水彩絵の具
16 件の小説ぼくは
「 特技はありますか 」 なんていう質問が1番嫌いだった。 僕には特技がなかった。 いや、自身の特技に気づいていないだけかもしれない。 そんな可能性は髪の毛先にも満たないけれど。 勉強は中の上程度。 70人中のテストをした場合、28位ぐらいだろうか。 真ん中でもなければ、特別頭がいいというわけでもない。 ぱっとしなかった。 運動なんてものは僕の敵だった。 対して得意でもない球技の部活。 球技なんて1番苦手なはずなのに。 強いて言えば、足が少し速いくらいだろうか。 小学3年からピアノを習っていた。 発表会にも出たし、級だって持ってる。 でも、いうほど好きじゃなかった。 好きでもないものを特技なんて言えないだろう。 野球部に特技を聞けば“野球”と答えるだろうし バスケ部に特技を聞けばきっと“バスケ“と答える。 僕はバレーボール部だけれど 特技を聞かれて“バレーボール”と答えられるほど上手ではない。 みなさんに特技はありますか。 特技はなんですか、と聞かれて 答えることはできるでしょうか。 もし答えることができたのなら きっと自分自身のことをよく理解しているのだと思います。 僕はまだ理解しきれていない。 ただ、それだけだ。
透明さん、消えないで
目の前に、いた。 大好きだった人が。 死んだと、思っていた人が。 微かに透けながら、それでも、いた。 こちらを見ながら、優しく微笑んでいた。 “なんで…、いるの…? 死んでなかった…ってこと…?” 驚いて、嬉しくて、言葉が出てこない。 “神様がね…お願い、叶えてくれたの” にっこりと微笑みながら。 微かに透けながらも、そこにいたの。 自分がよく知っている人が。 “…心配してたんだよ? 私がいなくなっても、大丈夫なのか” ゆっくりと、透明感のある声で。 大好きだった声で、言ってくれた。 腕を伸ばして、頬に触れてくれる。 熱いものが止まらない。 自身の顔は、涙でぐしゃぐしゃになっているのだろう。 “でも…大丈夫そうだねぇ…” ほんのりと笑いながら。 頭をゆっくりと撫でてくれながら。 その体は、うっすらと消えていく。 “あんまり長く入れないって言ってたからなぁ… もう、時間だね…” 手を頭から離す。 あぁ、行かないでくれ。 もう離れないでくれ。 悲しくて、寂しくて、何も出来なくなる。 “…行かないで……” 気づけば、呟いていた。 泣きながら、抱きついていた。 彼女は、微笑みながら。 涙を流しながら。 抱きしめ返してくれた。 “…ごめんねぇ…死んじゃって… でも、きっと、大丈夫…” 彼女の体は、半分以上消え掛かっていた。 行かないで。 消えないで。 ずっとここにいて。 “…大好きだよ…” 1言告げた瞬間、彼女の体はふわりと消えた。 空を抱きしめていた。
先生、質問です。
先生、質問してもいいですか。 人間関係は、どうしたらいいですか。 私にはわかりません。 誰とどう付き合えばいいのか。 友情が崩れないようにする方法はあるんですか。 受験に受かるには、どうしたらいいですか。 勉強しているのに、わからないのです。 真面目に授業を受けているんですが。 先生のようにはなれるんですか。 人を信用するには、どうしたらいいですか。 もう誰も信用できません。 いつかは裏切られそうで、怖いんです。 いっそ、孤独になった方がいいのですか。 人生楽に生きる方法は、あるんですか。 何もしたくないんです。 なぜなんでしょうか。 先生は、楽に生きてこれましたか。 私のいいところはどこですか。 考えても、悪いところしか思いつきません。 勉強も運動も平凡です。 1つくらい、思いついてくれませんか。 先生、私はなんですか。 なんのために生きているんですか。 私は一体誰なんですか。 私が納得するような、そんな解答はありますか。
、。
部活、行きたくないな。 部活、休んじゃおうかな。 部活、ずる休みしちゃった。 “体調不良”の文字を送って。 あとはのんびり暮らすだけ。 外に出れないのは寂しいけれど。 たまにはいいよね。うん。 LINEの通知を開いてみたら。 新しいバレー部のグルラができて。 間違って既読つけちゃったけど、大丈夫だよね。きっと。 少しの幸福感と、少しの罪悪感。 甘く苦く混ざって、ほろ苦い味。 “体調大丈夫?”の気遣いが、なんだか心に響くんだ。 “体育祭の疲れが溜まってたから”と根も葉もないことを言ってしまう。 体が痛いという体調不良。これで嘘ではないけれど。 心が体調不良かな。どうしても行きたくないんだよな。 行きたくない。 休みたい。 休んじゃおうかな。 休んじゃった。 このループがずっと繰り返されて。 行かなくていい、という幸福感と。 ごめんなさい、という罪悪感と。 あとはちょっぴり劣等感。 こんなことで休んでる私、バカみたい。 みんなは強いんだね。私は弱いんだよ。 知ってると思うけど。 、ずる休みしちゃったね。
努力。
