りんご飴🦈📖

17 件の小説

りんご飴🦈📖

妄想を垂れ流す自己満の極

2022年3月からNoveleeを利用しています

本店「自殺」

本ストーリーは東真直著渋谷の氷、掃除屋を始めとする「店持ちシリーズ」のオリジナルキャラクター"殺し屋"を書いた二次創作作品です。抵抗のある方はやめた方がいいかも狭い部屋に、四つの椅子が向かい合わせに置かれている。机には四台の携帯。どれも、似たようで微妙に違う型だ。俺はそこに、一組の資料を置く。「……今回は、誰だ」四つの椅子。それぞれに座る者ー刺す者、撃つ者、殴る者、毒する者。ーそこに、俺の席はない。ただ依頼を受け、資料を作り、置く。それが俺の仕事だ。椅子には誰も座っていない。けれど、確かに“いる”とわかる。どの携帯も、着信があれば必ず鳴る。誰も触れていないのに。立ったまま、目を閉じる。「お前の役目は、迷わず殺すこと」小さく呟いた声が、自分のものとは思えなかった。刺す奴は、静かで正確だ。撃つ奴は、軽薄そうでいて仕事は速い。毒する奴は、冷ややかに、息ひとつ乱さない。殴る奴は、迷いと嫌悪を抱えながらも叩き潰す。俺は彼らの行動を知っている。現場の景色も、音も、匂いも、まるで自分がそこにいたかのように語れる。いや、実際にそこにいた。感じたのは俺だ。手の震えも、返り血の温度も。だが、それは「俺」じゃない。俺は、誰かの“やり方”を真似しただけだ。過去に見た仕草、歩き方、癖のある言い回し。すべてをそっくりそのままなぞれば、俺にもできた。いや、できてしまった。最初は、真似だと気づかないふりをした。だが繰り返すほど、自分の中から“俺”が薄れていった。やがて、俺ではない誰かを作り出し、殺し方を押し付け、仕事をさせた。そして「自分はただ渡しているだけだ」と思い込む。そうすれば、俺は誰かの模造品であることから目を逸らせる。机の上の携帯が、一斉に震えた。顔を上げると、四つの空席と、その向こうにある鏡が目に入る。映っているのは一人の男。自らを殺し、何者でもなくなった空っぽな顔。「次は、誰がやる」返事はない。だが、頭の中では四つの声が同時に笑った。その笑いは、どれも俺の声によく似ていた。

第四支店「撲殺」

本ストーリーは東真直著渋谷の氷、掃除屋を始めとする「店持ちシリーズ」のオリジナルキャラクター"殺し屋"を書いた二次創作作品です。抵抗のある方はやめた方がいいかも狭い部屋に、四つの椅子が向かい合わせに置かれている。その一つに腰を下ろすと、机の上の資料が目に入った。紙の端を指でなぞる。書かれている名前を見た瞬間、喉がひとりでに震えた。「……今回は、ボクなのか」短く呟く。心臓の鼓動が、指先の奥まで届くのがわかる。引き金を引く精密さも、刃を滑らせる繊細さも、ボクにはない。だから鈍器だ。狙いが多少ズレても構わない。ただ、叩き潰せば終わる。夜の街の外れ、路地の奥。標的はすでに逃げ場を失い、背中を壁に押し付けていた。瞳は獣のように見開かれ、息は荒く、口元には言葉にならない音が漏れる。手にした鉄パイプが、じっとりと手のひらに馴染む。妙な安心感があった。重さが、ボクに「まだ大丈夫」と言ってくれている気がした。一歩踏み込み、振り上げる。骨が砕ける乾いた音。肉が潰れる鈍い感触。衝撃は手から肩まで響き、全身が一瞬だけ熱くなる。「お前の役目は、迷わず殴ること」耳の奥で誰かの声がした。でも、考えている余裕なんてなかった。二度、三度──音が変わる。最初は骨の硬い抵抗があったのに、やがてそれもなくなり、柔らかく崩れる感触だけが残る。気づけば、足元にはもう人の形を失ったものが転がっていた。吐き気が込み上げる。なぜ、ボクはこんな方法を選んでいるのか。考えるのが、怖かった。他の道具を使えば、もっと楽に、もっと早く終わるかもしれない。でもボクは、手で感じなければ「終わった」と信じられない。それが理由なのか、それともただの言い訳なのか……答えは出ない。いつもそうだ。殺した後、体が動かない。足は重く、呼吸は浅い。でも、やらなきゃいけないことがある。ポケットから携帯を取り出し、震える指で短く打つ。 ──完了。送信先は“殺し屋”とだけ登録された番号。返信は、いつもない。本当に見ているのかさえ怪しい。なら送らなくてもいいじゃないか、そう思うたび、指はそれでも送信ボタンを押している。鉄パイプを壁に立て掛け、深呼吸する。路地を抜ければ、街の喧騒が聞こえるはずだ。それでも、足を前に出すまでに時間がかかった。まだ手のひらに、あの温かく湿った感触が残っている。忘れたいのに、忘れることができない。夜風に当たっても、心は冷えなかった。まるで、何かがボクの中にこびりついて離れないように。次は、誰がやるんだろう。そう考えた瞬間、少しだけ、安堵している自分に気づき、また吐き気がした。

