mizuki‎𓂃 𓈒𓏸

7 件の小説

mizuki‎𓂃 𓈒𓏸

投稿頻度少なめ初心者ですが暖かい目で見守って頂けると幸いです(*´˘`*) （アイコンすぐ変えちゃいます）

2024年10月からNoveleeを利用しています

夢を運んで

───サンタの仕事は、子供に夢を与えること。　それは、私──絵本作家も同じだった。　　仕事がひと通り片付いた頃、やっと世間がクリスマスで騒いでいることに気が付いた。「クリスマス、か。」　チラリと窓の外を見る。ホロホロと白い雪が降っている───なんてことは近頃無くなっている。　窓から手元に視線を戻すと、見慣れたいつものキャラクターが笑っている。　目を閉じて過去のことを思い返す。なぜ、世間が浮かれていると自分は暗闇へ潜ろうとするのだろうか。昔から自分は変わり者だった。「…希衣ちゃん？もう中学生なんだし、そろそろ小説とか読んでみたらどうかしら？」　母や担任は、耳にタコができるほど小説を勧めてきた。 ───でも、自分は絵本を読み続けた。　ほっとするような絵柄。優しい文面。そして、本の最後にポツンと置いてある作者の紹介ゾーン。　絵本の全てが好きだった。 …小説なんて、文字がぎっしりで作者が何を伝えたがっているのかよく分からない。　国語の時間は好きだった。作文を書け？周りがブーイングする中、私は1人ペンを走らせた。　比喩表現はよく褒められたけれど、どうも内容が浅かったらしい。よくやり直しを食らった。　美術の時間も好きだった。特にクレヨンや絵の具、粘土を使ったもの。　美術の先生は年配の女性で、その先生にはよく、絵本に載っていそうな作品を作りますねと微笑まれたものだ。　それ以外はどうも成績が宜しくなかった。母や父が裏で私のことについて真剣に話し合っていたのも知ってる。 ────全て絵本が原因だと、授業中も落書きをしているからだと、周りの誰もが分かりきったことを話し合っていた。　それでも、私は黙っていた。陰口を言われていても、絵本売り場で小さい子に混ざって本を読む私を不審視する主婦も、絵本を読めば、絵本を見れば、全てどうでも良くなった。　あの時以外は。「ハロウィンパーティーだ!!!!」　馬鹿デカイ図体をした英語教師が生徒に向かって叫ぶ。その日はハロウィンだった。　クラスレクをすると、先生と生徒は歓喜の声を上げた。私は違った。　騒がしい中、1人絵本を読むのだ。この日学校へ持っていったのは｢かわのながれはとまることなく｣という、私の大好きな作家さんがかいた、最古作だった。　なかなか手に入らない本を、古本屋でゲット出来たことの嬉しさを噛み締めながら、表紙をめくる。「おい、川上希衣。せっかくだ！お前も来い！」　英語教師に声を掛けられるが、一瞥もせずに本を読み進める。　あ、絵の感じか違う。緊張していたのだろうか。線画がカクカクとしている。「ふふっ」　大好きな作家さんの成長を実感し、無意識に笑ってしまった。「な、何笑っている？」怒りと、困惑が混じった表情でこちらを見ているクラスメイトと先生。　空気がシンと冷たくなったのは冬だからだろうか？「あ…」　説明しようと顔を上げた時、頭上に何かが持ち上がる。「こんなものばかり読んでいるからおかしな人間になるんだ!!」　プライドが高く、短気の英語教師は、私が読んでいた本を取り上げると、私の目の前でビリビリに破いた。　今まであまり興味のなかった英語教師の馬鹿力。この時ばかりは呪ってやろうかと思うほど憎たらしかった。　その後の記憶はないが、どうやら何か問題を起こしてしまったらしい。　────学校から来るなと言う暗示のようなものを感じたため、それ以来学校には行かなかった。　元々成績が悪かった上に学校へ行かなくなったもんだから、当然高校へ進学できなかった。　それからひたすら、絵本を読みふけった。人としては腐っているけど、心は生き生きとしていた。　17になっても小説というものを読んだことがなかったから、語彙力がない＆すごく幼稚なニートになった。　親はもう諦めたらしい。「お前なんかどうでもいい」と、今は弟に全てを注ぎ込んでいる。……当の弟は迷惑そうだが。　それから、いつの間にか部屋にあったスケッチブックを見つけて、絵本を書き始める。　何故だろう。最初のページに描いたのは満面の笑みを浮かべたサンタクロースだった。　普通かぼちゃとか…あの日に関係するものを描くのでは？と、その例のスケッチブックを眺めながら思う。　やっぱり、イベントって気持ちが沈む。けど、こうやって今充実してるのは全部あの頃があったから。　今、私は相変わらず部屋にこもっている。 ───でもそれは、ちゃんと誰かのためになっている、意味のある閉じこもりだった。　『ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙ』携帯電話がなったので出てみると、弟だった。「もしもし？」『姉ちゃん！ごめんね仕事中に。姉ちゃんの絵本さ、教室に置いたら取り合い起きちゃって（笑）すごい人気だよ！クリスマス関係の絵本が出来たらまたうちに寄付してくれよ〜！』「あらありがたい。やっぱり子供の笑顔が1番だなぁ…それで？」　『あ、いやそれだけ（笑）』「そんなことでいちいち電話すんなって…まぁいいや。体調気を付けてね。」　『おう。姉ちゃんもな。』　弟は今、近所の幼稚園で保育士をしている。　気づいたらもう午後11時だ。つけていたテレビもバライティー番組も終わり、深夜のニュース番組に変わっていた。　もう今年も終わるなぁ…としみじみしながら、クレヨンを手に取る。　そして黒で線画を描こうとすると、手が寒さで固まった。　何とか描いてみると、カクカクとしてしまったが、満足だ。　外で鈴の音がすると思えば、まだまだ胸は踊る。　今日もどこかの誰かが私の本で幸せになれたのなら。また私はサンタと共に夢を作って行く。　

