細川亜由未

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細川亜由未

著作権スレスレ人間、細川亜結未です! 厨二病の自分にがっかりし、再び病む生活の繰り返し。 そんな人生も悪くはないね。

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MBTI診断にハマってます 知らんけど。

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切望

あの怪我が、痛かった。 腕に熱湯をかけられたことも覚えている。 ミシンで左手を縫われたことも。 ハンマーで足に釘を打たれたことも。 全部。 母親が嫌いだった。 だけど、あの人は俺にとって唯一の肉親であることに、変わりはない。 だから、愛そうと思っていた。 だから、あの時も病室のベッドに近づいた。 「未来。」 あの人が俺を名前で呼ぶ時なんて、いいこと一つ起こらないことくらい知っていたのに。 俺は、期待した。 全部謝ってくれるのではないか。 一緒に食卓を囲めるのではないか。 手料理なんかじゃなくてもいい。 世間話なんてできなくても。 笑ってくれなくてもいいから。 目を見てくれるのではないか。 けど、違う。 「…聖さ」 友人ではない。 先生でもない。 「聖さん」が病室に入ってきて。 名前を呼ぼうとした。 その途中で、頬を張られた。 手加減はしたのだろうけど、やっぱり痛い。 「…どうして。」 気づいているんだ。 俺が、わざと殺されに行ったことを。 「…母親は、死んだよ。」 「そう、ですか。」 わかっていた。 なのに、涙が溢れそうになった。 「…大嫌いでした。」 「うん。」 「でも、愛していました。」 「…うん。」 『あんただけ生き残るなんて許さない。』 気づいたら、病床の母親は包丁を握りしめていた。 刺さったことは一瞬わからなくて、でも痛くて、足が震えた。 「愛して欲しかった。」 そのために、繕った。 でも、本当は逃げていただけだった。 わかってるのに、無視したかった。 「でも、だめだ。いつまで経っても、俺が俺である限り、俺は、誰も幸せにできない。」 「未来。」 「だけどずっと切望して、何度も、何度も、何度もっ!」 傷が痛い。 流石に開いたわけじゃ、ないよな。 代わりに瞳から雫がこぼれ落ちた。 俺というものが、内側から剥がれ落ちていくように。 「なのに、だめだった。」 怖い。 生きていることが、辛い。 聖さん、俺に、何ができる。 「ふざけんなよ。」 返ってきたのは、罵倒だった。 ふっと、風を切る感覚がして眼を閉じようとした。 聖さんが大股で近づいてきて、前髪を強く掴んだ。 顔が近い。 まっすぐな瞳を、ただ凝視した。 「今、ここに俺がいる。」 窓に、光が入ってきた。 光と熱を同時に感じて、でもどうでもいい。 「俺だけじゃない。お前のそばには…佐倉だっている。」 「…!」 佐倉、現在。 『イマ!漢字で「現在」って書いて、「イマ」。』 押し問答が、遥か昔の出来事のようだ。 彼女は、俺を見てくれた。 俺は知っている。 「お前が」 「…っ!」 「お前が独りだなんて、お前が決めつけんなよ。」 頬が熱い。 聖さんに叩かれた頬だ。 涙が傷跡を、濡らしていく。 苦しい。 それでも、瞳だけは開いていた。 聖さんの、こんな顔。 初めて見た。 「ぉれ、は」 「…」 「ま、だ…っ!」 死にたくないです。 「ありがと。」 ハッとした。 似つかわしくない笑顔が、とてつもなく脆く見えて。 聖さんは、ゆっくり俺を抱きしめた。 でも、力がだんだん強くなっていることに途中で気づく。 苦しくて、でも、心地よかった。 「ごめん、なさい。」 「うん。」 「ごめんなさい…っ!」 「いーよ、あんま謝るな。」 『ごめんなさい』 これに返答が来ることが、俺にとって何よりも嬉しかった。 しゃくりあげて、頭がぐらぐらして、握りしめた拳が痛かった。 大好きな人が、耳元で、撫でるように囁いた。 「生きててくれて、ありがとう。」

