Rou
8 件の小説質問で自己紹介✨
どうもです!Rouです 今回初めて自己紹介をします♪ ぜひ、一人でも多くの方に見てもらえたら嬉しいです!! 🏎️💨 それでは〜、スタート!!! 🚙💨 ① ノベリー始めてどれくらい? 今日でちょうど1週間が経ちました! 3日坊主の私がこんなに続けられていることに驚きです。(笑) ② ノベリーを始めたきっかけ 日々の中で感じるたくさんの感覚や気持ちを大切にしたくて始めました。 また、自分と向き合う時間があまり取れていなかったのでそろそろきちんと、自分と向き合いたいなぁと思い、始めさせていただきました。 ③ 読むジャンル ファンタジー、恋愛、ミステリー、ノンフィクション、フィクション、型にとらわれず、いろんなジャンルを読むのが好きです✨ その時の気分で読み物を選ぶのが私にとって読書をする時の楽しみなのです♪ ④ 苦手なジャンル ホラーや、専門用語が使われている小難しい小説や映画🎬は苦手です…😅 でも、怖さを楽しめるようになったり、分からないことを調べて、苦戦しながら読み進めていくのも楽しそうですよね✨何事も対策が必要不可欠なのだと思います♪ ⑤ 君くジャンル 私は、ノンフィクション、哲学系が多いかと思います。 ですが、本当に成り行きなので、恋愛系、ミステリー系、などなど、気になったジャンルがあればその時に書いています! ⑥ 名前の由来は? 名前はRouなのですが…、適当に付けたものです!(笑) 不意に頭に降りてきたのがこの子でした♪ ⑦ 活動場所 ノーベリーonlyデ、カツドウシテイマッス! ⑧ アイコンについて トトロです! なんか、トトロってなんの生き物なんですかね?(笑) Googleパイセンによると、トトロは架空の生き物で、ミミズク・フクロウ: 丸い目や胸の模様。 タヌキ: ぽっちゃりした体型やユーモラスな雰囲気。 クマ: 巨大な体と大きな爪。がモチーフ って出てきました(笑) いや、ありすぎだろ! 私もそんな不思議な生命体になりたいです(笑) ⑨ 今後の活動目標 書きたい時に書いて、読みたい時に皆んなの小説を読む!!です! 私は自由気ままな性格なので、このくらいが最高 に最高なのです♪😆 ❤︎ ┈┈┈┈┈ ❤︎ ⑩ ノベリーの好きなところ 私、最近思ったことがあるのですが、 このアプリのユーザーさん、優しい人が多い気がします…!!✨ もおぅ!すてき!!ってなっちゃいましたよ😂 これからもよろしくお願いします! ❤︎ ┈┈┈┈┈ ❤︎ *最後に* これからも投稿したい時に投稿するので、暇な時に来ていただけると嬉しいです! 主は幸せを感じると目から滝が流れます🥹 以上になります! 最後まで見てくれた君に幸あれ〜🍀 それでは、さらば!🥷
わたくしごと
今日の朝、なんとなく起きて、 なんとなく支度をして、 なんとなくバスに乗った。 バス停には珍しく、バスが何台も並んでいた。 どれに乗ればいいのか分からず、あたふたしていると——。 「嬢ちゃん、39番のバスに乗りな」 声をかけてきたのは、見覚えのある運転手さんだった。 「あっ」 私は思わず、グッドポーズとお辞儀をプレゼントして、39番のバスへ乗り込む。 すると、乗った先の運転席に、さっきの運転士さんが乗り込んできた。 「嬢ちゃん、元気かい?」 「え?は、はい!元気です!」 「そうかい、」 「今日も頑張んな!」 「はい…!🥹」 そんな会話を交わしながら、運転手さんは前を向いた。 「右よし、左よし——発車します。」 運転手さんの声から、1日のスタートが切り出される。 今までは挨拶しか交わしたことのない人。 名前も知らない人。 なのに、こんなふうに言葉を交わせる日が来るなんて… なんだか、すごく嬉しかった。 今日も頑張ろう。 そう思えた出来事だった。 また、あの運転手さんに会えたらいいな✨
普通な人
私は普通の人になりたい。 勉強も、スポーツも、人間関係も、話し方も、歩き方も、全部。 でも、「普通」って人によって違う。 だから私は、みんなが思う普通を全部兼ね備えた人になりたいと思った。 だけど、そうしようとすると、いろんな癖が出てくる。 癖が出るということは、自分らしさが出るということなのかもしれない。 そして、自分らしさが出るなら、それはもう私の思う「普通」ではなくなってしまう。 じゃあ私は、一生普通の人にはなれないのかな。 私が普通になれないなら、他の人もなれないのかな。 いつか、自分の個性がなくなれば、普通の人になれる日が来るのかな。 もし個性がないことが普通だというのなら、その人生はどれほどつまらないものなのだろう。
