うる
2 件の小説キミを愛する毎日に
朝目が覚めると君の声が聞きたくなる 通知を開いて君からのメッセージを探した “おはよう、今日も愛してるよ” あぁ、一日がはじまった 昼ご飯を食べながら君を思い出す これ前に一緒に食べたな、 そうだ、動画を残していたかも、 画面に映る君の笑顔は太陽よりも暖かい 夕方、君に会いたくなる 一日が終わろうとする中で 今日足りなかったのものは君だけだ 君への愛が余りすぎた 夜、君の匂いが欲しくなる メールでやりとりしても 電話で声を聞いても 君の匂いはここにない 会いたくなったと伝えたら 君はすぐに会いに来た 一日キミを想ってたよ 彼の一日も私と同じだった
いちばん暖かい日
“今日はよく晴れましたね” 振り向くと、暖かな声色のおばあさんが隣に座っていた。 ベンチに腰かけ春の陽気に眠気を漂わせていた私はふと我に返る。 「えぇ、ここのところ雨続きでしたから、久しぶりにこうやって外で日を浴びられますね。」 公園に散歩に出かけるのは私の楽しみの一つであった。 「お姉さん、よくここで座っているでしょう?私もよく来るもので来る度にあなたを見かけていたわ。」 おばあさんは前から私のことを気にかけてくれているようであった。 初めて会ったようで実はそんなことないなんてのはよくある話。 「ところで、お姉さんにひとつ聞きたいことがあるのよ。」 おばあさんは私の返事を待つことなく淡々と話す。 「この前あなた、雀とお話してたでしょう。私、その内容を聞いてしまったの。」 2週間ほど前にちょうどこのベンチの目の前で雀が弱っていたため、何とか飛ばそうと試みていたのだ。 どうやらおばあさんはそれを見ていたらしい。 「お姉さん、雀の寿命がみえたのね?あと4日しか生きられないなんて、と呟いているところを聞いてしまったの。」 たしかにあの時近くに人は数人いた。そのうちの1人がこのおばあさんであったのだろう。 「みえませんよ。聞き間違いではないですか?」 そんな言葉に耳を傾けることはなく、 「私の寿命をみてもらえないかしら。つい先日旦那に先立たれてしまってね。私ももう、長くはないと思うの。」 おばあさんは声色を変えずに話し続けていた。 「なぜ、知りたいのです?」 そう問いかければ、 「なぜかしらね。もしかしたら本当は最後に誰かと話したかったのかもしれないわ。」 私はふふっと笑いだし、 「寿命はわからないですが、長生きしますよ。絶対。」 「ありがとう。楽しい時間だったわ。」 私は生まれつき目が見えなかった。 朝目覚めてから夜寝るまで、ずっと暗闇の中で生きていた。 人は、感覚器官の1つを失うと他の器官がそれを補うために過敏になるらしい。 私には、生命の、魂の大きさがわかった。 あの時の雀は、もって4日ほどしかない小さな魂しか残っていなかった。 おばあさんもあの時の雀同様に残り小さな魂を持っていた。 心と体は繋がっているもので、心が弱ってしまうと魂は小さくなり、いずれ消えてしまう。 あのおばあさんにはもう会うことは出来ないだろう。 本人もわかっていて聞きに来たのかもしれない。 私はあの時、心から願った嘘をついた。 いつも旦那さんと楽しそうに散歩していたおばあさんに、もう一度笑顔になれる日が来る事を祈って。 6ヶ月後。 “今日はよく晴れましたね” それは、嘘から動いた運命の再会だった。