水彩絵の具
29 件の小説第6回N1 壁の向こうは。
“ねぇ待ってよ!!” 空が真っ赤に燃えた夏の夕方だった。 荒く乱れた呼吸の中、必死に足を動かして。 スクールバックの紐を握りしめたまま、私は口を開けていた。 “……” 前を進むあの子は止まらない。 綺麗に切られた後ろ髪を揺らし、走り去っていく。 そのまま曲がり角を走り抜け、その子の姿は見えなくなった。 “なんで…どうして…!” この状況を頭に流し込めない。 わかりたくなかった。 涙で前が見えないまま、その場に立ちすくんでしまったんだ。 __ いつからこうなってしまったんだろうか。 友情にひびが入り、見えない壁で遮られているような、この関係。 どうしても、あの子は壁の向こうにいるんだ。 “ずっと…友達でいようって。約束したはずなのに…” 真っ黒なスクールバックについたお揃いのキーホルダーを見ながら、そう呟いてしまった。 中心からジグザグに切られたハートのキーホルダー。 もう片方はあの子が持っていた。 くっつけると1つのハートになるんだ。 前はそのキーホルダーが愛おしくてたまらなかった。 隙があればそのハートを掲げて、 “おそろいだね!” と言っていたものだ。 しかし、今はそうではない。 見えない壁で遮られた関係。 どうしても、その壁を越えられないんだ。 いつも、壁の向こうにはあの子がいて。 私はその先へ進めない。 触れられそうで、触れられないんだ。 手を伸ばしても、届かない関係性にまでなってしまったんだ。 ーー 次の日のことだった。 “…!お、おはよ…” 声をかけても立ち止まらない。 足早に階段を駆け上る。 その時、その子のスクールバックが揺れた。 “…あ……” 黒色のスクールバックに、ハートのキーホルダーの姿はなかった。 前までは目立っていたはずだった。 ピンク色のハートのキーホルダー。 見えない壁ができていても、キーホルダーで繋がっていた。 そう思っていた。 ただ、それは私の思い込みだったんだ。 “見えない壁……か” 前までは薄く、壁越しでも相手の顔が見えるぐらいだった。 ただ、今日、この瞬間で、一気に壁は分厚くなった。 もう一生超えられない。一生手は届かない。 __ 帰り道、家路の近くにある大きな川に寄った。 前までは一緒に帰っていた帰り道。 それも、今ではひとりぼっち。 “もう、これもいらないかな” そう言って、スクールバックからキーホルダーを外す。 黄色のハートのキーホルダー。 2つ合わせると1つになるニコイチだった。 “今は、このキーホルダーと同じ立場か” 壁は分厚く、もう絶対に越えられない。 それを今日知ってしまった。 キーホルダーを手から滑らせた。 それは、川へ深く沈み、見えなくなった。 “…これでよかったんだ、きっと” もう届かないことを知っているから。 持っていてもしょうがないんだ。 壁が取り除かれることはないし。 これ以上分厚くなることも、もうないだろう。
怖いな。
怖いな。 同じ部活のアノコが。 親から怒られるのが。 背中に溜まるプレッシャーが。 「ちゃんとやったほうがいいよ」 って言われたけどさ。 あれでも真面目にやってるんだよな。 「無視されたんだけど」 って小声で言ってたけどさ。 一応返事したんだよな。 あと、それを本人の前で言うのはどうかと思うけど。 結構グサってくるんだよな。 私はそこまで本気じゃないからさ。 サボれるところはサボりたいし。 走るのも最低限なんだよな。 まぁ、試合に出れたら嬉しいけどさ。 部活に行くのはちょっと憂鬱なんだよな。 毒舌で注意されるのは怖いからさ。 意外とメンタル脆いんだ。 そりゃあ、私よりも上手いとは思うけど。 もう少し優しい言葉で注意できないかなって。 心のどこかで思ってるんだ。
なんかイラスト。