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切望

ただいま

何から帰ってきたのかは、言わない。 すごく楽しかった。 すごく怖かった。 いろんなことがあったけど。 やっぱ私は日本が好きです。 ってことだけ言えば、なんとなくわかるかな? 思い出ができて。 掴めない達成感を胸に。 一丁前に厨二病しながら。 バスの二人席を独り占めして、私は帰ります。 鬱っぽいけど、どこか心地いい。 月曜日なのに、暇なのかこいつ。 とは思わないでほしい。 結構忙しかったのだ。 ただいま。 放ったらかしのテスト勉強。 INFPの自分。 厨二病の私。 ただいま。

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ただいま

残機 後編

参考:ずっと真夜中でいいのに。 「残機」より 気づけば街はジメジメした夜に支配されている。 だるい、痒い、薄っぺらい。 夏っていうのはそういう物だ。 「どこいったのよ!」 ひとごろし。 何故知っている? 排除しないと。 迷い込んだ廃ビル。 薄暗さが瞳孔をだだっ開きにする。 「ひとごろし。」 ええそうです。 私は人殺し、サイコパス。 でも、ただ穏やかでいたい。 本当は誰にも迷惑かけたくない。 そうは思ったが。 「戦わないと、撫でてもらえないよねぇ。」 背筋が凍る。 通路の鏡の前。 そこに映る私は笑っていた。 や、これ。 「単純明快ウルトラピース。」 私じゃねえ! 「うわあああああああ!!」 鏡の奥、私だけど、私じゃない何か。 にっこりと微笑んできたそれから、ともかく逃げる。 いや、誰だ。 「私はあなただよ。」 「意味わかんねえぇ!」 背中からの声に、必死のツッコミ。 「満たされてないでしょー。」 「儲かっても、賄いだけじゃ満たされないでしょー。」 「日本語喋れ!」 「どお?暴れるのは疲れるけどさあ、侮れないでしょ?気持ちいでしょ?」 「知るかああ!」 叫んで、叫んで、絶体絶命。 「そっち行き止まりじゃね?」 「いやあああああ!」 なんで追いかけるの。 私が逃げるからか。 振り返るのが怖い。 その時、見つけてしまった。 片刃の鋏。 ひとごろし。 なら。 「死ね!」 振り返り「それ」に思いっきり刺した。 「それ」は間違いなく、私だった。 血飛沫。 また、屍が増えた。 そう、思ったのに。 「あーあ、萎んだ脳みそめ。」 「っっっ!」 死んで、ない。 頸動脈を切ったのに。 どうして。 「吐きなよ。」 「どうして」 「じゃんけんするみたく本音をぶちまけてみろよ。」 自分ではない自分に、あっかんべえされて。 唐突に。 「最初はぐー」 「ちょ、ちょっと!」 迫られる。 わからない。 怖い。 「じゃーん」 「わ、私は。」 「けーん。」 「私はっ!」 私が、大っ嫌い。 夜だった。 目の前にいた「何か」は、消えていた。 「…え。」 涙が頬を伝う。 脊椎反射。 呆気なかった。 口にして仕舞えば、あまりに軽すぎた。 誰だったのだろう。 まあ、どうでもいいのかもしれない。 「…お腹すいた。」 ラーメン食べ行こ。 退職届を出すついでに。 うざいくらい叫んだって食らったって譲れない日々よ。 栄養になって汚しあえ。 残機わかんなくて上がんなくて。 脊椎反射の涙腺は濁った声で歌えて感謝です。

