いとう一茶
5 件の小説初めて性病にかかった時の話【性描写有り18禁】
暇なので高校生の頃の思い出を書いてみました。 私が高校二年生の時の話です。 当時、やたらと豪華な誕生日プレゼントをくれる友人がいました。誕生日が近づいてくると「何が欲しい?」と聞いてくるので、私は「オナホールが欲しい」と言いました。 男子高校生という生き物を知っていますか? 彼らは人類の中で一番野生に近い生き物だとされています。頭の中はピンク色で、穴があったら挿入したい猿よりも品のない存在です。 私も男児ですから、そのような時期がありました。 彼女などできたことも無く、性知識は保健体育とアダルトビデオが全てでした。 そんな性獣が、オナホールに興味を持つのは至極真っ当な成り行きだったと思います。 「わかった。なら誕生日の日に買って学校に持っていくわ」 彼はそう言い、当日しっかりと私の誕生日プレゼントを持ってきてくれました。 学校にオナホールを持ってくるという普通に校則に触れそうな案件でしたが、彼が持ってきたのは何やら品のある木箱。 私は「これがオナホール?」と聞くと、彼は「これちょっと良いやつなんよ」と箱をオープン。すると、中には肌色の大きな物体が。 慌てて「開けるなよ!」と言い蓋を閉じました。私が初めてオナホールと対面した瞬間です。 その名を【名器の品格】。 私はそのオナホールに目を奪われました。 なんて品のある下品な物体なのだろう、と。 私は興奮し彼から箱を受け取ると、放課後まで大切にロッカーに保管しました。 大きな木箱だったのでリュックに詰めるのが大変でした。角張ったリュックを家族に不審がられないようタオルを詰めたり工夫を凝らして帰宅。 家に着いてからは、この木箱の隠し場所を考えました。無難にクローゼットにしまったのですが、木箱に大きく“名器の品格”の文字が。 美術の時間に使う彫刻刀で削りパッと見はただの木箱になりました。あとは、“いつ使うか…”です。 再利用可能なオナホールを使ったことがある方ならわかると思うのですが、結構処理が大変。また、ローションを使うので音もそれなりにするし、部屋に鍵はついていないので突然親が入ってきたりでもしたら目も当てられない。 私は両親がキャンプに行く日を実行日に決め、早くその日が来ないかと待ちわびていました。 そして当日。 私はいつもの要領で男性器を触りながら、海綿体を肥大化させていきます。そして肌色の塊を用意しました。 それはまさに“肉の塊”。 オナホールと言えば、お洒落なオフィスに飾っていてもおかしくないスタイリッシュなものが結構あります。 でも私が貰ったものは、そんなわかりにくいものではありませんでした。見たらひと目で「えっちなやつだ!」となる肉塊です。 後々知ったのですが、それは遅漏や射精障害治療にも使われる本物に近い感触や圧力のオナホールみたいでした。 私はオナホールに付属品のローションを入れ、恐る恐る肥大化した男性器を挿入しました。 挿入して初めての感想は「冷たっ!」でした。 季節は12月。オナホールはシリコン素材。入れる前にわかりきっていたことです。しかし、今更止まる訳にはいきません。 何度か動かすにつれて、だんだん中も暖かくなっていき、ちょうどいい塩梅になっていきます。 今までの手での刺激とは違った“新しい刺激”。 もう興奮しすぎて、本当の猿だったんじゃないかと錯覚する程でした。 今思えば、私は初体験よりも興奮し、感動したかもしれません。当時の彼女には申し訳ありませんが。 厳選していたアダルトビデオを見ながら、絶頂を迎えました。 手よりも刺激が弱く、いつもよりもかなりの時間を要したと思います。 射精後はベッドに横になったまま暫く動くことができませんでした。高校生だった私にとって、それほど衝撃的な快感でした。 しかし、このオナホールは何度か使うことができます。