だいこん

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だいこん

イチョウの木

校舎裏には大きなイチョウの木が生っている。 私は休み時間になると必ずイチョウの木の下で本を読む。 毎日のように木の元に行き、学校での出来事、小さい頃の記憶などを語ったりもした。 ある日、イチョウの木の所へ行くと見たことのない同い年くらいの男の子が座って地面に落ちているイチョウを集めていた。 「何してるの?」 本を両手で抱えながら男の子に声をかけるとびっくりした顔でこちらを見つめる。 「…イチョウを集めてるんだ」 手の中いっぱいのイチョウを見せてくれて、私も隣に腰を下ろし、イチョウを集めるのを手伝った。 「君、いつもここに来るよね」 その言葉に見られてたのかなと恥ずかしさが出てくる。 葉っぱを拾う男の子の首からイチョウの木のネックレスがチラリと見えた。 「う、うん。教室が騒がしいからいつも静かなここで本を読んでるの」 この日からイチョウの木へ行くと男の子が私を待っているかのように立っている日が当たり前になり、色んな話をする仲になった。 今日もイチョウの木の所へ行くと男の子が木を見上げ悲しそうな顔をしていた。 私の存在に気づいたのか悲し笑で近づいてきて、手いっぱいに持っているイチョウの葉の中から綺麗なのを2つ私に渡した。 「いつものお礼」 男の子はそれだけ言い残すと校庭の方へ消えていった。 それから1週間後。イチョウの木は中が腐っていたので切られてしまった。 その日からあの男の子にも会わなくなり、私は悲しい気持ちでイチョウの木所へ行くと切られた木の上にイチョウの葉がいっぱい乗せてあった。 その中にも見覚えのあるネックレスが置いてあり、私の心は締め付けられるように苦しくなった。 何十年も経った今もあの男の子から貰ったイチョウの葉をお守りにし、大切にしまってある。

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イチョウの木