよ。 君を苦しめる全てから君を守ろう。 君の明日が幸せな日でありますように。 君の未来が幸せな日でありますように。 願いはそれだけ。ただそれだけだ。 君が幸せでいてくれるだけでいい。 運命は残酷だ。 どうしようもなく理不尽だ。 私の大切な人を奪おうとするなら、私は神にすら弓を引くだろう。 君を守れるほど強くなると誓おう。 だから大丈夫。君は一人じゃない。
明けない夜
明けない夜はないのだと、微笑む君が消えたあの日から。 世界は1秒ずつ緩やかに死に続けている。 君がいない世界なんていらない、と叫んだ僕の願いを笑うように。 そして世界はまた回り続ける。 まるで君がここに居た事など一瞬も存在しなかったかのように。 月は沈み、陽は昇る。 しかし君だけがいない。 ずっと、ずっと、独りきりでここに佇んでいる。 誰も君の歌を知らない。誰も君を愛さない。 こんな世界で何を望むと言うのだろう。 「もういいよ、もう休んでいいんだよ」 そう誰かが呟く。 そんな言葉に耳を貸すことなく君は歌い続ける。 明けない夜はないと。
孤独を埋める夜明け
東の空に地平から顔を出した太陽が眩い光を放っている。 その光は、背高いビル四階の一室を強く照らしていた。 真っ白い壁紙がさらに白く輝いている。 マシュマロのように柔らかい布団の上で、一人眠る少年がいた。 一人、孤独に夜が明けるのを待っていた。 しかし、いくら待とうと少年に朝はやってこない。 白いカーテンが風をはらんで大きく膨らんだ。 そこから、冷たい空気が流れ込み、少年の頬を撫でる。 「まだ寝てるの? お寝坊さん」 優しく、包み込むような少女の声。 少年はゆっくりと目を開けた。 少年の孤独は、優しい声と共に消えていった。
もう一回をこの先も
「愛してる」 「もう一回」 最近、彼女との間で流行ってるゲーム。愛してるゲーム。 まず、片方が愛してるって言い、それで、照れた方が負け。 何回目かの愛してるを言った後、俺たちはクスクスと笑い合った。 俺が彼女の頭を抱くようにすると、彼女は俺の胸に顔を埋める。 髪を撫でると、くすぐったいのか彼女が身を捩る。 つい悪戯心で髪をわしゃわしゃしてみたら、彼女が起き上がろうとするから慌てて押さえ込む。 しばらくの攻防の後、ようやく彼女を押さえ込んで、大人しくさせることに成功した俺は、勝ち誇った笑みを浮かべる。 すると、彼女も微笑を浮かべるから何だかとても嬉しくなった。 さらさらの髪が愛おしい、柔らかい頬が愛々しい。 細い目が綺麗で、笑い声がくすぐったい。 笑った時の顔が、君の発する言葉ひとつひとつが俺を沼へと落としてゆく。 この幸せが永遠に続いていくことを心から願うばかりだ。
碧楽の空が泣く頃に
大粒の雨が地面をたたく。 涙雨だ。 辺りには人影一つない。 墓の前で立ち尽くし、ずぶ濡れになった彼は、まるで赦しを乞うように。 固く両の手を組んでいた。 ずっと、長い間そうしてた気がする。 涙は枯れ、時間など、もう分からない。 ただ、君が眠る墓の前で赦しを乞うだけ。 「どうか、赦しておくれ。君を一人で天国に行かせてしまった私を」 そう呟き、彼は目を瞑った。 その瞼の裏には、二人の思い出が、色鮮やかに浮かんでいた。