TsuNa銀

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TsuNa銀

おじさんです。猫3匹飼っています。妻がいます。再就職出来ました。ありがとうございます。

有能と無能とパーティーからの追放について語りたい

私は有能ではない。 ただ前職の工場内という限られた世界では無能でもなかったと思う。 というか有能か無能かはそれを判断する者の視点で決まると私は思う。 ある人から見た私は無能であった。 が、ある人から見たら私は有能だと思えたかもしれない。 そして私視点から「彼は有能だ」「彼は無能だ」と判断する時もあった。 若い頃に無能だと思っていた上司が実はとてつもなく有能だと思い知った時、自分を恥じた。 さらに付け加えると私視点から見た無能な彼も、ある人から見ると有能であったかもしれない。 つまり、人はどういう行動を起こそうが、どういう人生を歩もうが、有能でもあるし、無能でもあるのだ。 さて、私を含むみんなが大好きなファンタジーモノの話を絡めようか。 彼らはどうだろう。 無能だと言われて追放された彼らは。 そう、実は全く無能ではないのだ。 むしろ超有能なのだ。 私は有能な彼らに気づけなかった節穴の目を持つ思い上がった勇者だったのかもしれない。 それに気付いた時、また私は自分を恥じた。 穴があったらもっと深く掘り進めて潜るから埋めてくれ。 そう思った。 そしてこうも思った。 自らを会社(パーティー)から退職(追放)すれば良い。 そう、無能はパーティーに要らないのだ。 そして有能になれるところで生活すればいい。 さあ、ここからが問題だ。 追放されたファンタジーの彼らは有能であるが、私は社外からの視点では無能だ。 つまり『市場価値』である。 私のスキルを鑑定してみよう。 学生時代に取得したスキル [漢字検定3級] 効果 漢字の読み書きが人並みに出来るが、 現世界にはパソコンという文明がある笑 [ワープロ技術検定3級] 効果 そこそこ早くパソコンで文字を打てるがほぼパソコンを使ってこなかったのでめっちゃ打つの遅い笑 入社後に取得したスキル [DTP検定] 効果 入社2年か3年目に授かったが更新試験を受けていないし、パソコンを使ってこなかったため失われた古代技術となっている笑 [メンタル心理カウンセラー] 効果 お金を払ってテキストを見ながら問題を解けば誰でも簡単に取得できるスキル。少しだけカウンセリングのことを知れる笑 以上である。 改めて自分が無能だと実感する。 こんな私がどういう側面で有能だと見られるのか。 だが、私は今のパーティー(会社)でこのまま戦闘(仕事)を続けていてもパーティー(会社)に貢献できないし、何より私自身が何も進歩していないことに我慢がならなかった。 長くなったがそんな数々の思いを抱えてハローワークでパソコンの前に座り、転職情報を見始めたのだった。

