無透
24 件の小説明日へ
僕は学校をやめた。 やめた理由は、人間関係のちょっとしたトラブルだ。今時そんな珍しくもないだろう。 トラブルと言っても、本当に全然大したことないんだ。 そいつは所謂、幼馴染で小学校から高校までずっと一緒だった。 だけど、そいつは人の悪口を平気で言うような奴だった。 もちろん僕にも遠慮なく、ひどい言葉を浴びせてきた。 その度に、身を引き裂かれるような思いだったが、どうしても引き離す事が出来なくてただ笑って誤魔化していたんだ。 今までだってずっと我慢できていたのに、あの時、どす黒いモヤモヤした感情が心を包み込んで、悲しさからか、憤りからか、とても泣き出したい気持ちに駆られた。 でも、その気持ちはなぜか急に落ち着き、代わりに張り詰めていた糸がプツンと切れるように、全てがどうでもよくなっていた。 僕は、幼馴染だからとか、いい所もあるからだとか、そんな都合のいいような言葉を並べて自分を騙して、見ないふりして、ただあいつの奴隷に成り下がっていただけなんだ。 それに気づいた瞬間、全部馬鹿らしくなった。 そしたら、今度はなんだか心が軽くなって、少しだけ息が吸いやすくなったような気がした。 だから、僕は自分を守るために、あいつから徹底的に離れるために学校をやめた。 もちろん不安が無かった訳じゃない。 周りになんて思われるかとか、将来とか、いろいろ。 でもひとつだけ確かなのは、あのままあいつとずっといたら、僕は幸せにはなれなかっただろう。 ずっと息がしづらかったかもしれない、 ずっと生きづらいと思いながら生活していたかもしれない。 心が死んでしまっていたかもしれない。 だからこれからは、心の赴くまま進んでみようと思う。 自分のやりたいように、誰に強制されるでもなく。 自分を押し殺さないように。 不安はあるけれど、なんだか今の僕ならなんだって大丈夫な気がしている。
霞恋
私は恋をした。きっと初恋だ。 それと同時に失恋もした。 ああ、これは叶うことのない恋だな。 好きになった瞬間にそう思ってしまった。 相手にもう付き合っている人がいただとか、自分が釣り合わないとかではない。世間から反対されている相手との恋でも、ましてやアイドルに恋をしたなんてことでもない。 そうだな、アニメやゲームのキャラクターに恋をしてしまったという方が近いかもしれない。 私は、夢の中の人物に恋をしてしまったのだ。 よく『夢のような時間だ』という言葉を耳にするけど、私は実際に夢の中で恋に落ちてしまった。 相手と釣り合わないのなら自分を磨いたし、世間から反対されていたとしても、触れ合うことは、言葉を交わし合うことはできたはずだ。もっと言えば貫き通すことも。 もし、アイドルに恋をしたなら、パートナーになるにはそれは、とても、とても大変だと思う。 でも、可能性がゼロなわけではないし、応援とか、ライブに行くとか、少なくともその人の力になることはできたと思う。アイドルとファンという壁を取り払えなかったとしても、だ。 相手の記憶に残るための努力はできただろう。 アニメやゲームのキャラクターに恋をしたというのがこの中で今の私に最も近いと言ってもいいけど、でも、それでも、私の場合、その人のグッズが買えるわけでも、コラボカフェなんてものもない。相手の誕生日も知らなければ、相手の好きなものさえ知らない。 私にあるのはただ一夜の思い出だけだ。 目が覚めた時、私は一瞬それが夢だとは思えなかった。寝ぼけていたというのもあるのだろうが、それが夢だとは思いたくなかった。 だって、私にとってはたった今さっきまで、柔らかく微笑みながら、頭を撫でてくれていたのだから。優しく抱きしめてくれていたのだから。 その時のあの人の暖かさが、頭を撫で、抱きしめてくれた、あの感覚が、甘酸っぱくて、少しくすぐったくて、でもとても幸せなこの気持ちがまだ私の中に強く、強く残っているのだから。 