言葉になれなかった言葉
言葉はいつも、そこにある。 まるで私たちに拾われるのを待っているみたいに。 けれど、いざ手を伸ばせば、その輪郭は指の隙間から溶けて消えてしまう。 離れて見れば、自分が何を言いたいのか、何を感じているのか分かるのに、いざ言葉にしようとすると途端に分からなくなる。 私は文章を書くのが好きだ。得意でもある。けれど、実際に人と話す時は、何を伝えればいいのか、どう話せばいいのか分からなくなる。 なんでなんだろう。 まだ自分の言葉の拾い方を知らないだけなのか。 それとも、私の言葉はまだ育ちきっていないからなのか。 でも、育つものなら少し安心する。 今見つからない言葉も、いつか私のところへ来てくれる気がするから。
自分じゃない誰かになりたかった
私は、自分が嫌いだ。 何をしても、どこにいても、ずっとまとわりついてくる。 逃げたくても逃げられない。 私が誰かになれたとしても、その誰かは結局「私」だから。 きっと、自分からは逃げられない。 けれど、「誰か」になった瞬間、その誰かもまた、自分じゃない誰かを願うのだろう。 あの子はあの子なりに。 あの人はあの人なりに。 誰にも見えない痛みや憧れを抱えて。 私は私にしかなれない。 ずっと見ているのは、自分だから。 だから今日も私は、自分を嫌いになりながら、 自分として生きていく。
メモリ
夕方ーー。 私は古い商店街の通りを通っていた。 いつもは目につかないお店がなぜか今日は目に止まった。 「メモリ屋」 こんなお店あったんだ。 私は立て看板に目を通す 「あなたのメモリ、お預かりします。」 メモリを預ける。どういうこと? 私は気になり、お店に入った。 そこには黒猫と白髪のお婆さんがいた。 おや、いらっしゃい。 お婆さんはゆったりとした声で言った。 あの、メモリってなんですか? 私は質問した。 おまえさん、ここにくるのは初めてかい? ここはね、人の記憶を預けられるお店だよ。 良い思い出も悪い思い出も、預けたい記憶を頭の中から抜き出すことができる。 ――― 私は思わず聞き返した。 「記憶を……抜き出す?」 お婆さんは静かに頷いた。 「嫌な思い出を忘れたい人もいれば、大切な思い出を失くしたくない人もいるからねぇ」 黒猫が机の上に飛び乗り、金色の目でじっと私を見た。 「でも……そんなこと本当にできるんですか?」 「試してみるかい?」 お婆さんは棚から小さなガラス瓶を取り出した。 瓶の中には青白い光がふわふわ揺れている。 「記憶はね、色や形がみんな違うんだよ」 店の奥を見渡すと、壁一面に瓶が並んでいた。 赤い光。 金色の光。 雪みたいな白い光。 暗闇みたいに黒い光まである。 私は少し背筋が寒くなった。 「……これ全部?」 「誰かのメモリさ」 お婆さんは微笑んだ。 その時。 机の上の黒猫が突然立ち上がった。 そして店の奥の方を見て、 「ニャア」 と、短く鳴いた。 カラン。 どこからか、小さな音がした。 棚の一番上。 そこにあった一つのメモリが、大きく揺れていた。 中には、淡い桜色の光。 お婆さんの表情が初めて変わった。 「……おや」 「え?」 「困ったねぇ」 お婆さんは瓶を見上げたまま、小さく呟いた。 「持ち主が、自分の記憶を思い出し始めてる」 私は首を傾げた。 「それって珍しいことなんですか?」 お婆さんはゆっくり私の方を向いた。 ゆっくりと頷き、そして少しだけ寂しそうに笑った。 「一度預けたメモリはね まれに、その人の死が近づいてくると持ち主の元に戻ろうとしてこんなふうに揺れ出すんだよ。」 私は思わず桜色の瓶を見つめた。 光は、さっきよりも弱々しく揺れていた。 まるで持ち主の状態を表しているかのように。 「その人は、ど、どうなるんですか……?」 お婆さんは棚から瓶をそっと下ろした。 黒猫も静かに隣へ座る。 「普通ならありえないんだよ」 「普通なら?」 