涼風葵

154 件の小説
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涼風葵

❥2024.9.23〜 蒼色文学創作者☁️ 限界慶應生

約束

「百年待っていてください。また逢いにきますから」 その人は、そう言って笑った。 春だったのか、夏だったのか、もう思い出せない。 風が吹いて、花びらのような光が舞って、その人は静かに消えた。 残された私は、その言葉だけを抱えて生きることになった。 * * * 百年という時間は、長すぎる。 けれど、待つ理由がたった一人なら、不思議と時間は形を変える。 季節が巡るたびに、「今年は来るだろうか」と思った。 来ないと知るたびに、「あと何回、夏を数えればいいのだろう」と空を見上げた。 桜は百回近く咲いて散り、蝉は百回近く鳴いて、月も何度も満ち欠けを繰り返した。 私は歳を重ねた。 大切な人を見送り、住む場所も変わり、町の名前も変わった。 それでも、約束だけは変わらなかった。 「百年待っていてください。また逢いにきますから」 その言葉は、願いだったのか。約束だったのか。 それとも、呪いだったのか。 * * * 百年もあれば、何度も考えた。 再会できたら最初に何を話そう、と。 「元気でしたか」 いや、それでは足りない。 「あなたのいない百年は、とても静かでした」 少し気取っている。 「遅かったですね」 それでは責めてしまう。 もっと美しい言葉があるはずだと、本を読み、人の話を聞き、夜ごと考えた。 百年あれば、人はずいぶんと言葉を集められる。 けれど、集めた言葉ほど、本当に会いたい相手の前では役に立たないものです。 * * * 百年目の夏だった。 木々の間を、懐かしい風が吹いた。見覚えのある足音がして、振り向く。 そこには、何一つ変わらない笑顔があった。 まるで昨日別れたばかりのようだった。 「待っていてくれましたか」 そう尋ねる声も、百年前のままだった。 私は百年間考え続けた言葉を、ひとつ残らず忘れてしまった。 「会いたかった」 口をついて出たのは、それだけだった。 たったのひと言。 百年分の時間には、あまりにも短い。 けれど、その人は少し困ったように笑って、 「私もです」 と言った。 その言葉だけで私の百年は報われてしまうのです。 * * * だから私は思う。 百年待つことは、案外できるのかもしれない。 再会したら最初に何を話そう。 そんなことばかり考えていたら、百年なんてあっという間なのかもしれない。 でも、本当に逢えたその瞬間には、磨き続けた美しい言葉なんて全部どこかへ消えてしまう。 残るのは、きっと一番不器用で、一番本当の気持ちだけだ。 「会いたかった」 その一言のために、百年という時間はあったのだと思う。 そして、ふと考える。 あの言葉は、優しい約束だったのだろうか。 それとも、百年という歳月を、一人の心に住み続けるものにしてしまう、静かな呪いだったのだろうか。 答えは今でも分からない。 けれど、もし呪いなのだとしても。 私はきっと、その呪いを抱いたままでよかったと思う。 あの夏に交わした約束は、私から百年を奪ったのではない。 百年という時間に、意味を与えてくれたのですから。

