泡沫
都会の夜が静寂に包まれたこの日、僕は一人暗い森を歩いていた。
「今日は月が綺麗だ」そう呟くと美しい満月が、より一層キラキラと輝いて見えた。
そんな中、僕はこの世界と "さよなら " しようとしている。
生きるのが疲れたとかそんなんじゃなくて、ただただもうどうでもよかった。
僕が描いた絵を上手だねとたくさん褒めてくれた母、何もない僕に愛を教えてくれた君、そのひとつひとつが僕にとって大切な宝物だったのに、神様は理不尽に僕から全てを奪い去った。
裕福とも言えない暮らし、それでも僕は愛していた。
「私、月が描く絵 大好きよ」ある日、そう言ってくれた母の笑顔が忘れられなくて、僕は狂ったように絵を描いた。母のおかげで僕は美大にも行けて
浮いたお金で絵の道具を買うこともできた。
僕にとって母は大切な人だ
でもその微かな幸せも一瞬で消えた。母が亡くなったのだ。亡くなった理由は心臓疾患による過労死。毎日朝から晩まで働いていた母は職場で突然倒れたらしい。
僕のために身を粉にして働いて、たくさんの小さな幸せを僕にくれた母。どうしてそんな人が亡くならなければいけないのか
「母さん、もういいよね…?」
僕の消え入りそうな声が薄暗い森にこだまする。僕には何を頑張っても何をやっても絵を描くことしか能はなくて、母さんみたいに強くもないし優しくもない。僕は静かに首にロープをかけた。
眩しい程に美しい月、今は全てが憎い。
すぐに僕もそっちに行くから待ってて