「記憶を預けた人は、預けたことすら忘れるからねぇ」 私は目を丸くした。 「えっ……?」 「頭から抜いた記憶は、その人の中から綺麗になくなる。悲しい記憶も、嬉しい記憶もね」 お婆さんは瓶を両手で包んだ。 桜色の光が、手の隙間から少し漏れている。 「でも、この子は違う」 「この子?」 「このメモリの持ち主さ」 店の空気が急に静かになった気がした。 時計の針が、カチ、カチ、と響く。 私はなぜか気になってしまった。 「……誰なんですか?」 お婆さんは少し考えてから、こう言った。 「名前は教えられない決まりなんだ」 「そんな……」 「ただ」 お婆さんは私をじっと見た。 「おまえさん、その人と会ったことがあるかもしれないねぇ」 「え?」 胸が、妙にざわっとした。 会ったことがある? 知らない人のはずなのに? その時だった。 突然、頭の中に何かが浮かんだ。 桜が舞っている景色。 夕焼け。 誰かの後ろ姿。 でも顔だけが、どうしても思い出せない。 「……あれ?」 頭が少し痛む。 私はこめかみを押さえた。 「何か……見えた……」 お婆さんの目が少しだけ開いた。 黒猫も、じっと私を見ている。 「まさか……」 「え?」 お婆さんは震える声で言った。 「おまえさん……昔ここに来たことがあるのかい?」 「え……?」 私は固まった。 「そんなわけ……ないです。こんなお店、今日初めて見たし……」 でも言いながら、自信がなくなった。 頭の奥が、変な感じだった。 思い出せそうなのに、思い出せない。 夢を見ていたのに、起きた瞬間に消えていくみたいな感覚。 お婆さんは黙ったまま、私の顔を見ていた。 黒猫が私の足元へ来て、くるりと一周する。 そして突然、 「ニャア」 今度は店の奥へ歩いていった。 「あ……待って」 なぜか私は黒猫の後を追った。 店の奥には、小さな扉があった。 さっき入った時には、なかったはずなのに。 古い木の扉。 真ん中に小さな文字が刻まれている。 「預かりメモリ保管室」 「……入っちゃだめだよね」 そう思ったのに。 気づいた時には私の足は既に動いていた。 扉の向こうに、何かある。 私が忘れている何かが。 手が勝手に伸びた。 ギィ…… ゆっくり扉が開く。 部屋の中には、天井まで届く棚。 数え切れないほどの瓶が並んでいた。 赤、青、金、白―― 無数の光が、星空みたいにびっしりと並んである。 その中で。 一番奥。 たった一つだけ。 黒い布が被せられた瓶があった。 私の足が止まる。 「……なんで」 知らないはずなのに。 私は知っていた。 あれが、自分のものだって。 背後で、お婆さんの声がした。 「見つけてしまったかい」 振り返ると、お婆さんは悲しそうに笑っていた。 「おまえさんは、前にもここへ来たんだよ」 「そして――」 「自分のメモリを預けた」 私は息を止めた。 「……私が?」 ありえない。 だって何も覚えてない。 この店も、お婆さんも、黒猫も。 でも。 黒い布がかかった瓶から、目が離せなかった。 お婆さんはゆっくり隣まで来ると、小さくため息をついた。 「本当はねぇ、おまえさんにはもう二度と来てほしくなかったんだよ」 「どうして……?」 「預ける時、そう言ったからさ」 私は眉をひそめた。 「私が?」 お婆さんは静かに頷く。 「『もし私がここに来ても、返さないで』ってね」 店の時計が、カチ……カチ……と鳴る。 急に胸が苦しくなった。 返さないで。 どうしてそんなことを? 私は恐る恐る聞いた。 「……中には何があるんですか」 お婆さんは少し迷った顔をした。 「知れば、おまえさんは今までのままじゃいられなくなるかもしれない」 「それでも知りたい」 自分でも不思議だった。 怖い。 なのに、知らない方がもっと怖かった。 黒猫が瓶の前に座り、尻尾をゆっくり揺らす。 お婆さんは黒い布を取った。 その瞬間。 瓶の中が見えた。 そこにあったのは―― 光じゃなかった。 小さな、ガラスの桜だった。 淡い桜色の花びらが、瓶の中を静かに舞っている。 それを見た瞬間。 頭の中で何かが弾けた。 春の帰り道。 風に舞う桜。 隣で笑う誰か。 「来年も一緒だね!」 声が聞こえる。 でも次の瞬間。 景色が急に途切れた。 真っ白になった。 私は頭を押さえてしゃがみ込む。 