瑠璃
5 件の小説ヒト
人って強くて弱い生き物なんだなって
反面教師
私が小学生の頃ある国語の授業でそれぞれが黒板に漢字練習帳で練習した漢字を書くということをしていた。私が担当した漢字は ”旗” という漢字だ。 当時小学4年生の私には自習をするという週間はなくまったく覚えていなかった。友達に聞くことも出来ず仕方なく先生に聞きに行くと 「なんでこんな漢字も覚えてないん?」 と言われ呆然とし何も言えなくなった。 この後結局教えて貰ったが嫌そうな顔をしながら黒板に書き、すぐに消された。 小学生だからと舐められていたのだろうか。 知っているだろうか子供は大人の顔色など目敏く気づく。 いい反面教師となったに違いない。
海岸線
最近おかしな夢を見る。嵐が吹き荒れる天候の中、どす黒く濁った海へ落とされ、もがくまもなく飲み込まれた。 呑み込まれると必ずと言っていいほど何かに口を塞がれて酸素を持っていかれる。 そして、全身びっしょりと冷や汗をかいて目覚めるのだ。体には粘りけのある液体が手や足、腕にまとわりついていた。 そして、声変わり前のような表現し難い音。その言語も分からないのに、一心に誰かを非難するように聞こえた。
無題
突然死にたいと思うことが多々ある。 日常生活の中で事を済ましている途中責任も自分がしなければならないこともすべき事も何もかもを投げ出して死にたいと。 目の前のことから逃げていると思うだろう。 でもそれをあなたに言う資格は無い。 そもそも人には我慢の容量というものがある。 そして今は令和だ。 昔はああだったかもしれないがもう時代はうつり変わっている。 やれ最近の若者はとも聞くがこちらから見れば今までに何を学んだ?と言いたくなるような腐った蜜柑共。 世の中の地獄を味わってから発言して欲しい。 ……まぁ、味わってもあなたの役にも立たない経験からのアドバイスなんていらないけれど。
人影
私は週末に家族でよく温泉に行く。 父親が無類の温泉好きでよく一人でも行くことがある。 そしていつものように家族で出かけた時のこと。 「いや〜温まったな!」 「そうね〜湯浅も楽しめたかしら?」 温泉から出てレストランに入り、注文を済ませ いつものように感想を言い合う。 「うん!いい匂いのするお湯が好きだった!」 注文したものが届き、食事をしながら次の温泉巡りについて話し合う。 「…うーん」 「どうしたの?お父さん」 「それが、台風が近づいて来るみたいなんだ大規模の物ではないけれど家の外に出しっぱなしだったものがあっただろう?それが壊れては困るからいますぐ帰ろうと思うんだが…」 「あらそれは大変ね湯浅も外に自転車を止めていたでしょう?」 「あー本当だ!」 高校に上がる時に買ってもらったまだ新しい自転車。 それなのにすぐ壊れてしまうなんて悲しすぎる。 「じゃあ早く帰ろう?」 「そうだな、忘れ物はないか?」 「大丈夫よ荷物は最低限少なくしたから」 外に出ると既に小雨が降り始めていた。 小走りで車に乗り、発車させる。 走り始めて20分程お母さんが悲鳴をあげた。 「どうした!」 「あ…あそこに…」 震えるお母さんの指先にはぼんやりと現れた人影。それはあまりにも大きく本当に人なのかと疑う程。それはゆっくりと近づき… 「…なんだただの工事の看板じゃないか」 「あ、あら?…じゃあ今のは…」 お母さんが見たのは工事現場でよく見る人型の看板。奇しくも人型なので不審者か何かに見えてしまったのだろう。 「も〜ちゃんとみてよ?」 「ごめんなさいね勘違いしちゃったわ」 また30分程走り、雨も弱まり始めた頃。 「ね、ねえ…あれ…」 お母さんが指さした先にはまたもやぼんやりと現れた人影。でもそれは先程よりも鮮明に人に見えた。 「きっとまた看板だよ」 「そ、そうかしら…」 「も〜ちゃんと見てってばぁ」 そのまま通り過ぎ、何も無く家に着いた時流れたニュース。 「緊急のニュースです。18時頃×××市の崖で殺人事件が起きました。警察はこれを他殺とみています。」