ユート

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ユート

よろしくお願いしますm(_ _)m YouTubeもやってます「ゆーと伍長」Twitterも見てください、ネタ募集中です、自由気ままにやってます。 ごめんなさい、色々疲れてしばらく投稿止めます、本当にごめんなさい

私が死ぬまでの3秒間

私が死ぬまでの3秒間 耳をつんざくような金属音と、地響きのような爆撃が、装甲兵員輸送船の重厚なハッチを激しく揺さぶっていた。赤く点滅する警告灯の下、薄暗い船内は兵士たちの荒い息づかいと、装備が擦れ合う音で満ちている。 私は銃を強く握りしめ、冷や汗がにじむ手のひらの感覚を確かめた。心臓が胸の骨を打ち鳴らすように高鳴り、全身の血液が逆流するような恐怖が襲ってくる。 「おい、生きて帰れると思うか?」 隣に座っていた同期のレオが、乾いた笑みを浮かべながら声をかけてきた。その顔もまた、恐怖と緊張で青ざめている。 「当たり前だ。あんなところで、くたばってたまるかよ」 私は努めて力強い声を出し、笑い返した。心の中では、故郷に残してきた家族の顔が鮮明に浮かんでいた。温かい食卓、笑顔で手を振る妻、幼い娘の笑い声。絶対に、あの場所へ帰る。その強い思いだけが、今の私をかろうじて支えていた。 「まもなく上陸地点に到達! 各員、戦闘準備!」 拡声器から響く怒号を合図に、私たちは一斉に立ち上がった。重く冷たい金属製のタラップへと移動し、全員で上陸用舟艇に乗り込む。 エンジンが咆哮を上げ、舟艇は激しい揺れとともに輸送船から発艦した。 外に出て視界が開けた瞬間、地獄のような光景が飛び込んできた。曇天の海は砲撃の炎で赤く染まり、周囲を走る無数の上陸用舟艇が次々と敵弾を受けて粉々に吹き飛んでいく。海面には黒煙と破片が舞い散り、どこから飛んできたのか分からない銃弾が、水面を激しく叩いていた。 「伏せろ!」 誰かの叫び声がかき消されるほどの轟音の中、私たちが乗った舟艇は敵弾をかいくぐるようにして、猛烈な勢いで海岸線のコンクリート壁へと激突した。 衝撃で体が大きく前へ投げ出されそうになるが、私たちは必死に踏みとどまった。 「着艦完了! タラップ開放!」 号令とともに、目の前で分厚い鉄の扉がガキガキと音を立てて開き始める。 眩しい光と熱風が、一気に流れ込んできた。 ――その瞬間からの3秒間が、永遠のように引き延ばされて感じられた。 1秒目 タラップの隙間から、灰色の砂浜と無数の銃口が飛び込んできた。家族の顔が脳裏に浮かび、「帰るんだ」という強い意志が胸を熱くする。足を踏み出し、外の世界へ一歩を記そうとしたその瞬間、世界がスローモーションのように静まり返った。 2秒目 敵の狙撃手の銃口が、私の額を捉えているのが分かった。冷酷なまでの殺意を込めた光が、遠くの陣地からまっすぐこちらに向かってくる。避けようと首を動かそうとしたが、戦闘の疲労で体が思うように反応しない。 3秒目 熱い衝撃が眉間を貫いた。痛みを感じる間もなく、視界のすべてが真っ赤な光に包まれ、やがて音のない深い闇へと落ちていく。 私の意識は、そこで途切れた。

