かりかりよぉ
2 件の小説一巻
「また言えなかった…」 教室の端っこで2月の冷たい風に吹かれながらため息をつく。今日は絶対にあの子におはようって言おうと思っていたのに…。小学一年生のときから8年間ずっと好きだった宏太くん。成績もよくて、かっこよくて、優しい。小さい頃からモテモテで、私の周りは敵だらけだった。 「なに暗い顔してんのー!」 急に耳に入った声の方へ向くと、目の前に人影が走り込んできた。親友の明希だ。女子バスケ部のエース。元気で明るい一軍女子。陰キャで暗い私のそばにいてくれた唯一無二の友達。 「どしたよ?」 「挨拶できなかった…宏太くんに」 以前から彼女には相談に乗ってもらっていた。 「それくらいでくよくよしない!次が大事!頑張れっ!」 励ましの喝を入れてもらったところで先生が教室に入ってきた。 〜掃除中〜 音楽室で宏太くんと二人きり。掃除の時間はお話ができる少しの幸せタイム。 「ねえ、ひまりちゃん。今日は俺が床とかやるから、ひまりちゃんは黒板やってもらえる?」 「えとっ…はい!」 「ふふっ…ひまりちゃんもしかして緊張してる?」 「ふへえ!?えっと…ちょっとだけね…///」 「なんでー笑笑」 「えへへ…///」 話かけてもらえるだけでこんなにも嬉しい。返答はちょっとぎこちないけれど、それも宏太くんは優しい笑みで受け止めてくれる。ああ、この時間がずっと続けばいいのに。そう思った。しかし、音楽室のドアが開いた。 「宏太くーん?」 彼の名をよぶ可愛らしい声。ひょこりと顔を出したのは隣のクラスのお姫様、美結ちゃんだった。 「美化委員会の仕事、忘れてるよぉー?」 「あぁ!ごめん!ひまりちゃん、ここ頼んでいい?」 「うん…。おっけー。任せて」 「ありがと!」 開いたドアから眺めるのは遠ざかっていく二人の姿。童話の王子様とお姫様みたいなあの二人が結ばれるんだろうなぁ…。きっと届きはしない。私は考えるのをやめて、掃除に専念した。 〜次の日〜 なぜか朝から教室が騒がしかった。 「おはよー」 明希に挨拶されたので、何が起こっているのか聞いてみた。 「どうしたの…これ?」 「あー…。どうしても聞きたい?」 「うん」 「傷つかないでね?美結が宏太に告白するらしい…。」 「え…?」 次回に続く
練習
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