童部 情緒
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学生だからゆっくりペース。 最初はゆっくり動画作ろうと思ってたけれど機械音痴が災いして挫折。結局文章書いてる。 読んだものにはいいねつけます アイコンは友達にもらった宝物。
廃アパートにて――革靴
面白そうな企画を見つけたので、ちょっと怖い話をします。幽霊は出ませんので、苦手な方もよかったら見てってくださいな。 中学生の頃、廃墟探索を趣味にしていました。 親に譲ってもらった、バッテリーの消耗がやけに速いデジカメを片手に、廃墟やシャッター街の写真を遠目に撮影して回っていました。 そう、遠くから写真を撮るだけ。決して立ち入らなかったのです。 理由は二つ。 一つは単純にそれだけで十分だったということ。自宅周辺に大きな廃墟と言えるようなものが殆どなく、崩れた壁や窓からでもなんとなく中の様子を察することができたから。 次の理由が、一番大きいです。 さっき「決して入らなかった」と言いましたが、実は三度だけ、廃墟の中に足を踏み入れたことがあります。 幽霊に会えるかも!? などとノリノリで。当時は死ぬときゃ死ぬと、妙にポジティブで健康的な自殺願望を抱えていたため、恐怖の欠片もなく一人で廃ホテルと草ぼうぼうの民家に突撃しました。あと、廃墟じゃないですけど防空壕跡(多分)にも。 結局、幽霊はいませんでしたけどね。 最後に――つまり、三番目に――お邪魔したのは古いアパート。山の傍に、十五階建ての真新しいマンションの裏にこっそりと佇んでいました。 昔住んでいた町は近くに大きなショッピングモールができたことで再開発が進んでいましたが、そのマンションより山に近いところでは、まだ開発以前からあった民家が多く残っていました。 中でもその廃アパートは特に広かったのです。建物自体は三、四回建てのコンパクトサイズの癖して、都会の小さな公園なら四つは入るんじゃないかというほどの、明らかに過剰な駐車場。 田舎のコンビニをイメージしてもらうとわかりやすいかも。 今となっては、あれはあのアパートと周囲を分断する結界のように思えて仕方ありません。 なんとも言えない存在感というか、圧迫感というか。 胃袋が重たく感じて、やけに存在を主張するような感覚。と言ったらわかりますかね。 そんな違和感を味わいながら、注連縄のように駐車場を囲うチェーンを超えました。 基本的に、廃墟というものは鍵が掛かっています。一階は全部だめでした。二階がだめなら帰るかと、回り込んで一階のベランダから内部の写真を撮りながら考えました。 二階。一号室……はずれ。二号室……はずれ。三……はずれ。四……はずれ。 そして、五号室。 ビンゴ。 ぐるりと回ったドアノブにガッツポーズをして、デジカメを構えて一気に開きました。 結論から言うと、幽霊はいませんでした。しかし、廃墟凸をやめさせるだけのものが、そこにはありました。 埃った空気を胸いっぱいに吸い込んで咽せかえった後、正面に向き直ります。 残されていた、明らかに年季を重ねた品々は生活感がありながら非現実的で、廃墟らしいと言えば廃墟らしいのでしょう。 玄関にあった何足かの靴に目を向けます。 よく覚えていませんが、サンダルやスニーカーが綺麗に揃えられて並んでいたような気がします。 そしてもう一つ。 茶色の革靴でした。高校生になって、近所にできた靴屋さんに特徴を伝えて、いくつか見せて貰いました。しかしその頃には詳細の記憶など消え失せていましたから、見せられたものはどれも同じに見えて、このブランドのこれだ、とは言い切れませんが、とにかく革靴でした。それだけは確かです。 その一足だけ、揃えられていなかったのです。 体育の時間にさせられる「気をつけ」のときの足。ペンギンの足、なんて教えられたあれです。 あるいはモデルさんが衣装を見せる時にしているポーズというか。 踵を合わせて爪先を軽く開く。その状態で置かれていたのです。 なんてことはない、家で見かけてもなんらおかしくないその光景に、これまで感じたことがない異様な不気味さを感じ、一気に階段を駆け下りました。 あの時に感じたものが、「本当の恐怖」なんでしょうか。 それ以来、廃墟の写真を撮ることすら殆どしていません。 あと、廃墟探索は本当に危険なので、しないことをおすすめします。 どうしても行くのなら、必ず二人以上、誰かに行き先を伝えてから行きましょうね。
はじめに
初めまして。童部情緒と言います 設定を考えたりするのは好きですが、こうやって形にするのは久しぶり――というか、ほぼ初めてです。 なろうとかカクヨムみたいな有名どころに投稿するのはちょっと緊張するので、ストアで偶々見つけたここに足を踏み入れてみました。 学生なのでゆっくりとしか書けませんが、絶対に最後までやります。 とりあえずこの後に短めの一話を投稿します。 その後はどんどん文字数を増やしていきたいなと思っています。 感想などをもらえたらとっても嬉しいです。 どうか彼らの物語を、最後まで見届けてあげてください。