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短編小説集

助けてくれたウルトラマン」 明日は保育園の入園式。新しいカバンを枕元に置いて眠りについたはずだった。しかし、目が覚めるとそこは、見たこともない場所だった。 足元には底なしの黒い沼が広がっている。粘りつくような冷たさに足を取られ、体はゆっくりと、しかし確実に沈んでいった。暗闇の中、心細さと得体の知れない恐怖に全身が震える。叫ぼうとしても、声にならない空気が喉に詰まるだけだった。 「……誰か、助けて!」 恐怖の限界で、必死に心の中で誰かの名前を呼んだ。テレビで見たことのある、強くて優しい光の巨人。 「ウルトラマン、助けて!」 その名を叫んだ瞬間だった。頭上の閉ざされた闇が、轟音とともにひび割れた。天井だと思っていた硬質なパーツが粉々に砕け散り、そこからまばゆい光が差し込む。そして、光の中から巨大な灰色の手が現れた。 それは、まるで鋼鉄の山のような、圧倒的な存在感を持つ手だった。その大きな指先が俺の体を優しく、しかし力強く掴み上げる。空へと引き上げられる感覚とともに、俺の意識は急速に現実の世界へと引き戻された。 「……っ!」 汗びっしょりで飛び起きた。窓の外は、すでに柔らかな朝の光に満ちていた。隣で母が「入園式、楽しみね」と微笑んでいる。あれは夢だったのか。それでも、胸にはまだ、あの巨大な手に包まれた時の温もりがしっかりと残っていた。 月日は流れ、俺は大人になった。 あの日の記憶は鮮明だ。しかし、不思議なことがあった。当時の俺は、ウルトラマンの姿など何も知らなかった。赤と銀の鮮やかな体色も、その身長がどれほどあるのかも。俺がテレビで見たのは、ほんの断片的な姿だけだったはずだ。 それなのに、なぜあの夢の中の「救い」は、あんなにも巨大で、そして鋼のような灰色の姿をしていたのか。 ある日、映像アーカイブで当時のウルトラマンの資料を見返した時、俺は確信した。あの日、俺を地底の沼から引き上げた灰色の手。あれは、ウルトラマンの体の色そのものだったのだ。 彼がどのような経緯で俺の夢に現れたのか、それは今もわからない。ただ一つ言えるのは、あの時、幼い俺を絶望の淵から救い出してくれたのは、間違いなくあの光の巨人だったということだ。 俺は空を見上げ、心の中で静かに呟く。 「ありがとう、ウルトラマン」 俺の人生の最初の一歩は、あの大きな灰色の手に導かれて始まったのだ。 K峠のバイク王」 免許を取ったばかりの俺は、父を助手席に乗せでハンドルを握っていた。慣れない山道のカーブに緊張しつつも、父の「もう少し先のトンネルまで行こう」という指示に従い、K峠を登っていく。 峠の頂上付近、目的地のトンネルが見えてきた。全長5分もかからない短いものだが、周囲は昼間でも薄暗い鬱蒼とした木々に覆われている。父が「ここで少し休憩しよう」と言うので、俺はトンネルの入り口から数十メートル手前の路肩に車を止めた。 エンジンを切り、車内に静寂が訪れる。窓を開けると、山の冷たい空気が流れ込んできた。 その時だった。 「……ヴゥゥゥン!」 鼓膜を震わすような、鋭いエンジン音が響いた。どこか遠くから、いや、すぐ近くから聞こえる。誰かが思い切りアクセルを煽っているような、迫力のある重低音だ。 俺はてっきり、峠を攻めるバイクがトンネルから飛び出してくるのだと思った。ミラーを注視し、窓の外に目を凝らす。来る。あの音なら、数秒で目の前を駆け抜けるはずだ。 しかし、10秒経っても、30秒経っても、何も来ない。 音は止まない。「ヴゥゥゥン、ヴゥゥゥン!」と、まるで俺たちの車のすぐ横で停車しているかのように、回転数を上げている。だが、視界にはただ、揺れる木々と路面の影があるだけだ。トンネルの入り口も、反対側のカーブも、そこには何一つとして姿を現さない。 「……父さん、バイク、来るかな?」 俺が尋ねると、父は険しい顔で首を横に振った。 「おかしいな。音がこんなに近くに聞こえるのに、排気ガスの匂いもしないし、何より気配がない」 言われてみればそうだ。これだけ激しくエンジンを吹かしていれば、空気が揺れ、何かしらの熱気を感じるはずなのに、周囲は不気味なほど静まり返っている。音だけが、独立した生命体のようにこの空間に居座っていた。 「行こう。ここにはいちゃいけない気がする」 父が短く言うと、俺は即座にエンジンをかけ、アクセルを踏み込んだ。トンネルを抜ける際、一瞬だけルームミラーで背後を確認したが、そこには誰もいなかった。 あの時聞こえたのは、一体何だったのか。かつてこの峠で伝説となったライダーの魂が、今もなお、音となって走り続けているのだろうか。 峠を下りきり、街の灯りが見えた時、あの「ヴゥゥゥン」という音の正体を知ることは一生なくていい、と心から思った。 助けてくれたウルトラマン2」 休日の午後。カーテンの隙間から差し込む日差しが心地よく、俺はリビングのソファで微睡んでいた。特段の疲れもなかったはずなのに、ふと、意識が急激に重く沈み込んでいく感覚に襲われた。 目を開けようとしても、瞼が岩のように動かない。指先一本、動かすことができない。金縛りだ。 それに続き、部屋の空気が凍りつくような嫌な気配が背後に漂い始めた。暗い何かが、俺のすぐ傍に立っている。得体の知れない恐怖が全身を駆け巡り、俺は無意識のうちに、幼い頃から心の支えにしていた旋律を心の中で必死に唱えた。 『帰ってきたウルトラマン』のテーマ曲だ。 心臓の鼓動が激しくなる。俺は脳内で、力強く歌い続けた。 「帰ってきたぞ、帰ってきたぞ、ウルトラマン……」 歌うたび、胸の奥から温かい光が湧き上がり、身体を縛り付けていたどす黒い圧力が少しずつ薄れていく。あの嫌な気配が、悲鳴を上げるように遠ざかっていくのが分かった。 そして、脳内で最後のフレーズが高らかに響いた。 「帰ってきたぞ、帰ってきたぞ、ウルトラマン!」 その瞬間、まるで魔法が解けたかのように体が軽くなった。勢いよく上体を起こし、リビングを見渡す。そこにはいつもの静かな光景があるだけだった。しかし、額には冷や汗が滲み、心臓はまだドクドクと力強く打っている。 俺は大きく深呼吸をし、窓の外の青空を見上げた。 あの歌に込められた強さと優しさが、確かに俺を救ってくれたのだ。今は姿は見えなくとも、あの光の巨人はいつも俺の心の中にいてくれる。 「ありがとう、ウルトラマン」 俺は心からの感謝を胸に、もう一度だけ、静かに自分の中に流れるあの曲を口ずさんだ。 真夜中の訪問者」 その本は、古びた図書館の片隅にひっそりと佇んでいた。タイトルに惹かれて手にしたのは、地域に伝わる都市伝説をまとめた一冊だ。幽霊、怪異、そして説明のつかない現象。そんな非現実的な話を、私は冷やかし半分で読みふけった。 それから数日後のことだ。 時刻は深夜の二時を回った頃だろうか。深い闇の中で、私はふと目を覚ました。寝苦しい夜だった。部屋の隅で回り続ける扇風機だけが、ブォォォンという低く単調な音を立てて、この静寂を支配している。 その時だった。 「コン、コン」 聞き間違いではない。間違いなく、窓の向こうから音がした。 ここは二階だ。外には何もないはずなのに。心臓が跳ね上がるのを感じる。窓を開ければ、何かが覗き込んでいるのではないか。そう思うと、怖くて体を動かすことができない。 「コン、コン、コン」 再び音が響く。今度は先ほどよりも少し強く、意志を持ってガラスを叩いているようだった。あの都市伝説の本にあった話が、脳裏を過る。あれは単なる作り話ではなかったのか。 私は、息を潜めてタオルケットを頭まで被った。扇風機の駆動音だけが、まるで耳元で怒鳴っているかのように異常に大きく響く。ただひたすらに、朝が来るのを待った。 夜が明けるまでの時間が、永遠のように長く感じられた。 翌朝、恐怖に震えながら窓を開けてみたが、そこには何もなかった。ただ、冷たい風が吹き抜けるだけだった。 あれは、ただの夢だったのだろうか。それとも、あの本を読んだことで何かを呼び寄せてしまったのだろうか。今でもあの夜の音を思い出すたび、私は扇風機のスイッチを切るのを躊躇してしまう。 どうか、ただの夢であってほしい。そう願うことしか、今の私にはできないのだ。