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前職を振り返ってみる

というワケで前職を語る。 はっきり言うとホワイト企業ではあった。 いや、ブラックがグレーになり、ホワイトになっていった企業であった。 上澄みだけだが。 職種としては印刷工場である。 主に書籍を印刷していた。 私は簡単に言ってしまうとコピー機の十倍以上の大きさの機械で一時間に一万枚以上の速さで印刷ができる機械を操作していた。 私が入社した当時は朝八時半から十七時半の勤務時間で休憩は一時間。 時代が移り変わると共に機械も新しくなり、人員も削減され、二交代制の勤務になった。 三十代はまだ良かった。 ただ職場に行き、自分の責任をある程度全うしていればそれなりの評価とお金をもらえた。 四十代になると二交代制に体がついていかなくなり、責任も増え、やる事が多くなり、ストレスも増えた。 円形脱毛症が無数に出来て、見るも無惨な髪の毛の生え方になってしまったのでスキンヘッドにしたこともあった。 一番のストレスは人間関係だった。 年上部下の存在である。 私は学生時代からリーダーというか、前に立つという役割に縁がなかった。 班長、委員長、生徒会長、キャプテン、バイトリーダーなど、責任というものとは縁のない人生を送ってきたのだが、主任が一人退職したため、私に主任という責任が回ってきてしまったのだ。 立場が変わると景色も考え方も変わる。 結果から言うと勉強になったし、成長もできたと思う。と、同時に今までの主任さんはこんなに大変な事をやっていたのかと、そう思い知ったのだ。 人手不足のこのご時世、時には係長並みの判断を強いられる時もあった。 それに反して私のチームの年上部下達は全く責任感が無く、作業をお願いしても「やりたくない」、「嫌だ」、などと宣いやがる。 そんな先輩が多い環境なのも手伝ってか、若者や、有能な者は見切りを付けるか、病むかして辞めていく、しかし新入社員は入ってこない。 年上部下達は変化を嫌い、新しいことをやりたがらないので、機械やシステムや材料が変化してもやり方や考え方を変えず、トラブルが発生する。そしてトラブルを機械やシステムや材料のせいにする。それでも昔のやり方を貫こうとする。そしてまたトラブルが発生する。 トラブルの対応をする度に 「あと何回この人達の尻拭いをしなければいけないんだろう?」 「あと何年コイツ等のご機嫌を伺いながら作業をするんだろう?」 そう思っていた。 辞めていった主任さん。あなたは偉大だった。こういう人達を長年統べ続けてくれた。本当にありがとう。 今なら貴方の気持ちが痛いほど分かります。 ここまでの文面でもし私が有能な社員であったと感じた読者様がいるのであれば申し訳なく思う。 私も年上部下達とは紙一重であった。 有能であれば二十代から三十代前半までには人の上に立つ立場になり、チームを引っ張って行く役割を与えられるだろう。 つまりそういうことである。

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サイダーを無駄に考察する

暇である。 幸せなことに暇である。 前職を辞めるときに余った有給休暇を消化していた約五十日間以来の暇感である。 有給休暇消化期間が終わったのが四月三十日。 五月一日から再就職し、少し慣れてきた本日、六月二十七日。 予定していた事が急遽無くなり時間を持て余しすぎている。 嬉しい。 二か月間必死で新しい会社に慣れようと、新しい事を覚えようと、おそらく人生で五本の指に入るくらいの頑張りを続けていた。 で、本日、暇である。 楽しい。 さて、本題であるが、今回のお題「サイダー」 「は?」 である。 難しい。 「炭酸飲料」であれば範囲は広くなる。 炭酸が入っていればいいのだ。 コーラ、ファンタ、ジンジャーエール、ライフガード、ドクターペッパー。スパークリングワインやシャンパンなんかも炭酸飲料の括りに入れていいだろう。 だが、『サイダー』でなければいけないのだ。 なぜだ? 私の認識では『サイダー』とは無色透明の甘い炭酸水である。 逆に言えば無色透明ではなく、色が付いていたらそれは『サイダー』ではない。 この認識がもし間違っているのであれば全面的にこの文章が意味を成さなくなってしまうので敢えてサイダーの定義は調べない。 この文章をここまで読んでいるということは、あなたもきっと暇なのであろうが、どうか調べないでほしい。 そしてもう少しお付き合いくださいお願いします。 ありがとう。 進めさせていただきますね。 さて、なぜ『サイダー』でなければいけなかったのか。 [考察その一] お題を出す人がサイダーを作っている会社からお金をもらっている。 「サイダーをお題にしたらサイダーの売れ行きあがるんじゃね?」 「頼んでみようぜ」 「サイダーお題にしてみんなに書かせてみてくんね?」 「いいよ。お金ちょーだい」 「しょうがねーな。はい、五千円」 安いな!! いや、そこじゃない。 そこじゃないし、たぶんあり得ない。 なぜあり得ないか。 このアプリを利用しておいて言うのもおかしな話だが、サイダーをお題にして何人かが小説を書いたとしてもサイダーの売れ行きが増えるとは思えない。 こうしてサイダーを連呼しているが、正直私はコーラの方が好きだし、もっと言えばドクターペッパーが一番好きである。 個人の感想です。 [考察その二] 気分。 「ヤッベ。お題思い浮かばねー。」 「なんでもいーんじゃん?」 「あのー、冷蔵庫にあった私のサイダー知りませんか?」 「あ、喉乾いたからさっき飲んだ」 「あ、サイダーでいいじゃん?」 「おー!いいね!まぁなんでもいいからねー」 「おけおけ、じゃあ今週はサイダー」 「あのー、私のサイダー……」 「は?うっせぇな。水でも飲んでれば?」 ブラック企業! かわいそうだろ!お前!新しいの買ってこい! うん、妻に風呂入れって言われたので入ってきます。 何を言いたかったかっていうとさ、与えられたものをただ受け止めるのではなく、与えられたものについて考えることも大事だよねっていうことを伝えたかったのです。 考える内容はさておき!