「腕をしっかり引く」 とか 「正面で捉える」 とか 頭ではわかってるんだけどな。 それがどうしてもできなくてさ。 先輩とか友達とかは、簡単にやってのけちゃうけど。 私にはできないことなんだ。 自分の体の使い方がわからなくて。 どこをどうすれば力が伝わるのか。 よくわからなくて。 だから、人一倍努力しなきゃいけないんだ。 他の人は10回やったらわかることを。 私はきっと20回やらなきゃわからない。 優しいサブコーチのアドバイスとか。 友達に教えてもらったコツとか。 他に人が教えてもらっていることなんかも。 全部ノートに書き留めて。 あとから見直して、今日はどれができなかったとか。 今日はこれができたから、明日はこの部分、とか。 人がやってなさそうなことまで、私はやらなきゃいけないんだ。 並大抵の努力なんかじゃ、私は追いつけないから。 もとから運動神経なんてなかった。 人より、ほんの少しだけ足がはやいだけだった。 その他はなんにもできなかった。 だから、人よりハンデがあるかもしれないけれど。 その部分を追い越して、追いつかなきゃいけないんだ。 チームの足なんて引っ張ってられないから。 私のせいで負けたとか、言われたくないから。 下手なのにユニフォームもらうなとか、言われたくないから。 私は努力しなきゃいけないんだ。
はっぴーばーすでー。私へ。
はっぴーばーすでー、私。 お誕生日おめでとう。 1年に1回だけの、特別な日。 今日だけ、ちょっとわがままでもいいよね。 大きいショートケーキ食べたり。 小さくってかわいいプレゼントもらったり。 友達とたくさん話したりさ。 ずぅっと、この時間が続けばいいね。 ーー こんにちは。水彩絵の具です。 実は3月19日、私の誕生日です。 プロセカの桃井愛莉ちゃんと一緒。 これだけは自慢できます。笑 それでは、また会う日まで。 本日がみなさんにとって素敵な日でありますように。
いーね。
いーね。 頭がよくて。 努力してるんだろうけどさ。 私はそこまでできないな。 いーね。 顔が整ってて。 美容のこと詳しいんだろうね。 前髪命って言ってる人の考えてること。 私にはわかんないや。 いーね。 人気者で。 そういう性格なんだろーね。 ただ突っ立ってるだけでも人が集まってくるの。 私は存在感がないからな。 人への「いーね」がたまってさ。 どんどん「いーな」になってくんだ。 裏で悪口言ってる私。 性格悪いね。わかってるけど。 嫉妬?妬み? どっちもか。 ごめんね。こんな奴で。 サイアクだね。 でもこう思っちゃうんだよ。 自分が情けないからさ。
水彩
人生の中で。 1度くらい青春してみたいな、なんて思った。 私の中のモテ期なんかはきっともう終わってしまったけれど。 高校生は真夏の中で友達とプール掃除してみたいし。 部員の人たちと食べ歩きだってしてみたい。 そんな、真っ青で、水彩みたいな人生を生きてみたい。
舞う。
右手が真っ赤になるぐらい練習したんだ。 それでも無理だった。 体をグッて反って。 その反動で打つ。 それがオーバーサーブ。 これがどうしようもなく入らない。 ネットに届く前に弱々しく地面に着く。 そのあとはテンテンとボールが軽く跳ねて、転がっていく。 これを繰り返していたんだ。 先輩の打ち方を真似してみたり。 強いサーブが打てる友達を真似してみたり。 ある時は優しいサブコーチにアドバイスをもらってみたり。 でも、何をしてもダメで。 強く打つ練習をしてみても。 ボールを遠くに投げる練習をしてみても。 9mなんて届かない。 それどころか、6mも届いているのかわからない。 どれだけ練習しても、背番号だって上がらないし。 努力して報われたことなんて、今までもこれからもない。 努力なんて、花びらみたいに散ってどっかへ舞っちゃうんだ。
明日。
“明日”が怖い。 ただそれだけだった。 ただただ明日が怖かった。 他の人たちの視線が。 みんなの考えていることが。 親友に危害が加えられてしまうかもしれないことが。 明日に起こってほしくなかった。 この夜が続いてほしかった。 明日なんて、なくなってほしかった。 きてほしくない。 この世界から消えて、なくなってほしい。 人生という名の道に立って。 “明日”の扉の前に立って。 でも、その扉を開けることが怖くて。 どうしても、開けることができなくて。 その場にうずくまって。 俯いてしまって。 ぽたぽたと雫が絶えなくて。 こんな自分が不甲斐なくて。 起こってほしくないこと。 それがたくさんあったから。 夜が明けぬよう願ってしまう。 自然の原理は変わらないし。 瞳を閉じたら“明日”になってる。 イヤだった。怖かった。 考えたくもなかった。 消えてしまいたかった。 でも、原理には抗えなかった。 どうしても、明日は来てしまった。 それなら。それだったら。 せめて、明日を楽しみたい。 恐怖なんてなくて。 ただ笑顔になりたい。 本物の、貼り付けたような笑顔じゃない。 それが、ほしい。叶えたいもの。 私の、生きがいとなってほしいもの。 さぁ、明日へ踏み出そう。 “明日“への扉を開けて。