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日常

朝の電車は嫌い。 理由は簡単で、人が多いから。 押されて、ぶつかられて、誰かの鞄が肩に当たって、知らない人の会話が耳に入ってくる。 みんな急いでいる。 学校へ行くために。 会社へ行くために。 生きるために。 「すごいなあ」 小さく呟く。誰にも聞こえない。聞こえなくていい。 ホームの白線の内側に立って、私は電車を待つ。 銀色の車体が滑り込んでくる。 乗る。座れない。 窓ガラスに映る自分の顔を見る。 眠そうな顔。 あんまり好きじゃない顔。 でも別に嫌いでもない顔。 「おはよー」 「おはよう」 友達がいる。話しかけられれば話す。笑うところでは笑う。 昼休みになれば一緒にお弁当を食べる。 「数学やばかった」 「わかる」 「できてたじゃん」 「全然だよ」 そんなことを言う。 窓の外を見る。雲が流れている。空は今日も広い。 こんなに広いのに、自分のいる場所は教室の机ひとつ分しかない。 不思議だった。 放課後 駅まで歩く。コンビニに寄る。新作のアイスを見る。 少し悩んで、買わない。 帰る。部屋に入る。制服を脱ぐ。ベッドに倒れる。 天井を見る。 白い。 何もない。 静かだった。 スマホを見る。 誰かが旅行に行っている。 誰かが映画を観ている。 誰かが恋をしている。 誰かが笑っている。 世界は忙しい。 自分がいなくても、同じ速さで回る。 「別にそれでいいんだけど」 なんて独り言を言う。誰もいない部屋に消えていった。 夕方。 窓の外がオレンジ色になる。 この時間だけは少し好きだった。 世界が終わる前みたいな色だから。 夜には歯を磨く。制服をハンガーにかける。明日の時間割を見る。面倒だなと思う。 でも、準備はする。 ちゃんと生きる人のふりをする。 布団に入る。電気を消す。暗い天井を見上げる。 そして思う。 明日、地球が爆発したらいいのに。 別に、誰かが嫌いなわけじゃない。 学校も嫌いじゃない。 友達も嫌いじゃない。 世界も、そこまで嫌いじゃない。 ただ、明日が来る理由がわからないだけだった。 スマホが震える。 「明日、一限移動教室だから遅れんなよ」 君からだった。 私は少しだけ考えて、返信する。 「わかってる」 「ならよかった」 私はスマホを置く。そして少しだけ思う。 明日、地球が爆発しなくても。 明日、一限が移動教室なら。 まあ、学校くらいは行ってもいいかもしれない。

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はじめまして

医師に言われたのは、たった一言だった。 「このまま進行すれば、半年以内に記憶のほとんどが消えていきます」 若年性アルツハイマー。まだ29歳。あまりに早すぎる終わりだった。 彼女に別れを告げようとした夜、彼女は言った。 「じゃあ、未来のあなだに伝えてあげて。私がどれだけあなたを愛してるか」 それが始まりだった。 1通目の手紙には、今の自分の性格。 2通目には、彼女と出会った日。 3通目には、彼女の好きな食べ物。 10通目には、ケンカして仲直りしたときのこと。 25通目には、プロポーズの場所について。 50通目には、「記憶を失っても、君は絶対に手を離さないって約束したよ」と書いた。 99通目には、涙でにじんだ文字で、こう記した。 「あと1通で、全部を君に託すよ。もう、自分の名前を書くのに 5分もかかってる。でも、最後まで伝えたい。未来の“僕”へ。 君がどれだけ素晴らしい人を愛していたかを」 そして、100通目。 ただ、一行だけ。震える手で綴った言葉が残されていた。 「この人を、どうかもう一度、好きになってくれますように」 数ヶ月後。 記憶の消えた彼は、自分の部屋にあった100通の封筒を見つける。 一通、また一通と読み進めるたび、心がざわめく。 名前も顔も思い出せないはずの女性の、声が聞こえる気がした。 100通目を読み終えた夜、彼は玄関に立っていた。 そして、どこかで見たことのある女性に向かって言った。 「はじめまして。でも、なんだか懐かしいですね」 その女性は泣きながら微笑んだ。 「はじめまして。あなたに、もう一度恋をさせに来ました」

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なんか色々

こんにちは、涼風です✋🏻 なんかね、鬼滅の刃に再熱しててマンガ読んでたんですよ そしたらさ、思いだしちゃったんです。 そう、鬼滅キッズだったときを。 架空のオリキャラ作って、作中最強夢主してたの思い出しましたよ😊👊 あ、そういえば夢小説も投稿してましたね。いやぁ、なつかしい ここらで 涼風葵の黒歴史を公開しましょう 1.全ての呼吸を使いこなす幻の10人目の柱でした 2.がっつり星柱してました。   星の呼吸、壱の型、流星群!なんちって 3.日輪刀キャーされてました。 4.柱率高いですね   あ、上弦の零もやってました 5.冨岡義勇の継子やってました。水の呼吸の使い手でしたが自分で作った方が既に3つあります。冨岡義勇に溺愛されていながら 不死川実弥にメロ付きあげているというふしだらな女でした。 ほな(切腹)

