吉原シホ
5 件の小説少年の音声データ
ふふ、このデータを聞いてみようなんて、 随分と物好きでお人好しな方に巡り会えたみたいですね。 改めまして、こんにちは。僕は夜騎っていいます。 歳は十八で、十二月生まれ。得意なことは数学と 国語…ってこれ教科ですね!苦手なことは友達を大切にすること。 あ、行かないで!行かないで!もう少し待ってください! えっと、気を取り直して…。 趣味は…あれ?いや、好きな食べ物…えっと…すみません。 台本では…そうだ!趣味は映画鑑賞好きな食べ物は焼き鮭です! 時間を食ってすみません。貴方のことも教えてください! え?なんでそんなことするかって?えっと… 貴方に友達になっていただきたいのですよ。 前世は信じますか?浮世離れした話ですが… 僕は前世で 友達を大切にできなかったのです。 なので実験台として、友達になってもらいたく… て、あはは!僕ってば、一人で何してるんだろう? 誰も見てくれないかもしれないのに!! えっと、じゃあ、その気になれば今からいう場所に お手数ですガガッご連絡を……ザザザッッ… ここからは聞き取れない。“”
拝啓、君へ
くらげ。様の企画です いつでも分け隔てなく接してくれて 人生初めての友達だったよ。 最後にくれた紙飛行機、緑の紙飛行機。 たくさんたくさん使ってたくさんたくさん泣いた。 秋になった頃に、君はひどく淋しい顔をしてた。 今になると、嗚呼、あのことかって思う。 顔も声も覚えてないけど、遊んでくれたことも 話の内容も覚えてる。ありがとう。 きっとね。友達には後悔のない接し方を した方がいいと思う。 拝啓君へ。ここまで見てる君へ。 ありがとう。
例えば
例えば、僕が相当な馬鹿だとしたら? 例えばだよ。例えば。 例えば、僕が相当な馬鹿で 例えば、僕がファンタジー並みに正夢を見て 例えば、僕が能無しで 例えば、僕が目の前のーーが死んでることに気づかず 例えば、僕が君と話す夢を見て 例えば、僕が君を救おうとしたら? 例えばだよ。例えば。
過激的ファン
放課後の壁際に詰められ、視線を泳がせる甘味は 現在絶体絶命の窮地に立たされていた。 「な、なんの御用ですか…」 力無く地面に座り込む甘味を上から見つめ ふぅ、と髪をかき上げるとゆっくり口を開く。 「だ!だだだだ、大ファンです!」 「はぇ?」 夕日を目に映した甘味のクラスメイトは しゃがんで視線を合わせる。 ずいっ、と顔を寄せると続けて話す。 「lol cover のあんみつくん、ですよね! ずっと前から気になってましたが 今回の女子高生行方不明事件でピンときました!」 「ど、どこでそれを…」 半分涙目で顔を青くすると近くなりすぎた距離を 離してクラスメイト…名月林檎が続けて話す。 「闇サイトで有名なんですよ。lolって。 その中でも殺し屋界の女神、あんみつって 話題で〜」 「もうそんなに有名に…?えすえぬえすとやらは 恐ろしい………てか俺男ですし…?」 わからないことが多くてぐるぐると 目を回していた甘味だったがすぐに我に戻り はっと顔を上げた。 「俺をどうするつもりですか? 此処で殺す?それとも晒し上げる?」 鋭い目つきに変わりグッと林檎を睨んだ。 「あ、いや、そういうのじゃなくて… ただ、なんていうか、サイン…ください!!」 頭を下げられ驚く甘味だが本職はアイドルや 漫画家ではなく殺し屋。勿論サインも何もない。 結果、学年と組、出席番号にフルネームを 紙に書いて渡す形になる。 「学年と出席番号まで書いちゃうあんみつくん… ちょー尊い〜…!」 顔を真っ赤にしてお礼を言い嵐のように 去っていく林檎を見送りながら 教室の隅で恐る甘味であった…。
“lol cover”
(お試し。一人でも続きが読みたい方が いらっしゃれば書きます!) この学校には変な生徒がいる。 「上弦大紀」と「三日月甘味」くんだ。 彼らは二人で一緒に登下校するが 全く話さない。 あ、だけどよく目を合わせて何かしてる…。 仲は悪くないのかな? 運動が得意な甘味くんと苦手な大紀。 友達が多い大紀と全くいない甘味くん。 こんなふうに、彼らは全てが真逆であった。 「声…かけてみようかな…」 いつしか私はそんなことを思い始めた。 「甘味ちゃん?」 女顔の彼を少し揶揄う。 「ふぇ?!俺…じゃない僕はお、男です…」 「ふふ、甘味くんは大輝と仲良いの?」 え?と眼鏡の下で見開いた目を向けた後、 すぐに俯き、 「べ、別にそんなんではありません。」 ボソッと呟くとすぐに眠ってしまう。 昼放課、そこそこ疲れていたらしい。 風に揺れる薄い桃色の髪はとても綺麗だった。 ーーー 大輝と甘味くんはまたアイコンタクトを とるとガタっ、と同時に席を立つ。 少し尾行をしてみよう。 「ふぁー…。疲れたー。」 甘味くんが話してる…本当に仲良いんだな… 「お疲れー、甘味ー。今日もよろしくねっ!」 今日もよろしく…?何をしだすんだ? 「全く、大紀さんったら… 毎日毎日仕事を予定にぶち込んで… 死ぬよ?いい加減。」 そう、甘味くんが街のレンガ造りの壁を 蹴ると、そのうちの一つが音を立てて 押し込まれる。 また、その直後に人一人分の大きさくらいに レンガが開く。地下に繋がる階段に 近寄ると大紀が私の方を見る。 「やあ。鈴木さん。」 中に招き入れられると不安そうに甘味くんが 大紀を見る。二人が何度か瞬きした後 壁についている取手を甘味くんが持ち 何かを取り出した。 ーー拳銃…? 素早く玉を入れると足に1発入れられる。 「ッッ!」 今、闇サイトで有名な殺し屋が頭をよぎる。 日本社会やサイトの信用度からデマだと 思い込んでいたが、どうやら本当らしい。 「lol cover」。最近できたにしては 技術の高い二人組の殺し屋は私たちに とっての強敵なのかもしれない。 「すみません。もう、痛くないですよ。」 二回の銃声の後本当に痛くなくなった。 傾いた視界に映ったのはーー…… ーーー 「同級生の女子を殺す依頼…、 危ないから受けたくなかったのに…。 密輸と工作員でしたっけ? 国籍は日本ではなかったですよね…?」 「まさか自分からやってくるなんてね。」 二人はさらに地下の土の中に小さく切り 燃やして骨にした遺体を埋めていた。 「大丈夫。国が守ってくれるから 俺も甘味も安全だよ。」 それよりさ、と甘味を覗き込むと 顔を輝かせて 「甘味、強くなったじゃん!」 甘味は頬にできた傷をなでると お陰様でなんて優しく笑う。 その姿は小さく可憐な少女の様だった。 これは無数の遺体の上で行われる 偽善な人殺しの物語である。