第三支店「銃殺」

本ストーリーは東真直著渋谷の氷、掃除屋を始めとする「店持ちシリーズ」のオリジナルキャラクター"殺し屋"を書いた二次創作作品です。抵抗のある方はやめた方がいいかも狭い部屋に四つの椅子が向かい合わせに置かれてるんスよ。その一つにドカっと腰を下ろしたら、机の上に資料が置いてあって、名前がデカデカと書いてあるんス。指でなぞって、つい声が出ちゃいました。「今回はジブンっすか！」いやー、ついに来ましたね、この瞬間。心の準備？　してないっスけど、やるしかないっしょ。現場は倉庫街。風が鉄みたいな匂いして、鼻の奥がちょっとツーンとします。ジブンの仕事は、とにかく早くて確実じゃなきゃいけない。だって失敗したら、今度はジブンがヤられちゃうんで。だからこの時は、できるだけなんも考えないようにして、目の前の情報だけを拾うようにするんス。距離は二十メートル。風向きは左から。狙うのは胸骨のド真ん中。 ……あれ、エアコン消したっけ？ダメダメ！　標的のことだけ考えるっス。こういう時は思い出すんスよ。「お前の役目は、迷わず撃つこと」誰に言われたかは忘れたっス。でも、その言葉だけ考えると、頭がスーッとクリアになるんス。息を吸って、止める。指を引き金にかけた瞬間、余計なことは全部どっかに行く。パンッ。乾いた音と金属の響きが混じって、夜の空気が一瞬で重くなった気がする。ターゲットは、もう動かない。ジブンの仕事、完了。っと、メールメール。 “殺し屋”さんに終わったこと報告しなきゃっス。……まあ、返信はいつもないんすけどね。ライフルを分解してケースにしまい、立ち上がる。帰り道、またエアコンのことを思い出す。あ、そういやリモコン持ってボタン押したな、そんでそのまま部屋を出て…… あれ、鍵は…… やっべ！！