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濡れ衣替え

「半年で250万円。やる?」 男は、契約書を差し出した。 表紙にはこう書いてある。 《犯罪代替履歴書 兼 同意書》 バイトを探していた俺はいろいろあってこの男にたどり着いた。 「……これ、どういう仕事なんですか?」 「うちでは“モデル業”って呼んでるよ。君にはちょっとした“暴行犯”を演じてもらう。6ヶ月間ね」 「え、冗談でしょ?」 「まさか。君の罪歴が国の記録に残る。正式な“有罪判決”だ。ただし、前科は1つだけ。半年が終われば、また自由だ」 「……冗談にしては書類が分厚いですね」 「本物だからね」 「じゃあ、嫌なら断っても?」 「もちろん。ただ、事前に振り込んだ3万円の申込金、返すつもりはない。それと、身分証を出してもらったでしょ。あれもデータ化済みだ」 「……」 黙った俺の前に、男は一着のジャンパーを置いた。 黒地に、赤い糸でこう縫い込まれている。 暴行罪 禁錮6ヶ月 「着て、出頭すればそれで契約成立さ。あとは、半年間、国家が君を“その人”として扱うだけ」 今年の1月の出来事だ。 そんなワケで俺は今、刑務所にいる。 こんなビジネスモデルもあるんだな。 いや、ありそうだと思ってはいたがまさか自分がとは思わなかったな。 実際に暴行をしたのはどこかのデカい企業の御曹司らしい。息子が罪を犯したとなればいろいろ大変なんだろう。 それが250万で無かったことになるなら安いもんだ。 俺は天涯孤独だし、例え罪を報道されたとしても誰も気に留めないだろう。 今流行りのマッチングアプリみたいな感じだな。マッチングする相手は罪だけどな。 つまり俺は「濡れ衣」を着ているワケだ。 あの男が先日面会に来た。 「もうすぐ刑期が終わるよな。お疲れ様。」 「はい。」 「そこで、モノは相談なんだが」 「はぁ」 「衣替えしないか?」 「はぁ?」 「正確に言うと濡れ衣替えなんだが」 「またどこかの坊ちゃんがくだらない罪を?」 「あぁ、まぁそうだな」 「刑期はどのくらいで?いくらもらえるんです?」 「600万、半年だ」 「やけに高いですね」 「政治家のバカ息子が強制わいせつ罪だと。選挙が近いからイメージを守るためなんだろう」 「わかりました。」 濡れ衣を替えて、またしばらく同じ場所で過ごすことが決まった。 俺は天涯孤独だから強制わいせつ罪で報道されても誰にも迷惑をかけないし、誰のイメージも壊さない。 でも、強制わいせつ罪の刑期が終わったらやりたいことができた。 今度は濡れてない衣を着ようと思う。 ちゃんと自分の衣を。 報酬の850万は彼らの素性を突き止めるのに使おう。 俺は天涯孤独だからどこかのデカい企業の御曹司や、政治家の息子を殺しても誰にも迷惑をかけない。

