青柳

15 件の小説
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青柳

青柳です。 2022.9.11 start 表紙イラストはアイビス様の素材、もしくはノーコピーライトガール様のイラストを使用させていただいております。 素敵なアイコン→ノーコピーライトガール様

正解

「何を選べばいい?」 正解のないこの世界はどうしても苦しい。 自分の定めた正解と、人の定めた正解は違うから わかりあうのは難しい。 1㎡の理想の中で生きてゆきたい。 自分の望んだ夢が見たい。 何を望んでも難しかった。 いくら努力したって何も報われない。 そんな自分に嫌気がさした。 自分の努力を一番わかっているのは自分自身。 けれどもそれを認めてやることができない自分が嫌だった。 「努力しなさい」 もうとっくに頑張っている。 一日一日を精一杯生きている。 それは頑張ったことに入らないのですか? もっと頑張らなくてはいけないのですか? やはり難しい。 何をするのが「正解」なのだろう。 もしかすると正解なんてはじめから無かったのかもしれない。 春のようなあたたかさが欲しい。 夏のような青さが欲しい。 秋のような心地良さが欲しい。 冬のような儚さが欲しい。 そんなに欲張ってはいけないかもしれない。 けれど、きっと今の私にはそれらが必要なのだ。 社会という箱の中に閉じ込められて 何も見えなくなったとしても いつかきっと、その先に光が見える。 そう信じているから伝えることができる、 書くことが、 歌うことが、 踊ることが、 笑うことができる。 私の「正解」は、きっと 私にとっての「正解」だから。 −−− イラスト…ノーコピーライトガール様

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正解

無題

月が満ち満ちている頃、蛍がないた。 この世界に絶望したのか、それとも喜びを感じたのか。 ほんの刹那の羽音は私の耳に小さく響いた。 どこかの街の誰かの声が聞こえる。 「ああ、良かった」 その誰かは笑っている。 張り付けたような笑顔で。 そして、泣いていた………。 朝日が地平線から顔を出した時、 目覚まし時計が歌った。 そしてどこかの誰かは気だるそうにそれを止めた。 「はあ」と大きなため息をつき、 まだ登ったばかりの朝日を遠い目で眺めていた。 冬の夕暮れ時、蝶が静かに動きを止めた。 白百合の花弁に青い羽が映える。 冬の冷気にさらされ、蝶は動かなくなった。 永久に………。 −−− あとがき 拝読ありがとうございます。 調べてみたところ、実際に蛍は鳴かない(泣かない)そうです。 白百合は春に咲く花らしいです。 衝動で書いたので、温かい目で見ていただけると幸いです。 −−− イラスト…ノーコピーライトガール様

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無題

Cello

深い飴色の低音は 奏者の腕の中で 静かに微笑んでいた。 重低音から華々しい高音まで、 変幻自在のそれは 美しくも荘厳に響いた。 四本の弦は共鳴し、 ひとつの和音を作り上げる。 弓はゆっくりと、 しだいにはやく、 そして遅くなる。 ビブラートをきらめかせ、 絃を弾き、 心地良さそうに輝く奏者は 他の奏者とは異なる 楽しそうな音を奏でていた。 奏者が奏でるクラシックは どこか近代的で美しかった。 そして何より 楽器を抱きしめる奏者の笑顔は チェロの宝石のような飴色に負けないくらいに 華々しく輝いていた。 チェロはそんな奏者に抱きしめられて 笑った。 それを奏者は見つめていた。 美しいコバルトブルーの瞳が 飴色のチェロを映す。 ブロンドの癖のある髪は ステージの明かりに照らされて 柔らかく輝いていた。 そして奏者はステージ全体に響き渡るような、 今にも弾けてしまいそうで、壮大な 愛と絆の音を贈った。