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命に値段を付けるなら

天上の回廊は、静寂と冷ややかさで満ちていた。何ひとつ不変であり、何ひとつ過剰ではないその光の世界で、上位天使ミカエルは与えられた命じを胸に抱き、人間界へと降り立った。 神から下された命令は単純かつ絶対であった。 「人間界へと赴き、指定された数だけの魂を買い取ってまいれ」 神が差し出したのは、銀色に輝く小袋であった。中には数個の透明な対価——天上の概念が詰まっている。ミカエルは人間に扮し、黄昏時の喧噪に包まれた古びた街の路地裏へと向かった。 そこには、死期を目前にした貧しい絵描き、病床の妹を持つ少年、そして誇り高く生きて老いた孤独な哲学者の三人がいた。ミカエルは神の命に従い、彼らに取引を持ちかけた。 「あなたの魂を買い取りに来ました。この対価と引き換えに、残された時間を私に委ねなさい」 絵描きの前で袋を開けると、中から転がり出たのは小さな黄金の硬貨が一枚だった。絵描きの魂の価値は「金貨一枚」。 病床の妹を抱える少年の前で袋を開けると、今度は美しい瑠璃色の宝石がひとつ零れ落ちた。少年の魂の価値は「宝石ひとつ」。 そして老哲学者の前で袋を開けた時、そこにあったのは名もなき白の小石だった。 ミカエルには、その価格の基準がまったく理解できなかった。絵描きの情熱も、妹を想う少年の絶望も、己の終わりを受け入れようとする老人の諦念も、天使の目にはどれも同じように尊く、等しく揺らめく光に見えたからだ。 「なぜ、この男の魂が金貨一枚で、あの老人の魂が路傍の石なのか?」 葛藤を抱えながらも、ミカエルは取引を終え、集めた三つの魂を携えて天上の回廊へと戻った。 神の御座の前に跪き、集めた魂を差し出したミカエルは、胸の内に渦巻く疑問を抑えきれず、静かに問いかけた。 「神よ、命を買い終えて戻りました。しかし、私にはどうしても理解できません。命の値段とは一体何によって決まるのですか。なぜある魂は金貨で買われ、ある魂は石ころと同等なのですか。魂の価値とは、あなたが定めた絶対の計量によるものなのですか」 静寂の中、神の視線がミカエルを包み込んだ。その瞳には怒りも哀れみもなく、ただ深く澄んだ深淵だけが存在していた。 神はゆっくりと口を開き、静けさを揺らすように言った。 「命に値段を付けるなら、それはあなたの知らない言葉」 ミカエルは息を飲み、神の顔を見上げた。神の言葉は続き、天上の回廊全体へと静かに響き渡っていった。 「命に値段を付けるなら、それは誰にも分からない言葉」

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運動音痴太郎其2

俺の名前は「運動音痴太郎」だ 高校に進学しても相変わらずスポーツには嫌われ続けていた しかし俺の心は微塵も折れていなかった むしろいつか他のスポーツでも主役になるため 密かに身体を鍛えようと考えていた 身体を強くするにはまず食べることだ そんな俺の前に新たなる戦いが待ち受けていた クラスには結衣(ゆい)という女子生徒が居るんだ 彼女には乳製品アレルギーがある 給食の時間になると結衣の机の上には いつも牛乳やチーズが手つかずのまま残っていた 周りの連中は、アレルギーというものを軽く見ていた 「また残してるよ」 「贅沢言うなよな」 「ただの食わず嫌いだろ」 そんな心ない言葉が教室のあちこちから聞こえてきた 結衣は、いつも申し訳なさそうにうつむいていた だが当時の俺は底抜けのバカだった アレルギーという言葉の意味すら まったく知らなかったのだ 周りが「食わず嫌い」と騒いでいるのを聞いて 俺は完全に勘違いをした 「なんだただの食わず嫌いか もったいないな」 俺は周りの雑音をすべて無視した。 そして結衣の席へとまっすぐに歩いていった 「おいそれ食わないなら俺が全部貰っていいか?」 結衣は驚いた顔をして俺を見上げた。 「えっ? でも、これは……」 「俺は何でも食えるぜ! ワカメでも貝でもチーズでも何でもござれだ!」 俺の目的は単純明快だった たくさん食べて運動に向けて身体を強くすることだ それ以来俺は毎日結衣の代わりに乳製品を貰い続けた 牛乳を2本一気に飲み干しチーズを美味そうに口へ放り込んだ 周りの奴らは俺の行動にあきれていた 「おいおい太郎のやつまた食わず嫌いを甘やかしてるよ」 「あいつ、本当にただの大食いだな」 陰口は聞こえていたが俺の知ったことではなかった 俺にとっては、身体を強くするための貴重な栄養源だった。 ある日 結衣が小さな声で俺に言った 「太郎くんいつもありがとう みんな食わず嫌いだって言うからすごく辛かったの」 結衣の瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。 俺は胸を張って答えた 「気にするな! 食わず嫌いなんて俺の敵じゃない! お前の残した分はこの俺がすべて血肉に変えてやる!」 実際にはアレルギーという命に関わる話だったのだがバカな俺の勘違いが結果的に彼女の心を救っていた 理由はどうあれ俺は目の前の食べ物を美味しくいただき結衣の笑顔を守ったのだ 牛乳パワーで俺の骨は今かつてないほど頑丈になっている気がする たとえ次の体育でボールが脳天に直撃しても今の俺なら耐えられるはずだ。 運動音痴太郎参上!