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ネガティブな感情について

死にたい。 いなくなりたい。 どこかに行きたい。 目を覚ましたくない。 このまま眠っていたい。 自分なんていない方がいい。 何もかも終わらせたい。 苦しみから解放されたい。 誰にも会いたくない。 価値がない。 生きてる意味がわからない。 必要とされていない。 どうせ自分なんて足手まといだ。 何をやってもダメだ。 生まれてこなければよかった。 もう頑張れない。 嫌われて当然だ。 自分が嫌い。 誰でも生きていて一度は思うこと。 人生のドン底。 今ドン底にいると思っている人は 「あの時よりマシだ」 を作っている最中なんだって。 悩んでしまう人って中途半端に賢い人だと思うの。 だってものすごく賢い人は悩みを解決する方法まですぐ辿り着くと思うから。 悩むプロセスとして ①問題が起きる ②違和感や不快感を覚える ③問題の言語化 ④問題解決の方法の模索 ⑤方法を実行する ⑥問題解決 みたいな感じでさ、ものすごく賢い人たちはきっと①から⑥まで明確な思考で突っ走れる人たちなの。 中途半端に賢い人はというと④を一生懸命考えてしまうの。④でいろんなパターンをいっぱい考えて、さらにそのパターンから派生してわざわざ新しく①を作ってまた④を考えてさらに………って。 中途半端に賢いだけに思い付いてしまって、それが無駄かどうか判断できない。 で、⑤の実行に移せずに立ち止まってしまう。 賢い人たちから見たら「何をしているんだろう」と思われてるかもしれないけど、本人からしてみたら納得するまで動けないんだよね。 ちょっと話逸れるかもだけど、動きたくないから、つまり⑤をやりたくないからわざわざ④をいっぱい考えて⑤に行かない理由を作るのは違うからね。 それはただのやる気がない人。「ズル賢い」とも言うのかな?そういう奴に関しては知らん笑 話を戻します。 ⑤について、周りの目を気にして実行できないパターン。 これが1番タチが悪い。 こういう行動をしたらどう思われるかな? これを実行したらなんて言われるかな? また新しく①を作ってしまう。 問題解決をしたいのにまた新しく問題を増やしてしまった。 優先すべきは「自分」でいい。 だって自分が自分の問題を解決したいんでしょ? いいじゃん。やれば。 思ってるより他人は自分を気にしていないよ。 『「自分」がどうしたいか』でいい。 どこまでいっても自分は自分、他人は他人なのでね。