私はその事実に感涙し、意気揚々と洗面台でオナホールを洗浄していました。 母さんごめんなさい。洗面台に流してました。 ただここで問題が。 “ローションがない!” 実はローションはドラッグストアに普通に置いてあるのですが、女っ気のなかった私はコンドームすら買ったことがありませんでした。 そんな私がローションがドラッグストアに売ってるなんて知る由もなく、アダルトショップに行かないと手に入らないものだと思いこんでいました。 なのでやることはひとつ。アダルトショップにレッツゴーです。 入店三分後、当たり前のように店員にバレてしまい追い出されました。 青臭いニキビだらけの顔は、見るからに十八歳未満。 私はアダルトショップは諦め、自宅にあるものでどうにかしようと考えました。 それが片栗粉です。 片栗粉を水で溶いて自作ローションを作りました。これが大正解。食べ物なので衛生上も問題なく使用感も満足いくものでした。たまにダマができていて、それも良い味をだしていました。 ですが人間慣れてくると、面倒臭くなってくるものです。 オナホールは酷く面倒なものでした。 親がいないタイミングが勝負で、洗うのも大変。乾かすのも時間がかかり、何より片栗粉ローションを作るのも大変。 何度か使ったある日。私はとうとう「ローションいるのかな?」という疑問を持ってしまったのです。 皆さんお気づきだと思いますが、彼女のいない私が性病にかかる理由は無いのです。性行為をしてかかるから性病なのですから。 なら理由はひとつ。“オナホール”との性行で私は初めて性病にかかりました。 原因はオナホールの手入れ不足と潤滑油の未使用です。 洗うのにも慣れてきたので、だんだん雑になっていきました。もっと言えば、親が二日間居ない日などがあったので、乾ききる前に使用していました。これが良くなかった。 雑菌が中で繁殖していたのでしょう。考えただけでもおぞましい。 そんな内部に潤滑油を使わず生身の男性器を出し入れしてしまいました。 私はカンジダ性包皮炎になりました。 病院には行ってません。症状から予想しました。さすがに恥ずかしくて病院になんて行けませんでした。 しかし、カンジダ性包皮炎は治療しないと治らない性病です。 私は焦りながら母に、カンジダ性包皮炎になったことを伝えました。もちろん、オナホールの件は伏せて。部活があった日にシャワーを浴びなかった事が何度があって、それが原因だろうと。こう伝えました。 母は、私が指示した塗り薬を買ってくれました。 人生で初めて母に性病の薬を買って貰った瞬間でした。 その後、薬のおかげもあってカンジダ性包皮炎は完治しました。 我ながらアホなことをしたと反省しています。 それからはオナホールにトラウマができた、訳でもなく。使い捨てのスタイリッシュなお洒落なやつを使うようになりました。 そして、その話は私の友人の中で広がり “童貞にして性病にかかった強者”として、今でも飲みの席での笑い話になっています。 しょうもない話ですが、最後まで読んでくださりありがとうございました。
童貞は死んでも童貞
あの子はまだギリ可愛い。 世界は一ヶ月前に終わりを迎えたらしい。街は生ける屍たちで溢れかえり、人類のほとんどがゾンビになった。 ご多分に漏れず、俺もゾンビになった。 生きてた頃から脇役人生が決まっていたような人間だ。俺だけが生き残るなんて奇跡は起こらなかった。 ゾンビになって一週間。少しずつ腐っていく体。 この先、体が朽ちた後のことを考えると恐ろしくなってくる。 しかも周りのゾンビたちは、うーうー、としか言わない。 俺だけ何故か意識を残したままゾンビになったらしく、他のゾンビは映画に出てくるゾンビそのものだった。 生きててもしょうがないような人生だったが、だからといってまさかゾンビになるとは。 神様は残酷だ。 