第二支店「毒殺」

本ストーリーは東真直著渋谷の氷、掃除屋を始めとする「店持ちシリーズ」のオリジナルキャラクター"殺し屋"を書いた二次創作作品です。抵抗のある方はやめた方がいいかも狭い部屋に、四つの椅子が向かい合わせに置かれている。その一つに腰を下ろすと、机の上の資料に視線を落とした。紙の端を指でなぞり、そこに記された名前を、冷静に読み上げる。「毒殺……今回はアタシね」ため息も、笑いも出ない。いつものこと。順番は巡る。アタシの仕事は静かに、跡を残さず終わらせること。それだけ。夜の街。BARのネオンが濡れた路面に映って、赤と青が滲む。ガラス扉を押し開けると、低く抑えられたジャズが耳を包む。カウンター席に目をやると、すぐにわかった。資料の写真通りの冴えない男。その存在感の薄さが、逆に目立つ。「ここ、いいかしら」声を掛けると、男はわずかに驚いた顔をして、それから頷いた。アタシは隣に腰掛け、軽く会釈する。すぐに男が話しかけてきた。仕事の愚痴、どうでもいい趣味の話、名前の知らない地元の店。アタシは相槌だけを返す。適度に笑みを見せ、視線を合わせすぎない。男が一息ついた瞬間、アタシはポケットに忍ばせた小瓶を指先で探る。透明な液体が揺れる。蓋を静かに外し、グラスの縁に沿わせて中身を流し込む。液は音も色もなく、ただ酒に紛れて溶けた。会話を繋ぎながら、その一口が唇に触れる瞬間を見届ける。グラスが傾く。喉が上下する。そして、ゆっくりと異変が訪れる。呼吸が浅くなり、言葉が途切れる。顔色が薄い灰色に変わり、額に汗が滲む。男は何が起きたのか理解できないまま、椅子の背にもたれかかった。その光景を眺めながら、胸に広がるのは達成感でも罪悪感でもない。まるでアタシが自分の意思で動いていないような、代理人のような感覚。「お前の役目は、迷わず盛ること」不意に耳元で囁く声がした気がして、アタシは軽く首を振った。記憶の中の誰かの言葉。顔も名前も思い出せない。ただ、それがアタシをこの仕事に縛りつける鎖のように思える。「バーテンさん、この人、ちょっと潰れたみたい」自然な口調でそう告げると、バーテンダーは慣れた手つきで頷く。アタシは男の肩を支え、ふらつく足取りを演じながら店を出る。外は夜風が強く、街灯の下で男の影が長く伸びる。人気のない路地に入ると、男は完全に動かなくなった。壁際にそっと座らせ、視線を落とす。目はもう開かない。携帯を取り出し、短くメールを打つ。ーー完了ーー送信先は“殺し屋”とだけ登録された番号。返信はいつも通りない。それで、この件は終わり。ヒールの音を夜の舗道に響かせながら、アタシは歩き出す。ネオンの色が背中で揺れ、風が頬を撫でる。冷たいはずの空気が、なぜか少しだけ温かく感じられた。それが何の感情なのかは、やっぱりわからない。アタシは振り返らず、夜の街に消えた

