異世界英雄譚 プロローグ〜悪の開花〜
とある異世界、雲ひとつない空、草木が揺れ、スライムや様々なモンスター達が生態系を築いている。
そんな世界のとある村に一人の人間が生まれ落ちた。いや、転生したと言えるだろう。
少年は優しい両親に愛情を注がれ、とても優しい青年に育った。
花が好きな子だった。花を見るのが好きでよく花畑に行き、絵を描いていた。
青年は次第に大きくなっていった。それと同時に分かった事がある。
青年はなんの能力も持たず生まれてきたのだ。これは剣と魔法の世界において
“普通“ではない。
その事を知った村の人間達はその少年に対して恐怖心を抱く。悪魔や魔王の生まれ変わりだと決めつけて。
そして、青年が18歳の誕生日を迎えようとしていた日、青年が仕事から戻ると家が黒く焼け焦げていた。
青年は急いで両親の元に駆け寄る。しかしすでに父と母は焼死体となっていた。家に何者かが火をつけたのだ。
だがおおかた誰がやったか想像はつく。
この村に住む人間がやったのだろう。村の人間は自分を産み落とした両親を嫌っていた。
青年は泣いた。もう帰ってくることの無い父と母の死体に寄り添いながら…
そして青年は抱く…この世界に対する憎悪を…その瞬間、青年の周りを黒い煙のようなものが取り囲む…
「みんな普通の人間なんです。それが、いざという間際に急に悪人に変わるんだから恐ろしいのです。 だからこそ油断が出来ないのです」
夏目漱石
その日の夜、村で事件が起きた。
村人全員が失踪したのだ。原因は不明。しかし現場からは謎の魔力を検知した。
我々王都警察はこの事件をS級案件にして、現在も調査を進めている…