そして、そんなしょうもない俺にも死んで後悔していることがある。 それは、童貞のまま死んだことだ。 25年という人生で一度も女性とセックスをしないままゾンビになってしまった。 あんまりではないか。 だから俺は決めたのだ。死ぬまでに、といっても既に死んではいるのだが、体が朽ちる前に可愛いゾンビとセックスしてやると。 そう決意して三日。俺は当たり前の事実に気づいて涙することとなった。 勃たない。 ああ神様、あなたに慈愛の精神はないのか。 そして、可愛いゾンビがいない。 それもそうだ。ゾンビは大抵傷だらけだ。ゾンビに襲われると、身体中、特に顔を中心におぞましい見た目になる。片目が喪失しているのは当たり前で、無傷に近いゾンビなんて見たことがない。 あと、普通に怖い。生前の感覚が残っているせいで、どうしても怖さを感じる。 どうしたものか。 宛もなくゾンビのように彷徨う。ゾンビだけど。 すると、顔に傷の少ない女性ゾンビに出会った。 あの子はまだギリ可愛い。 ゾンビになりたてなのか体の腐敗は少なく、奇跡的と言えるほどに顔に傷がほとんどない。年齢は40代くらいだろうか。 俺は自分の体を見る。 もう既に内蔵はドロドロと溶けだしていて、肋骨が剥き出しになっている。しばらくすれば、歩けなくなるだろう。 時間がない。 俺は目当てのゾンビに近づく。 やっぱり、ギリ可愛い。 この人なら、俺は。 そう思った矢先、彼女のポケットから一枚の写真が落ちた。 拾えばそれは、どうやら家族写真のようだった。幸せそうに映る、彼女と旦那さん。そして宝石のような笑顔の一人娘。 俺は愕然とした。 俺は心まで化け物になろうとしていたことに。 死んだから、どうせ腐るから。そんな言い訳で、俺はこの女性を無理やりに辱めようとしていた。 涙がでる。 死した体でも、不思議と涙だけはでるのだ。 何が童貞だ。 俺はこのまま朽ちるだろう。 女性との交わりを知らず、俺は死ぬ。 本当の最後を迎えるだろう。 しかし、それでいい。 俺は人間のまま、朽ち果てたい。 そして土に還ろう。 その場に寝転がり、空を見上げる。 人間がいなくなった空は、とても青くて広かった。 あっ、紫色。 四十路のゾンビは俺の顔をまたいで、そのまま何処かへと歩いていった。
残された者の話
岡崎は軽トラックに轢かれてこの世を去った。 気の弱い岡崎は会社でいいように使われ、毎日のように残業を強いられ、ついには家から出ることもできないほどに衰弱していった。 俺は、親友が疲れていたことも、心に異常をきたしていたことも知っていた。なのに、頑張れという空っぽな励ましの言葉しかかけてやれなかった。 医者が言うには、軽トラックに轢かれた際にできた傷は大きなものではあったが、死に至る様なものではなかったらしい。岡崎の心は、死にたいと、そう身体に訴えかけたのかもしれない。 岡崎は生前、異世界に転生したいと言っていた。漫画好きの岡崎は会う度に異世界転生作品について語っていた。もしかしたら岡崎は、異世界に転生できたのかもしれない。そう願うことで、自責の念から逃げようとしているのかもれない。 形見分けで、岡崎の母親から一冊のノートを受け取った。ノートの表紙には『異世界転生』と書かれていた。中身はよくあるファンタジーのような内容で、終盤にかけて文字が乱雑になっていく。この世界から逃げだしたい。そんな岡崎の想いが反映されているようで、俺は涙が出た。 墓参りには欠かさず行った。贖罪という訳ではないが、行かないといけないという想いはあった。 「岡崎。お前は異世界で英雄になっているのか? 可愛い女性に囲まれて幸せな日々を送っているのか? ……神様、どうかそうであってください」 岡崎が死んで四年の月日が流れた。俺は相変わらず、安月給のサラリーマンで、気の置けない友人もひとりもおらず、ただ流れる時間を空虚に生きていた。 