おねがい

文字って難しいな… リアルなら声のトーンとか表情とかで機嫌伺えるけど、こういうネットとかだと文字で内容とか感想伝えるから、相手の意図が分かりずらい。 😭✨ ↑こういう絵文字ありがたいとにかく、違うSNSの投稿に来たアドバイス？か質問が来たんだけど、そのコメ主さんの気持ちが分からなくて、私が勝手にアンチコメだと思って火に油注いじゃった見たい。これに関しては私が悪い。みなさんも、気を付けてくださいね。送信ボタンを押す前に、誤解されないか念入りにご確認を。誤解じゃなくとも、ストレートなアンチコメもおやめ下さい🙇‍♀️ この投稿に対してのコメントも、優しくご指摘いただけたら光栄です。

4

1 　――あのころはよかった。みんな仲がよくて。 2 　――だんだん緩んで行って、他の人のものをぼどいてしまいそうになった。 3 　――先生が、暖かかった。温もりを感じられた。ただ、針が現れた。 4 　――針が、お腹に刺さって、痛かった。どうしようもないほどえぐられて、完全にほぐれた。？　――全てを感じなくなった。痛みも、温もりも。なにも、作れなくなった。　ｰ解説ｰ　1.まだ無邪気な子供の頃。幼稚園ではみんな分け隔てなく接してくれて、多少は我儘言っても許して貰えた。　遊びにも誘ってくれた。　母も父も弟も、喧嘩することはほぼ無かった。　2.自分は何をしても、何を言っても大丈夫なんだと錯覚し、他の人を自分の我儘に巻き込んだ。　そしたら、その巻き込んだ人が作ってきた性格、計画、幸せ。それを、台無しにしてしまうところだった。　3.恩師が現れた。唯一の、信頼できる人。だけど、自分を攻撃してくる、ライバルも、現れた。　4.ライバルに差をつけられ、精神的にキツくなった。1人で抱え込んでいたら、もう何もする気が無くなって、抜け殻状態になった。　？.この世から存在を消した。もう、何も感じなくて済むのだ。