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終電

疲れていた。 けれど、なぜ疲れているのかがわからなかった。 今日は特に体が重たい。 今日も終電。 ギリギリ間に合った。 車内はガラガラだ。 誰も乗っていない。 電車が動き出した。 眠い。 でもなぜか眠れない。 っていうか寝たらダメだ。 乗り過ごす。 「次は〜@△◻︎※#……」 車掌のアナウンス。 電車が止まると男が乗って来た。 彼はスーツのまま、電話をしていた。 電車の中で電話するなよ。 マナーを知らないのか? 「そうだろうね。しょうがないね。なぜならもう@△◻︎※#……」 うるせぇな。 でもなんか聞いたことあるような声だな? 電車が走り出す。 乗って来た男がこっちを見ている気がする。俺は目を合わせないように寝ているふりをした。 なんで見てるんだ? サラリーマンか? 「次は〜@△◻︎※#……」 なんか今日の車掌さん滑舌悪くないか? 声も小さいぞ? 電車が止まりまた男が乗ってきた。 細身のフレーム眼鏡の男。 俺の方をちらりと見た。 一瞬目が合ってしまったがすぐに逸らす。 スーツを着ているがノーネクタイだ。 なぜか俺は彼の職業が教師だと感じた。 教師はサラリーマンと知り合いなのか、サラリーマンの隣に座り何かを話しているようだ。 教師。 俺も学校の先生になりたかった時期もあったな。 そういえばなんで学校の先生になるの諦めたんだっけ? そんなことを考えているとまた車掌の声が聞こえた。 「次は〜 犯罪者〜」 犯罪者? え?聞き取れた。 駅? 犯罪者駅? 地名? 乗る電車間違えた? え? 男が乗ってきた。 無精ひげ、こけた頬、少し黄ばんだワイシャツ。 雰囲気が異様だった。 彼もまた、俺を見た。 目が合った。 俺は目を逸らせなかった。 犯罪者だ。 犯罪者はサラリーマンと教師と知り合いなのか? 2人の前に立ち吊り革を掴み話し始めた。 「あんなヤツ死んで当然だったんだ。だから俺が殺したんだ。後悔より達成感の方が強いよ。」 「ですよねー。」 「俺もやろうと思ってたよー。」 なんの会話だ? いや、俺も殺してやりたいヤツはいたけど。 俺を目の敵のように執拗に嫌がらせをしてきた上司とかな。 っていうかホントさっきからなんなんだアイツらチラチラ見やがって。 少しイライラした俺はアイツらをしっかり見てやった。 アイツらはずっとこっちを見ている。 完全に目が合っている。 見たことあるような顔だと気付くに時間はかからなかった。 ちゃんと見ると3人とも俺に似ている。 っていうか俺だ。 なんだコレ? なぜだ。 コイツら……なんなんだ? 雰囲気も、佇まいもなんか空気感とかも俺だ。 少しずつ違うけど、根は同じに思える。 サラリーマンの俺。 教師になった俺。 そしておそらく誰かを殺してしまった俺。 え?夢? なにコレ? ドッキリ? キモ。 え? なんで? 俺3人? そんなことを考え始めた瞬間、誰かが口を開いた。 「そろそろ気づいた?」 サラリーマンが、俺を見て言う。 「ずっと考えてただろ。俺たちがなんなのか」 教師が微笑む。 「思い出せよ」 犯罪者が鼻で笑う。 そして三人が、同時に口を開く。 「俺たちは、死んだ」 頭がぐらりと揺れる。 「……事故」 俺は言った。 なぜかそう言った。 「そう」 サラリーマンががうなずく。 「スマホ見ながら、足を止めた?」 思い出す。 黄色いライトが近づいてきた。 風と音と衝撃と痛み。 世界が、白く反転した。 終わったはずの記憶が、頭の奥で再生される。 俺は死んだ。 そういえば死んだんだ。 教師の俺が、低くつぶやく。 「どの選択肢を選んでも、俺たちは死ぬ運命だった。 サラリーマンになっても、教師になっても、犯罪者になっても、結局、みんなこうして終電に乗っている」 犯罪者の俺が口元を歪める。 「選べたけどな。どう生きるかは。」 沈黙が車内に満ちる。 じゃあ……俺は? 俺は何を選んできた? 俺は――本当は何になりたかった? どう生きたかったんだっけ? 選択肢はいっぱいあった。 進学先、バイト先、就職先。 誰と出会い、誰と共に過ごすか。 嫌なことに対して逃げるのか、立ち向かうのか。 嫌いなヤツを……どうするのか。 でも確かにどの選択肢を選んでも結局はみんな死ぬ。 今の俺は何を選択した俺だ? たぶん何かを諦めた俺なんだろうな。 達成感とか無いもんな。 アナウンスが流れる。 「次は〜 終点です。」 どうせ死ぬならやりたかったことやった方が良かったな。 そういえばお笑い芸人に憧れてた時もあったっけ? お笑い芸人の俺は乗ってきてないな。 もしかしたら、お笑い芸人の俺はまだ死んでないのかな? そう思ったら、少しだけ心が軽くなった。 犯罪者の俺が言った。 「じゃあな」 「またな」と教師の俺が続けた。 「――先で」とサラリーマンの俺が呟いた。 「お忘れ物なき様@△◻︎※#……」 車掌ハッキリ喋れよ。 もしかして最初はサラリーマンで、その次は教師って言ってたのか? 犯罪者だけしっかり言いやがって もしかして車掌も俺じゃねぇだろうな? お忘れ物かー いろいろ忘れてきたなー 降りたら終わるのかー 違う選択をした俺 終電まだ乗るなよー

