てるる

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てるる

ゆったりと自分のペースで更新頑張ります。 今iPadがバグっているので、作品が消えるかもしれません🙇‍♀️ 一気に更新する時もあれば、一ヶ月以上止まっている時もあります!! 短編多め。更新止まっていたら大体テスト期間です。 みんなと仲良くできたら嬉しいです、気軽に声かけてください! ☀︎無断転載、パクリ、保存、改変は禁止です!! イラストは全て自作です。これらも全て小説と同様に無断転載、パクリ、保存、改変はやめてね!!

帽子を捨てて、こんにちは【1】

アメリカ兵が投げてくれた、二、三かけらのチョコレートを舐め、飢えをしのぐ。子供だった頃は蛙が鳴き、みんなで虫を撮りに行っていた森は、原型のない火の海になっていた。爆風で塵が舞い上がり目に入る。本当に、日本は勝つのだろうか。 僕は実家の青果店を継ぐため、中心地にやってきた。徴兵は持病と低身長のお陰で免れたが、戦争を丸ごと避けることはできなかったらしい。身を守るための道具を着る余裕などなく、僕は逃げる途中、逸れてしまった従兄弟を探していた。逃げ惑う人々に、逆らうように進んでいるため何度も押し返されては転んで踏まれる。 優しい人からは“まずは自分を優先しな”と言われたが、従兄弟はまだ7歳だ。絶対に助かるわけがない。恐怖ですくむ足を何度も叩き逸れた場所に向かったが、そこには辺り一面地獄絵図。瓦礫の下からは、もう息絶えている従兄弟より幼い子供や妊婦、両親よりも年上の人を見つけることさえあった。 呼吸は荒れ、体一面にできた擦り傷から出る血は止まることを知らない。そんなことどうでもよかった。命があるのだから。 従兄弟はすぐに見つけられるよう赤い服を着させていた。恥ずかしいといわれながらも、無理矢理着せてよかった。青果店の従業員であることを知らせる緑のエプロンは火が少しうつってしまったため焦げている。それでもこの誇りだけは、自分のプライドを保つ唯一の印だけはどうしても脱ぎ捨てることはできなかった。塵がまた舞う。僕は帽子を深く被り、必死に従兄弟の名前を呼び続けた。

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帽子を捨てて、こんにちは【1】

村田君は少しずれてる【弟】

弟の小咄です。弟視点で書かせていただきます。若干同性愛表現があります。 *** 村田君は素行が悪かった。しかしそれを知っているのは小、中時代の同級生のみ。高校生になってからは猫をかぶったように、急に大人しくなった。元々頭もいいし、スポーツもできる万能少年だったため彼は、すぐに周囲の視線を集めた。 そんな中僕は、彼の友人をしていた。実際はほぼ配下と変わりないのだが。絶対的な彼には逆らえない。その生活が“僕の転校するまでの約半年間”続いた。……と言ってもジュースを買いに行かされたり、暴力を振るわれるというわけではない。ボランティアに手伝わされたりと、内申点を上げるために踏み台にされただけだ。 しかし断ろうとすると、怒ったように学ランを掴まれ、その後半分泣きながら、「友人じゃないか」と言われた。彼は口下手なので友人は自分だけだったのだ。手放したら面倒なのだろう。正直、何でもできる彼が、ついに演技を覚えたぞと内心は困っていた。ただでさえ、彼が事件を起こさないよう、苦心しているのだから。 転校すると言ったのは、もう自分がこの街を出る直前だった。彼は寂しそうに笑い、ただこう言うばかりで、自分はその変わり果てた姿に何度も頭を抱えた。 「俺さ。もう頼れる人いないんだよね。家族にも学校にもさ」 「もう一緒に×のうぜ。誰も困らないだろ」 そう肩を掴まれたとき、逃げられないと思った。その日は夜だし、高校生である自分は二、三人が住める程度の小さな寮で生活していたから家族には頼れない。寮の人物はもう全員寝てしまっている。 はやる心臓を押さえながら僕は黙って彼を引き離し、「じゃあね、今までありがとう」といい寮に戻って行った。意外にも彼はついてこようとしないで、そのまま家に戻っている。僕はその様子に安堵と寂しさを覚えながら、荷物整理に戻った。 「探したぞ、久しぶりだな」 僕は引っ越した後の住所を誰にも言ってないし、各地を転々としたため会うのは至難の業だ。連絡先だって交換していない。 なのに何故、村田君がここにいるんだ?

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村田君は少しずれてる【弟】

もしものお話【友人】

友人の体験した小咄です。友人視点で書かせていただきます。 正直不思議というよりかは、難しい話です。自分も完璧に理解していると言うわけではないので、文章が拙いところがあるかもしれません。 私はその話を、彼女の部屋で聞いた。引っ越したのか、端正な一軒家ではなく、粗末なアパート。じりじりと太陽が照らす中、普通の部屋だった。 彼女、Aちゃんは何度も周りを確認し、部屋にいるのは私たち2人。ドアには厳重に鍵を閉めていた。しかいないことを確認したあと、私にある“相談”を持ちかけた。 「もし、私が消えたら。どうする?」 相談する前の説明は長かった。意味のわからない疑問や質問を何度もぶつけられ、返答に困る私にAちゃんは嬉しそうに笑う。大口を開けているわけではない、ただの微笑は薄暗く少しゾッとした。その部屋には時計がなかったため、時の流れは何十倍も遅く感じる。 「本題は何なの。私そろそろ暑くて死んじゃうよ」 「そんなこと言わないで。ねえ、もし私が双子だったらどうする?」 Aちゃんに不登校の双子がいるということはずっと前から噂で聞いていた。しかし見たことはない。私は“関係ないんじゃない”と冷たい返事をした。早くこの話を終わらせて、この気味の悪い空間から逃げ出したくなかったからだ。ただでさえ「自分はAちゃんと仲がいいというわけではなかった」のに。 私のその返事を聞いて彼女は黙って笑い、こう言った。呟くようにしか聞こえなかったその声を辿るため、彼女と視線を合わせる。 じっと見たAちゃんは“一重”だった。いつも見ている彼女は、テープでもつけたのかと思うほど綺麗な“二重”。泣いて腫れたのか?とも思ったが雰囲気が違う。よく見れば、長い服の隙間から見える肌だって異常なまでに白い。 「Aは今どこにいると思う?」 彼女はきっとAちゃんの片割れだったのだろう。私はすぐに家を追い出され、その成り行きを親に話した。親は血相を変え、色々なところに電話をする。その3日後、Aちゃんが新聞に大きく載せられていた。 「誘拐された、小学五年生の女児、佐藤Aさんが〇〇アパートで発見!  犯人は監禁したあとすぐ、〇〇県に逃げた模様。  現在消息不明の、彼女の家族(双子)である、佐藤Bさんを探しています。」

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もしものお話【友人】