すずむらしゅう
3 件の小説ドッペルゲンガー
またひとつ。僕は罪を重ねた。 ドッペルゲンガー。自分がそれを見ると死んでしまう。そんな逸話は腐るほどある。 基本的に僕はそんな迷信に耳を貸すことはない。逆に大学生にもなってそんな事を信じる方が馬鹿らしい。 〜♪ LINEの通知音だ。見るとそれは彼女からだった。 「ただいま〜!今日早番だったから早めに帰れた〜!」 そんな事を言われた僕は今彼女とは別の女の子と1対1で酒を飲んでいる。 もちろん。彼女には何も言っていない。一緒に飲んでいる女の子は大学に入ってから仲良くなり様々相談にのっていた。 僕はそれほど「女性」として意識していなかった。 ただ−それが悪かった。 2〜3軒飲み屋をハシゴして 「ねぇ。墓場まで持っていける?」 尋ねられた。 一応僕も大人だ。何を問われているかは想像がつく。 白々しく「なんのこと?」と聞き返すと 「今だから言えるけど、ずっとあなたの事が好きだったんだ」 僕に彼女がいることはもちろん知っている。ただ、僕から見ると女性というのは恐ろしいもので、御構い無しといった感じだった。 「ありがとう。でもどうしたらいいか分からない」 夜道を歩いていた刹那。僕の唇は奪われていた。その時は2月の寒い時期だったが、僕の身体はあたたかかった。 −分かりきっていたことなのに いけないことというのは、とうに俺の頭では分かっていた。分かっていたはずなのに。 俺は事をすませてしまった。何をしているんだろう。この間も彼女は俺の事を待っているのに。 俺はこの出来事を墓場まで持っていく。いまだに誰にも話していない。 この時、俺は思い出した。 「ドッペルゲンガー」 これに出会ったらその人間は死んでしまう。と。 確かにそうなんだろうなと納得した。今までの「僕」は死んだ。これからは罪を背負った「俺」として生きていくことになる。 許してもらえるとも毛頭思っていない。これから生涯、十字架を背負っていくことになるのだろう。 −さようなら。僕。
井の中の蛙大海を知らず
僕には彼女がいる。名前は真希。同い年だけど、僕は大学4年生。彼女は社会人2年目。 僕にはたっぷりと時間があるが、彼女はそうじゃない。 幸い、お互いにずっと電話をしていたいタイプではないし、連絡が返ってくるのが遅くてもそこまで気にしない。 でも、デートするとなればどこ行くか、なにするか、その日を楽しむのか、愛を表現するのか。いわゆるカップル然とした事は当然する。 この話を友人にすると 「いいなー。マジ理想的な付き合い方だと思うわ。」 「えー!素敵な関係だね。」 およそこんな反応が返ってくる。概ね、僕もそう思うが、もう僕も社会人まであと数ヶ月だ。 そんな折、大学の同級生の莉奈に「どうしても聞いて欲しい話があるんだけどいい?」 そんなテンションで言われたら聞くしかないじゃんか。 「彼氏と別れちゃった。」 マジかよ。莉奈の彼氏さんは、年齢で言うとひとつ上、僕が大学に入る前からお世話になっている人だった。 僕が見る限り、彼はとても優しくて、友人のコミュニティも大切にするすごくいい人だった。概ね、僕が見えているものと莉奈から見えているものに相違はなかった。 「でもね。」 あまりに重いトーンだった。聞くに、バランスが悪かったようだ。 「友人と話す時はすごく楽しそうけど、で も私と話す時はあまり感情が動いている ようには見えなかった。」 ひとつ嫌なところが見えてしまったら、積み木が崩れるように、他の嫌なところも見えてくる。それが人間という生き物だ。 結局積もり積もって別れてしまったらしい。その中で、他人事とは思えない事柄があった。 「将来の事を考えてるか曖昧だった。」 これを聞いた時から、僕の中にモヤが生まれた。イギリスの劇作家シェイクスピアは 「恋は盲目」という名言を残した。良くも悪くもこの言葉は作用する。僕は、自分がこれまで盲目であったかが分からなくなってしまった。 自分では将来の事も、人生の展望も考えている「つもり」だった。しかし、本当にそうだろうか。それはあくまで僕のエゴではないだろうか。 不安に苛まれた。数日考えた。正解ってなんだ?何をすればいいんだ? 分からない。でも。どうしたら。 あれから少し時間が経った。最近は仕事も始まり、忙しい毎日を過ごしている。 一人暮らしで家に帰れば疲れて寝てしまう。娯楽という娯楽も特にない。 なぁ。数ヶ月前の僕に聞きたい。本当にあれで良かったのか? あの時、真希が流した涙を、僕はしばらく忘れられないだろう。 今思えば、僕は蛙だった。井戸の中にいてその井戸しか知らない。でも僕には真希以外に見えていたものがある。 それは、あの空の青さだった。 おわり
Bとb【BL】