イタズラ

放課後の教室、君と2人きり。「今日、ハロウィーンだね。」　君は、イタズラっぽく笑う。「あ、たしかに。」　少し心臓が高鳴った。「渋谷いこーよ！」　彼女はニヤニヤとしている。「なんでだよ。明日も学校だろ。」「えー、でも誠今日誕生日じゃん！お祝いしよーよ！」　さらに心臓が高鳴った。「山田…それ知ってたんだ。」「もちろん！誠のことならなんでも分かるよ！」「嘘つけ。」　お前にこの気持ちがバレてたら…恥ずかしすぎる。「うーん、じゃあ誰もいないから特別。」　彼女は身につけているセーラー服をゆっくりと脱いだ。「ちょっ、何して…」「ふふっ、何期待してんのさ。」　彼女の制服の下にはオレンジ色のTシャツがあった。「何それ？」「ん？かぼちゃの前段階」　そう言って彼女は黒いマッキーペンを取り出して、そのTシャツにインクを滑らした。　　「あ、」　見事にかぼちゃの顔がが出来上がった。「はい。誠の分もあるよ？ペアTシャツ、しよ？」「お、おう」　彼女がカバンから取り出したオレンジ色のTシャツに俺がペンで顔を付け加える。「ふふ。オソロ。」　ハロウィンらしいTシャツが出来上がった。「じゃあそれが私からの誕プレということでっ！」　彼女は再びイタズラっぽく笑う。「はぁ？手ぇ抜きすぎだろ。」「でも、嬉しいでしょ？」　――まぁ、「うん。」「HAPPY BIRTHDAY＆HAPPY HALLOWEEN」「お前もな。」「え？」「イタズラは終わりだ。」　――次は俺がイタズラっぽく笑う。　彼女と俺は誕生日が同じだ。「トリックorトリック」　彼女の表情がとろける。「トリック！」　――お菓子よりも甘い、キスをプレゼントしてやった。

サツビト

「フゥ…」　――今日も仕事が一段落した　毎日毎日仕事に追われる日々。「刺激が足らないなぁ。」　――正直つまらなかった「ﾌﾟﾙﾙﾙ　ﾌﾟﾙﾙﾙ」　そんな時、電話がかかってきた　きっと上司の内島（うちじま）さんだろう「もしもし？どうしました？」　『あぁ、やっと出たか。毎回電話に出るのが遅いぞー。』　――は。　『それで、明日の話だが、お前の後輩の場川（じょうがわ）いるだろ？そいつが変わってくれるってんだ。』「じょ…？え？アイツがですか？まだ新人じゃないですか。｣　――場川は、昨日入ってきたばかりの新人だ。実力はあるみたいだが…いくらなんでも仕事を任せるのが早すぎないか？「いやぁ、早すぎるんじゃないですか？まだ何も教えてませんし…ミスしたら取り返しがつかないことになりますよ。」　――つい最近入ってきたやつに仕事を取られるのだけは嫌だ。　『それなんだがね。前も言ったが…彼女は一か月前まで[ﾂﾔｶﾞﾐ事務所]に所属していたそうなんだ。』「ﾂﾔｶﾞﾐ事務所？！ですか…」　『君ならわかるだろう？明日は彼女に任せて、君はゆっくり休みなさい。休みを取れていないようだからね。』　たしかに、最近は働きっぱなしで休みをとっていなかった。「じゃあ明日は…お言葉に甘えて休暇を取らせて頂きます。」　『うん。じゃ。』　『ﾂｰﾂｰﾂｰ』　マジかよ　まさか場川に仕事をとられるとは思わず、少しパニックに陥った。　すぐに我に返り、自分の体を嗅ぐ。「うぅ、くせっ」　すぐにシャワーを浴びた。　翌日　起きる時間こそ変わらなかったが、目覚めは良かった。「うーん。いい朝だなぁ。」　いつもの緊張感がない為、心に自然と余裕が出来た。「今日、何しよう？」　起き上がってテレビをつける。　『昨日未明、○○県の○市で見つかった死体の身元が判明しました。死体が見つかった位置から約500m離れたところに…』　身元、わかったのか。最近ニュースを見ていないから気づかなかった。　とりあえず、街をぶらついてみるか。「いらっしゃい！」　俺が入ったのは近所で美味いと有名のラーメン屋だった。「えーと、醤油ラーメン、普通盛りで！」「はいよ！」　――朝からラーメンも悪くない。　有名とは言っても、店内にいるのはおっさんばかりだった。　まぁ、平日だしな。　口コミによると、休日は子連れも多くていつも満席。そのため出来上がるのが遅いらしい。　――今日来て正解だったな。「おまちどう！」　そうこうしているうちにラーメンが出てきた。　ツヤツヤとしたコシのある麺、温かそうな湯気を発するスープ、厚みのあるチャーシュー、全てが輝いていた。「いただきます。」　ｽﾞﾙﾙﾙﾙ… 「うまっ！」　言ってから慌てて口を抑えた。　思わず叫んでしまった… 「ハハハ！そうかいそうかい！良かった良かった！」　ラーメン屋の店主のおじさんは豪快に笑った。　――うぅ… 　心が、綺麗になった気がした。　その後は大手ショッピングモールへ行った。　映画を見るためだ。　[殺し屋Z] 　これは主人公が殺し屋の仕事を通して人間の愚かさを知っていく物語だった。　「いずれ、日本人は全員精神的に死んでしまう。その前に俺が殺さなくては…！｣　主人公は物語が進むにつれてどんどん狂乱していく。　そして最後には… 　『ｸﾞｻｯ』　主人公は上司に刺されてしまった。「冷静に仕事もできないのなら、お前はもう不要だ。」　上司は淡々と言葉を続ける。「この仕事をしていると精神がおかしくなって狂うやつが多いんだ。だから予め図太い神経持ってるやつじゃなきゃな。狂っちまったやつは処分しなきゃなぁ。」　………………………………………………………………………… 　　――上司に殺される、か。　いや、実際に起こりそうで怖い。　怖すぎるぅぅぅ。　俺は、あの映画の主人公を俺に重ねて見ていた。　――いや、違う。俺じゃない。　内島のやつ。そういうことか… 　俺は直ぐに、場川が仕事をしているであろう場所へ向かった。　暗く、人目につかない場所。　全体的に黒い空気が漂う裏の道。　そこは、いつもの事ながら少し不気味に感じてしまう。　時刻は19時58分。あと2分。「場川！！」　――時すでに遅し。　ﾂﾔｶﾞﾐ事務所に所属していただけあるな。　時間なんか知らない。さっさと仕事をこなす。　ﾂﾔｶﾞﾐ事務所の特徴だ。　―足元は真っ赤に染まっていた― 「随分と派手にやったな。」　彼女はニカッと笑った。「あざすー！」「俺は知らないぞ。」　俺は回れ右をして家へ帰ろうとした。「大丈夫すー。証拠なら隠滅できるんで。」　後ろを振り返り、元は俺の顧客だったはずの男を見る。「違う。そういうことじゃねぇんだ。ﾂﾔｶﾞﾐ事務所とは違うんだよ、うちは。」　場川が口を開いた時、上から内島が飛んできた。　そして、映画のように場川の真後ろに立つと、口を挟ませずに　『ｽﾞｯ』　左胸を静かに刺した。　ゆっくりと倒れる場川。　これだからﾂﾔｶﾞﾐ事務所は… 「悪いな、せっかくの休日まで後輩の世話をさせちまって。」「いいんです。慣れてますから。」「殺し屋ってのはほんと、ぶっ飛んだヤツが多いから。お前を採用して正解だったな。」　　上司に殺されたのは場川の方だった。「また休みくださいよ。」

