ビー玉・上
私は身体が弱い方だった。
すぐに熱を出して、早退する事も多々あった。そんな幼少期、クラスの席替えで奇跡が起こった。キラキラした目で、明るい声、サラサラした髪の“あの子”。
私は隣になったあの子に一目惚れした。
あの子は私に持ってない物を持っていて、また私はあの子が持っていないものを持っている。私はそれが羨ましかったし、あの子に憧れがあった。小さいながらませてた私の光といってもいい。
私はあの子と沢山話して、沢山一緒に遊んで、沢山一緒に居た。あの子はすごくウザがっていたが、それでも一緒にいた。だって私にとっては初めての親友であり、初めての一目惚れだったのだから。
そこでとどまっておけばいいものの、人は時に貪欲になる。
−あの子が欲しい……。−
貪欲な幼女の私は、あの子が持っていないものを伸ばし、あの子にとって自分は平凡だと思い込ませようとした。そして、あの子の才能を知っていかに自分が平凡かを認識させられた。そして勝手にあの子を憎んで、妬んだ。随分な自分勝手だと言うことは自分が1番分かっている。
中学に上がると、あの子が持っていなくて、私が持っているものを活用できる場面ができた。それは人付き合いだ。あの子は内気で、人見知りをするが、残念ながら私は人見知りをしない。ラッキーと思った。
………あの子が恋をした。相手は、真面目で、勤勉な男の子だった。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。私だけのあの子だ。
あの子の1番は私がいい。私の良くない考えがあの子が恋していた男の子を奪うという事をいつの間にか実行していた。
あの子はあからさまに嫌な顔をして、私の頬を殴った。その時の頬の痛さと、自分が興奮したのが忘れられない。
あの子は1年も経つとあっさりと許してくれた。つまらないなと思った私の次の考えは、私にどう依存してくれるかだった。
私はそこまで頭が良くない。が、あの子は自分より私の方が賢いと勝手に思い込んでいるようで。なので私は、それを活かしてあの子が私より劣っていると思い込ますために勉強をした。理由の知らなああの子は、
「やっぱり凄いなぁ。」
と褒めてくれる。これは素直に嬉しい。
高校に上がると今度は同じ中学校は私だけだった。私だけのあの子。
私はスポーツ部でよく喋る方だったので、ある程度友達がいた。でもあの子には友達がいない。内気で人見知りをするから。だからあの子には私しかいない。
頼る相手も、
話しかける相手も、
お弁当を食べるのも、
全部全部全部私だけ。
だが、いつもどんな時も一緒なんて普通はそうはいかない。部活も、選択学科も違う。それに、病弱気味な私が休んだ時でもある程度、大丈夫なようにコミュニケーションを、取っておかなければならない。こういうのに限って自分が病弱なのを恨んでしまう。
一緒に行き帰りする電車であの子が言った。
「うちには[ ]しかおれへんから。」
言った!やっと言わせてやった。
そう思って、今までのことを振り返って見てみると、そこにはもう恋や愛なんてものはなくて。達成感と優越感しか残っていなかった。でも、「それでも良いや、」と思ってしまった私はもう後には引き返せないのかもしれない。
あの子が私の部活に来た。何でも一緒に帰るか聞くためにだったらしい。私はあの子がどこかに勝手に言ってしまわないよう、逃げないように、あの子の服の裾やちょっかいをかけて横にいさすようにした。周りから見れば、あの子に絡みついて絶対に離さない蛇のようだろう。
この蛇は深い深い底なし沼に落ちて抜け出せないのだ。
キラキラと光るそれはたいそう綺麗なビー玉を沼の中で見つけてしまったのだから。