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へんなこと

最近さ、ちょっと変なことあるんだよね。 夜、普通にスマホいじってて、だいたい寝る前くらいの時間。 急に通知も来てないのに画面が一瞬だけつくの。 最初は「バグかな?」って思ってたんだけど、 それがこころ日くらい続いててさ。 で、昨日ちょっと気になって、画面ついた瞬間にすぐスマホ見たの。 そしたら、ホーム画面じゃなくてロック画面のままカメラが起動しかけてる画面だったの。 え?って思って、履歴とか確認したんだけど アプリ開いた履歴は何もなくて。 まぁ気のせいか〜って思ってそのまま寝たのね。 で、今日の朝。 スマホ開いたら、カメラロールに見覚えない動画が1本入ってたの。 再生してみたら、真っ暗な映像で、最初は何も映ってない。 でも途中から、うっすら明るくなってきて… 自分の部屋だった。 しかも、ベッドで寝てる自分が映ってるの。 え、って思って一気に目覚めたんだけど、 角度が明らかにおかしくてさ。 机の上とかじゃなくて、もっと低い位置から、ちょっと見上げる感じ。 ちょうど、ベッドの横に誰かが立ってる高さから撮ったみたいな。 で、その動画、最後のほうでほんの一瞬だけ、 カメラがちょっとだけ動くの。 まるで、撮ってる人がこっちに顔近づけてるみたいに。 その瞬間、自分の寝てる顔のすぐ横に黒い影みたいなのが一瞬だけ映ってる。 しかもさ、その動画の作成時間が 昨日の夜、スマホが一瞬光った時間と同じだったんだよね