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運動音痴太郎参上!

俺の名前は「運動音痴太郎」だ。 自分で言うのもなんだが、幼少期からスポーツというスポーツ全てに嫌われて生きてきた。 小学校、中学校、そして高校。 学生時代を振り返って真っ先に思い出すのは、体育の時間に味わった数々の地獄だ。 とにかく、俺の体は運動という概念を拒絶していた。 足は亀より遅い。 球技をやらせれば、ボールが磁石のように俺の弱点へと吸い寄せられた。 ある時は、高く上がったバスケットボールの軌道を見誤った。 そのまま脳天に直撃し、激しく尻餅をついた。 またある時は、ドッジボールや野球の硬球が股間に直撃した。 下腹部から突き上げる悶絶の痛みに、その場に崩れ落ちた。 さらに、サッカーやバスケで接触プレーがあれば、面白いように相手に押し倒された。 地面に脛を強打して、打撲の青アザを作るのが日常茶飯事だった。 特にサッカーは最悪だった。 ボールをまともに蹴ることすらままならない。 無理に力んでキックした拍子に、スパイクの中で親指の爪が剥がれた。 激痛に耐えながら放ったシュートは、誰もいないゴールを大きく外れた。 体育祭の全員リレーも地獄のイベントだった。 グラウンドを走る際、序盤に全力で飛ばしすぎた。 コーナーを曲がる頃には完全にガス欠になり、足がもつれた。 待っている仲間にバトンを渡すこともできず、その場で派手に転倒した。 当然、俺のせいでチームはぶっちぎりのドベになった。 そんな俺だったが、二つの競技だけは得意だった。 バレーボールのサーブと、卓球だ。 バレーの授業では、自分のタイミングで打てるサーブだけは別だった。 なぜか俺の放つサーブは鋭く決まり、いつしか周りは俺を「サーブの神」と呼んだ。 そして卓球の授業が始まれば、まさに「向かうところ敵なし」の状態だった。 普段は他のスポーツでイキっている奴らを、強烈なスマッシュで次々と倒した。 「おい太郎、今のカットのコツを教えてくれよ」 さっきまで俺を笑っていた周りの奴らが、手のひらを返したように聞いてくる。 それがたまらなく嬉しかった。 だが、トータルで見れば俺はただの運動音痴だ。 度を越した「いじめ」の標的になることもあった。 普通の奴なら、心が折れて不登校になってもおかしくない環境だったと思う。 それでも、俺は学校を休まなかった。 這いつくばってでも毎日通い、全ての課程を終えて卒業した。 身体能力は最悪だったが、俺の根性と卓球台で見せた輝きは誰にも負けない。 運動音痴太郎参上!

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スターブレイブの魔法転生(試作)