岡崎程とは言わないが、俺も会社に使われ、業務に追われ、上司に怒鳴られる。そんな日々を繰り返していた。 生きることは、なにも特別なことではない。死後の世界について知っている人はいないだろう。だから死ぬのは怖い。死なないためには生きるしかない。そして、生きるには金がいる。もちろん、どうせ生きるなら金は多い方がいい。 そんな生きることについて消極的な考えで生きていたからだろう。目の前に巨大な影が見えた時にはもう遅かった。 大型トラックのクラクションの音を、この距離で聞いたことがある人は少ないだろう。運転手の驚いたような強ばっているような表情が見えた。死ぬ瞬間は、時間の感覚が遅くなると言うが、あれは本当だった。 岡崎。俺は軽トラックじゃなくて、大型トラックだ。 一瞬の激しい衝撃を感じる暇もなく、俺の意識は闇に飲み込まれていった。 死後の世界とは、どんなものだろう。いや、そもそもあるのだろうか。答えは死んだ人にしかわからない。 俺は目を覚ます。そう、目を覚ましたのだ。ただ、そこは病室のベッドではなかった。青い空に、二つの太陽。聞いたこともない生き物の鳴き声に、広い草原。 「岡崎……異世界はあったんだ……」 「……渡辺!」 その時、懐かしい声がした。 慌てて駆け寄ってくる足音が聞こえた。 俺は、勝手に流れてくる涙を止められなかった。 「久しぶり……元気してたか?」
馬鹿でもわかる保健体育
「で、男児では11歳ごろに精巣が大きくなり生殖器が成熟し、陰毛の発生、声変わりと進む。女児は10歳ごろに乳房が発育し始め、陰毛の発生、初潮と」 「コバ先つまんねーよ! 何言ってんのかよくわかんねーし」 「あっ?」 立川少年の一言で教室に緊張が走る! 学級委員長の藤沢女子は、何が起こったのか理解するまでに数秒の時間を要した。 “開いた口が塞がらない!” 中山少年は、ビクビクと震える保健体育教室、小林を見つめる。 “……キレてる?” そして、この場にいる立花以外の生徒は全員こう思った。 “センシティブな授業で爆弾を放り込むな!?” “ってか、わかれや立川!?” なおも続く静寂の教室。 学級委員長藤沢の額に一筋の汗が滴り落ちようとしていた、その時! 「あー、じゃあわかった」 口火を切ったのはコバ先こと保健体育教師、小林貴教だった! 「馬鹿でもわかる保健体育、開幕!」 教室に響き渡る小林の嬉々とした一言。 南極大陸をも越える絶対零度の教室で、生徒たちの脳内は停止“フリーズ”した。 “……何が始まったんだ!?” さあ、教室内は混沌と化した。 キョトンとした立川。顎が外れかかる藤沢。未だに状況が飲み込めていない中山。机にコンパスで穴を開ける勉強机のファンタジスタ関町。 「コバ先何言ってんだよー、さっさと授業再開しろよ」 この男、将来大物になること間違いなし。生徒全員が将来の同窓会に思いを馳せ、現実逃避。立川は、ガキ大将と純新無垢“ウブ”という厄介な二属性持ちであった。 「立川。お前がつまらないって言ったんだぞ。だから俺は今から、隠語やモラル、全部とっぱらった実践保健体育教師になることにしたんだ」 “何を言ってるんだ小林!?” 脳内麻痺から復帰した生徒たちがざわつきはじめる。 「じゃあ立川! なんか質問してみろ。なんでも答えてやる。もちろん保健体育でだ」 小林がニヤリと笑う。 “気持ち悪い!?” なんで楽しそうなんだよ、小林! 生徒たちは今日家に帰ったら親にこのことを話そうと決意した。PTAという名の銃口を向けられているとも知らず、淫獣と化した小林はなおも楽しそうに続ける。 「それとも立川。お前保健体育舐めてんじゃねえか?」 「舐めるも何も、保健体育なんてテストもねーし、別にいらねーだろ?」 “いるわ!!” “ってか、俺らくらいが一番興味あるやつ!? 授業終わってむず痒い空気感じながら隣の女子の顔色窺う楽しいイベントだろ!?” ひとり、性癖が拗れている香川は声に出さずに心の中でツッコんだ。 