わかる

わかる ――わかる。アナタは、半袖で散歩に来たことを後悔している。「ねぇ、なつき、ちょっと肌寒いね…」　――わかる。アナタは、アイスが食べたい。「あ、けどさ、アイスは食べたいんだよねー！バリバリちゃんとかぁ…」　――わかる。アナタは、空が好き。「寒いのは苦手だけど、冬の空は好きだなぁ」　――わかる。アナタは勉強が嫌い。「はぁぁ、テス勉だるいなぁ」　――わかる。アナタは推しがいない。「ん…そういえば、春香がまた"推し"の話してたなぁ、よく分からないや」　――わかる。アナタは「完璧」が嫌い。「うるさいなぁ、100点じゃなくてもいいじゃん。これでも私なりに頑張ったんだよ。ママに直接は言えないけどさぁ」　――アナタは、両親が苦手。「親ガチャ失敗したなぁ、運はいいほうなんだけど…」　――アナタは、犬派。「ペットがいたらちょっとは慰められるのかな…わんちゃん飼いたいなぁ」　――アナタは。「もう、なんなのさ。」　――アナタは、アナタが嫌い。「何したらいいのさ…」　――アナタは、私のことが好き？「……ぁう」　――アナタは、美しい。「ありがとう。」　――アナタは、よく頑張った。橙色に染った夕焼け空に身を投げたアナタを、ただ見守るしか出来なかった。ねぇ、私の事好き？いつも夕方になると、一緒にお散歩をした。私は、人間の言葉は理解できないけれど、わかる。いつも一緒だったから、アナタの言葉が理解出来る「ミャァァ…」　さようならを告げると、近くの家の屋根に飛んだ。付近がうるさくなってきた。犬でも、猫でも、人でも、新しい身体で、新しい心で、また私とお散歩しようね？

