きな粉餅
5 件の小説時間の流れ
どんなに願っても どんなにお願いしても 時間が止まることはないし もちろん止めることも出来ない 過去にタイムスリップしたり 未来に飛んだり それにその時間を戻すことも出来ない この時間はその日その時のものだから 昨日楽しかったことも 悲しかったことも 全部その日だけの時間 昨日に戻りたいと思っても二度と戻れない 時は非情に進み続ける 日が昇って夜が明けてまた一日が始まる これは他人の受け売りだけど その日がどれだけ嫌でも 腹括って生きていくしかない ただ自分が疲れたなって思う時は 自分の好きなこと目いっぱいして 自分を労わってこれからも適度に頑張ればいい
夢渡り
ある夜、こんな夢を見た。 空高くそびえ立つ都会のビルの隙間を飛んで散歩をする夢。 下はとても明るくて夜とは思えないほどだった。 ビルのふちに腰掛けて景色を眺めたり、 そのまま落ちて壁を蹴ってアクロバットな動きをしたり。 とても楽しい夢だ。 更には宙に浮かんで雲を突き抜けたりした。雲を抜けると満月が見えた。いつもより一回り大きい。 “何してるんだ?” 月を眺めていると声をかけられた。 振り向くとまるで映画のアラジンのように絨毯に乗った男がいた。長い黒髪を一つにまとめて前に垂らしている。 “月を眺めてたんです” とりあえずそう答えた。男は “そうか……君は魔法使いなのか?” “え?” “箒もなしに空を飛ぶなんて並の魔法士ができることじゃない” 男はそう言った。魔法使いと。……これは夢ではなかったのか?思わず周りを見渡せば雲は晴れて見たことの無い景色が広がっていた。六つの島と一つだけ上に浮かんだ大きな島。 ……どこかで見たような…… “……君はこの世界の住人では無い” “早く目覚めた方がいい” “……戻れなくなる” 矢継ぎ早に言われ次の瞬間唐突に落下するような感覚を感じた。 “次に渡ったら二度と帰れなくなるよ” そう残して意識は途絶えた。 −−−−−酷い頭痛とともに意識が浮上し 真っ白な天井と点滴のスタンドが見えた。
体調不良
体調が悪い。 体調が悪くなると気分も沈むし、元気が出なくなる。 怒りやすくなるし、物事を前向きに考えられなくなる。 何もかもめんどくさくなるし、貧乏ゆすりをしたりする。 お腹の辺りがむかむかして気分が悪い。 今月くると思っていたものがこない。 生理がこない
火葬場
私は昔から体力がなくて行事のマラソンとかも嫌いだった。 高校の体育祭で持久走をやらされることになった私はせめて最後まで走ろうと思い、休みの日少しだけ走ることにした。 交差点に差し掛かるところで全身真っ白の男性が私の前を走ってた。 この人も走ってるのかと勝手に親近感を覚えながら信号機を待っていた。 青になって走り始めると男性はそのまままっすぐ新しく出来た建物に入っていった。 「あれ、あの建物……」 新しく出来た建物は火葬場だった。
海岸で
とある海岸のそばに一つの家があった。 その家に住んでいるのは黒塗りの魔女。 いついかなる時も全身真っ黒で子供がつけた、いわばあだ名のようなもの。 声を聞いた事がないので名前も分からない。 もしかしたら名前もないのかもしれない。 黒塗りの魔女はいつものように実験に使うものを集めるために岩場にきていた。 今日は何だか胸のあたりがむかむかする。 気分が悪い。 遠くまでは行けないかもしれない。 少し歩いただけで息が弾む胸を抑えながら岩場を歩いた。 目的のものはある鉱石。ガスを含む危険な鉱石。採掘すると一定の確率で爆発するので気をつけなければならない。 −−−−しばらく歩いたが欠片も見つからない。 もしや海の中にあるのかもしれない。 岩場と海の中にあるが岩場は量が少なく、今のように見つからないことが多かった。 海に入るための材料コストや海の中では上手く動くことが出来ない危険性等を考慮していると、微かに歌が聞こえてきた。聞こえてくるのは洞窟の中から。 海鳥でもいるのかと思ったがとても綺麗な歌声だ。とてもじゃないが、鳥なんかには再現できないだろう。 好奇心で洞窟の中に入ってみる。 歌声は近づくたび鮮明に聞こえてくる。 それは助けを求めるような、必死に歌を紡いでいるようにも思えた。 洞窟の最奥にそれはいた。 一際目を引いたのは紺色の長い身体に耳の場所には魚のようなヒレ。 一目見てわかった。 「人魚」だ。 歌声もこの人魚が歌っていたのなら辻褄が合う。人魚は黒い網に絡まっていて網にも棘があるのか胴体から血を出していた。 少し悩んだところ、助けることにした。海に入る際に恩を返してもらうつもりであり、希少な人魚に恩を売っておくのも悪くないと判断した。 人魚に近づくと威嚇するように歌声が唸り声に変わった。 知ったことかと網に手を伸ばすと思いっきり噛み付かれた。 苦痛に顔を歪め、噛み砕こうとしてくる人魚を抑えながら「糸」を使い、ナイフを創り出した。 ナイフを見た人魚はさらに抵抗してきた。また「糸」で人魚を抑え、網を少し上に引っ張り、ナイフを引いた。 プツリと音を立てて切断された網をまた細かく切断していく。 網を切るのを見た人魚はゆっくりと魔女のてから口を離した。 同時進行で手に回復術をかけて切断した。 しばらくして網から抜けた人魚を見ながら網を燃やした。 人魚が囚われていた光景は、少し耐え難いものだったから。 ふと人魚を見るとこちらを見ていて金色の大きな瞳に見つめられていた。 引き返そうとするとなにかに引っ張られた。振り向くと人魚が裾を握っていた。 思わず立ち止まると何かが鳴いた。 正確には人魚が鳴いた。「きゅう」とイルカのような 可愛らしい音を発した。 「……何今の……」 可愛いと思ってしまった時からもう魅了されていたのだろう。 だって人魚はこんなにも妖艶な笑みを浮かべていたのだから。 目尻を蕩けさせて笑みをこぼした相手に 魔女は人魚に恋をした。