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残機 後編

三月の雨

雨である。 多分、一・二ヶ月ぶりの。 先輩の卒業式である。 そう、先輩の卒業式である! どうでもいいが、一年生の私は自転車で登校した。 髪の毛を直しながら、「いや今日はお前の日じゃねえだろ」なんて自虐する。 まあ当然桜は咲いていない。 あたり一面枯れ草である(縁起悪いな)。 花粉が飛んでいないことだけが、救いと言えるだろうか。 一年生は教室でリモートで卒業式を見学。 さあ始まった。 …え、高校って卒業証書授与点呼で終わるんだ? 式辞・祝辞の最初の言葉が被ってるし。 「春の日差しが心地よく」って言っても外どしゃ降りだし。 そういえば、去年。 私が中学を卒業した日。 あの日、私はここで小説を書いた気がする。 「最後に、お父さん、お母さん。」 我に帰る。 元生徒会長の今年の答辞が、終わる。 「今まで、ありがとう。」 『また会おう。』 私が、泣かなかった日。 決意を秘めた日。 涙は、とっておいた。 じゃあ、その涙はどこで。 「卒業生、退場。」 いつの間に終わっていた式。 見送りのため、廊下へ押し出される。 スクリーンを、少しだけ目に留めた。 二年後。 あの舞台で、私は涙を流せるのだろうか。 『答辞』 私が嫌いだった自分を。 破り捨てられるように。 私は、できることをやろうと思う。 それまで。 よろしくね、大嫌いな自分。 この日は雨の中叫びながら帰った。

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三月の雨

渋谷にて

お題が出されたのに創作のやる気が行方不明。 テスト後というのはそういう物だ。 学習期間らしいけど勉強したくない。 人生というのはそういう物だ。 タイトルすら碌に思い浮かばないけど。 見切り発車してみようと思う。 思いっきり厨二病を発散しようと思う。 だって、それが私だから。 前置きが長くなったね。 話を続けよう。 友達と渋谷へ行った。 キラキラしていたけど、住みづらそうだと思った。 交差点。 あのでかい方。 ここさえ渡れば悔いはない! なんてことを言い合う。 いざ行ってみると、人で前が見れなかった。 まるで地元の満員エレベーターのよう。 どこが交差点じゃい。 信号が案外短くて。 焦る私たち田舎者。 呑気な都会人。 怠惰な文章だと気づいてしまった。 展開を変えてみよう。 もし、私がこの場所で。 首を切ったら? 薬をオーバードーズしたら? 人に埋もれながら、自殺してみたら? きっと、誰にも気づかれない。 なんだか嫌だと思ってしまった。 それは、私がまだ死にたくないからだ。 じゃあ生きてみようよ。 色々なことがあるけど。 人との関係に押しつぶされたり。 無能な自分が嫌いになったり。 どうせ、私一人だけの人生だ。 誰にも揺さぶられるものか。 交差点の真ん中で、孤独に決意した。 もし、いつか死ぬならば。 死に方くらい、自分で決めてやる。

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渋谷にて

残機 前編

参考:ずっと真夜中でいいのに。「残機」より 血の匂いがする。 あの、錆びた鉄のような匂いが。 「お疲れ。急な仕事でごめんね。」 「お疲れ様です、オーナー。」 噛み合わない会話。 ニンニク増しの真っ赤なラーメンからは、相変わらずヘモグロビンの匂いがした。 この仕事を始めてから、一度も食事を楽しんだことがない。 「相変わらず優等生だね。部下が感心してたよ。」 「『優等生』は欠点ですから。ごちそうさまでした。」 「あいよ。毎度!」 千円札を出すと、お釣りと一緒に領収書がついてくる。 店を出た後、それを確認。 「塩 四つ トマト二つ ◯街Xバー 三次会 よろしくお願いします」 鮮血が視界を彩る。 口の中にそれが入ってきた。 しょっぱい。 「やめて………いや………」 命乞いする女にソードを振り下ろす。 また鮮血。 悲鳴は聞かないようにした。 「くそ、てめえっ!」 無表情で敵を切り刻む。 半分、自暴自棄になったような気持ちで。 無知なバカになった気持ちで。 私はゲームのプレイヤー。 技術はないからほぼ感覚と直感でやってる。 一人称ゲームだから自己中だし、理解不能な。 残機もわかんない。 あがんないし。 「は、はははは。」 びっくりした。 誰だ。 今の笑い声は。 他に敵が……… 「………私?」 瞳孔が開いた感覚がする。 一人で鮮血に塗れ、身震いした。 夢を見た。 「優等生だね、きみ。」 『優等生』=つまらない・それ以上のことができない そのイコールを秘めているらしい。 「すごい頑張るね。」 それがモットーですから。 「期待してるよ。」 ………もっと? もう意外と辛いのに! 「………んはっ。」 ソファの上でそのまま寝ていたらしい。 起き上がり辺りを見回すと、寝る前に水をやった観葉植物が朝陽を歓迎している。 人間の営みを始めようではないか。 街を歩くのは嫌いだ。 恵まれてる人たちを目の当たりにすると蕁麻疹が出そうになる。 「きっと虚無感ばっか感じて生きてるんだ。」 なんて妄想に浸りながら。 「ひとごろし。」 眠気が吹っ飛ぶ耳打ちだった。 ドクンと、心の臓が鼓動を立てた。 振り向く。 遠くで黒いフードの人間が背中を見せていた。 なんとなく確証があった。 こいつだ。 消さないと。 踵を返して人影を追いかけた。