「じゃあさっきの小難しい第二次なんちゃら? を、わかりやすく教えてくれよ」 生徒たちは、恐る恐る小林の顔を見やった。まさか、そんなまさか…… “……笑ってる!? 小林が笑ってる!?” これはまずい。非常にまずい。もし、もしもだが、ここで小林が先程の保健体育の内容を、宣言通りにあけすけに解説するというのなら…… “絶望!!” 授業後に流れる空気は、地獄と化すだろう。ちなみに次は給食である!! 生徒たちは祈った。頼むコバ先! いつものつまらないけどフレンドリーなコバ先に戻ってくれ! 「男はちんちんに興味を持ち出して、チン毛が生えだす。女はおっぱいが大きくなりだしてマン毛が生えるし生理がくる。ちなみに谷口は今日生理だ」 生徒たちの祈りは打ち砕かれた。 そして、本日二回目の停止“フリーズ”。 何故か被害をこうむった谷口は口から泡を吹いて気絶した。 “なんで生徒の生理を把握してんだ小林!?” 男子たちは谷口をチラチラと見て頬を赤らめる。 女子たちはそんな男子たちを絶対零度の視線で迎え撃った。 「んー、わかんねーよコバ先。チン毛はわかるけどマン毛とか知らねーし。生理ってなんだよ? なあ谷口お前生理らしいけど教えてくれよ」 もうこの教室に、秩序はなくなった。 悪びれもせず、気絶する谷口に追撃する立川。 “ってかお前なんなん!?” 生徒たちは恐ろしくなった。今まで普通のガキ大将と思っていた立川に戦慄する。 なんで知らねんだよ。金持ちの箱入り娘ならまだしも、酒屋のドラ息子がなんでそんなに純粋なんだよ、と。 「マン毛っていうのは、そうだな学級委員長。説明してやれ」 藤沢は目を見開いた。 現状、この教室での出来事は、馬鹿立川と淫獣小林との対面で行われていた。被害を受けた谷口を除き、画面の中の出来事のようなものだったのだ。 しかし! ここに来て自分を呼ぶ声。 “死ね! 変態!” 藤沢は白目を向いて立ち上がった。 学級委員長藤沢は真面目に生きてきた。 人が嫌がることを率先して行い、勉学、部活動と何一つ蔑ろにすることなく真っ当に。 それが仇となった! 彼女は、彼女の社会の中で絶対者とも言える教師に逆らうという思考を持ち合わせていなかったのだ。 「……マ、マ、マン毛とは、女性器周辺や上部に生える毛のことです」 ここに来て一転、熱狂する男子たち! いやー、めんどくさいけど結構可愛くね藤沢って? と、常日頃、牽制という名のジャブを打ち合ってきた男子たちからすれば、ちょっと気になるあの子の破廉恥な言葉を合法的に聞けたのだ。 男子たちが熱狂するほど、女子たちの視線は暗く冷たくなっていく。 図書委員水野などは目から光が消えている。 そして、女子たちは気づいた。 “次の犠牲者は私!?” 収拾のつかなくなった教室。 そこに、一筋の光が、否、祝福の鐘の音が響いた。 「……おっと、もうこんな時間か。じゃあ今日はここまで。学級委員長号令」 そう、終業のチャイム。 心身疲れ果てた生徒たちは、皆涙を流しその美しく響き渡るような鐘の音を聞いた。 「キ、キキキキリーツ、レ、レレレレレー、イ」 壊れたブリキのような藤沢が、残る気力を振り絞り、自身の責務をまっとうする。 「よっしゃー! 給食だー!」 立川はそう言うと勢いよく教室を後にする。 「じゃあ来週は小テストだからなお前たち。しっかり予習するように」 いつもの、そう、いつものつまらないコバ先が去り際に当たり前の感じで言ってきた。 生徒たちは思った。 “ああ、これは夢か” そうとしか思えなかったのだ。というか、絶対にそうだ。集団で居眠りをしてたんだ! 皆がそう思い、教室を見渡すと そこには 廃人と化した谷口と、未だに「レレレレ、レイ、レレレレ……」と壊れた学級委員長、勉強机でパターゴルフを嗜む関町の姿があった。 次回! コバ先VS保護者連合!