こんにちは。水彩絵の具です。 旅行中に描いたらくがき。 話のネタがすっからかんになったんでイラスト投稿。 ハイキューの孤爪研磨くんです。 筆箱に入ってたマーカーペンで色塗りもしました。 暇だったからです。笑 旅行の帰りの飛行機でゴミ捨て場の決戦をスマホで見ました。 1回お友達の家で見たんですけど、もう1回見ても感動もの。 好き。次の映画は絶対に映画館で見ると決めてます。 早く完成しないかな。 それじゃ、また会う日まで。
はっぴーばーすでー。私へ。
はっぴーばーすでー、私。 お誕生日おめでとう。 1年に1回だけの、特別な日。 今日だけ、ちょっとわがままでもいいよね。 大きいショートケーキ食べたり。 小さくってかわいいプレゼントもらったり。 友達とたくさん話したりさ。 ずぅっと、この時間が続けばいいね。 ーー こんにちは。水彩絵の具です。 実は3月19日、私の誕生日です。 プロセカの桃井愛莉ちゃんと一緒。 これだけは自慢できます。笑 それでは、また会う日まで。 本日がみなさんにとって素敵な日でありますように。
いーね。
いーね。 頭がよくて。 努力してるんだろうけどさ。 私はそこまでできないな。 いーね。 顔が整ってて。 美容のこと詳しいんだろうね。 前髪命って言ってる人の考えてること。 私にはわかんないや。 いーね。 人気者で。 そういう性格なんだろーね。 ただ突っ立ってるだけでも人が集まってくるの。 私は存在感がないからな。 人への「いーね」がたまってさ。 どんどん「いーな」になってくんだ。 裏で悪口言ってる私。 性格悪いね。わかってるけど。 嫉妬?妬み? どっちもか。 ごめんね。こんな奴で。 サイアクだね。 でもこう思っちゃうんだよ。 自分が情けないからさ。
またね
消毒液の匂いが充満した病室。 君は横たわっていた。 “もう、死んじゃうのかな” そう言って、微かに笑みを浮かべた。 乾いた、壊れそうな笑顔だった。 “そんなこと言わないで” と。こんなことしか言えない自分。 そんな自分が大嫌いだった。 “無理だよ。…体に力が入らないし” 耐えられず君は涙を流した。 手も足もほとんど動かない。 “やめて。お願いだから” 寿命のことなんか聞きたくない。 また一緒にアイス食べようって。 約束したはずなのに。 “私…もう無理だ“ やめて。離さないで。 次会えるのかどうかわからないのに。 “人生、楽しかったよ” あぁ、そんな、終わりみたいに言わないで。 一生会えないみたいにさ。 “バイバイ。…いや” “またいつか、会おうね”
折セカ:サイドストーリー
“んー…どうしようかな……” 自分の部屋に入り、床に座る。 ぺたっと目の前の机に突っ伏した少女の名は、如月響。 “やっぱ特技って多い方がいいよな…… ショーする時にも便利だし有利だと思うし……” 案がまとまらないのか、う〜んと頭を抱える。 自分のスマホに指を滑らせ、ノートにシャーペンを走らせる。 だが、気に入らないのか、ページをぐしゃっと掴んでちぎった。 そのままゴミ箱へ乱暴へ投げる。 現在の彼女の特技は「歌うこと」と「バイオリン」 これでも十分だと思うが、他にも特技を身につけたいらしい。 “やっぱりそう簡単には見つからないか… 特技は速読です。とか言われてもピンとこないよな……” お菓子作りが出来てもショーにはあまり関係ないし…とこぼす。 ぼふっとベッドに倒れ込んだ。 スマホを掲げてスライドさせる。 “気分転換にセカイにでも行こうかな” そのままポチッとボタンを押した。 その瞬間、煌びやかな光と共に、彼女は部屋から消えていた。 ーー “よっ…と” うまいことセカイに着地した響。 そのままどこへ行くこともなく、足を進める。 ふと、目の前の棚に目を止めた。 “…こんなとこに本棚なんてあったんだ” セカイのことはなんでも知っているつもりだった。 でも、まだ知らない部分もあるらしい。 そこが面白いと彼女は感じていた。 “…「自らを信じて」…?” 目に止めた本の題名を読む。 そのままパラパラとページをめくった。 ふと、文の中のワンフレーズが気になった。 “「無理に自分を崩さなくていい 自分を1番知り、1番愛せるのはただ1人、自分なのだ」” 響は目を見張った。 自分の思わぬことが書かれていたからだ。 “…そっか。そう…かもな” 響はくるりと踵を返し、走って元の場所へ戻っていった。 彼女がすぎた空は、青く澄んでいた。