第一章:残光の終わり、そして絶望の底 夜の帳が降りた街は、冷たい雨に濡れていた。 川面に映るネオンの光は、どれも歪んでいて、まるで彼自身の人生を嘲笑っているかのようだった。 有馬瞬(ありましゅん)、二十六歳。 数年前まで、彼は子どもたちの憧れの的だった。毎週日曜日の朝、テレビの画面の中で、彼は青い輝きを纏う正義の味方、特撮ヒーロー「スターブレイブ」として生きていた。 「がんばれ、スターブレイブ!」 子どもたちの弾んだ声が、今も耳の奥にこびりついて離れない。しかし、ブームというものは残酷なほどに、あっけなく去っていく。番組の打ち切りとともに、スターブレイブの玩具は瞬く間に店頭から消え去り、瞬への仕事のオファーも途絶えた。 「ヒーロー」の仮面を剥ぎ取られた彼に残されたのは、演技力も学歴も、特別な資格もない、ただの不器用な青年という現実だけだった。 「僕には、もう何もないな……」 アルバイトを転々とする日々の中で、同世代の人間たちが社会の階段を上っていく姿を横目で見た。自分の居場所が、この世界のどこにもないことを痛感させられる毎日だった。苦悩と孤独に押しつぶされた瞬の足は、いつしか街外れにある大きな橋へと向かっていた。 激しく波打つ濁流を見下ろしながら、瞬は欄干に手をかけた。冷たい鉄の感触が、指先から全身へと伝わっていく。 もう、疲れてしまった。 ゆっくりと目を閉じ、身体を前に傾けようとしたその瞬間、彼の心の中に、どうしても消し去ることのできない「願い」が溢れ出した。 (どうか、もう一度だけでいい。空想の世界でもいいんだ……。誰かを、誰かの明日を救いたい) それは、彼がスターブレイブという役を演じる中で、心から愛し、血肉にしてきた本物の願いだった。 足を浮かせた瞬間、視界は真っ白な光に包まれた。 第二章:光の空間と、異世界の支配者 耳を劈(つんざ)くような落下の衝撃はなかった。 瞬が目を開けると、そこは重力も上下も存在しない、淡く輝く純白の空間だった。 「あなたの願いを、確かに聞き届けました」 どこからか、厳かで、しかし慈愛に満ちた声が響く。瞬が声を上げようとするよりも早く、その光の意思は、彼の魂に直接語りかけてきた。 「あなたが生きるべき場所は、あの世界ではない。不条理と絶望に支配され、救い手を待つ民がいる地です。さあ、その身に『ブレイブ・チェンジャー』を宿し、歩みなさい」 次の瞬間、瞬の意識は激しい奔流に飲み込まれ、別の世界へと引きずり込まれていった。 頭が割れるような痛みが、瞬の意識を呼び覚ました。 顔を上げると、そこは見たこともない鬱蒼とした森の中だった。湿った土の匂いと、嗅いだことのない不気味な獣の気配が漂っている。 「ここは……どこだ?」 自分の手を見ると、衣服はすっかり変わり、見覚えのある青い変身ブレスが左手首に装着されていた。特撮の小道具ではない。本物の金属の重みと、かすかな熱量を放つ、本物の変身器だった。 その時、森の奥から鋭い悲鳴と、下卑た笑い声が聞こえてきた。 瞬は本能的に、声のする方向へと駆け出した。 開けた場所に飛び出すと、そこには異様な光景が広がっていた。 額に逞しい角を生やし、漆黒の鎧を纏った二人の大男――魔族の兵士たちが、鎖で繋がれたボロボロの衣服の少女を、鞭で打ち据えていたのだ。周りを見渡せば、粗末な檻の中に、同じように絶望の目をしたが大勢の人間たちが閉じられている。 「おい、ぐずぐず歩くな、人間の家畜どもが! 魔王領への貢ぎ物だ、死なない程度に痛めつけてやれ!」 冷酷な言葉とともに、再び鞭が振り下ろされようとした。 「やめろ!」 瞬は、考えるよりも先に叫んでいた。魔族の兵士たちが、驚いたように一斉に振り返る。 「なんだ、ただの人間か? 命が惜しくないようだな」 「僕は……」 瞬は、左手首のブレスを胸の前に掲げた。かつて、何百回、何千回と練習した、あの構え。 「変身!」 ブレスから眩い青の閃光が放たれ、瞬の身体を包み込む。光が収まったとき、そこには藍色のスーツに身を包み、胸に銀色の星の紋章を刻んだ戦士が立っていた。 星の戦士、スターブレイブ。 「な、なんだその格好は!?」 「悪の支配に怯える者がいる限り、星の輝きは消せはしない! スターブレイブ、見参!」 第三章:非力なるヒーローの足掻き 見得(みえ)を切るスターブレイブに対し、魔族の兵士たちは鼻で笑い、即座に大剣を引き抜いて襲いかかってきた。 「死ね、ふざけた道化め!」 スターブレイブは身をかわし、相手の懐に飛び込んで拳を叩き込んだ。 しかし、硬い鎧を殴った右拳に、激痛が走る。 くっ……! スターブレイブには、他の異世界転生者のような、超人的な魔法も、一撃で山を吹き飛ばすような天賦のスキルもない。ただの「スーツを着た人間」に近い戦闘力しか持っていなかった。 魔族の強力な蹴りが腹部に炸裂し、スターブレイブは地面を激しく転がった。 「がはっ……!」 「口ほどにもない。ただのハッタリか!」 大剣が容赦なく振り下ろされる。スターブレイブは必死に転がって刃を避け、何とか立ち上がった。泥にまみれ、スーツのあちこちから火花が散る。テレビの撮影なら、ここでカットがかかるところだが、これは現実の殺し合いだった。 何度も殴られ、蹴り飛ばされ、スターブレイブは満身創痍になった。それでも、彼は立ち上がるのをやめなかった。 背後にいる檻の中の民や、怯える少女の姿が目に入るたび、彼の心にある不滅の炎が燃え上がるからだ。 「なぜだ……なぜ、それほど傷ついて立ち上がれる?」 魔族の兵士が、不気味な執念に一歩退がった。 