狛吉

5 件の小説
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狛吉

日々感じたことや見た聞いた事から少しお話を膨らませて書いてます。 万人受けしなくても誰かの心に響いたらいいな。

時には優しい人ほど余計に辛くさせるんだよ

死のうと思う理由は、他人からしたら足の小指を角にぶつけたぐらいのことなんだろうな。 当の本人は、死しか逃げ場が無いと思うほど悩んでるってのに。 “死にたい“とか、みんな口癖のように言うんだ。 本当はそんな軽い言葉では無いのに。 頭ではわかっていても、きっと明日になったら僕も言ってしまうのだろう。 死にたい理由もそう思うきっかけも聞いたところで、他人の頭ん中じゃ簡単に解決できちゃうんだよ。 勇気を出せとか、相談できる人に話せとか、逃げればいいんだよとか、やれたらやってる。 でも出来ないからこう悩んでるんじゃないか。 綺麗事を並べた言葉なんて、紙切れより軽いんだよ。 でも同情はされたくない。 きっとこの気持ちは体験した者にしか分からないから。 あなたの想像の倍以上辛いんだよ。 助けて欲しいのに助けられるのがすごく辛い。 どうしようもないこの感情はどうすればいいですか? どこに向ければ、どこに吐き出せばいいですか?

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ナイトダイバー

コポコポ……コポコポ…… 夜の海に沈んでいく そこはまるで、宇宙のようで。 暗いけど、明るくて、 キラキラと光る何かが無数に散らばっている。 私はただ沈むだけ。 ゆっくり、静かに。 水面にはもう光なんて差し込まなくて。 ここはなんだか心が落ち着く。 何も考えずに、ただ流れに身を任すだけ 抗うことを強いずに、ただ静かに。 声を出そうと、飲み込んだ水は 甘くて、苦くて、しょっぱくて。 揺られる水の動きは、 眠れない夜に聞いた心地の良いあの音楽みたいに 頭を撫でてくれた母の手のひらのように ただ気持ちよくて。 このまま沈んでいたいとさえ思う。 きっと世界で1番美しい死に場所は宇宙なのだと思う。 青い地球を見ながら、 手を伸ばすしか無かった数多の星たちに囲まれ、 ただ宇宙服のヘルメットを外すだけ。 その後は、塵と同じようにそこらを浮遊する。 誰も見つけられない、誰もたどり着けない。 端も見えない大きな宇宙に 空中に舞う小さい何かのように 舞う、舞う、舞う ここには青い星も、照らす光も無いけれど、 ここまま沈んだらきっと楽なのだと思う。 物音ひとつ無い静かな夜、 月光だけが頼りな夜、 気持ちいいほどの澄んだ空気の夜、 また、私は夜へ沈む。

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紫煙

私が嫌いなもの 両親が吸ってた。 小さい頃から嫌でも嗅がされる苦い匂いは、鼻の奥にこびり付いて落とせない。 何が良いのか分からない“それ”を私はとても嫌っていた。 「私は絶対吸わないから!」 ずっとそう宣言してきた。 仲良くしてくれた年上の友達が吸い出した時だって、 同級生の友達がこれいいよって勧めてきた時だって、 私は絶対口にしなかった。 両親が電子のやつに変えたらしく、いくらか家での匂いは薄くなった。 しかし、私の鼻は人より匂いが分かるらしく、例え電子だろうが嫌いなものは嫌いだ。 目の前で吸われたらたまったものじゃない。 口から吐き出される白い煙は、幾度となく私の顔を歪ませる。 小さい頃から身近にあった“それ”の印象は私にとって最悪なものだった。 金をただ喰うもの 確実に死をもたらすもの 麻薬のようなもの 知らぬ間に依存させて、金を喰って、離れる時は多大な苦痛を与える。 入るものを両腕を広げて迎え、去るものをしがみつくように拒む。 まるで悪魔のようなものだ。もしくは死神か。 やり方は簡単、楽に始めさせる。 しかし、着実に死への階段を登らせる。 そんなたばこが私は嫌いだった。 自殺行為じゃないか。リストカットと同じことじゃないか。 でも、それが私に響いた。 長生きしたくない、若くして死にたい。 そう考えるようになってから。 私は、歳をとってよぼよぼになっていく自分が想像できなかった。 何故か気持ち悪くて、ただでさえ迷惑をかけながら生きているのに、もっと迷惑をかけることになると考えると、その気持ちは強くなっていった。 だから、早く死にたかった。 少なくとも30前半にはこの世を去りたい。 しかし、私の体は思うようには動いてくれなかった。 大きな怪我も病気もなく健康に育った。 いくら不幸事を望んだとしても、逆にいい方向に行くだけだった。 ならば自ら悪い方向に行けばいいのだと、私は考えた。 だからあんなに嫌っていたたばこを気になるようになった。 娯楽なんかの為に吸う訳では無い。 ただひたすら確実に死へと近づくために。 “たばこは自分への罪悪感を感じた時に吸うのだ” いつか見た小説のセリフ。 そのセリフは私になんとなく響いた。 自分の罪を、自ら体に刻みつける。 その行為はとても美しかった。 ベランダで1人紫煙を含む。 もう随分家族にあっていない。 私があんなに嫌がっていたたばこを吸っているなんて知ったらみんな驚くだろう。 初めの1本はネットで調べた吸い方を実践した。 やはり上手くいかず、激しくむせた。 途中で消したものもあった。 1箱を終えるとき、私はやっと上手に吸えるようになった。 電子たばこではなく、紙たばこを吸っている。 その方がなんだか体に悪いような気がした。 私は今日もたばこを吸う。 辞める気は無い。 確実に死ねる日まで、私は吸い続ける。