夢だけど、いや、夢だからこそもう一度眠ればあの人に会える。本気でそう思った。でも、どれだけ深く眠ろうと布団をかぶっても、どれだけあの人に手を伸ばしても、あの人には辿り着けなかった。 あの人の暖かさが段々と私の中からこぼれ落ちていくような感覚があった。だめだ、嫌だ、そう思い必死にもがくけれど、もがけばもがくほどあの人が遠くなっていくような気がした。 頭まで布団をかぶって少し暑いくらいなのに、なぜか寒くて、凍えてしまいそうで、怖くて仕方なかった。 きっと私も、心のどこかでは分かっていた。 夢だから、私の記憶でしかないから、きっとあの人の事を忘れてしまうって。 どれだけ想っていても、どれだけ忘れたくないと願っていても、多分もう会えないと。 あの人の事を知っているのは私しかいない。当たり前だけど、その事実がどうしても悲しくて、寂しかった。 ああ、もうあの人の笑顔にもやがかかってきた。 私の、私だけの大切な人に霞がかかって見えなくなる。 さっきまでたしかにあったはずの温もりは、もうほとんど私の中から無くなってしまっていた。 少しの幸せと、とても大きな悲しみを残して、ゆっくりと、だけど確実に私の中からあの人の存在が消えていく。
お題:ゾンビ『腐敗した世界で』
「うーわ、最悪、噛まれてらぁ」 「あ、せんぱーい。向こうに安全そうな所があるらしいっすよ〜ってうわぁ、足血だらけやないですか、どしたんすか。」 「いや〜なんか痛いなあって思ったらこうなってた。」 「えぇ〜せんぱい鈍ちんですね。なんすか?噛まれたんすか?」 「んーたぶんそう。」 「えーやばいやないですかそれ。あ、ちょ、近づかんといてください。僕まだ死にたくないです。」 「え、お前、仮にも上司に向かってなんて冷たい事を。」 「なんか、ワクチンみたいなのないんすか。ほらよく映画とか、ゲームとかであるやないですか。」 「はぁ、お前馬鹿だな。そーいうのは、ある程度物語が進んでから手に入るんだよ。初めっからそんなの持ってみろ?ゾンビの大群に襲われてる金髪碧眼ボインのヒロイン、キャサリンを助けに行く時、ワクチン片手に持ってたらカッコ悪いだろ?」 「あー、確かに、カッコ悪いすね。危険を顧みずとかやったらまだしも、保険を手に持ってってなると、男らしさにかけますわな。」 「そーいうことだよ。てか、話は変わるけど、私が噛まれてからどんくらい経った?」 「んー、そーですね、5分くらいっすかね。どうかしたんすか?」 「いやー、異変ってほどでもないんだけど、なんだか腹が減ってきてさぁ。おかしいな、ちゃんと朝ごはんの、焼肉大盛り野菜炒め〜野菜なしマヨネーズをそえて〜をご飯三杯おかわりしてきたんだけどなあ。」 「ちょおまって?ツッコミどころが多すぎてほとんど話入ってこーへんかったんやけど。」 「ん?なんかおかしいとこあったか?」 「逆に正常な所がありましたか?あなた腐っても女ですよ?朝からなんてハイカロリーなもん食べてはるんですか?そんで野菜炒めの野菜なしってそれはもう肉炒めやないですか!それになに一丁前に高い三つ星レストランみたいな言い回ししてんすか、どう足掻いたってデブまっしぐらの朝食のインパクトはもう隠せませんって」 「プッ!フフッ」 「あ?なにがおかしいんですか?」 「いや、だって、いくら私がゾンビになりかけてるからって「腐っても」って、フフッ、フフフフッ」 「えぇ〜そこぉ?もっと他にもあったでしょ、言うべきとこがさぁ。ほんとせんぱいのツボって分からんわぁ。」 「あー、なぁ。お前そろそろ、ここから離れた方がいいんじゃないか?」 「は?なんでですか?」 「いや〜、多分ね、そろそろやばい。お前のことちょっと美味しそうに思えてきた。」 「うわまじですか。きもいっすね。もう症状末期じゃないすか。」 「おいこら、きもいは取り消せ。