スターブレイブは、息を荒くしながらも、優しく、しかし確固たる意志を込めて言った。 「誰かが……泣いているなら、何度だって立ち上がる。それが、ヒーローだ」 彼は両腕を胸の前で大きく広げ、エネルギーを集中させた。 「これで終わりだ! ブレイブ・バスター!!」 両腕を激しく「X」の形にクロスさせる。彼の腕から、鮮烈な青いレーザー光線が放たれた。直撃を受けた魔族の兵士たちは、悲鳴を上げながら光の奔流に押し流され、そのまま爆発を伴って消滅した。 残されたもう一人の兵士は、相棒の無惨な姿を見て、恐怖に顔を歪めた。 「ひ、一撃で……!? 覚えていろ!」 捨て台詞を残し、生き残った兵士は森の奥へと逃げ去っていった。 第四章:届いた声、芽生える絆 変身を解除した瞬は、激しい疲労感からその場に膝をついた。全身が、酷く痛む。 しかし、彼はすぐに痛みを堪えて立ち上がり、檻の鍵を壊して回った。 「もう大丈夫だよ。怪我はないかい?」 瞬は、最初に鞭で打たれそうになっていた少女に、優しく手を差し伸べた。少女は怯えながらも、瞬の温かい手を取り、涙を流した。 「あ、ありがとうございました……。あなたは、神様のお使いなのですか?」 「ううん、神様じゃないよ。僕は、スターブレイブ。みんなを護るために戦う、ただのヒーローさ」 瞬の優しい笑顔に、囚われていた人々は救われたことを悟り、堰を切ったように泣き崩れた。 彼らが暮らすこの世界は、圧倒的な武力を持つ魔族によって支配され、人間は奴隷として売買されるのが当たり前の地獄だった。抵抗する術を持たない彼らにとって、傷つきながらも自分たちのために戦ってくれた瞬の姿は、まさに闇の中に差し込んだ、唯一の希望の光だった。 「スターブレイブ……」 一人の少年が、憧れに満ちた目でその名前を呟いた。瞬の胸の奥で、かつて失われたはずの「何か」が、確かに熱く脈動し始めていた。 第五章:真の力、響け応援の歌 それから数ヶ月、瞬は解放した人々とともに、魔族の支配が届かない辺境の谷に小さな隠れ里を作り、彼らを護りながら暮らしていた。 瞬が異世界にやってきたという噂は、虐げられた人間たちの間で瞬く間に広がり、里には日を追うごとに、救いを求める人々が集まってきた。 だが、魔王軍がその動きを黙って見過ごすはずがなかった。 ある日、地響きとともに、逃げ延びたあの兵士長が率いる、数百人もの魔王軍正規兵が谷を包囲した。 中央に立つのは、巨大な斧を携えた、地将軍ゴルザス。一本の角を持つ、屈強な高等魔族だった。 「反逆者どもめ、一匹残らず家畜の分を分からせてやる! ヒーローとやらを引っ張り出せ!」 里の人々が恐怖に震える中、瞬は一人、軍勢の前に歩み出た。 「みんな、下がっているんだ。ここは、僕が食い止める」 瞬はブレスを構え、再びスターブレイブへと変身した。しかし、相手は数百の軍勢と、桁違いの魔力を持つ将軍だ。 ゴルザスの振るう大斧の一撃は、周囲の地面を激しく叩き割り、その衝撃波だけでスターブレイブは遥か後方へと吹き飛ばされた。岩壁に激突し、スーツの装甲が砕け散る。 「ぐあああっ!」 「ふん、この程度の羽虫が、我が軍を脅かしていたとは片腹痛い。死ね、人間!」 ゴルザスがトドメの一撃を振り下ろそうとした、その時だった。 「がんばれ……っ!」 里の少年が、涙を溜めながら、声を振り絞って叫んだ。 「がんばれ、スターブレイブ!!」 その声を皮切りに、檻から救われた少女が、あるいは老人たちが、里のすべての人々が、拳を握りしめて叫び始めた。 「負けないで! スターブレイブ!」 「俺たちのヒーロー! あいつらをぶっ飛ばしてくれ!」 何百人もの人間の、地鳴りのような応援が、谷に響き渡る。 その瞬間、スターブレイブの身体から、これまでにない凄まじい青の光波が放射された。 特別な能力を持たない星の戦士。しかし、彼には隠された、唯一にして最大の特撮設定があった。 『応援する人が居れば居るだけ強くなり、多ければ多いだけ身長も大きくなる』 「おおおおお!」 スターブレイブの身体が、まばゆい光の中で急速に巨大化していく。十メートル、二十メートル、三十メートル。ついには、谷の木々を見下ろす、五十メートルの巨体へと成長を遂げたのだ。 その全身からは、魔族の邪悪な魔力を掻き消すほどの、圧倒的な聖なるエネルギーが溢れていた。 「な、なんだこれは!? 人間が、これほどの質量を、光を持つというのか!」 ゴルザスが驚愕し、軍勢が恐怖で後退りする。 巨体となったスターブレイブは、ゆっくりと腰を落とし、両腕を大きくクロスさせた。その腕には、里の何百人もの命の願いが、青いプラズマとなって激しく激突している。 「みんなの声が、僕に力をくれる……! 悪に染まりし者よ、この光で、その心を悔い改めよ!」 最大出力の輝きが、世界を照らす。 「ブレイブ・バスター――!!!」 極太の青いレーザー光線が、天空を裂いて放たれた。それは魔王軍の軍勢を瞬時に包み込み、邪悪な戦意ごと、すべての闇を優しく、しかし容赦なく消滅させていった。 光が収まったとき、魔王軍は完全に退けられ、谷には静寂と、そして勝利の歓声が戻ってきた。 ゆっくりと元のサイズに戻った瞬は、へたり込みながらも、集まってきた人々に向かって、誇らしげに親指を立てた。 もう、ここは空想の世界ではない。 彼は今、この異世界で、人々の絶望を照らす「本物のヒーロー」として、確かに生きているのだ。魔族の支配からすべての人々を解放するまで、スターブレイブの戦いは、どこまでも続いていく。