第一支店「刺殺」

本ストーリーは東真直著渋谷の氷、掃除屋を始めとする「店持ちシリーズ」のオリジナルキャラクター"殺し屋"を書いた二次創作作品です。抵抗のある方はやめた方がいいかも狭い部屋に、四つの椅子が向かい合わせに置かれている。その一つに腰を下ろすと、机の上の資料に視線を落とした。指先で紙の端をなぞり、そこに記された名前を、音にならない声で反芻する。「……今回は、オレか」胸の奥がわずかに沈む。その瞬間はいつも同じ重さを伴う。逃げる理由も、拒む権利もない。けれど、奥底ではほんのわずかに躊躇が蠢いている。それを押し潰すように、心の中で短く息を吐いた。薄暗いアパートの一室。息を飲むほどの静寂が、壁や床に貼りつくように重くまとわりつく。ドアの隙間から身を滑らせ、音を殺して足を踏み入れる。手にした刃物の冷たい重みは、まるで俺の代わりに呼吸をしているかのように脈を打っていた。ひと言でも声を漏らせば、この夜の均衡はたやすく崩れるだろう。その確信が、喉奥で言葉を凍らせる。床板がかすかに軋む。瞬間、世界は薄氷の上に立たされたような緊張に支配された。それでも俺は歩を進める。迷えば崩れる。不安はある。けれど、不安ごと切り伏せるように、一歩を踏み出す。奥のベッドでは男が眠っていた。規則正しい寝息が、静けさに混じって響く。耳に届いた瞬間、俺の呼吸もまた整い、研ぎ澄まされていく。この時いつも思い出す「お前の役目は、迷わず刺すこと」その言葉だけが、脳の奥で反響してオレの冷静さを確かなものにする。 ──この仕事は、オレでなければならなかった。刃を静かに運べるのは、余計な感情を持ち込まないのは、俺だけだから。そう言い聞かせながらも、心の底では別の声が囁く。「他の誰かでもよかったはずだ」と。視線が首筋を捉える。白い肌に、一本の青白い線が浮かび上がっている。刃を持つ手に迷いはない……はずだった。だが、柄を握る指先にわずかな汗が滲む。呼吸を止め、決めた角度で距離を詰め、刃を滑らせる。空気が一瞬、重く沈み、温かなものが溢れ出す。血の匂いが鼻腔を満たし、微かな飛沫が頬を打った。感情は……ある。けれど、それは外に出さない。予定された動作を、正確に終える。それが俺の役割だ。布で刃を拭い、懐に戻す。足元には、もう静かになった獲物。生温い空気が、仕事の痕跡を閉じ込めている。携帯を取り出し"殺し屋"に完了の報告をする、返信はない。いつものことだ。外へ出ると、冷たい夜の空気が肺を満たす。街は何も知らない顔で、いつもの静けさを取り戻していた。だがオレの中には、まだ波紋のように不安が残っている。それでも歩みは止めない。足音だけが、俺がここを通った証として闇に溶けていく。

