しゅの
11 件の小説明日が
寝るのが怖いんだ 私は明日が嫌いだ 夜明けなんて来なければ そういつも目を閉じる 明日は何が起こるだろう。 誰かに嫌われるかもしれない 誰かに怒られるかもしれない そうやって考えてしまう 臆病な私は君そう言ったんだ。 「かもしれない、だけでしょ。 全部そうなったら未来予知だね♪」 君はそう私の背中を撫でた。 私はやっぱり明日は怖い だけど君に会える明日は嫌いじゃない。
クジラ
ある所に、 クジラが沢山住む海がありました。 どの者も 「ここの海が1番だ!」 そう代々住み続けている者ばかりでした。 ですが、1頭の少年だけは違いました。 「僕ね大きくなったら空を飛びたいんだ!」 無邪気な少年の夢でした。 だが、 「バカバカしい、」「現実を見ろ!」 どの者も批判し嘲笑いました。 何年も何百年も 少年は諦めず夢を語り続けました。 そんなある日です 海に信じられないほど月光が差したのです。 「少年よ、何故そこまで空を望む?」 知らない声が何処からか少年へ問う。 「僕は空を泳いで、 色々な物を見てみたいんだ!」 少年は真っ直ぐ月光を見つめ答えた。 「そうか、少年よ。」 そう知らない声は月光と共に消えていった。 雨が降り海が荒れた夜だった。 僕は心地よい夢を見たんだ 空を泳いで知らない物を沢山見る夢を。 「僕は空を泳ぐクジラだ」 無邪気な少年はそのまま目を閉じた。 海は穏やかで朝日が綺麗な朝だった。
ふたりじめ
春があっという間に去った まだ夏では無い気温 雲ひとつ無い空に 今日も1人手を伸ばしている。 「夏の足音てやつか 俺は今五月病かもしれないな」 何も無い空が好きなのも 誰も居ない屋上に居たいのも 君がまだ居ると思いたいのも 五月病のせいにした。 「俺ここに居る意味あんのかな」 五月病だからと 何を言っても許されると言い聞かせ呟く。 空をふたりじめ出来たなら 俺は迷い無くそっちに行くだろう。 だって こんなにも空は綺麗なんだから。
無いもの
仮面の取り方忘れたまま 何でもない日常を繰り返して いつか後悔するのかな コップに溶かしたインクが 少しづつ色が混ざり黒くなる 僕の心同じですね どんなに色を足しても 元には戻ない 「皆は綺麗だな」 僕はそう思って苦しかったんだ。 キラキラ輝くみんなの色が 僕は羨ましかった。 そんな僕に君は言った 「貴方星空みたいで綺麗だね 特別な色て素敵ね羨ましいわ」 君は微笑んで言ったんだ。 以上も以下もない 僕は自分に無いものが羨ましかっただけ それだけだ。
まだそこにある
日々トレンドは変わっていく 「今流行りの可愛いよね」 「そんなの時代遅れだよ」 そんな言葉ばかり聞こえてくる。 新しい物,新しくなった物 それがまた過ぎてまたいつか流行る。 そんな時でも 私はいつも懐かしいに心が跳ねる。 どんなに新しい物を使っても どんなに新しい曲を聴いてもね 懐かしい思い出には勝てないんだ。 まるで まだあの頃に居るみたいな気持ちになれた。 懐かしいは心を揺さぶる魔法みたいだ 夢を大きく語っていた時戻れた気がした。 どんなに時は流れ続けても 私の心はまだそこにある。
眠り姫〖過去編1〗
夕暮れ時 5時のサイレンと共に飛び立つ鴉達 赤い夕日に薄っら浮かぶ月 子供が帰り静かになった公園に 君はしゃがみ込んで居た。 「どうしたんや、少年 もう家に帰る時間だ、家にお帰り」 そう私は少年に言った。 だが少年はずっと黙り込んでいた。 数十分経った頃にやっと少年が話し出した。 「家に帰りたくないんだ 家に帰ってもママもパパも居ない。 僕は独りぼっちなんだ」 少年は虚ろな目で夕日を見つめそう言った。 私には何も出来ない 少年の隣で彼の背中を撫で続けた それしか私に出来ることがないから 夕日を見つめる 独りぼっちが2人
眠り姫
風が暖かく鳥の声がする そろそろ目を覚まそう 寝床を抜け森を出る 朝日が目に差し入ってくる 「おはよう,もう50年経ったのか」 そんな事を呟き私は街へ降りていく。 眠る前よりも変わった景色 古い建物は消え新しい家が立ち すれ違う人の服装も変わっていた。 ただ変わらないもの 「あの人服装ヤバくない」 「だよね,恥ずかしくないのかな」 「ね,汚いよね」 ボソボソコソコソ 小さな声でも聞こえてくる。 変わらない 何年経とうとも人その物は 醜い心は今もある 私が何百年眠ろうと変わらない 次は何年眠ろうか 変わるだろうか 少年も嫌いだった人共は 〖守り神の眠り姫〗 だから私は今日も眠る
音が止むまで
僕の家は演奏家だ クラシックが全ての家 父と姉はピアニスト,母と兄はバイオリニスト そんな家に産まれた僕 当たり前のようにその道を望まれた そんな僕はある日出会ったんだ 学校帰りに何処からか漏れ出す音 それを辿った先にはライブハウスがあった 僕は無意識のうちにドアを開けたんだ。 音が心臓を煽るように鳴り響く 知らないバンドのライブなのに, 僕は激しいビートに惹かれていった。 そんな僕の耳に留めを刺すように 「痩せ我慢してんじゃねぇぞ 好きなら反抗ぐらいしてみろやぁ」 そんな歌詞が聴こえたんだ。 僕その後余り覚えていない 覚えているのは風が寒く感じ 鼓動がまだあのビートで鳴り止まず まるで恋に落ちたようだった事。 「こんなベタだけど事実だからな 僕はあの日お前の歌に惹かれたんだよ。」 昔話を君に僕は語る。 「何か気恥しいぜぇ,照れるだろうがぁ」 君はそう口を隠し言った。 あの日のステージで君と音を鳴らす 君の音が止むまで 僕も音を鳴らし続けるよ。 「ありがとう、相棒」
見えても掴めないもの
綺麗な景色が見える窓 揺れる白いカーテン そこに君はいつも立っている。 「今日も空が綺麗だな 何も考えず空を見るのが1番だ」 俺はいつも独り言を呟く。 俺には君の心に寄り添えない 俺には君の手を掴めない 今日も教室の誰も居ない席に花を飾る。 コルリスのピンクの花が風で揺れる 今日も君は窓から空を見ている 僕は君に触れられない。
海なんか
「海が好きだ」 僕は青い海に父とよく釣りに行っていた 小さい時の会話を海を見ながら思い出す 「ねぇ、パパお魚さんいっぱい居るよ。 どうして見えるお魚さんは取れないの?」 僕が言った何気無い言葉だった。 だがあの日の会話,音,景色を覚えている 「それはね、魚も俺らを見てるからだよ」 そう父は言ったんだ。 今思えば当たり前な話だ そんな記憶も遠い昔の記憶。 僕は今ヨットに乗っている 家は海に沈み高層ビルは半分沈んでいる どこを見ても青く青く 海を覗くと魚が沢山見える 「君たちも僕を見ているのだろ? 楽しいかい広がった海は」 そんなことを1人呟いて。 あの日見た海とは違う海だ これからを考えても意味は無い。 「あぁ、僕は海なんか嫌いだ」