パパ活少女澪とおじさん
澪は元気。澪は自分が大好きだし、毎日幸せ。お金だって同級生より稼いでるし、みんなより可愛い。 朋美は澪がパパ活をしてお金を稼いでることに反対してるけど、澪はお金が好きだし辞めれない。 確かに、ちょっとだけ嫌な事も多いけど、澪は頭良くないから、こうやって生きていくのが正しいって思うの。 「あっ、澪です! パパさんですか?」 渋谷で待ち合わせ。今日は初めてのパパさんだけど、良い人だったら楽だな。 「んっ? 僕かい? 僕は君のパパじゃないよ」 あれ? 間違えちゃった。服装も年齢もそれっぽかったから。 「あっ、ごめんなさい! 間違えちゃいました!」 慌ててDMを確認したら、パパさん今日は都合が悪くなって、来られなくなったみたい。 「そうなんだね。あんまり危ないことしたら良くないよ。気をつけてね」 おじさんから注意されちゃった。なんかちょっと腹立つ。澪は心配されるような、そんな子じゃない。 「澪も予定なくなっちゃったから、おじさん遊ばない?」 偉そうに言ってきても、男なんてみんな一緒。若い子だから気が引けるかもだけど、どうせこのおじさんも偽善者だ。 「……そうだね。少しだけならいいよ」 ほら、少し渋ってみせても内心ウキウキしてるんだ。澪可愛いし。 「きまりっ! じゃあスタバ行こっ!」 おじさんは少し照れながらついてきた。なんかお金持ちっぽいし、お小遣いくれそう。今日はラッキーだ。 「澪ちゃんって言うのかな? 好きな飲み物はなに?」 「私は抹茶フラペチーノがいいなー」 なんだろう。このおじさん手馴れてる。イケおじじゃん。このまま常連パパになってくれないかな。 「おじさん、さっき何してたの? 待ち合わせではないよね?」 「ああ、タクシー待ってたんだよ。でも、もうキャンセルしたから大丈夫だよ」 へー、タクシー使うんだ。お金持ちっぽい。 「おじさんお金持ち?」 「はは、お金持ちではないかな。タクシーはたまたまだよ」 なーんだ。お金持ちじゃないのか。なら、お小遣いもらったらすぐ帰ろ。 「少しお話しいいかな?」 「……うん、いいけど」 なんだかお説教されそう。澪、何言われても響かないのに。 「澪ちゃんのお父さんって何してる人?」 「澪のパパは、澪が小学生の頃に死んだけど?」 澪のパパは、まだ澪が小学3年生の頃に交通事故で死んじゃった。この話をするとパパさん達はお小遣いいっぱいくれる。 「そうなんだ。ごめんね」 おじさんが少し申し訳なさそうにしてる。 「澪のせいで死んじゃったんじゃないかなって思ってる」 「なんでそう思うの?」 「だって、パパは澪のお見舞いに来る途中に死んじゃったから」 澪はその時、入院してた。たいした怪我じゃなかったけど念の為って。 「そうなんだ。澪ちゃんは責任感の強い子なんだね」 責任感? よくわかんないけど、多分違うと思う。 「そうかな? 別にそう思わないけど」 「僕も昔ね、部下が死んじゃったことがあるんだ。その人には、ちょうど澪ちゃんくらいの娘がいてね」 おじさんが語り出した。澪、おじさんの長話は苦手。 「ある日ね、その人が用事があるから早く帰りたいって言ってた。だから僕は、その人の分まで働くから先に帰っていいよって言ったんだ。そしたら、喜んで帰ったんだ。その日に事故してね。そのまま亡くなったんだ。それがずっと胸に残っててね」 澪みたい子が他にもいたんだ。このおじさんは良い人なんだろうな。 「でもそれっておじさんのせいじゃないでしょ?」 おじさん何も悪いことしてないし、その人の運が悪かっただけじゃん。 「みんなそう言ってくれるんだ。でも、当事者はそう思えない。