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僕らは飢えている

“好きってなんですか?” “愛していると好きは何が違うんですか?” “恋人への好きと友達への好きは何が違うんですか?” そう聞かれて、はっきりと答えられる人はどのくらいいるのだろうか? 僕は、答えられない。 僕自身も分からないから。 なんで人は友達の枠を超えたがるんだろう? なんでひと時しかいない人のために、そんなに一生懸命になれるんだろう? 僕は一体いつになったらまともな感情を持てる? まともな恋ができる? ある人は言った。 “好きな人が出来た。引かれないために、集めてたフィギュアを捨てようと思う” またある人は言った。 “恋はある日突然気づくもの。降ってくるものなんだよ。その人のことしか考えられないくらいに。だから、同じものを身につけたいし、写真もいっぱい撮って、色んなとこに行きたいんだよ” どうして? 順調に行っても1ヶ月、長くても1年行ったらいい方。 人生の中で一瞬しか一緒にいない人の為に、趣味を手放せるの? 別れたら捨てるしかないペアルックを買おうとするの? 別れたら関係が終わるかもしないリスクを背負って、告白して。 本当に幸せになれるかどうかなんてわかんないのに。 誰か教えてよ……… 今日もストーリーに流れてくるカップルの写真。 1人歩く僕の横を通り過ぎるカップル。 今日もまた教室までわざわざ会いに来る。 うざいうざいうざいうざいうざいうざい うるさいんだよ 頼むから見せつけてこないでくれよ やめてくれよ 本当はわかってるんだ。 本当は羨ましいと感じていること。 でも認めたくない。 僕だって愛されたいし、誰かを愛してみたい。 素直に甘えられないんだ。 本当はめちゃくちゃ甘えたいし、なんなら飛びつきたい。 意地っ張りな僕は心に壁を作ったまま。 誰も寄せ付けたくないけど、僕はずっと壁に寄り添って耳をすませてる。 この壁を壊してくれる誰かを待ってるんだ。 それまで痛いくらいの心の空腹を、 誰かの言葉で、 誰かの声で、 誰かの歌で、 まるで風船のように空気を入れて満たしていく。 何度も萎むけど、その度に空気を入れ替えて。 何度も何度も。 僕らは“愛”に飢えている

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君に届かなくても

僕は幽霊になったみたい。 最初はもちろん疑った。なんで僕が??って。 だけど、僕の姿は誰の目にも映らないし、僕の声は誰の耳にも届かない。ショーウィンドウさえ僕を映さないんだ。 「困ったなぁ…」 早く君のところに帰らなきゃ行けないのに。 きっと君は寂しがってる。 だから、早く抱きしめてあげないと。 ーーーー 本当はわかってたよ。 誰にも分からないってことは、君にも分からないんだ。 現実が思ったよりも心に響いて、ちょっと辛くなった。 けどいいんだ。僕は1人で君との思い出を巡るよ。 初めてのデートで行った水族館。 いっぱい買い物をしたショッピングモール。 君の好きなヘビクイワシを見た動物園。 そして、僕が告白したここら一帯の夜景が見れる展望台。 そこまではロープウェーに乗らなきゃ行けないんだけど、もちろん料金がかかる。 でも僕は今幽霊。無料で乗れちゃうんだ。 今回だけだから、どうか怒らないで。 1日かかった思い出巡りの後は、家に帰る。 電気も付けずに、ソファに蹲る君。 ダメじゃないか、ちゃんと生きないと。 どうやったって、今の僕の声は君には届かないから、せめてと君の隣に腰掛ける。 君に触ることも出来ないし、声をかけることも出来ない。 けど、どうしてもこの思いが届いて欲しいから声に出して伝える。 僕が先に逝ったことを引きずらないで。 もう僕のことなんか忘れてよ。 君には前を向いて笑って欲しいんだ。 先の長い君が、過去の僕に囚われずに笑って欲しい。 飛びっきりの君の笑顔がみたい。 でも、本当は僕のことずっと引きずっていて欲しい。 僕以外に好きな人を作らないで欲しい。 ずっと僕の呪いにうなされていて欲しい。 でも、それはダメ。 それじゃあ君の笑顔は見れないから。 どんなに辛くても前を向いて、歩き続けて。 「悪い日があっても、悪い人生じゃない」 だろ? 冬の雪原のようにまっさらな君の心に、僕の足跡を残せたのはとても嬉しい。 だから、僕はずっとそばにいるよ。 辛い時は慰めてあげる。 頑張った時はたんと褒めてあげる。 寂しい時はずっと隣にいるよ。 だからさ、 「笑って?」

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君に届かなくても