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月光に照らされる君は。

※この作品は過去作のリメイク作品です。 それは本当に、短い時間だった。ほんの少しの月光が、僕を変えた。君はきっと、泡沫のように儚い人だったのだろう。君の笑顔はもう、僕の記憶から消えてしまった。なんてむごい話なのだろう。けれど、僕は不思議と悲しいとは思わない。だって確かに君と僕は出会ったのだから……… 君は確か、僕がベッドに入る少し前に窓をノックした。何事かと思ったよ。だってブロンドの髪をさらさらと風に落として微笑んでいる少女がいたのだから。初対面のはずだったのに、僕はなんだか昔会ったような、物悲しくて、懐かしくて、そして会いたかったという気持ちに襲われてしまった。 「こんばんは」 君は静かにそう言った。 「何をしていたの?」 大きな水晶の瞳を思い切り細めながら君は尋ねた。 眠ろうとしていた、という言葉を押し込んで、「何も」と無愛想な返事をおくった。なぜそう答えたのか分からない。けれど、僕の心臓の片隅でそう答えて良かった、とつぶやく自分がいた。 床に散らばった譜面がきらきらと輝いている。 「作曲をしているの?」 君は何かを見透かしたように聞いた。僕は彼女をじっと見つめ、それからピアノの前に座った。黒く光る「それ」はあやしげな美しさを放っていた。それが月の光を受けて幾分も恐ろしく見える。鍵盤に手を置き、メロディを奏でる。心が落ち着くような、魔法の森で微睡んでいるような、そんなメロディ。弾き終わった後、彼女は僕を見つめた。 「この曲……、私みたいね」 互いの間に沈黙が訪れる。しばらくして彼女は驚いたような顔をして口を開いた。 「ああ…、ごめんなさい。なんだか少し、私みたいなところがあるな、って、思って……」 しどろもどろになりながら彼女は言った。 ………。 「そうだよ」 無意識のうちに僕は答えていた。 「君を見たときに、真っ先にこのメロディが流れてきたんだ。君と僕は初対面だ。けれどそれでいて、どこか懐かしい。そんな音が聞こえた」 うっかり話しすぎてしまった。音楽おたくだと思われてしまっただろうか…。おそるおそる君を見ると、君は驚いた顔をして僕を見つめていた。 「即興演奏…」 君がそう呟いた声が僕の耳にもはっきりと聞こえた。君は笑った。笑って、笑って、そして泣いた。 「ありがとう」 小さく鈴のような声が静かな部屋にこだました。 純白のワンピースの袖で涙を拭い、ブロンドのストレートヘアを風になびかせて、君は目を細めた。そして満面の笑みで僕の顔をのぞいた。 「空を飛ぶことに興味はある?」 頭がおかしくなってしまったのかと思った。 「え?」 僕は聞き返した。そんな馬鹿げた話、あるわけがないだろう。そう思っていた矢先…。 僕の体はふわりと宙に浮いた。そして大きな窓を通り抜け、僕は夜空に放り出された。僕より幾分も高い木を下に見ながら、先を行く彼女の後を追った。 「君は」 誰………。 そんな言葉を飲み込んで彼女を見つめる。彼女は何も言わないまま、先を急いだ。どこに行くのか、この先に何があるのかという例えようもない恐怖と、彼女に対するほんの少しの不信感に苛まれて、僕は放心状態だった。そんな僕は、宇宙空間を漂うただの燃えかすのように震えていた。 しばらくして、彼女は止まった。目の前には見たこともないような骨の残骸と、寂しそうに座る彗星の姿があった。彼女は静かに涙を流した。そしてそれきりその残骸を見ることはせず、ただ僕を見つめた。その後ろで、彗星は僕に何かを伝えようとしていたが、僕はやはり彼女だけを見つめていた。 「行こう」 と、静かに伝えた。彗星は涙を流し、僕たちを背に乗せた。彗星は僕に言った。 「ありがとう」 もうわけがわからなかった。僕は彗星に苦笑することしかできなかった。 彗星から降りて、僕たちはまた浮遊した。彼女は機嫌が戻ったようで、細部までは思い出せない、儚く美しい笑みを浮かべていた。 「さあ、踊りましょう?」 どこからか聞こえてくる4分の3拍子のリズムが僕に「踊れ」と言っているかのようで、少し怖かった。彼女の透明なパンプスが、トントン、と優雅に響く。月の光を織り込んだような美しい瞳をこちらに向けて、君は言った。 「大好き!」 ………。 一瞬、時が止まったのかと思った。僕は自分の顔が赤くなっている、と、鏡を見なくても分かった。 その時、ようやく思い出した。 彼女は、そう……。僕の………。 その瞬間、彼女は跡形もなく散った。僕が思い出した所為だろうか。前世なんて信じていなかった。けれど、今はわかる。なぜ今まで忘れていたのだろう。君は、前世で僕が一番愛した人だ。不器用な愛を君に注いだ。 ………。 雨は止まない。 「月が綺麗ですね」 不器用な僕はそう言った。君はその意味を知らなかったようだけど。だから言わせてほしい。本当の意味を。 僕は君が消えた空に微笑んだ。 「愛してる」 嘘偽りのないこの言葉を、君に贈るよ。 気がつくと、僕は自室に戻っていた。確か…、空を飛んだ……? ………。思い出せない。君の笑顔も思い出せないよ…。時計は、僕の就寝時間の数分前を指している。 「こんばんは、何をしていたの?」 さあ、本当に何をしていたのだろう。 −−− あとがき こんにちは、青柳です。小説らしい文章を書く、というのは久しぶりです。この作品は「月光に照らされる君は。」という作品のリメイク作品です。ぜひそちらも見ていただけると嬉しいです。原作とは少し違うところもありますが、ぜひ比較して、楽しみながら読んでいただきたいです。拝読ありがとうございました。 −−− イラスト…ノーコピーライトガール様

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月光に照らされる君は。

Trombone

入道雲を背景にして 奏者は深く呼吸した。 己の魂を込め、 周りの空気を吸い、 一心不乱に息を吐き続ける。 その息から生まれた音は 周りの景色を振動させた。 地響きを身体中に感じ、 その壮大な音を美しく思った。 トロンボーンは「神の楽器」 教会音楽で重宝された、 由緒ある楽器…。 奏者はトロンボーンを奏でられることを 誇りに思っていることだろう。 優しい眼差しで、 微笑みながら、 力強く……。 奏者はトロンボーン特有のスライドを 高く掲げ、 空に向かって快い音を響かせた。 トロンボーンは太陽の光を受けて 神々しく輝いている。 夏の日差しは奏者の肌を焼き、 陽炎は踊っている。 それでも奏者はそれを吹き続けた。 トロンボーンは奏者の優しい腕の中で 気高く微笑んでいた。 世界一幸せな神の楽器は 奏者を思い、 金色の日差しの中に ひとつの愛の音を響かせた。