辛いんだ」 確かに澪も、澪のせいじゃないよってみんな言ってくれる。でも、澪が入院してなかったらパパ死んでなかったと思う。 「わかるよ。澪もそう」 「ありがとう。でも、僕は澪ちゃんじゃないから言うけど。お父さんが死んだのは絶対に澪ちゃんのせいじゃないよ」 自分しかわからない気持ちってあるよね。でも他人には自分と違う言葉をあげたくなる。おじさんはそういう人なんだろうな。 「おじさんって悪いことしたことないの?」 「そうだね。悪いことしたことあるよ」 意外だ。こんな良い人そうなのに。 「たとえば?」 「今とか?」 「今? これから澪悪いことされるの?」 「そんなわけないじゃないかっ! どこの親御さんの子かもわからない女の子とふたりでお話してるからってだけだよ!」 澪が言うと、おじさんが焦ってる。面白いおじさんだな。 「えー、それが悪いことなの? じゃあ澪は、どこのパパかわからない人といっつもお話してるし、悪い子じゃん」 澪が意地悪を言ったら、おじさんが少し考えて、言った。 「悪いことかどうかは、自分で考えることだからね。そればっかりは僕にはわからないかな。ただ、澪ちゃんが危ないことになったらおじさんは悲しいかもしれないね。人を悲しませると悪いことなのかもしれないね」 朋美もそんな感じのこと言ってた気がする。おじさんなのに朋美みたい。 「わかった。澪は多分悪い子。でも、それでいいんだ別に」 澪がぶっきらぼうに言ったら、おじさんは少し困ったような顔で笑った。 「僕も澪ちゃんに何か伝えたかったわけじゃないし、そんなに考えなくても大丈夫だよ。ただ、澪ちゃんは素敵な子だから、澪ちゃんを心配してくれてる人もいるよってことだけ言いたかったんだ」 「ふーん。ありがと」 なんだろうな。このおじさんといると調子が狂うな。なんかぽわぽわした気持ちになる。 「ごめんね、長いこと付き合わせちゃって。僕ももう帰るよ」 「おじさん家族いる?」 「昔いたかな。愛想尽かされちゃって、今はひとりなんだ」 こんな人でも、奥さんに逃げられることあるんだ。 「意外だね。おじさん良い人っぽいのに」 「僕も改心したと思ってるけど、駄目なところだらけだよ。仕事一筋で家庭を顧みなかったし」 「なら澪はみんなの娘だから、何時でも連絡してきていいよ」 澪が言うと、おじさんがこの日一番のびっくりした顔をした後、笑ってる。 「そうだね。君のおかげで幸せな人もいるかもしれないね。僕も辛くなったら連絡させてもらうよ」 澪はびっくりした。今まで鬱陶しい説教をしてきたり、本気で心配してウザかったおじさんはいたけど、こんなのは、はじめてだ。 「どうせおじさんは連絡してくれないよ」 澪が言うと、おじさんはまた笑った。 「じゃあ僕は行くね。……そうだね。これは僕からの気持ちだよ」 そう言うとおじさんは3万円を手渡してくれる。 「澪、別にいらない。今日はそんな気分じゃないし」 最初はお小遣い貰おうとおもってたけど、このおじさんからは欲しくないって思う。 「これは僕からの気持ちってだけ。別に特別なお金じゃない。僕も気が少し楽になったからね」 「じゃあ貰う」 「うん」 おじさん本当にわかってないなー。20分くらいで3万円も貰っちゃった。 「じゃあ気をつけてね」 おじさんはそう言うと、帰っていっちゃった。なんかさっぱりしたおじさんだ。 「なんかこのお金、いつもみたいに使えないなー」 たまには、パパのお墓参りにでも行ってみようかな。このお金があったら交通費になるし。 「あっ、DM来てる!」 今日都合が悪いって言ってたパパさんからDMが来てる。やっぱり会おうって。今日もう気分じゃないけど、しょうがないなー。澪って可愛いからっ!