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なにも考えず、ただ作業をしてきた先輩に対して

グダグダうるせぇ 今できることをやれよ お前がやりたくないのはわかる。 でもやらなくちゃいけないことなんだ。 お前の目的はなんだ? やりたくないことを回避することか? それならお前のその行動は概ね正しい。 だがお前がその場所にいる限り、最低限やらなければいけないことは絶対にあるんだ。 概ねと言ったのはお前がそこにいるからだ。 端的に言う。 帰れ。 そうすればお前の目的は達成される。 やらなくて良くなる。 だが帰らないなら、そこにいるならやれ。 出来ない理由を並べる前に出来る可能性をいくつか考えてそれを実行しろ。 お前がそこにいる限りお前の目的は与えられたことを達成させることだ。 何も行動を起こさないくせに最初から出来ないと言うな。 目的を与えられることが嫌なら努力して与える側になれ。 努力もしない。考えもしない。 そのくせ出来ない理由、やらない理由は無限に宣う。 違う人に同じ内容の愚痴、不満を。 他人の邪魔をするなよ。 お前が数人に同じ内容のくだらない話をしている時間、お前が進めるべき物事が完全に止まっているんだ。 出来ないなら聞け。 聞いて分からないならやってもらえ。 考えても思い付かないなら考えてもらえ。 絶対にそこで終わるな。 次に自分でやれるようになれ。 次に自分で考えられるようになれ。 知識は点だ。 技術も点だ。 点と点を繋げれば線になる。 線と線を繋げれば面になる。 面と面を繋げれば立体になる。 それが応用だ。 長く経験しているなら点はたくさん持っているはずだろう? なぜ繋がない? 繋がない方が楽だからか? お前だけが楽なんだろう? お前が楽をしている分、周りの人が苦労しているんだ。 気付けよ。 お前が手を抜いた分、誰かが手を入れなければいけなくなるんだということに。 完璧じゃなくていい。 ただ、最低限のレベルには達しろ。 お前の思う最低限と周りが思う最低限は違う。 周りが思う最低限に意識を合わせろ。 それが努力して努力してどうしても無理ならそこはお前がいるべき場所じゃない。 早急に去れ。 きっとどこかにお前の思う最低限がマッチする場所があるはずだ。 お前はそこに行け。 無理か? そのくだらないプライドや、無駄に積み重なった薄っぺらい経験を捨てる勇気がないのか? じゃあせめて何も言わず言われたことを言われた通りにやれ。 それがお前のそこにいていい理由になる。 最後にもう一度言う。 他人の邪魔をするなよ。 って言ったらパワハラになるんだろう? そりゃ若者や本当のシゴデキ達は何も言わずに辞めて良い環境に移るさ。 トキシックワーカーは自分がトキシックワーカーだって気付かないんだもの。 って言われないように 作業 ではなく “仕事”をしようと思います。

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 気づいたときには、世界は泡の中だった。 ぐるぐると巻きつく泡のカーテン、 揺らめく水面。 息もできない、泳ぎもできない。 けれど、誰かがいた。   あのときも、落ちたんだ。 ふわっと下へ沈んでいった俺を、 あの大きな影が追いかけてきた。 大きなヒレをなびかせ、荒々しくも器用に、 口でくわえて、また泡の巣へと戻してくれた。 「ちゃんと、ここにいろよ。」 一言も発しないけど、確かにそう聞こえた。 それが、父ちゃんだった。 父は何度も水面に唾を吐くように泡をつくり、腐った卵は迷わず処理し、 夜はずっと、泡巣の下にいた。 他の稚魚が落ちれば、すかさず拾い、 俺が少しでもフラつけば、何か言いたげににらんだ。 だけど、不思議だった。 怖いのに、あたたかい。 うるさいのに、静かだ。 強いのに、どこか寂しそうだった。 「なぁ父ちゃん、なんで母ちゃんいねぇの?」 「コレが俺の責任の取り方だからな」 大きな、綺麗なヒレをヒラヒラさせてカッコつけながら父ちゃんは言った。 が、それ答えになってねぇよ父ちゃん。 時は経ち、俺は成長した。 俺は群れねぇ。 1人でいい。 近づくヤツにはこの大きなヒレをなびかせ 「おう、なに見てんだコラァ」 と威嚇してやる。 父ちゃん譲りの大きなヒレだ。 当然女は勝手に寄ってくる。 そして女は卵を産みどこかに消えた。 いや、俺が消えさせたのか。 根っからの一匹狼なんだな俺は。 あぁ、そういうことか。父ちゃん。 俺も責任を取る時が来たぜ。 俺は沈んだ卵を咥えて泡巣に戻す。 コイツらのヒレと未来が大きくなるように願いながら。

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香水?