３日目糸目の男

本ストーリーは東真直著渋谷の氷、掃除屋を始めとする「店持ちシリーズ」の世界をオタクが勝手に考えた妄想話です。もしまだ読んでない方がいらっしゃいましたら、そっちの方が絶対面白いので先に読んでから。暇つぶしくらいの感覚で戻ってきてください渋谷の炎にボコボコに殴られた俺は、さすがに自分の軽率さを反省し。この三ヶ月間は情報収集もほどほどに、骨の折れた体を黙って休ませることにした。そして今日──退院の手続きを済ませて病院を出た俺は、久しぶりの自由にどこか実感が湧かず、気分はまだ半分病室にいた。ふらふらと街を歩いているうちに、ふと目に留まった小さな喫茶店に足が止まる。「……まあ、いいか」そう呟いて、俺は重たいドアを押した。カランコロン── ドアベルが乾いた音を立て、店内に流れる古いジャズのメロディが耳をくすぐる。気取った雰囲気はなく、静かで落ち着いた空気に包まれた店だった。テーブル席では、糸目の男がひとり座っていた。向かいに立つエプロン姿の女性と、どこか親しげな様子で穏やかに言葉を交わしている。やがて、その女性がこちらに気づき、にこやかに声をかけてきた。「いらっしゃいませ、こちらの席へどうぞ」案内されたカウンター席に腰を下ろす。「コーヒーを、ひとつ」注文を済ませ、鞄から入院中に読みかけていた小説を取り出す。ページをめくる指先が、まだ少しぎこちない。ふと──何かが引っかかるような違和感を覚えた。そのとき、店のドアが再び開いた。カランコロン── 入ってきたのは、黒のパーカーに白髪の男と、毛先が赤く染まったボブの少女だった。その姿を目にした瞬間、俺の体は反射的に身を引き、カウンターの陰に視線を潜らせる。 ……まさか。けれど、見間違えるはずがない。「渋谷の氷」と「渋谷の炎」── あの二人が、並んでこの店に入ってきたのだ。俺の心臓が嫌な音を立てて跳ねた。氷と炎は、迷うことなく糸目男のもとへ歩いていき、自然な手つきで腰を下ろす。「チャーハンを頼む」「アタシはいつものパフェ！それとクリームソーダ！」あっけらかんとした口調の注文のあと、糸目男が軽く咳払いをする。それを合図にしたかのように、三人は話し始めた。聞き取れる距離ではないが、あの空気がただの世間話でないことは明らかだった。やがて、俺の前にカップに入ったコーヒーが運ばれてきた。香ばしい香りと湯気が、少しだけ現実味を取り戻させてくれる。続けて、店員が三人のもとへ料理を運ぶ。チャーハン、パフェ、鮮やかなクリームソーダ、そして──野菜がパンからはみ出した、少し不格好なサンドイッチ。サンドイッチを手に取った糸目男が、一口かじって口角を上げた。「お綺麗な店員さん、とても美味しいです。今晩、私とお食事でも」と、おどけた調子で言うと、店員は苦笑しながら小さく肩をすくめる。「私は、あなたの名前すら知りませんよ。」まるで、何年も続いている定番のやりとりのようだった。しばらくして、氷と炎の二人が席を立ち、言葉を交わして店を後にする。空気が、少しだけ軽くなったように感じた。俺はコーヒーを飲み干し、静かに席を立つ。糸目男はというと、既にサンドイッチを平らげ、カップを手にしながら、まるで余韻を楽しむようにくつろいでいた。俺はその背中に視線を送りながら、静かに店を後にした。 ──店の外で、ふと立ち止まり、スマホを取り出す。振り返りざまに、喫茶店の窓越しにレンズを向け、糸目男に狙いを定め──シャッターを切る。そのまま足を進めながら、男のことを思い返す。眠ったようなに細い糸目。明るい茶髪を後ろで束ねた髪型。少しおどけたような、妙に優しい声。「先程は失礼しました。」 ──そう、まさにこんなような。「……っ！」顔を上げると、そこに立っていたのは、さっきの糸目男だった。「驚かせてしまいましたか？」にこやかに笑うその顔。「喫茶店では少し、騒がしくしてしまい、申し訳ありません。いやぁ、子守りというのは大変ですね……言うことなんて聞きやしない」「……あんたも、ずいぶん楽しそうに見えたけどな」「まさか。私はもっと、綺麗な方との大人な会話を楽しみたいんですよ」軽口の応酬──そう思ったのも束の間、男はふっと表情を緩め、ほんのわずかに頭を下げた。そこからの声色はまるで別人のように低く、硬質だった。「──それと、できればもう、これ以上は調べないでいただけますか？」その瞬間、背筋が凍るような感覚が走る。冗談のような口ぶりなのに、その目には確かな殺気が宿っていた。「お互い、余計な怪我はしたくありませんよね？」そう言い残すと、男は背を向けて歩き出した。その背中には、殺気も威圧もなく──最初に見た、おどけた男の姿に戻っていた。俺はその場に立ち尽くし、手の中のスマホを見下ろす。じわりと汗が滲む指先で、カメラロールを開き、さっき撮った一枚を見返す。 ──ここ、ようやく違和感の正体に気づいた、俺は、あの男を知っている。