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Trombone

月の砂漠

真珠のような「それ」は 太陽の光を受けて ただ静かに輝いていた。 「それ」を見守る星々は 銀の笑みをたたえ、 「それ」の周りを くるくると回っていた。 見えないベールを纏った「それ」は ただ優しく どこか物悲しく 何も言わずに目を閉じた。 そして流れに身をまかせ、 ふわりふわりと空中を浮遊した。 月(それ)は海を持っていた。 水の無い、 静かな海を。 月の海は砂漠のように広かった。 月の砂漠は銀色の砂を抱えて ただ静かに揺らいでいる。 空のお星は その砂を眺めて 羨ましいと歌う。 真珠の月は どうでも良いと言うような顔をして その砂を宇宙に投げた。 その砂はさらさらと流れて行き、 お空の藍に溶け込んだ。 月の砂漠は宇宙を作り、 星を作る。 その星は、宇宙(そら)は 今もずっと 輝き続けている。

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月の砂漠

Trumpet

夏の海。 砂浜。 辺り一面の青。 その青にひとすじの音が まっすぐ ただ前を見つめて、 快く駆け抜けていった。 トランペットの高音と青が調和して 神秘的なハーモニーを奏でている。 奏者は笑顔だった。 楽しげに、 いたずらっ子のように、 そして美しく。 希望に満ちた瞳を きらきらと輝かせていた。 楽器を演奏しながら、 奏者は海に足を浸した。 打ち寄せる波は奏者の足を撫でる。 奏者は目を細めた。 ルビーのような太陽が 奏者の身を焦がす。 奏者のラピスラズリの瞳の中で 赤い太陽が笑っていた。 その太陽はトランペットを映し出して 金色に光る「それ」を ただ一途に見つめていた。 奏者は口元を綻ばせて 精一杯の愛の音を鳴らした。 その音は空の青と 海の青に溶けることなくこだました。 そして今もずっと 無垢に輝き続けている。

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Trumpet

Kontrabass

弓を持つ。 絃を押さえる。 華々しいファンファーレと共に 飛び出したのは 深い低音だった。 空気を振動させる。 重厚な音色がただ静かに歌われる。 絃を押さえて厚くなった指の腹。 演奏と共に開花していく実力。 滑らかな音色。 底知れない低音。 存在感が大きいが、 とても優しい音を奏でる。 前に踏み出すことはせず、 ずっと後ろから支えている。 縁の下の力持ち。 この楽器の奏者は 何を考えているのだろう。 何を思い、 何を信じ、 何を愛するのか。 その答えは奏者の姿に表れていた。 凛とした立ち姿に 黒の正装。 楽器を奏でる優しい手。 奏者の瞳は 指揮者と楽器だけを映し、 奏者の手は ただ静かに弓を動かしていた。 奏者の顔から笑みが溢れた。 コントラバスのような優しい笑顔。 ああ、 奏者はきっと愛しているのだ。 この楽器を、 コントラバスを。 きっと、何よりも 愛している。

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Kontrabass

Oboe

六月。 梅雨。 雨が降っている。 湿度が高く、 楽器にとって劣悪な環境だ。 他の校舎から離れた第四校舎。 そこでひとり、 楽譜とにらめっこする。 沢山の運指を覚えて 指を動かす。 黒く細長いボディは 銀色のボタンを光らせ、 楽器の上部には 演奏の源となるリードが立っている。 オーボエ特有の美しい音色が 静かな第四校舎を包み込む。 繊細で、 力強く、 あたたかく。 そんなオーボエのことが大好きだ。 他とは違う「何か」を感じる 芯のこもった音色。 じめじめした空気が オーボエの音色で浄化されていく。 オーボエの音色は 美しい群青色で どこまでも羽ばたいて行けるような 羽を持っていた。 嗚呼、自由だ。

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Oboe

Flute

冷たい朝。 空気を微かに振動させる。 指が冷たい。 誰もいない音楽室にひとり。 まだ暖まっていない楽器に 息をおくる。 冬の静かな空気の中にひとつ、 B♭の音が鳴り響いた。 私はあと何音か吹いて 楽譜を開いた。 音を目で追う。 それに合わせて ほんの少しだけ息を送り込んで演奏する。 本番だ。 十六分音符の羅列から始まるこのパターンは もう何度も見た。 何度も練習した。 指が、 耳が、 身体が覚えるまで 何度も……… 銀色の美しいボディが日光に反射して 宝石のように輝く。 冷たかった音楽室は太陽の光で溶かされた。 肌寒さを残しながらも 太陽は定位置についた。 私はフルートと一緒に楽譜を追い続けた。 そしてフルートに微笑みかけ、 小さな愛の音を贈った。

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Flute