Yama

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Yama

暑くて死にそうな話。

 エアコンが故障した。  夏の真っ只中という猛暑日、その事実が突然に私を襲った。  さんさんと太陽が輝き、眩しすぎる日差しがアスファルトを反射し、街中がまるで大きな一つのサウナのようだ。昨日まで、エアコンのおかげで室内を快適に過ごしていた私にとって、今日がここ数年で一番の厄日、記録更新だ。最悪だ。  エアコンが壊れてから、すぐに修理業者へと駆け込んだが、直すには早くても数日かかると言われた。家中の扇風機は既に回っている。保冷剤をもってきて体中を冷やしまくった。濡れた服に風が当たって少し気持ちいい。それでも、暑くて暑くて仕方がない。ありとあらゆる方法をインターネットで調べても、夏の暑さをかき消してくれる方法など見つからなかった。どの記事にも「エアコンを使え」と。壊れているのにいったいどうしろと言うのだろう。  今は、運動せずとも汗がでるが、もう少しでも動きたくない。布団に転がり考える。  エアコンがなければどうするのか?・・・・・・エアコンのあるところに行くしかない。  一番近くて、我が家から歩いて10分程のところにコンビニがある。だがしかし、人体が溶けるような焦げるような焼かれるような、この日差しの中に、10分も晒されなければならないのだ。もはや死を覚悟して家をでなければならない。そんな無茶を、私はやり遂げるというのか?  10分の地獄とそのあとの天国。0の頑張りで永遠の地獄。 「ああ、しかし・・・・・・、暑いのは嫌だ・・・・・・」  私は短パンとサンダルというラフな部屋着に、目深な日除け帽子をかぶって、玄関を後にした。  信号機が蜃気楼のようにゆらゆらと揺れる。セミの鳴き声が頭を殴るように響く。立っているのもやっとだと言うように足元がふらついた。家を出てから、目的地までまだ半分と歩いていないが、体中が暑いと悲鳴をあげ、頭の中で危険信号が激しく点滅していた。熱中症だろう。  このまま本当にコンビニまで辿りつけるのか、私は無鉄砲に家を出たことをひどく後悔した。  今からでも、家に帰った方が楽なのでは?だめだ、今までの苦労が水の泡になってしまうだろう!でも暑くて死にそうなんだ、ああ、暑い暑い暑い!ああコンビニ!お前は今どこだ?いっそお前が私のところに来てくれればいいのに・・・・・・。  コンビニが歩いて来れるわけなどない。けれど、そんなことを考えながらも私は歩き続けたのだから、いつかは出会えるというものだ。エアコンの効いているであろう、コンビニ。そしてそれはついに、私の眼前に姿を現した。 内装工事にて休業中です。  現実が見たくない。眩暈がする。熱中症とは違う意味で。  今日は正しく、ここ数年で一番の厄日になった。  私の叫び声は、セミの鳴き声にかき消されていった。  エアコンがない自室あついよー!しんじゃう・・・さては殺す気だな

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