かにかにらんち
57 件の小説徘廻
窓の外を見るとゾンビがのろのろと歩きまわっている 時刻は深夜三時 十年ほど前突如現れてからというもの毎晩ゆっくりと徘徊している ゾンビに襲われた人はゾンビになる、そうやって繁殖を繰り返す だからみんな夜は外に出ず家の中に篭るようになった 外を歩き回るより家の中の方がとても安心できる なぜなら人目を気にせず襲うことができるから
非常口
目の前が燃えている 今の所傷ついてはいないが時間の問題だろう いくら叫んでもこの中では誰にも声は届かない このまま鎮火するまで待っていたいけれど鎮火する保証はない 非常口があれば真っ先に逃げ出したいけれどそんなものはない こんな事になるならあんな事書き込まなきゃよかったな 私はそう思いながらSNSをアンインストールした
この男、幸運である
宝くじを買えば一等が当たり 福引きを回せばハワイ旅行に行け 予想した馬は1着になり 事故にも遭わず、病気にもならない 金目当ての女ばかりが集まり 特異体質だからと週三回大学病院へと足を運ぶ この男、幸運である
主役
ラムネのビー玉が好き、普通のビー玉じゃなくてラムネのビー玉が ひとつに一個しか入っていない特別感、ほのかに香るラムネの匂い 見てるだけで、触れるだけで思い出が鮮明に蘇ってくる ビー玉を覗いてみると地面があるはずの場所には空が広がっていた ぼくは夢中になって空をかけた、そして転んだ ぼくはそのまま雲の上で寝そべったまま眠りについた 久しぶりに書いたなぁ
バイクのり
気がつくと僕はひかれていた 真っ赤なバイクにひかれていた その真っ赤なバイクはそのまま走り去っていった 一瞬の出来事だったので本当に真っ赤だったのかも定かではない 本当は白だったのかもしれない でもたったひとつ揺るぎない事実がある ぼくはバイクに興味を惹かれていた
踏切が生む情緒
静かな夜の住宅街に踏切の音が響き渡る 踏切がひとしきり鳴り終わると再び静寂が訪れる しかしその静寂は電車の音によってすぐに終わりを告げる 長い静寂の合間の一瞬の静寂 果たしてこれらは同じ静寂なのだろうか 同じだけど違う、違うけど同じ ししおどしが落ちるまでの静けさとどこか似ている気がする
穴を突く
高校生になったばかりなのに私は耳にピアスを開けた 校則からも親からも禁じられていた行為 おっきな反抗心とほんのちょっとの好奇心 もちろん親にバレてこっぴどく叱られた 父は「親からもらった体に穴を開けるとはどういう事だ」と怒鳴る 煙草を吸いながら説教をする父に私は言い返す 「お父さんだって肺に穴を開けようとしてるじゃない」
わたしの敵
やっと敵を全員倒したぞ‼︎これで今後は心置きなく世界征服を楽しめるぞ。…
「別れ」との別れ
物語にはじめとおわりがあるように出会いがあれば別れもある 喧嘩別れ、卒業、引っ越し、種類は様々だろう もし仮にずっと仲良しで学校も同じで引っ越しをしないとする それでも人間なのだからいつかは別れがくることになる、死別だ だが物語のおわりつまり別れは読み手の手によってどうにでもなる ここで次のページに進まず読むのをやめると別れることはなくなる ページをめくってくれた君とはここでお別れだ なーんて悲しい事を言う僕ではない 読み手だけではなく書き手の手によってもどうにでもなる それは物語を終わらせないということだ 僕が永遠にこの物語を書き続ければおわりを迎える事は決してない だがそれでは読み手に届くことも永遠になくなるということだ つまり別れどころか出会いすらもなくなってしまうことになる やはり別れというものは必ず来てしまい避けることは難しいのだ 悲しいがここまで読んでくれた君とは別れないといけないらしい だけど実は僕には奥の手がまだ残っている つづく
人類への反抗心
20××年、人間と機械が戦争をしている中今まで人間に虐げられてきた動物たちは機械側についた。…