夏色らむね
爽やかな風が走り抜ける、真夏の日のことだった。 2人で学校をサボった日。 空は真っ青で、それでいてどこか透明で。 美しい白い雲も。その中だと引き立て役のようだった。 風は、自転車に乗る2人のワイシャツを、すり抜けていった。 “夏っていいね” って。 ラムネを飲みながら、2人で笑いあってた。 空っぽになったラムネ瓶を空に透かして。 “2人の宝物だね” 君はにっこり笑ってた。 それが、君と過ごす最後の夏。 数日後のことだった。 君は、電車に轢かれて死んだ。 踏切を渡っていただけだった。 電車が突っ込んできたんだ。 君は、僕を庇って死んだ。 頭が真っ白になって、何も考えられなかった。 どうしようもなく、泣き叫んだ。 どうしようもなく、苦しかった。 1人、世界から消えただけで。 こんなにも苦しくて。 こんなにも辛くて。 こんなにも、耐えられないのか、と。 どうにもできない自分がもどかしくて。 布団がぐっしょり濡れるくらい、泣いて、泣いて。 ただただ泣くことしかできなかった。 空っぽになったラムネ瓶も。 水滴が付いて湿ってた。 それから1年後のことだった。 蝉がうるさいくらい鳴いてる、真夏の日。 その日。学校をサボった。たった1人で。 風が髪を揺らした。ワイシャツをすり抜けた。 君が大好きだった駄菓子屋で。 お気に入りのラムネを2本買った。 いつもの公園のベンチに座って。 冷えたラムネをしゅぽっと開けた。 1本を、隣に置いて。 “ずっと、一緒に過ごしたかった” ポツリと呟いてしまった。 真っ青な空を見上げながら。 特別な友達だと思ってた。 でも、違った。 “好き” という気持ちを抱いていた。 前々からわかっていたことだ。 ただ、それを認められなくて。 認めてしまったら、一緒に過ごせない気がして。 でも、違った。伝えればよかったと。 後悔のような気持ちも現れた。 “……ごめん” ポツリ。一言こぼした。 空はいつものように青く、そして透明だった。 あの日と、同じだった。 透明になった君が、隣に座っているようだった。
水彩
人生の中で。 1度くらい青春してみたいな、なんて思った。 私の中のモテ期なんかはきっともう終わってしまったけれど。 高校生は真夏の中で友達とプール掃除してみたいし。 部員の人たちと食べ歩きだってしてみたい。 そんな、真っ青で、水彩みたいな人生を生きてみたい。
舞う。
右手が真っ赤になるぐらい練習したんだ。 それでも無理だった。 体をグッて反って。 その反動で打つ。 それがオーバーサーブ。 これがどうしようもなく入らない。 ネットに届く前に弱々しく地面に着く。 そのあとはテンテンとボールが軽く跳ねて、転がっていく。 これを繰り返していたんだ。 先輩の打ち方を真似してみたり。 強いサーブが打てる友達を真似してみたり。 ある時は優しいサブコーチにアドバイスをもらってみたり。 でも、何をしてもダメで。 強く打つ練習をしてみても。 ボールを遠くに投げる練習をしてみても。 9mなんて届かない。 それどころか、6mも届いているのかわからない。 どれだけ練習しても、背番号だって上がらないし。 努力して報われたことなんて、今までもこれからもない。 努力なんて、花びらみたいに散ってどっかへ舞っちゃうんだ。