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彼は許されたと思って良いのでしょうか

第一章:灰色の日常と消えない烙印 アスファルトに染み付いた黒いシミを見るたびに男の脳裏にはあの夜の乾いた破裂音が蘇る ブレーキを踏む足の感覚もフロントガラスが蜘蛛の巣状にひび割れた瞬間の閃光もすべてが昨日のことのように生々しい 男は一人の女性を車で轢いた 刑期を終え鉄格子の向こうから娑婆と呼ばれる世界に戻ってきた男を待っていたのは自由ではなく形を変えた終わりのない監獄だった 世間の目は法律よりも遥かに残酷で容赦がない 男の本名や過去の経歴はとうにインターネットの海へと放流されデジタルタトゥーとして完全に定着していた スマートフォンを開けばSNSには男を「人殺し」「社会のゴミ」と罵倒する言葉が何千何万と並び匿名の悪意は実体を伴って男の現実を侵食し始める ある日を境に自宅の壁には真っ赤なスプレーで「死ね」「殺人犯の家」 と落書きされ庭には深夜を狙って小石や生ゴミが投げ込まれるようになった 玄関のチャイムが鳴ればそれは決まって再生数を稼ぎたいだけの悪質なYouTuberであり彼らは大声で男の名前を叫びながらカメラのレンズをドアの隙間にねじ込んできた 男はただ唇を噛み締めそのすべてを甘んじて受け入れた 自分が犯した罪の重さを考えればこれくらいの報いは当然だと己に言い聞かせ続けたからだ しかし悪意の矛先は男だけでなくその両親にまで容赦なく向けられた 近所からの冷たい視線と終わりのない嫌がらせに晒され続けた両親は急速に精神を病み痩せ細っていった 父親は夜も眠れなくなり母親は幻聴に怯える日々を過ごした末に、まるで連鎖するように相次いで病死した 男のせいで家族の命まで奪われたのだ さらに会社からは「会社のイメージを著しく損ねる」という表向きの理由で解雇を言い渡され男は完全に社会から孤立した 第二章:炎上と、ある日の邂逅 ある激しい嵐の夜、男の家は過激化したネット私刑の信奉者によって放火された 激しく燃え盛る炎を見つめながら男は逃げ出すこともせずただ立ち尽くしていた すべてが灰になればこの苦しみから解放されるのではないかという淡い期待は駆けつけた消防の怒号によって打ち砕かれる 焼け出された男は身の回りの僅かな荷物だけを抱え各地の安宿やネットカフェを転々とする浮浪者のような生活を余儀なくされた それでも男は生きることをやめなかった 死んで逃げることはあの夜の被害者に対する二重の裏切りになると信じていたからだ 季節が巡り初夏の強い日差しが街を照らすようになったある日の午後、男は人混みで溢れる駅前のスクランブル交差点にいた 雑踏の中で何気なく視線を走らせたその瞬間、男の心臓が激しく跳ね上がった すれ違う雑踏の中にその女性はいた あの夜、自分が車で跳ね飛ばし、その未来を奪いかけた女性だった 彼女は半袖のブラウスを着ておりその右腕には痛々しく引き攣れた大きな古傷が残っていた さらに男が息を呑んだのは彼女の右頬だった かつて美しかったであろうその肌には今もなお事故の衝撃を物語る深い傷跡が白く浮かび上がっている 彼女は生き延びていた しかし男の植え付けた傷は彼女の身体に永遠に刻み込まれていた 男の足は勝手に動き出し周囲の人間を押し退けるようにして彼女の前に進み出た 頭の中は真っ白になりただ一つの衝動だけが男の身体を支配していた 第三章:審判の瞬間 「申し訳ありませんでした」 男は彼女の目の前でアスファルトの地面に激しく膝を突き額を擦り付けた 周囲の喧騒が一瞬で静まり返る 突然の事態に通行人たちが足を止め、怪訝な表情で男と彼女を見つめ始めた そのうちの誰かが男の顔がネットで晒されている「あの殺人犯」だと気づき声を上げた 瞬く間に周囲の空気が変わり、人々はポケットから一斉にスマートフォンを取り出してレンズを男へと向けた 動画の撮影ボタンが押されライブ配信が始まり、ネットの住人たちが再び狂乱の声を上げ始める 「おい、あいつだろ」「被害者の前でパフォーマンスかよ」という冷ややかな囁きが包囲網のように二人を取り囲む スマホのレンズの砲列に晒されながら男はただただ頭を地面に押し付け、涙と汗で泥塗れになりながら震えていた 罵倒されることも、蹴り飛ばされることも、警察を呼ばれることもすべて覚悟していた むしろここで彼女に激しく拒絶されることこそが、男にとっての本当の刑罰であるはずだった しかし、男の視界に映る灰色の地面に、ゆっくりと一足の靴が近づいてきた 彼女は逃げ出さず、男の前に佇んでいた カサリ、と微かな衣擦れの音がして、彼女はゆっくりと微動だにしない男の前に屈み込んだ 男が恐る恐る顔を上げると、そこにはスマホのカメラに囲まれながらも、穏やかに微笑む彼女の顔があった 右頬の古傷がその微笑みに合わせて少しだけ歪む 彼女は何も言わず、ただ優しく、そして迷いのない手つきで、男の泥塗れの手に向けて右腕を伸ばした その指先は温かく、男の震える手を包み込もうとするかのように開かれていた 周囲の野次馬たちはその光景を一言も漏らさぬよう食い入るように画面に収め、ネットのコメント欄は急速に言葉を失っていく 彼は許されたと思って良いのでしょうか。

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包帯の怪人は空を見る

包帯の怪人は空を見る 鬱蒼とした緑の深みに逃げ込むようにして 男は今日も歩を進めていた 顔全体を覆う白い包帯 それが男のすべてであり この世から隠したいもののすべてだった 巷では彼を「包帯の怪人」と呼ぶ SNSやテレビが面白おかしく騒ぎ立てたせいで 森の入り口には連日 メディアや野次馬が大勢集まっていた 向けられるのは好奇の目と 容赦のない蔑みの視線 男がそこへ行くのは 決して誰かを驚かすためではない ただの散歩であり 自分を値踏みする汚い視界から逃げるためだった 「ねえ おじさん」 木漏れ日の差す切り株の近くで 一人の少女が座っていた 怯える様子もなく まっすぐな瞳で男を見上げている いつもならすぐに反転して逃げ出す男だったが その純粋な眼差しに なぜか足が止まった 少女は隣のスペースをぽんぽんと叩き 男の話を聞かせてほしいと言った 誰にも心を開かなかった男が その静かな空間で ぽつりぽつりと語り始める 「仕事で 爆発が起きたんだ」 すべてを失ったあの日の火の海 炎に焼かれた顔 それ以来 自分の人生は暗闇に包まれたこと 男は包帯の奥から 絞り出すように真実を伝えた 少女はただ 黙ってそれを聞いてくれた それからしばらくして 少女は「またね」と言って一度森を出て行った 一人残された男は 静かに頭上の大枝を見上げた 包帯の隙間から見える空は どこまでも青く 澄み渡っている だが 自分の居場所はもう この世界のどこにもない 男は用意していた縄を 迷わず枝にかけた しばらくして 忘れ物をした少女が森へ戻ってきた 走って戻ってきた彼女の目に飛び込んだのは 木漏れ日の中で ゆらゆらと揺れる男の体だった 包帯の隙間から覗くその顔は 心なしか 穏やかに空を見つめているように見えた。