２日目熱い拳

本ストーリーは東真直著渋谷の氷、掃除屋を始めとする「店持ちシリーズ」の世界をオタクが勝手に考えた妄想話です。もしまだ読んでない方がいらっしゃいましたら、そっちの方が絶対面白いので先に読んでから。暇つぶしくらいの感覚で戻ってきてください仕事の合間に、俺は個人的に“あいつ”のことを調べるようになった。別に、特別な興味があるわけじゃない。ただ、どこか、あの人に似ている気がしたんだ。名前も、素性も、なにも分からない。口が悪くて、少し怖かった。けれど、あのときいじめられていた俺を見つけてくれた、たった一人の大人。その横顔が、不意に見せる冷たい表情が、なぜかあいつと重なって見えた。「渋谷の氷」と呼ばれるその男を追っていくうちに、もうひとつの名前が浮かび上がった。 “渋谷の炎” もともとは池袋で名を上げていたという。喧嘩慣れした不良どもを素手で黙らせ、血の気の多い連中ですら一目置く、苛烈な気迫。そいつがなぜだか、数日前から渋谷に現れ、また同じように暴れ回っているらしい。俺は周辺の噂を集めながら、渋谷の炎の足跡を辿った。どうやら彼女は、地元の喧嘩自慢から明らかに堅気じゃない奴にまで、手当たり次第に喧嘩を吹っかけているらしい。そして、勝つたびに、「私は、アウトローのてっぺんを取る！」それだけ言って、立ち去る。狂気にも似た執念を感じた。俺は目撃証言を整理し、次に彼女が現れそうな場所を割り出した。 ─そして今、俺はその場に立っている。街の外れ、人目のつかない路地裏。真昼間なのに薄暗いその場所で、黄色いジャージを着た少女が、数人の男を相手に暴れていた。黒髪のボブヘア。毛先だけが炎のように赤く染まっている。まさに“渋谷の炎”の特徴だった。彼女は、4、5人の男たちを相手に拳を振るっていた。一撃ごとに相手の体が軋み、崩れ落ちる。叫び、罵声、肉がぶつかる音。その混沌の中で、彼女は誰よりも活き活きしているように見えた。最後のひとりを蹴り倒すと、彼女は吐息をひとつこぼし、言った。「私は、アウトローのてっぺんを取る！」その言葉を聞いた瞬間、俺は確信した。こいつが、“炎”だ。俺は上着の内ポケットからスマホを取り出し、そっとカメラを構える。この瞬間を記録に残しておくべきだ、そう思ったとき。「あんた、なに撮ってんの？」背筋が凍る。彼女は、真っ直ぐこっちを見ていた。炎のような目で、まるで最初から俺の存在に気づいていたかのように。「まさか、盗撮とかじゃねぇよな？」「……フ、ファンなんだ」焦りすぎて、口から出た言葉は、自分でも情けない言い訳だった。そんなことで信じてくれるわけ── 「なんだ！　それならそうと言ってくれればいいのに！」 ……信じた。というか、ノってきた。彼女は突然ニカッと笑って、堂々と胸を張る。「へへっ、ファンか〜。アタシも有名になったもんだなー！」そのままズカズカと俺に近づいてきて、言った。「サイン！　書いてやろうか？　スマホでも手でも、どこでもいいぜ！」冗談かと思ったが、彼女の目は割と真剣だった。俺は曖昧に笑ってごまかすしかなかった。だが── 「あの……その前に、ひとつだけ聞いてもいいか？」「ん？」「“渋谷の氷”って男のこと、知ってるか？」 ……その瞬間彼女の表情が、ピタリと止まった。さっきまでの調子が嘘かのように消え、目が鋭く細まる。「……あんた、なんでその名前出した？」声のトーンが明らかに低くなった。空気が変わる。俺は──地雷を踏んだらしい。咄嗟に、起動したままのカメラを炎に向けてシャッターを切る。逃げることよりも、写真を残すことを優先した俺は、ボコボコにされ、当然のように全治3ヶ月。青あざだらけで倒れる俺を前に、彼女は独り言のように呟いた。「“渋谷の氷”アタシがぜってーぶっ飛ばす」