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負けヒロイン

高校三年の夏だった。 私は毎朝、誰よりも早く起きる。 髪を整えて、まつ毛を上げて、鏡の前で何度も笑顔の練習をする。 昔の私を知っている人なら驚くと思う。 「茉白ってほんと可愛くなったよね」 そう言われるたびに嬉しかった。 でも、その言葉が欲しい相手はずっと一人だけだった。 幼馴染の悠真。 家が隣で、物心ついた頃から一緒だった。 転んだ私を笑ったのも悠真だし、泣いている私にアイスを買ってくれたのも悠真だった。 だから好きになった理由なんて、もう覚えていない。 気づいた時には好きだった。 だけど悠真が好きになったのは、私じゃなかった。 ただのクラスメイトの美月だった。 美月は特別派手じゃない。 メイクもしないし、流行りにも詳しくない。 それなのに、なぜか目を引く子だった。 私は知っていた。 悠真が美月を見る目を。 好きな人を見る目だった。 それでも諦められなかった。 だって私はずっと隣にいたから。 十年以上、誰よりも長く。 だから心のどこかで期待していた。 最後には私を選んでくれるんじゃないかって。 もしかしたらって ✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。 夏祭りの日。 浴衣を着て、髪も頑張って巻いて。鏡の前で何度も確認した。 今日なら。 今日だけは。 そう思っていた。 だけど、神社の石段の先で見つけたのは、並んで花火を見上げる二人の姿だった。 私はそのまま引き返した。 呼べなかった。 足が動かなかった。 家に帰って、部屋の床に座り込んだ。 涙が止まらなかった。 苦しい。 悔しい。 悲しい。 胸の奥がぐちゃぐちゃだった。 そして何より、自分が嫌だった。 美月は悪くない。 何も悪くない。 それなのに嫉妬してしまう。 嫌いになってしまう。 そんな自分が醜かった。 「なんで」 声が震えた。 「なんで、こんな醜くなっちゃうんだろ……」 ✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。 秋になって悠真と美月は付き合い始めた。 噂はすぐ広まった。 「おめでと!お似合いじゃん」 なんて、笑ってみせた。 でも夜になると一人で泣いた。 もう終わりだと分かっているのに、好きな気持ちだけが終わってくれなかった。 ✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。 卒業式の日。 私は悠真を呼び出した。 最後くらい、逃げたくなかった。 校舎裏には誰もいなかった。春の風だけが吹いている。 悠真は少し不思議そうな顔で私を見た。 「どうした?」 その声を聞いた瞬間、何かが切れた。 ずっと我慢していたものが。 ずっと押し込めていたものが。 「なんで」 自分でも驚くくらい強い声だった。 「なんでなの?」 涙が溢れる。 「私、ずっと好きだったのに」 言葉が止まらなかった。 「ずっと隣にいたのに」 「ずっと見てたのに」 「ずっと悠真だけだったのに」 苦しくて。 悔しくて。 どうしようもなくて。 「私の方が先だったじゃんっ!」 そんなこと言っても意味がないのに。 分かっているのに。 「私の方がずっと好きだった」 涙が頬を伝って、視界がぼやける。 涙でマスカラが滲んでいた。 あれだけ時間をかけたのに。 悠真に可愛いって思ってほしかっただけなのに。 「可愛くなろうって頑張ったし」 「服も髪も」 「全部頑張ったし」 息が上手く吸えない。 「悠真に好きになってほしかったから」 声が少しずつ小さくなる。 怒りみたいなものはもう残っていなかった。 代わりに残ったのは、どうしようもない悲しさだけだった。 「なのにさ……」 「好きになってくれなきゃ、意味ないじゃん……」 静かな風が吹いて私は俯いた。 もう悠真の顔を見られなかった。 「私……」 声が掠れる。 「私がいちばん……」 涙が落ちる。 「私がいちばん、悠真のこと好きだったのにさぁっ……」 その言葉は責めるためじゃなかった。 ただ、本当にそうだったから。 誰よりも好きだった。 それだけだった。 しばらく沈黙が続いた。悠真は何も言わなかった。 言えなかったんだと思う。 だって悪い人なんていないから。 恋は長さじゃない。順番でもない。 ただ好きになった人が違った。 それだけだったから。 私は何度か呼吸を整えて、自分で涙を拭った。 「ごめん」 情けない声だった。 「困らせるつもりじゃなかった」 悠真は苦しそうに笑った。 その顔を見た瞬間、少しだけ楽になった。伝わったんだと思えたから。 叶わなくても。 届かなくても。 隠したまま終わるよりはよかった。 「じゃあね」 私はそう言った。悠真も小さく頷いた。それで終わりだった。 私は背を向けて歩き出す。胸は痛かった。未練も消えていなかった。 たぶん明日も好きだし、一か月後はもっと好きになる。 忘れられる気もしなかった。それでも歩くしかない。 春の風が吹く。そして前を向く。 この恋は叶わなかった。 それでも、 悠真を好きだった時間だけは、どうしても手放せなかった。

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すごいでしょ?

ぼくはさんすうを ならったから かなしみのかずも しあわせのかずも あいのかずも かぞえることができるよ。 すごいでしょ?

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アイコン変えました‼️

1年以上使ってきたアイコンを変えました! 我ながらお気に入り‪🫶 候補がもうひとつあってめちゃくちゃ悩みました笑 アイコンだと見えにくいのでサムネにも貼っておきました! 是非みてください。かわいいですよ💞

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アイコン変えました‼️

5割できたら上等です

タイトルの通り「5割できたら上等」精神で生きてます。 例えば 数学の問題、全問不正解 → ちゃんと解いた私偉い! 持久走クラス最下位だった → 走りきった私偉い! テストできなかった → しっかり反省できてる私偉い! みたいな感じです笑 完璧とかは得意なものだけでいい! 適度にサボり、誤魔化しながら楽しく生きてます

