綾城 悠
3 件の小説古い時計屋の相談所
私は古い時計屋の店主をしている。 多くて二人ぐらいしか来ないお店だが来るお客さんはみんな悩みを抱えている。 私は時計を直しながら悩み相談をしている。 悩みを聞くことは嫌いではないし時間もたくさんあるから真剣に話を聞いて相談にのる。 今日の相談者一人目は仕事でパワハラみたいなことを受けていると言う相談だ。 紙に名前、生年月日と住所を書いてもらう。 「私は一生懸命に仕事をしてるんですが先輩や上司はずっと喋っていて私に全て押し付けてくるんです。」 「そうなのかい 辛いね。いつからパワハラされてるんだい?」 「1年前ぐらいからですからね。 時間に間に合わなかったらみんなの前で怒鳴られて真面目に仕事をしてる私は馬鹿じゃないですか」 「そうだね 一つだけ言えるとしたらあなたは真面目に仕事をしているんだろ?いつか良い方向に向かうさ」 「いつかっていつですか? もう限界がきててしんどいんです」 「さぁね あなたが願うならすぐに叶うさ」 と時計を直して渡してあげた。 相談者はありがとうと言い頭を下げ帰って行った。 私はお店を閉めあることをする。 古い時計の針を反時計回りで1周させる。 そしてお店から出るとそこは1年前の場所である。 紙に書いてもらった住所の所に行く事にする。 すると、すごくつらそうにしている人が居た。 その人は時計屋に来ていた人だった。 私は声をかける。 「あなた、大丈夫かい? すごくつらそうにみえたから声をかけたんだが」 「…つらいです。」 「パワハラかい?」 「そうです。何で分かったんですか?」 「そんな風にみえただけさ あなたがそんなにつらそうにしてるのに会社は何もしてくれないのかい?」 「そうですね。何を言っても分かってもらえません。」 「私からの助言だ。聞くか聞かないかはあなた次第だがそこの会社にいたら今よりもっと辛い思いをするよ。 だから今のうちに辞めてあなたの努力を認めてくれる会社に行くといい。」 「そうですか。考えてみます。」 「あなたみたいな人がお店に来たことがあってね。 すごくつらそうだったんだ。それだけは伝えておくよ。それじゃあね。」 「ありがとうございます。それでは」 私はお店に来た人に伝えたいことを伝えてお店に戻り時計を時計回りで1周して現実に戻った。 そして数ヶ月後パワハラで悩んでた人がやってきた。 「店主、ありがとうございます。夢に店主が出てきて辞めて努力を認めてくれる会社に行くといいと言われて決心がついて前にいた会社を辞めて今は別の会社で働いています。」 「そうかい、それは良かったね。」 「今の会社は私の努力を認めてくれるとてもいい会社で先輩や上司もすごく素敵なかたです。どうしても感謝がしたかったので来ました。」 「ご丁寧にありがとうね」 パワハラを受けてた人はすっかり別人みたいに元気になっていた。 私は嬉しかった。 「それでは失礼します。また時計が壊れたらお願いします。」 「分かったよ。」 と言いパワハラを受けていた人は元気に帰って行った。 私は古い時計屋の店主だが裏では過去に行って伝えたいことを伝えて悩んでいる人の背中をおしている。 これは誰も知らない私だけの秘密。 今日も悩んでいる人が時計を持ってやってきた。 「いらっしゃい。」
静かな場所
私はとても静かなところに住んでいる。 自然が豊かで虫や鳥などの生物もいて近くには川が流れている所に住んでいるのだが周りには人はいない。 朝、目を覚ますとカーテンを開ける。 すると外からの朝日が差してきて眩しいが少しづつ目が慣れてくる。 私は、窓を開け目を瞑る。 川が流れている音、風がふいている音、虫や鳥たちの声などが聴こえその音を聴きながら10分程度私は頭の中で考えている思考を静めるのだ。 これが私の朝の習慣だ。 ご飯を食べ終え私は散歩に行く準備をする。 水筒に温かいお茶をいれて外に出る。 今日はとても天気が良く気分がいい。 いつもの散歩コースを歩こうかと思ったが今日は何故か初めて歩く所に行こうと思った。 知らない道を歩きはじめて30分少し疲れたのでベンチがあったから腰をかけ水筒に入ってる温かいお茶を飲む。 