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残機 前編

クリスマスの翌日

高校生になって、とうとうサンタは家に来なくなった。 そんなに悪い子だった気はしないのだけど。 今年は、完全に乗り遅れた。 補習とか。 部活とか。 課題とか、課題とか。 そんなことに気を取られていると、いつの間に私の聖夜は過ぎ去ってしまった。 子供の頃、私はクリスマスの夜よく眠れていた。 親から「サンタはどこにいるのか」わかるというアプリを紹介されて。 ヒヤヒヤしながら布団に入る。 耳を澄ますと、鈴の音が聞こえた気がした。 空を蹴り、赤い鼻が行先を照らす、あのトナカイの首にかかった鈴。 焦りながら、ウキウキしながら、目を閉じた。 楽しみは、いつの間にかなくなってしまった。 今年も、聖夜に寝たのは十一時過ぎだし。 「本当は、サンタクロースはママとパパなんだよ。」 小学生、高学年の時かな。 浴室の中でシャワーを浴びていた私に、ドアの向こうで親がそう告白した。 「何となく気づいてたよー。」 嘘だった。 でも、周りの子はみんなサンタなんていないって。 だから、私もそれを受け入れた。 心臓に穴が空いたような気分だった。 泣きそうになったのを、声だけでうまく隠した。 「気遣い」というものを覚えた私。 今や、自分のためにどうやって生きるべきかわからない私。 メリークリスマス。 1日遅れたけど。 あと、良いお年を。 課題は年末に終わらせましょう。

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クリスマスの翌日

十六歳

今日、十六歳になった。 原付の免許が取れるらしい。 とらんけど。 あと、少し前だったら結婚できたらしい。 彼氏もいないのだけど。 それに、あと………何ができるっけ。 お酒はまだ飲めないし。 タバコもまだ吸えないし。 薬物は、最初から使っちゃダメか。 何だろう、あと、できないこと。 できなくなること。 子供じゃなくなる。 成人は「十八歳」らしいけど。 その時はまた同じような詩を書くか。 甘えられなくなる。 一人で生きられるようになるから。 自己主張が難しくなる。 周りはいつだって予測不能だから。 あと、男子に下心を隠せなくなる(?)。 体があちこち痛くなる。 人を信じられなくなる。 友達作りも難しくなる。 なんか、そういえば。 十六歳になって、できることよりできなくなることの方が多くなった気がする。 成長、か。 まあ、ともかく。 ハッピーバースデー、自分。

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十六歳

コンピュータ・パラサイト

自分の頭の中で、円盤が回る。 エンターキーを押す。 マウスを走らせる。 叫ぶ。 変わらない。 教室には誰もいない。 メールを送る。 ため息をつく。 探す。 誰もいない。 一体誰が、こうしたの? ウイルスに通行止めされながら。 データの消失にストレスを抱えながら。 いつまで過ごせば良いのだろう。 背中に光るウィンドウを睨む。 背後で誰かに睨まれる。 どうせ私は邪魔者だ。 電子音が鳴った。 画面が変わっていた。 「接続できません」 眺めていると、画面がぶつりと消えた。 私は我に帰ったらしい。 ストレスが消え去っていた。 久しぶりに辺りを見回すと、そこには誰もいなかった。 私は、諦めたらしい。 私は、諦められたらしい。 そこは、誰もいない世界だった。

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コンピュータ・パラサイト