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英雄にふさわしい国

英雄にふさわしい国 冷たい雨が石畳の街路を濡らしていた かつては栄華を極めた連邦の首都も今では敗戦の影に沈んでいる 行き交う人々の表情は暗く灰色の空を見上げる者はいない その雑踏の中に一人の男が立っていた アルバートだ 彼はかつて連邦軍の二等兵だった 人類史上初の異世界戦争、通じて「幻想郷大戦」に駆り出された5万人を超える歩兵の一人 しかし彼がその戦場から持ち帰ったのは 名誉でも、勲章でもなかった 失われた右腕 失われた左足 そして決して癒えることのない深い心の傷だった 彼は今、松葉杖を頼りに雨に濡れた石畳の上に立っている かつての軍服は色褪せ汚れ、体の一部を失ったその姿はあまりにも痛々しい 手には雨水が溜まりかけた帽子を震える手で差し出していた それは彼に残された唯一の生業、物乞いのためのものだ 「……お恵みを……」 アルバートの声は雨音に消え入りそうなほど細かった しかし彼の前を通り過ぎる人々は誰も彼を振り返らない ある者は冷ややかな視線を向けある者は眉をひそめ、ある者は存在すら気づかないかのように通り過ぎていく 彼に感謝の言葉をかける者も彼の身を案じる者もここには誰もいなかった 彼がかつて戦った「幻想郷」 そこは彼のような凡人にはあまりにも美しく そしてあまりにも残酷な場所だった 彼はその地で何を見たのだろうか 何を感じたのだろうか。 彼の瞳の奥には今もその時の光景が鮮明に焼き付いている それは彼をPTSDという暗闇に閉じ込める 消えない呪縛だ 「……お恵みを……」 彼は再び声を絞り出す しかし、やはり誰も彼に触れようとはしない 彼の存在はこの街にとって敗戦という辛い現実を突きつける厄介な遺物のようなものだった。 その時一人の少女が彼の前に立ち止まった 彼女はアルバートの姿をじっと見つめていた 彼女の瞳はアルバートのそれと同じように 深い悲しみを湛えている。 「……あなたは……英雄なの?」 少女の言葉にアルバートはハッとした 英雄 その言葉が彼に向けられたのは一体いつ以来だろうか 彼は自分の失われた腕と足を そして汚れた帽子を交互に見つめた そしてゆっくりと、首を横に振った 「……違う……俺は……」 「……英雄よ……」 少女はアルバートの言葉を遮った そして彼の手から帽子を受け取ると自分の懐から 一握りのコインを取り出した それは彼女にとって決して安くない金額だったはずだ しかし彼女は迷うことなくそのコインをアルバートの帽子に投げ入れた 「……あなたは……私たちのために……戦ってくれたんでしょう?……」 少女の言葉にアルバートの胸は熱くなった 彼の瞳から一筋の涙が溢れ雨音に紛れて 石畳に落ちた 彼がこの街で初めて感じた温かい瞬間だった 「……ありがとう……」 アルバートの声は震えていた しかしその声には確かに希望の光が 宿っていた。 少女はアルバートに微笑むと再び雨の中に 消えていった。 アルバートは彼女の後姿をいつまでも 見つめていた そして彼の手には彼女から受け取った コインが確かに握られていた 冷たい雨はまだ降り続いている しかしアルバートの心には温かい光が 差し込んでいた。 彼は松葉杖を頼りにゆっくりと歩き出した 彼は生きている そして彼は決して一人ではない この国は彼のような英雄を決して忘れないだろう。

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英雄にふさわしい国

身近に居た不思議な子

これは小説としてではなく主の記憶を元に書いてます、決して差別的な意図はありません 保育園の頃から小学生の頃にかけて「太郎(仮)」と言う外国人のハーフの友達がいました、その子は食べることが大好きで力も強く体も大きい人でした、しかし常に?付き添いの先生が居たりクラスが違う時があったり当時の私は特に気にして居ませんでした その子はある時は感情的になり椅子を振り回そうとしたり(男子総出で止めた)教室を飛び出したり(男子総出で追いかけた)など奇行をしていました、優しくて運動神経もかなりいい友達だと覚えています。 小学生の頃、「B子(仮)」と言う生徒が一時的な入学?でいました、少し変わった子で喋る頻度がかなり少なく動きが遅い感じでした、ある日わたしが友達と鬼ごっこをしてるとB子の足に引っかかって倒れ擦り傷を作りました、当時の私が余所見をしていたのは間違いないのですが、B子は何も言わず、他の生徒達もB子を「なんか変じゃない?」と思い始めました。 投稿主より:私は診断や病院で検査はしてませんが、個人的には「何か」を持ってると思います、子供っぽく飽きっぽく空気も読めない、こんな私は今高卒で即就職しております。

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