※この物語に登場する人物や団体は、フィクションです。 ※この物語は、BLを題材にしております。読まれる際は、ご注意ください。 「Bとb」 −あの時。僕はBになりきれなかったbだった。 それはあまりにも唐突だった。まだ夏が去りきらない8月の下旬。大学1年だった僕は、高校から付き合っていた彼女と別れた。 「もう私たち終わりにしよ。」 温度の低い言葉が僕を通り抜けた。もうなんでこんな事になったのかも分からない。 ただひとつだけ理解できたのは「優しさ」と「我慢する」ことは必ずしもイコールではないということ。 声にならない声を絞り出し、僕は 「わかった。さようなら。今までありがと う」 じゃあね。そう言った背中を眺めていた。見慣れた後ろ姿。駅の構内。僕はただ立ち尽くすしかできなかった。 もはや悲しい、寂しいという感情すら湧かなかった。文字どうり抜け殻、伽藍堂になった自分を笑いながら帰った。夕焼けが街を照らしているが、どうも今日は肌寒かった。 気がつけば、あれから数ヶ月が経っていた。僕は大学生活に追われていた。大学の1年といえば、単位の書き入れ時で、なんとか1単位も落とさず2年を迎えることができた。 大学にも慣れ、ある程度趣味の時間も作れるようになり数ヶ月。 僕は出会ってしまった。 僕の趣味といえば、推しの歌い手の追っかけだ。ちょっと聞こえが悪いけど。 まぁ良く言えば「ファン」そんな「推し活」をする中で、出会ったのがひとつ年上の「優希」だった。出会った場所はTwitter。 2人が共通で推している歌い手が同じ人だったことから一気に仲良くなった。優希は中性的な声で、身長も164cmと男性にしては小柄「らしい。」ネットを介してできた友人は中々顔や身体を相手に見せる事はしない。だから、優希に聞いた話でしか分からなかった。その歌い手を推しているファンの中で、男性は珍しかった。そうなれば勝手に輪が広がっていく。 そして何人かとつるむ様になり、推しについての電話や果てにはゲームを一緒にする仲になっていった。 「ねぇ!みんな関東住みだからさ、時間見 つけて会わない?」 誰が言い始めたんだろう。今となってはもう確認する方法はない。 そんな話が出るくらいだ。同年代の同性が集まってることもあり、既に「ネッ友」の範疇は越えて、普通の友達になっていた。 そこから何日かして、いざ会う日になり 待ち合わせの場所には1番乗りだった。 「もしかして…シュウさん…?」 聞きなれた声だが、チグハグなトーンで僕の本名を呼ばれた。振り返るとそこには優希がいた。 「優希…さん?」 優希の顔が晴れた。 「よかった…!間違えてたらどうしようかと思った...」 僕が思い描いていた優希そのものがそこにいた。 身長は164cmくら…いか?もっと小さく見える。僕が180cmくらいだから…まぁ細かいことはいいや。かわいらしいモード系の服、暗めの茶髪でウルフカット。 思わず漏れた。 「かわい…」 紛れもなく本心だった。まずい。隠していたのに。今まで誰にも自分がLGBTQのBにあたる人間だとは言っていなかった。 「…え?」 しかるべきとも言える反応が優希から帰ってきた。 「あ……ごめん!つい...」 誤魔化したつもりだった。 「いや…嬉しくて…」 え?心の中でそう思ったのも束の間 「おーい!こっちこっち!」 向こうから声が聞こえた。どうやら他の友人は既に合流していたらしい。 そこからカラオケに行き、推しの歌を歌いに歌いまくった。みんな成人済みだったこともあり、ほぼカラオケパーティーの様相を呈していた。 あまり威張ることではないが、僕はお酒に強い。隣には顔を赤らめた優希がいた。あんまり飲んでなかったのに。事実、優希はお酒が弱い。そんなことも梅雨知らず、僕はデュエット曲を入れた。その場の流れで優希と歌う事になった。 この曲は、いわゆる恋愛ソングで、なんの気無しにデンモクに入れた。 歌詞に「肩を寄せて」という部分があるのだが、お酒が入っている事もあり、実際に肩を寄せて歌った。 歌い終わっても、優希はなにかそわそわしている様な、でもかわいいからいいや、と思っている僕がいた。 奇しくも、僕と優希は同じ方向の電車に乗って行くらしい。 いわゆる帰宅ラッシュの時間からは少し外したので電車は空いていた。まだらに埋まっている席から、2人で掛けられそうなところに座った。 「今日は楽しかったね!」 「うん...」 浮かない様子だ。もしかしてあまり楽しくなかったのか...?無理もない。ほかは酔っ払いばかりだった。 「ごめんね。いっぱいお酒飲んじゃって...。」 「...いいの」 いいの?正直予想外の反応だった。想定してた反応は「うん」とかそういうものだった。そんな事を思っていたら優希が思いもよらない事を口に出した。 「あの時肩を掴んでくれたよね?」 力が強かったかと思い 「...あぁ!痛かった...?」 「違うの。嬉しかったの。」 今更だが、もちろん僕はBであるが、同時にゴリッゴリの腐男子だ。よからぬ妄想が頭を駆け回った。 「シュウくんに触られた時なんか照れちゃ って」 マジかよ。まじか。まじ?いや落ち着け。ダメだ言葉が出てこない。 「−次は〜...」 電車のアナウンスも聞こえない。もう僕の目には優希しか映っていなかった。 「あ…降りなくちゃ…」 そこで優希とは離れてしまった。 「またね…」 「またね…」 僕と優希どちらがそう発するのが早かっただろうか。 あとがき ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。 初めて小説(?)というものを書いてみました。読んで頂いて分かるかと思うのですが、これはまだ完結していません。 ひとまず、ここまで書きたかったので書いてみました。 もし続きが気になるという方がいたら書いてみようと思います。 すずむらしゅう