 なんかもらった。 駅前で配ってた親指くらいの大きさの二等辺三角形のカッコいい黒い小瓶。 いや、三角錐か。まぁいいや。 ちょっとエロい感じのお姉さんに声をかけられ嬉しかったからもらってしまった。 香水か? 要らんな。 買い物を済ませた俺は電車に乗り帰路についた。 電車から降りて自宅に向かって歩いてる途中、なんとなく小瓶を開けて匂いを嗅いだ。 嗅いだことの無い匂い。 嫌な匂いではない。 香水だろう。 手首に一滴垂らし、両手首を擦ってみた。 「おい!あんた!それどこで手に入れた!?」 うぉ!びっくりした!なに? 前から来た男がすれ違いざまに言った。 「譲ってくれ!頼む!」 は?なんで? 返答に困っていると男は続けた。 「五千円でどうだ?」 どういうこと?コレそんなに良い香水なのか?タダで配ってたのに? 俺はおそらくケチだ。 この小瓶に五千円の価値などあるはずがない。だがこの男は五千円で買うと言っている。ということは然るべきところではもっと高い値段がつくかもしれない。 俺は逃げた。無言で。 男は「六千円ー」と叫んでいたが逃げた。 っていうか上げるなら一万円って言え。 そしたら少し考えたのに。  自宅に戻り改めて小瓶を見てみる。 瓶より少し明るい黒?濃いグレーか。小さく下の方に文字が書いてあるのを見つけた。光の加減で見えなくなるくらいの微妙な色の違いだ。           <Zanbaq al-Suqūt> ざんばきゅ?ある?すきゅと? 英語か? まぁいい。なんかこの匂いを気に入ってる自分がいる。 今日は気分が良い。 たまたま買い物に行った先で、おそらく価値の高い香水をタダで手に入れることができた。 俺は買ってきた夕飯をビールで流し込み、寝た。 寝起きは最悪だった。 今日はバイトの面接の日だ。 だが気分が優れない。 とりあえず外出の準備をする。 吐き気がする。頭痛もする。 せっかく外出するのだから昨日もらった香水をつけた。 なんでだ? この香水の匂いは人を元気にするのか? なんなら過去一気分が良い。 今ならなんでも出来そうだ。 吐き気も頭痛も無くなった。 さっきまでフワフワクラクラしていた頭がスッキリして、とても明るい気持ちになった。 そこらの栄養ドリンクより元気になる。エナジードリンクなんかもう水だ。 最強の香水だ。コレは確かに五千円でも買ってしまうかもしれない。 俺は昨日の男のことを思い出し、売らなくて良かったと心から思った。 だがバイトの面接に向かっている最中、また気分が悪くなった。 なんでだ。急に来るこの体の重さ。倦怠感。 少し吐き気もする。気がする。いや、大丈夫です。見ないでください。 香水をつけた。 何コレ凄い。治った。 ちょっと待て。 おかしくないか? この短期間のこの上がり幅と下がり幅。 香水終わったぞ。瓶空だぞ。 次体調悪くなってもつけられないぞ。 貰いに行こう。 俺はバイトの面接をバックれ、昨日のお姉さんを探しに行く。 いない。 ヤバイ。 体調悪い。 無理だ。 帰って寝よう。 自宅に戻りとりあえず風邪薬を飲む。頭痛、倦怠感、吐き気、目眩、耳鳴り、全ての不快感が襲ってきている。 横になり目を閉じた瞬間チャイムが鳴った。 ピンポーン 寝たい。 無視。 俺はいません。 留守。 ピンポン ピンポン ピンポーン めっちゃ連打してくる。うるせぇ。マジ何連打してるんだ。くそ。 仕方ないのでドアを開ける。 「こんにちは。今オススメの商品を紹介させていただいてまして・・・」 昨日のお姉さん! 「こちらザンバクアルスクートという商品でして」 「ください!」 「え?」 「早く!」 「5mlから250mlまでご用意してますが、どう・・・」 「一番大きいの!あるだけ!ください!」 「かしこまりました。お買い上げありがとうございます。お支払いはカードで?」 俺は頷きを連打し、お姉さんが差し出した機械にカードを差し込み暗証番号を人生で一番早く入力した。 「それではこの契約書にサインいただいて・・・」 俺は自分の名前を書く早さ選手権一位を獲得した。 「それではまた機会がありましたらよろしくお願いします。」 お姉さんが、帰った後俺はすぐさま瓶を開け、香水をつけっっっっふぁぁぁっっっっ!!!!!!!!サイッッコッフォーー!!!!!!!!!!!! もうアレじゃん。コレ。 無理じゃん。 詰んだじゃん。 なんでこんな瓶5本で100万とか支払っちゃってるんだよ。俺。 カードで。 もう終わったじゃん。 5本。 ペース。 消費ペース早っ。 ってか飲んでないけど? 皮膚だけど? 効き目おかしくね? どうすんだよ。お姉さん来ないし。 買えないし。 来ても買えないし。 借金したとてだし。 ってか契約?何書いてあるの? どこやった? そもそも控えみたいのもらった? 俺は何の契約にサインしたの? そんでこの2日間で何回躁鬱繰り返してんだよ。俺は。今どっち?何状態? ほらコレ幻聴だろ?なんか震えるし。何も食う気しない。気持ち悪い。2日で1時間とかマジか。睡眠時間。不眠にも程があるわ。 もー痒い。全身痒い。全内臓痒い。脳痒い。 血液痒い。キモイ。痛い。 うん、見えてるわ。見えてる俺が見えてるわ。 何コレ?虫? 小さくなったり大きくなったり? 色キモ。 あー。やった。やってるわ俺。 スッゴイコレ無理。 な。こんな風になるんだ。 アレって凄いな。 あんなに堂々とアレ配るって凄いな。 新しいわ。 あんなオシャレなアレ世界初なんじゃね? っていうか2日でこんなになるの? もう逆に。 お姉さん。 凄いわ。 もう何周もして好きだわお姉さん。 たぶん俺が悪いわ。 お姉さんも悪いけど。 でも、俺が悪いわ。だってもらっちゃったもん。 もらわない選択肢あったのに。 っていうかなんでアレを訪問販売すんの? 買うじゃん。 買うしかないじゃん。 来世は絶対やらない。 怪しいものは使わない。 コレ香水じゃないけど香水なんか使わない。来世は! はい!決めた! よし!じゃあごきげんようさようなら。 ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン

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鍵についてどこかの誰かが誰かと話しているようです

おい、聞いてくれ! チキューっていう所に住むニンゲンって種族は鍵とかいうモノを使っているらしい。 いや、知らんよ。 なんか勝手に誰かに開けられないように扉とか箱とかを開かなくするモノなんだって。 うん、そう、当たり前なんだよ。 勝手に他人のモノを開けたらダメに決まってる。 おかしいよな? そうなんだよ。おかしいんだ。なんでそんな絶対に起こり得ないことに対してわざわざ対策してるんだろうな? え? あー。 かもな!他人の領域を無理矢理犯したり、他人のモノを無理矢理奪うことが日常的に起きてるのかもしれないな! 確かにそうだよな!だから勝手に領域を侵されないようにドアに鍵とかいうモノを使って、勝手にモノを奪われないように鍵とかいうモノを使ってるんだな! うん、そういう当たり前のことができない種族なんだろうな。 ね、怖いよ。そんな場所で生活したくないよな。気持ち悪い。 いやいや、それはないって! さすがに生きる権利とか尊厳まで奪おうなんて! それは飛躍しすぎだろう! そんなことしたら自分も奪われる側になるかも……あっ! それを考えてないから鍵とかいうモノが作られているかもしれないな! だろ?やば!ニンゲンやば! うん、必要だね。 そんな環境だったら絶対鍵とかいうモノは使う。毎日使う。 そうだねー。なんだかかわいそうだね。きっと信用とか信頼とかそういう概念がないんだろうね。 さあ?きっと生きることに疲れるだろうから繁栄しないんじゃないか? おお!久しぶり! いや、今ニンゲンっていう種族の話しててさ。 え?知ってるの? え?鍵って知ってる? おー。でさ、今そんな種族絶対繁栄しないだろって話しててさ。 うん。 え? 80億? なんで? 怖っ! ニンゲンやばー。

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