１日目冷たいの視線

本ストーリーは東真直著渋谷の氷、掃除屋を始めとする「店持ちシリーズ」の世界をオタクが勝手に考えた妄想話です。もしまだ読んでない方がいらっしゃいましたら、そっちの方が絶対面白いので先に読んでから。暇つぶしくらいの感覚で戻ってきてください週の始まりだってのに、渋谷の街はいつも通り騒がしい。 TSUTAYAの前を通った時に聞こえた弾き語りが、やけに煩く感じる夜だった。仕事に疲れ、少し酔いたい気分だった俺は、何気なく目に留まった呑み屋の扉を開けた。賑やかな店内に、店員の声が響く。「いらっしゃいませー！こちらの席へどうぞ！」案内されるままカウンターに腰を下ろし、生ビールを頼む。「はい、よろこんでー！」注文してから酒が来るまでの虚ろな時間を、仕事の資料でも眺めて潰そうとした、その時だった。勢いよく店の扉が開く、女を連れた男が入ってきた。女の方は露骨にうんざりした顔で、携帯をいじりながらついてきている。男の顔は真っ赤で、すでに何軒かハシゴしてきたようだった。「おい、こっち座れよ……なぁってば」女は無言で首を横に振る。店員が無理に愛想笑いを浮かべながら「こちらどうぞ」と空いているテーブル席を勧めると、男は「チッ」と舌打ちしてそちらへ向かった。俺は興味をなくし、資料に視線を戻す。つまらない男と、よくある失敗劇。関わる価値もない─ そう思っていた。数分たち、不意にさっきの2人に目が行った、女がトイレに立ったタイミングで、男は空になったジョッキをテーブルに叩きつけるように置く。女を見送るその顔には、酔いとは別の焦りと苛立ちが滲んでいた。「……クソが」小さく呟いた声が、はっきりと聞こえた。女は戻ってこなかった。どうやら、そのまま逃げたらしい。男はヨロヨロと立ち上がり、店員の静止も無視して、金も払わずに呑み屋を出ていった。俺は無意識のうちに立ち上がっていた。嫌な予感がしていた。「お会計お願いします」そう店員に告げて、俺もすぐに外へ出た。夜の街は蒸し暑く、酔客の残り香が漂っている。遠くから聞こえる弾き語りが、まだ続いていた。しばらく歩き、裏通りに差し掛かったところで、足が止まる。暗がりの奥─ 自販機の光に照らされた一瞬を、俺は確かに見た。地面に尻をついて慌てる男と、黒いパーカーのフードを深く被った男。顔は見えない。だが、その姿勢、その動き明らかに「慣れている」。殺すという行為に。俺はとっさに物陰に隠れた。いくつかの問答のあと、黒パーカーの男が、フードを脱いだ。白髪。渋谷で、黒いパーカーに白髪といえば「渋谷の氷」。何でも屋を謳う殺し屋だ。それを見た男は、バッグから札束を差し出した。氷はその金を受け取ると、袖に仕込んでいたナイフを取り出し、男の首元に滑らせた。一瞬だった。男は喉からかすれた音を漏らし、そのまま倒れた。氷は、何事もなかったかのように立ち去る。街灯に照らされた白髪が、かすかに光って見えた。俺はポケットからスマホを取り出し、物陰から氷の姿を狙って、シャッターを切る。一枚だけ。写真の確認もそこそこに、俺はその場を離れた。立ち去る直前、奴の視線が一瞬こちらに向いた気がしたがあれは、俺の勘違いということにしておこう。