空に浮かぶ瞳

「フゥ、学校なんて行ってられっかよ。」　12:27　学校を抜け出し、近くの人気のない公園のシーソーに座る。「おつかれ」不意に隣から声をかけられ驚いたそれが顔にも現れていたのか、隣の女はふふっと柔らかく笑った「誰…すか？」俺は少しいじけながら聞いた「ふふっ、『ひとみ』よ」彼女…ひとみはクスクスと笑いながら名乗った「ひとみ…？俺のこと知ってんの？」どこかで聞いたことがあるその名前…なんだか引っかかった「うーん、言ってもわかんないと思うわよ？」ひとみは口元に細く長い指を当てながら答えた「いや、関係ねぇよ。誰だって聞いてんだ。」「誰…ねぇ？あなたの光…とでも言っておこうかしら？」「はァ？光？ざけんなや。ひとみじゃねぇのかよ。」「バカねぇ、光っていうのは、き・ぼ・うのこと♡」きぼう…？希望か。て、うん？「バカだと？！ざけんなやくそババァ！」バカと言われてムカついた俺はひとみの胸ぐらを掴んだ。「あらあら、やめてちょうだい、警察に言うわよー」ひとみは冗談っぽくそう言うと、口角をニッと上げた「何…笑ってんだよ。」少し不気味に思った俺は胸ぐらをつかみながら聞いた「ふふっ、おっかしい、貴方、私の事年上と認識した上でタメ口使ってこんな乱暴に接してるの？そりゃあ先生から嫌われるわけだ」早口すぎて言葉を理解できなかった。 ――いや、理解したくなかったのかも知れない。「貴方、私の事ババアって言ったでしょ、おかしいおかしい」ひとみは笑うのを辞めないそれに比例して、俺の怒りは増した。「おもしれぇ、上等だコラ。」ひとみに向かって思い切り唾を吐いた ――今思えば、とても幼稚な事だった。瞳は何故か嬉しそうに頬を緩ませると「いやらしい子」とだけ言った。 ――気持ち悪ぃ。「おいババァてめぇ。何歳だよ。」「レディに歳を聞くなんて、無礼な子ね、24よ」 24…俺の9歳年上か… チラリとひとみの左手を確認した「あ」 ――何してんだ俺「ん？今私の事みた？」上目遣いで俺の顔を覗き込む瞳。「見て…ねぇ。」耳が暑くなった。「ふふ、かお、真っ赤」「！！」小さい頃から顔に出やすいタイプと言われていたが、俺はそれがコンプレックスだった。　「なんか文句あるかよ。」「変なのー！良平くんの顔、真っ赤っか！」無邪気な少女の声と、目の前にいるひとみの声が重なる。「お前の目が狂ってんじゃねぇの？！」 ――幼い頃の俺は、必死になって泣き顔を隠そうとした。「あたしね、目の検査でエー判定だったの！ママにね、目ぇいいねって言われた！」 ――少女の顔が見えなくなるくらい、俺は涙を目に溜めていた。「そんなの嘘っぱちだ！みんなお前が好きなんだよ！背がちっちゃくて、顔が可愛くて、声がふわふわしてて！先生も、他のお友達も！みんなお前にばっか寄ってく！」 ――幼なじみの口が動かなくなった時、俺は"快感"を覚えた。「お前なんか大嫌いだ！」 ――最後にトドメをさした時、少女はまた、先生の元へと走っていく。そうすれば先生は少女に味方をするのだ。「また逃げる。」いつの間にか、頬には雫が伝っていた。「あら、ごめんなさいね、泣かせるつもりはなかったの」 ――今も、何も変わっていない。「落ち着いた？」ひとみの、柔らかく、はっきりとした声が耳に届いた。 ――もう　終わりたい。「……」ひとみは目を大きく見開いた「そうね、こんな世界、みんな嫌よね、それでも、私みたいにポジティブになった人間は、次に繋げるの」過去を思い返すようにひとみは瞳を隠した。 ――でもその瞳は、たしかに上を向いていた「仁美ちゃん、元気かしらね。」「！！」その瞬間、俺は瞳を輝かせたピースが見つかった今までずっと完成できなかったパズルが、正解に近づいた　「ひと…仁美…」　「待てよ！仁美！」うるさいとでも言うように走り去っていく少女―仁美「まてよ！」 ――教室で喧嘩したあの日のことは、今も忘れない。仁美は先生に抱きつく。 ――ｽﾞﾙｲ言葉にできない感情が体の中でグルグルして、目から溢れてきた。 ――それから仁美と話さなくなった。…話せなくなった。「あぁ、なんて、」 ――不良って、格好悪いな「ふふ、見てるからね」瞳を真っ直ぐこちらに向けて言った ――いつの間にか、空には瞳が沢山浮かんでいた「時系列どうなってんだよ笑」今では仁美も、瞳になったいつか俺も、見守る側になるからな ――それまでは、その美しい瞳で、俺を見守っていてくれ