スズメなどが鳴いている自然の中で飲むお茶は家で飲むお茶と違って感じ方が違う。 お茶を飲み終えてまた歩きはじめた。 1時間ほど経っただろうか… かなり古い怪しい看板を見つけた。 『この先あなたの思っている景色とは違う景色が見えます』 かなり怪しい看板だが何故だかすごく気になる。 私は気になったらずっと気になるタイプなのでとりあえず行ってみることにした。 人が1人しか通れないような細い道が続いている。 本当に思ってる景色とは違うのか不安だがとにかく歩く。 すると目の前に広がる景色に私は涙した。 ずっと昔に亡くなった妻と見に来ていた場所だったのだ。忘れていた事をたくさん思い出した。 亡くなった妻はお花が好きだったのだ。 今、目の前に見える景色はすごく綺麗なお花がたくさん咲いている。 ここに毎週のように妻と来てたくさん色んなお話をしていたものだ。 亡くなってからはきっぱり来なくなっていてここの場所すら忘れていた。 初めて歩く場所だと思っていたがそうじゃなかったただ忘れていたのだ。 看板も私が作っだんだったな。 そう言えば今日は亡くなった妻の命日じゃないか。 もしかしたら妻は私と一緒にここに来たかったのかもしれない。 手を合わせ妻に 「長いこと忘れていてすまない。あなたが亡くなってからは私は何もかも忘れてしまった。今度からは毎週来るようにするからまた一緒に話そう」と妻に伝えてその場を離れた。 そして私は帰路についた。 家についてすぐに私は仏壇に行き妻に 「今日はあなたと一緒に綺麗な景色を見る事が出来た気がするよ。あの場所に連れていってくれたのはあなただろ?ありがとう。」 と伝えた。 そして私は疲れたので横になり寝ることにした。
ネモフィラ
カーテン越しから陽の光が入り目を覚ました。 眩しくて目を細めながらカーテンを開けるといつもの景色だが今日はとても気分が良い。昨日、何か嬉しいことがあったとかそういう事は何もないのだが散歩をしたいと思い出かける準備をはじめた。 朝ごはんは食パンにジャムをつけ済ませ着替えをし散歩へと外に向かう。 「今日は天気が良くて気持ちいいな」 今は4月中旬だ。特に行きたいところもないのでとにかく歩いていると周りには桜が咲いている所に着いた。 とても綺麗に咲いている。桜をみると今年がやっと始まった気がして新たな気持ちで頑張ろうと思う。 桜が咲いている道をまだ奥の方に進んでいくとボロボロな看板があった。その看板には消えかかっていたが何とか読める文字で 「この先は見たことの無い景色が見えるでしょう」 と書かれていた。すごく気になるのだが看板に書かれている矢印の先をみると朝なのに陽が当たらずかなり暗く雑草が生えていて歩きづらそうな道だ。本当にこの先に見たことの無い景色があるのかと思いながらも気になっていると先に身体が動いていた。 何分くらい暗い道を歩いているんだろうかだんだんと不安になってくる。もうかなり歩いているし疲れてきた。看板はウソだったのかなと考え帰ろうか迷いながらも歩いていると陽が奥の方に射しているのが見えたので帰らず陽が射す方へ歩いた。 陽が射していた所まで着いて少し歩くと私は言葉を失った。こんなに素敵な景色を私は見たことがない。 丘一面にネモフィラが咲いている。青くて空に来たと思うぐらいすごい綺麗な景色だ。看板に書いてあった事は本当だったんだと思った。周りを見渡しても誰一人いなくて私だけだ。こんな景色を一人占め出来るなんて奇跡だ。 私は花の中でもネモフィラが特に好きで花言葉も好きだった。ネモフィラの花言葉は 「可憐」「どこでも成功」「あなたを許す」 これを知ったときは励まされた。 桜をみてこれから頑張ろうって気持ちになった所にネモフィラの素敵な景色をみて花言葉のどこでも成功を思い出すとこれから先何でも出来る気がした。 私はここに呼ばれたのかなと思いつつネモフィラの景色を堪能して帰路に着いた。 帰っている途中でも頭の中にはネモフィラの景色が焼き付いてずっと気分が良い。こんなに気分が良いのは何年ぶりだろう。最高の一日になった。 家に着くと私はかなり歩いたので疲れて玄関でそのまま寝てしまった。 花には花言葉もあり好きな花の花言葉を調べて見るのもいいかもしれない。