までも、そろそろ、語尾にうめき声がついてきそう。」 「うわ、やですね。そのオプション。」 「だろ?だから早く…」 「いや、僕は先輩と一緒にいますよ。」 「は?なんで?」 「んー、これといった理由はないですけど。強いて言うなら、先輩寂しがりやだしぼっちやから、死ぬ時くらい僕だけでも側にいてあげないと。」 「お、おまえ…ん?お前さぁ、その足どうした?」 「え?なんのことですか?」 「おいしらばっくれてんじゃねぇ、こっち向けや。その血が滴ってる足はなんだって聞いてんの」 「えーと、まぁ、僕も先輩と同じで足噛まれてましたっていうオチですね」 「オチよわ〜、ていうかあんなかっこいいこと言っといてそんなことある?歩けないくせにカッコつけやがって」 「いや、先輩が最後まで気づかんかったら、先輩の中でだけかっこいいままでいられたんすけどね?」 「一人だけカッコつけて逝けると思うなよ?」 「まぁ、でもこれでゾンビになっても僕ら一緒っすね」 「うわ、死んだ後もダメな後輩の面倒を見なきゃならんのか。」 「そこは僕の面倒を見れる事を光栄に思ってもらって」 「こんな生意気な後輩、来世生まれ変わっても絶対いらないわ。」 「ハハッ。じゃあ絶対、来世も先輩の後輩にならんと。」 「まぁその時は、またこうやって冗談言い合って笑いたいけどな。」 「フフッ。そうですね。」
演目『いじめ』
⑤傍観者B 演目『いじめ』 いじめてる子、いじめられてる子。 あとはそれを助ける子。 この3人が主演の『劇』 私たちは傍観者。 いつだって強い方の味方。 このいじめという劇ににおいて、私たち傍観者は弱虫?卑怯者? いや違う。 痛いよ。やめて。助けて。 そう泣き喚いてるあの子が被害者? それも違う。 真の被害者は私たちだ。 訳もわからず突然はじまった『いじめ』 理由も、はじまった経緯すら知らない。 そんな中、情けなくも思うのは 自分もあんな風にいじめられたくない。 そういう強い思いだけ。 だから何もしない。 何もしなければ標的になることはないと思うから。 言うなればこれは生きる術なのだ。 でも、先生は言う。 傍観してる奴もいじめてるのと同じだから。 見てて止めないのも同罪だ。って。 ふざけるなよ。 こっちは巻き込まれた側で、何も悪いことなんてしてない。 止める?助ける? そんなことしたら次の日から私はいじめられっ子としてスポットライトに当たることになるだろう。 先生は何もわかってない。 助けるという行為はバカのすることなんだ。 「もうこういうこと、やめなよ」 ああ、ここにもバカが一人。 ここから物語がどう転んでも。 私はただそれを見ているだけ。 そんな私を卑怯者だとは思わない。 思わせない。 これからもずっと。
演目『いじめ』
④傍観者A あぁ、ごめんなさい、ごめんなさい。 あなたは悪くないってわかってる。 見てることしかできない私を許して。 私は弱い、そんなのわかってる。 1人になる勇気も、あの子に立ち向かう覚悟もない。 こんな私を弱虫だって笑う? 卑怯者って指を指す? そうよね、私もこんな私が大嫌い。 でも、何か言ったら、次の標的は私になるかもしれない。 そう考えるとどうしても足がすくんでしまうの。 いやだ、やだ。関わりたくない。 あの子みたいに酷いことされるのは嫌。 あぁ、こうやって目を逸らしてしまう私の事をどうか、どうか許してほしい。 ごめんね。 「もう、こんなことやめなよ。」 え?誰?あの子に立ち向かうなんて。 立ち向かえるなんて、一体だれが。 あの子は昨日まで私たちと一緒に、ただ見てることしかできなかった子じゃない? なんで、なんで? あの子は私たちと同じだと思ってたのに。 どうして? 怖くないの? 足が震えてるのにどうして飛び出したの? 昨日まで私と一緒に見て見ぬふりしてたのに。 あぁ、私は自分が恥ずかしい。 心の中であんなに懺悔しておいて、 あんなに言い訳を並べて。 見捨てようとしたくせに。 ああ、私もあんな風に飛び出して、あの子を助けてあげたかった。