最終話正義

本ストーリーは、東真直著「店持ちシリーズ」の世界をオタクが書いた妄想話です。書籍版「掃除屋」「壊し屋」での公安との戦争、その火種になった燃やし屋が公安を殺した話を書いてます。まだ読んでいない方は、そっちの方が絶対に面白いので、先にそちらをお楽しみください。「みんなの正義の味方に、なりたかったんです。」灰が語り始め、「誰かを傷つける人間を倒す。それが、僕の正義、でした。」俺はそれを黙って聞いた。「公安になり、あなたの元であらゆることを学び、灰の名前を貰った。僕は、自分の正義に従って生きてきたつもりです。でも、身体はそれを拒んだ。人を殺す度、足がすくみ、手の震えが止まらなくなった。それでも、僕は殺し続けた、あなたのように、自分の正義のために頑張ってきたんです。でも、己の正義に従い、時に関係のないの人をも手にかける、そんな今の自分が、本当に正義の味方と言えるのか分からなくなってしまった。そう思ったとき、僕の世界から色が無くなった。目に映る全てが灰色で、人を殺すことが出来なくなりました。そんな時、浮かんできたのは貴方の顔でした。明るく、親しみがありながら無慈悲に正義を貫く最強の男。僕の、目標。」「俺は、暴力に頼ることしかできなかった。結局、嫁も、息子も、両親も、守れなかった。お前にも、手を汚させた。俺は、誰かの目標になれるような人間ではないさ。」「それでも、貴方は最強だ！そんな貴方に勝てば、己の正義に焼かれ灰となった僕にも、まだ、正義を貫ける。そう思ったんです。だから僕は、あなたを勝てる最強にならなきゃ行けないんです。」全てを語り終えた灰に俺は言った「だとしたら、お前の戦い方はそうじゃないだろう！正義に向き合い、お前の戦い方で来い。俺が全て、受け止めてやる！」灰は、そうですねと呟いき、息を整え、嘆きにも似た叫び声を上げ、拳を握り向かってきた。「うぉぉぉおぉぉぉ！」俺もまた、拳を構えた。灰は俺の心臓を捉え、骨を砕いていた。俺の拳は、灰の顔面に当たり、首を、引き裂いた。「お前の正義、受け取ったぞ。」俺が、灰の亡骸にそう呟くと電話が鳴った。「やってくれたなぁ、燃やし屋戦争が始まるぞ、本社最上階に来い。」同業の壊し屋からの連絡だ。やけに早いな、仕組まれてたか。俺は、電話を切り、言われた通り俺たちの所属する組織、その本社へ向かった。本社に着き、最上階へのエレーターに乗る。俺の額には汗が滲み、目からも、汗が零れていた。最上階の部屋の前、俺は目から出た汗を拭い、ドアを開けた。「燃やし屋、正義の名の下に只今参上致しましたぁ！！！！！」オタク妄想ストーリー「燃やし屋襲撃完」

第三話最強対最強

本ストーリーは、東真直著「店持ちシリーズ」の世界をオタクが書いた妄想話です。書籍版「掃除屋」「壊し屋」での公安との戦争、その火種になった燃やし屋が公安を殺した話を書いてます。まだ読んでいない方は、そっちの方が絶対に面白いので、先にそちらをお楽しみください。「貴方を殺し、正真正銘の最強になります！」そう言い放つと、灰はまた高く飛び上がり床、壁を利用し縦横無尽に駆け回った、俺の顔を蹴り、腹を蹴り、足を蹴り、距離を取る、俺の攻撃を完璧に把握し、先読みをしながら一撃離脱を繰り返す。厄介だが、俺は灰の足を掴んだ。「んなっ！？」驚いた表情の灰を、今度は地面に叩きつけた。「捕まえることだけを考えれば、そう難しくもないさ。」「ぐはっ！」鈍い音と共に、ひび割れたコンクリートに倒れた灰に俺は聞いた、「灰、貴様に正義はあるか？」少し時間が立ち、涎を垂らしながら起き上がった灰は答えた。「僕の、正義、ですか？」「あぁ、そうだ。仕事のための殺しなら、もっと合理的な方法などいくらでもあるだろう。だが、貴様の戦いにそう言ったものは感じん。」「な、なんで急にそんなこと、」「純粋な疑問だ、俺の知っていた貴様は、勉強熱心で、正義感に溢れた男だった。戦いを見た事はなかったが。こんな相手を欺き、弱みを着くような男だとは、俺には思えんのだ。今のお前は、まるで、俺に勝つことに執着しているように見えるぞ。」

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本店「自殺」

第四支店「撲殺」

第三支店「銃殺」

第二支店「毒殺」

第一支店「刺殺」

３日目 糸目の男

２日目 熱い拳

１日目 冷たいの視線

最終話 正義

第三話 最強対最強

３日目糸目の男

２日目熱い拳

１日目冷たいの視線

最終話正義

第三話最強対最強