愛楓
20 件の小説フリージアの香水
ふわりと香る、柔らかく甘い香りがした “あ、起きた?” 頭上から声がしたと思い、顔を上げると陽舞鈴(ひまり)がいた どうやら、日向に当たっていたら寝てしまっていたらしい。 “よく寝てるから起こすのも何かと思ってね” にこりと笑いながら陽舞鈴は話す。 “起こしてくれても良かったのに”なんて言いながら、 いつもながらの陽舞鈴の優しさを感じていた。 “ねぇ、和優(まひろ)。今、幸せ?” “なんだよ急に。” いつもの優しい顔をしながら、でも、寂しそうな表情をして 陽舞鈴が聞いてきた。 “まぁ、幸せだよ” 照れながらも答えたら “そう、良かった。安心したよ。” とほっとしたような顔をして微笑んだ そこで目が覚めた。 …あぁ、夢か。 感傷に浸りながらも、会社へ行く支度を始めた。 この現実に、陽舞鈴がいたらどれだけ良かったか。 一緒に朝ご飯を食べて、寝られたらどれほど幸せか。 考えれば考える程、涙が止まらない。俺は、泣きながら支度をし終わって、陽舞鈴の仏壇の前に立ち尽くしていた。 でも、 “夢でも、会いに来てくれてありがとう。行ってきます。” 感謝を伝え、会社に向かうために玄関へ行き、革靴を履いた。 玄関の扉を開けようとした時、陽舞鈴のお気に入りの、 フリージアの香水がふわりと香った。 −行ってらっしゃい。 背後からその声がしてぱっと振り返ったが、 やはり陽舞鈴はいなかった。香水の香りもしなくなっていた。 また泣きそうになりながらも、また “行ってきます” と呟いた
エリカ
皆は、心に強い信念を持っているのに 私には何も無い。 何故、皆と同じように出来ないんだろう。 みんなが出来ていることが何故私はできないんだろう。 何故、私だけこんなに不安なんだろう “なぜ?”
五本のバラとベゴニアの花を添えて
あなたを想うのは、もうこれで最後にしよう。 あなたに言えなかった ごめんなさいも ありがとうも 大好きの言葉も 全部、私の中に仕舞うから。 あなたもどうか、私では無い別の誰かと幸せになって欲しい。 そう願うしかい。
私のエビネは箱の中
私は卑怯者だ。 皆に愛想を振りまいて “優しいね” “いつも笑顔で元気が出る” なんて言って貰えるけど 私はそんな綺麗な人間じゃない。 人の失敗を見て “あぁ、私よりも劣っている人がいる” なんて安心して、 表面上では仲良くしていても その人の嫌な部分ばかり探してしまう。 自分は助けを乞うくせに 人の助けは気まぐれでしか助けない。 汚くて、愚かで、根暗な人間。 “なんで私なんかが居るんだろう” 何回も自分に問いかけた。 結論なんて出やしないくせに。 だから私は“これが私だ”と全てを受け止めてみることにした。 表に出してみることにした。 でも やっぱり私みたいな人間の周りは私と同じく、 優しさなんて持っていなかった。 “そんなの貴方じゃない” “直しなさい” “いつものあなたが貴方でしょ” “私”という“私”は一生閉じ込めておけば皆は満足なんだね 今まで見てきた“綺麗な私”だけがほんものなんだね
白いゼラニウム
好きだって、大好きだって言って欲しかった。 手を握って欲しかった。 ぎゅっとして欲しかった。 貴方は私に期待させておいて、嘘ばかり着いたね。 名前も、 言葉も、 行動も、 全て私を欺いて楽しむためだけの事だったんだね。 うそつき。
バラとアザミ
貴方は貴族 私は貧民 貴方は いくらだって新しいものを買ってもらって いくらだって自由な時間を与えられて いくらだってわがままを言っても聞き入れてもらっている っていうのに まだまだ足りなさそうにしているね 私だって 新しい物を沢山持ってみたいし 自由な時間だって欲しいし わがままだって言いたい 1度は試みたけど、貧民の私には無駄なことだった。 何をしたって、立場が裏返ることは無いし 可愛げのないやつなんて以ての外 同じ血を引いてるはずなのに、私はいつも蚊帳の外 もううんざり。 私を見て 愛してよ
黒のダリア
消えたいと思った時 真っ先に浮かぶのは、笑っている大好きな友達たちの笑顔なの。 あぁ、私が消えたら悲しんでくれるのかな 泣いてくれるのかな でも、皆のせいで私は消えることができない。 悲しませたくなくて、泣かせたくなくて 汚くも美しい世界にもう少し、あともう少しだけと 生きる希望を見せてくれるから まだ消えられない まだ頑張れる。
さくらの花びら
どうか あなたの心の中に 呪いでもなんでもいいから、1つでも 私との思い出を忘れないで、覚えていてくれますように
天使は本当に美しいの?
私は“天使” みーんな私を見て 美しい 優しい 清く正しい と言ってくれるの! 皆が醜いおかげで私が際立つの!
えのころぐさ
生きている意味が分からない 楽しかったことも何だったか分からない がむしゃらに、自分が成りたいものになりたくて進んできたのに 否定されている気がする 否定されるような目線を感じる 全てが怖くなっている 何に対して怖いのかも分からない いっそ考えるのをやめてやろうかと思うが それすら怖い ただ、死を選択したくない 消えて無くなりたい 私に期待をしないで