演目『いじめ』
③救世主 はあ、まただ。またはじまった。 ああ、どうしよう。すごく痛そう。 助けたい、助けてあげたい。 どうして誰も動かないの。 みんなはこの状況なんとも思ってないってこと? そんなの絶対おかしいよ。 先生に言っても、全然聞き入れてくれなかったし。 ああ、どうしようどうしよう。 人が殴られる姿なんか見たくなんてないのに。 私は、一体どうしたら。 え、うそ。そんなもので殴ったら、絶対やばい。 え、え?ちょっと私、何してるの。 ああ、どうしよう止まらない、足が勝手に… 絶対やばいのに、ダメなのに、止まらない! 何も考えずに飛び出しちゃった、 ここからどうしよう。 やだな、みんな見てる。 頭真っ白だし、立ちはだかったはいいもののすごく怖い。 ええい!こうなったらなるようになれだ! 「も、もうこういうことはやめようよ!」
演目『いじめ』
②いじめっ子 一言で言うとあの子をからかうのはすごく楽しい。 いじめ?いやいや遊んであげてるだけ。 あの子友達がいないみたいだからさ。 うちらが遊んであげてんの。 いつも泣きながら感謝してるよ? 「遊んでくれてありがとう」ってね。 私、思うの。 世界は私中心で回ってるって。 まぁ、何ていうの? うちはさ主人公なわけ。 セリフ?台本? いらないいらないそんなもの。必要ないの。 プロはねアドリブでいいの。 その場で言葉が浮かんでくるから。 そこらへんの人と同じにしないでよね。 え?なに?学校は楽しいかって? あはは!もちろん!こんな楽しい生活やめられないね。 特に友達と遊んでる時が一番。
演目『いじめ』
演目『いじめ』 そこに観客はいない。 いるのはキャストの十数人。 ①いじめられっ子 「いたい、やだっ!やめてよ…」 そんなセリフの繰り返し。 毎日毎日、飽きもせず私はクソみたいなセリフを吐き出す。 それが私の『役目』だから。 抵抗なんかしちゃいけない。 したらきっと、今よりずっと痛い思いをすることになる。 だからって無抵抗でもダメ。 「ごめんなさい…」 こんなふうに弱々しく涙目で言うの。 そうすればあいつらも満足して、私は早く帰ることができるの。 助けなんて求めない。 大人に相談なんてしない。 私はただ、都合のいい女でいればいい。 私は悲劇のヒロインで、いつか絶対あいつらに良くないことがおきる。 そう思わなきゃやってられない。
「名言ってさ」
「名言ってさ、あるじゃん?」 「は?なに急に」 「いいから」 「あ、あー。まあ、あれだろ、偉人とか有名人とか、最近だとアニメや漫画のキャラとかが言ってるやつ。」 「そうそう。それそれ。」 「で?それがどうした?」 「いやー、それ見るたびさ、俺思うんよ。うぅわ!かっけぇ!俺も言いてぇ!!って。」 「え、うん」 「だからさ、今から俺らで名言ってやつをさ生み出そうぜっていう。」 「はぁ…」 「んだよ、ため息なんかついて。」 「いや〜バカだバカだとは思ってたけどまさかここまでとは」 「うるせー。お前にだけは言われたくないね。で、どーすんの?やんの?」 「まあ、やってやらんこともない」 「なんで上から目線なんだよ、てかお前も大概バカだろ。」 「ま、そこは似たもの同士ってことで。」 「なんだそれ、まいーわ、で、なんか案ある?」 「そんな急に言われてもなぁ」 「んーやっぱこう、心にグッとくるものがいいよなぁ、あの言葉が背中を押してくれました!みたいな?」 「あー、『明けない夜はない、止まない雨はない』てきな?」 「ん、んー?なんか違うけどまあそんな感じ。でもなんかもうちょっと捻りたいわ」 「はあ?わがままだなぁ。てかお前もなんか考えろよ。」 「わがままいうな。えー、じゃあ。