「う……っ」 涙が、ぽたりと床に落ちた。 どうして泣いてるのか分からない。 でも。 胸の奥から、消えそうな声が聞こえた。 『忘れないと、前に進めないから』 そして私は震える声で言った。 「……私、何を忘れたの?」 お婆さんはすぐには答えなかった。 ただ、瓶の中の桜をじっと見つめていた。 黒猫が小さく「ニャ」と鳴く。 まるで、言ってもいいよと言っているみたいだった。 やがて、お婆さんはゆっくり口を開いた。 「おまえさんが忘れたのはね」 その声はいつもより、ずっと静かだった。 「“人”だよ」 私は顔を上げた。 「……人?」 お婆さんは頷く。 「大事な人さ」 胸の奥がぎゅっと縮む。 「……友達?」 「もっと近いよ」 その言葉に、息が止まった。 もっと近い。 恋人? 家族? でも、どれもはっきりしない。 記憶が霧みたいにほどけていく。 瓶の中の桜が、少し強く揺れた。 お婆さんは続ける。 「その子はね、おまえさんと一緒にいたかった」 「でも、おまえさんは決めたんだよ」 私は小さく首を振る。 「……何を?」 「その子を忘れることを」 世界が少し遠くなった気がした。 黒猫が私の足元に来て、そっと座る。 「ニャア」 その声がやけに優しく聞こえた。 お婆さんは最後に言った。 「その子はもう、この世にはいない」 ⸻ 一瞬、何も聞こえなくなった。 店の音も、時計の音も。 全部止まったみたいだった。 私は瓶を見つめたまま動けなかった。 桜の光が、ゆっくり揺れている。 まるで、まだそこに“誰か”がいるみたいに。 「……嘘」 声が震えた。 「そんなの……私、そんなの……」 でも言葉が続かない。 思い出せないのに、悲しさだけが溢れてくる。 お婆さんは静かに言った。 「忘れようとしたんじゃないさ。」 「耐えられなくて、預けただけさ」 私は瓶の前に膝をついた。 桜はまだ、ゆっくりと舞っている。 見ているだけで胸が痛いのに、目をそらせなかった。 「……戻したら、どうなるんですか」 かすれた声で聞いた。 お婆さんは少しだけ間を置いたあと、答えた。 「全部思い出すよ」 「いいことも、悪いことも」 黒猫が瓶の周りを一周する。 カチ……カチ…… 時計の音が、やけに大きく響く。 私は唇を噛んだ。 「思い出したら……私は、どうなるの」 お婆さんは優しくも厳しい目をした。 「今のままではいられないねぇ」 「でも」 少しだけ声が柔らかくなる。 「ずっと空っぽのままでも、生きてはいけないよ」 その言葉が、胸に刺さった。 空っぽ。 そう言われて初めて気づいた。 私はずっと何かを探していた気がする。 理由も分からないまま。 瓶に手を伸ばす。 でも指が震えて、止まった。 怖い。 戻したら、壊れる気がした。 今の自分が。 それでも―― 瓶の中の桜が、ふっと強く光った。 その瞬間。 頭の奥に、声が響いた。 『大丈夫だよ』 柔らかい、優しい声。 知らないはずなのに。 涙があふれた。 「……私、その人のこと」 喉が詰まる。 「今でも……好き、なんだ」 言った瞬間、瓶の桜が大きく揺れた。 まるで答えるみたいに。 お婆さんは静かに目を閉じた。 「なら、選びなさい」 「忘れたままでいるか」 「思い出して、もう一度ちゃんと向き合うか」 黒猫が、私の膝にそっと前足を置いた。 その温かさで、少しだけ呼吸ができた。 私は瓶を見つめる。 そして―― ゆっくりと、手を伸ばした。 私は瓶に触れた。 冷たいはずのガラスなのに、なぜか少しだけ温かかった。 お婆さんは何も言わない。 黒猫も動かない。 ただ、店の空気だけが静かに張りつめていた。 私は深く息を吸って―― 瓶を、そっと抱きしめた。 その瞬間。 世界がほどけた。 ⸻ 桜が、あふれた。 視界いっぱいに広がる春の景色。 風が強く吹いて、花びらが空へ舞い上がる。 私は走っていた。 隣には誰かがいる。 手を繋いでいる感覚だけが、やけにはっきりしている。 「ねぇ、見て!」 笑い声。 振り向くと―― そこにいたのは、優しく笑う人だった。 ああ。 この人だ。 ずっと、思い出せなかった人。 「……どうして、病気の事ずっと隠してたの?」 声が震える。 その人は困ったように笑って、でもどこか安心した顔で言った。 『泣くと思ったから』 『君が壊れないように』 胸がぎゅっと締めつけられる。 