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花喰い少女

こみあげる吐き気に、思わず口元を押さえた。 朦朧とした頭の中。 巡る巡る月と共に忘れたかった声たち。 吐き気と共に襲いかかる“ナニカ” けれど、意識しないままその言葉は咄嗟に出た。 「桜の樹の下には、死体が埋まってる」 ねぇ、かみさま なんで私をしあわせにしたの? 。❀ 。❀ 。❀ 町外れの丘に、一本の大きな桜があった。 まだ蕾が固い枝先に、わずか数輪だけがほころんでいる。赤みがかった花弁が朝日を受けて燃えるように光っていた。 木の根元に腰を下ろした。幹に背を預けると、ごつごつとした櫢皮の感触が伝わる。いや、もうその程度の触覚はとうに失せているのかもしれなかった。 風が吹いた。花びらがひとひらと肩に落ちて、溶けるように消える。 さっきまでの吐き気は嘘のように引いていた。「ナニカ」も去ったあとの静けさだけが残っている。 丘の麓から、子供たちの笑い声が聞こえた。桃色の着物を着た娘が一人、坂道を駆け上がってくる。 こちらには気づかず、桜を見上げて歓声をあげた 同じ景色を見ているのに、その間には決して越えられないものがある。 娘は桜に駆け寄ると、両手を広げてくるくると回った。赤い花が数枚、はらはらと舞い落ちる。 「おかあさーん!さくらいとるよー!」 坂の下から母親らしき女の返事が聞こえる。娘を呼ぶ声。日常の一幕。 春風がまた吹いて、枝がざわりと鳴った。 「ねぇねぇ、おねえちゃんもお花見にきたん?」 いつの間にか、娘がすぐ傍まで来ていた。 「このさくら、なんで赤いん?ふつうはピンクやのに」 無邪気な問いだった。答えを知ったら、この娘はどんな顔をするだろう。この土の下に何が埋まっているか知ったら。 「桜の木はね、土の中のいろんなものを栄養にしてるの。 だから、命の色がまざって、ああいう色になるんだよ」 娘は目を丸くして、それから桜の根元をじいっと覗き込んだ。 「ふーん⋯じゃあこの下にも何かおるん?」 何気ない一言が胸を刺す。 「あ!お芋とか!?お芋埋まっとったらええなあ!」 けらけらと笑って、また桜の周りを走り回り始めた 救われないほど、無邪気だ。 「おねえちゃんは、取らんの?」 振り返って、小さな手を差し出してくる。 そこには拾い集めた花びら。 私はゆっくりと首を横に振った。 「⋯取っても、すぐなくなるから」 「えー?」 娘は不思議そうにしながらも、花びらをぎゅっと握る。 「じゃあ、なくならんようにしとく!」 その言葉に、なぜか少しだけ息が詰まった。 風が吹く。 花びらが舞い、ひとひらが娘の頬に触れる。 もうひとひらが、私の肩に落ちて、やはり消えた。 娘は気づかない。 気づかないまま、笑っている。 そのとき、不意に言われた。 「さっきな、おねえちゃん、なんか言うてたやろ?」 「さくらの⋯下には、なんとかって」 あの言葉。 一瞬、目を伏せた。 遠くで、誰かの声が重なる。 掘り返す音。土の匂い。冷たい手。 月が、巡る。 忘れたはずの声が、また滲む。 「⋯忘れていいよ」 静かに言った。 「難しいことだから」 娘は「ふーん」とだけ答えて、すぐに興味を失くしたように走り出す。 やがて、母親に呼ばれて、坂を駆け下りていった。 何度も振り返りながら、小さく手を振る。 私は振り返さなかった。 ただ、その姿が見えなくなるまで見ていた。 静けさが戻る。 風と、花と、木のざわめきだけ。 私はそっと、桜の根元に手を伸ばした。 土は柔らかい。まるで、何度も掘り返されたみたいに。 その瞬間、胸の奥で“ナニカ”が微かに笑った。 いる。 ここに。 ずっと、下に。   「⋯ねぇ、かみさま」 掠れた声が、こぼれる。 「なんで私を、しあわせにしたの」 花びらが降る。 赤い色が、やけに鮮やかに見えた。 花弁が舞う。 赤く 紅く 私は笑ったのか、泣いたのか、もう分からない。 ただ一つ分かるのは、 この樹は、まだ咲き続けるということ。 何度、埋めても。 その理由を 桜だけが知っている。

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花喰い少女