『恋と友情は待ってるだけじゃ手に入らない、掴み取ってこそ本物の絆だ』とか?」 「…スゥー」 「なんだよ、どうした?急に黙って。」 「いや、あの、」 「なに今更どもってんだよ。いいよ、言いたいことあるなら言えよ。」 「…じゃ、じゃあ遠慮なく。すっげぇダサい。」 「いや、わかってたよ。俺も言った後、気づいたよ。あー、なんだろめっちゃ恥ずかしくなってきた。」 「できれば、言う前に気づいてほしかったわ。どーすんだよこの空気。」 「なんか、ごめん。」 「まあ、ゆるしたるわ」 「エセ関西弁やめろ。」 「てかさぁ、俺らが脳フル回転させたとて、薄っぺらい言葉しか出てこんのよ。」 「まあ、そりゃそうかー」 「そうそう。あーいうのは、困難を乗り越えた人だとか、人生の先輩みたいな人だとか、なんかそーいう人が言うから重みがあって心に響くもんなんだよ。なんつうの?言葉は後からついてくるてきな?」 「おー、なんか今の名言っぽかったぞ。」 「え!?まじ?ゴホン!えー。『名言というものは作り出すものではなく、その人が通ってきた道の後から自然と出てくるものなのだ。良いことを言おうとしたところで中身のない言葉しか出てこないのだ。そんなもので人の心は動かせないのだー』どう?」 「んー、やっぱ薄っぺらい」 「まじかー!はぁ、しょうがない。あともう五、六十年したらまた考えるかー」 「えー、俺あと五、六十年お前と一緒かよー」 「お?なんだ不満かー?あと五、六十年お前と一緒にいてやることに感謝してほしいんだがな」 「いやいや、それはこっちのセリフだわ!」 「「ふっ、あははは」」 「毎日こんなふうに笑えるならお前と一緒も悪くないかもな」 「お!今、俺も同じこと思ってたわ」 「ま、先に彼女作るのは俺の方が早いと思うけどな」 「はあっ?絶対俺だろ!」 「いやいや、」 「いやいやいや」 「いやいやいやいや」 「うわこれぜってぇ終わんねぇじゃん」 「ははっ!たしかに!」
息苦しい
ああ、なんて息苦しい世界だろうか。 僕の周りは窮屈なことでいっぱいだ。 小さい頃から思い描いていた夢はいつから夢でなくなったんだっけ。 いつから、自分の将来が見えなくなったんだっけ。 あんなに学校に行くのが楽しみだったのに、友達に会うのが待ち遠しかったのに。 いつからだろう。 学校を休みたいと、行きたくないと思い始めたのは。 友達に会いたくない。会うのがめんどくさいと思い始めたのは。 将来を見据えて行動するなんて僕にはできない。明日さえ真っ暗で何にも見えないのに。 不安で押しつぶされそうで、立ってるだけでもやっとで。 歩き出しても、足がおぼつかなくて、フラフラで、自分でも行きたいところに行けないのに。 僕に何を期待してるの? 僕の何を見てるの? 見えてないんでしょ?なんにも。 分かったかのように振る舞ってさ。 一人じゃない、わかるよ、僕も君と一緒さ、大丈夫だよ。 なんて、ありきたりな言葉ばかり。 そんな、薄っぺらい言葉が胸に響くとでも妄想してた? ヒーロー気取りも程々にしてくれよ。 僕が今何に悩んでて、何が辛いかも分かってないんだろ? 僕が思い通りに動かないと、適当な理由をつけてすぐいなくなってしまうくせに。 今はそっとしておいてあげよう。彼には時間が必要さ。 とか言ってさ。 結局は僕を助けて自分の好感度を上げたいだけなんだろう? ああ、辛い、虚しい、悔しい、しんどい。 周りの目が怖い。 どう思われてるかなんて気にしたくないのに。 大人たちからの期待が苦しい。 漫画の中みたいにピンチを打ち破れるほど僕は強くないのに。 僕は、僕が憎い。 どうして、辛いと自覚してるのに、そこからまだ逃げ出せずにいるんだろう。 どうして勇気が出ずにいるんだろう。 どうして、こんな下手な小説でしか、僕の気持ちを打ち明けられないんだろう。 『辛い』の一言でさえ言えずにいるんだろう。 ああ、なんて、息苦しい。