思い出すたびに、痛くて、あたたかい。 全部が戻ってくる。 一緒に笑った日。 あなたのことで喧嘩した日。 最後に交わした約束。 そして――別れ。 ⸻ 気づくと、私はまた店の中にいた。 瓶はもう光っていない。 ただの、空のガラス。 膝の上に涙が落ちる。 お婆さんが静かに言った。 「戻ったかい」 私は小さく頷いた。 「……戻ってきちゃいました」 声がかすれていた。 黒猫が足元で丸くなる。 お婆さんは少しだけ微笑んだ。 「それでいいんだよ」 「記憶ってのはね、預けるためじゃなくて、生きていくためにあるんだからねぇ」 私はゆっくり立ち上がった。 胸は痛い。 でも、空っぽじゃない。 ちゃんと“誰かがいた”重さが残っている。 店を出る前に振り返ると―― もうそこに「メモリ屋」の扉はなかった。 ただの古い壁。 でも私は、ちゃんと覚えている。 あのお店を。 あの春を。 あの人を。 そして、自分がそれを忘れていたことも。 ⸻ 夕方。 私はまた古い商店街を歩く。 風が少しだけ暖かい。 あの店はもうない。 それでも私は、あの場所の前で立ち止まる。 目を閉じると、少しだけ思い出せる。 声も、笑顔も、温度も。 全部じゃない。 でも、それでいい気がした。 私は小さく息を吐く。 そして、誰にともなく呟いた。 「あなたに会えるその日まで、ちゃんと生きていくね」
旧セントラルエリア
雨が降る夜になると、旧セントラルエリアの街灯は一斉に点滅する。 今は誰も住んでいないはずの場所。高層ビルは空を切り取り、止まったモノレールは空中に取り残された骨みたいに静かだった。 「昔はここ、人でいっぱいだったんだって」 ミナは錆びたフェンスを乗り越えながら言った。 「またその話?」 隣を歩くユウは肩をすくめた。 二人は立入禁止区域に忍び込んでいた。学校で噂になっていたからだ。 ——旧セントラルエリアの中央広場で、深夜0時に音楽が流れる。 誰もいないのに。 時計が0時を指した瞬間。 ……カチ。 静寂の中、小さな音がした。 次の瞬間。 遠くから、かすかなメロディが流れ始めた。 「え……」 広場の噴水が、動いていた。 止まっていたはずなのに。 街灯がひとつ、またひとつと灯り、真っ暗だった街がゆっくり息を吹き返していく。 そして二人は気づいた。 広場の向こう側に、人影がいる。 たくさん。 歩いている。 笑っている。 けれど声は聞こえない。 古い映像が街に映し出されているみたいだった。 その中に、一人だけ。 こちらを見ている少女がいた。 そして、口が動いた。 「やっと来た」 ……その瞬間、二人のスマホ画面が同時に真っ黒になった。 画面に文字が浮かんだ。 《旧セントラルエリア:システム再起動》 残り:59秒
空の色が消える前に
夏の夕方は、空の色が少し長く残る。 そんな景色を少しでも長く見ていたくて、私はいつもよりゆっくり歩いた。 だけど、その時間が長くなるほど胸の奥が苦しくなる。 ――もう、そんな季節なのか。 空を見上げて、小さく問いかける。 「ねぇ、元気ですか?」 返事なんて返ってくるはずないのに。 私は笑って、すぐに顔を伏せた。 嘘つき。 どうして私を置いていったの? 何があっても一人にしないって、約束したのに。 なんで……。 唇を噛んで、スマホを強く握る。 空の景色を写真に収めた。 画面の中の夕空は、はっきり映っていた。 なのに、私の中の写真はきっともう滲んでいる。 何も見えない。 そう思ったはずなのに、不意に風が吹いた。 夏の終わりを知らせるような、少しだけ冷たい風だった。 髪が揺れて、手の中のスマホが小さく震える。 気づけば、さっき撮った写真を見つめていた。 夕焼けの下、電線がまっすぐ伸びている。 ただそれだけの写真。 だけど画面の端に、小さく光るものが写っていた。 よく見ると、それは夕日の反射なんかじゃなかった。 私の隣。 誰もいないはずの場所に、ぼんやりと人影のようなものが映っていた。 驚いて振り返る。 もちろん、誰もいない。 ……なのに。 耳の奥で、聞き慣れた声がした気がした。 「そんな顔するなって」 その声が、風に溶けて消えていく。 私は空を見上げた。 さっきまで滲んでいた景色が、少しだけ見えた気がした。 🍃