め い
3 件の小説ほくろ
知ってる? ほくろって、前世の恋人にキスされた所なんだって。 あなたの頬に3回キスしたのが わたしだったらいいな。
花びらの海
君をモノに例えたら 花びらの海だ。 飛び込んでも痛くない 苦しくも、溺れたりもしない よく、綺麗な人を花に 心の優しい人を海に例えるけど どっちかだけじゃ全然足りない! きっと君は 花やぐ優しい香りがして 夏めく海の様に輝いて あ、でも一つだけ訂正させて。 私はその海に飛び込んで 今もずっと、溺れている
絶望論
人を愛し、愛されないというのは絶望に値する。 細やかな愛情の切り取りが、張り付ける厚紙もなく無意味にごみになるアートのようなもので。 やはり受け取ってくれるものがいないとそれは孤独である。 しかし、愛というのは必ずしも帰ってはこない。 25歳、佐々木陽大。それは私の兄の名前である。 もう戻ることのない、また、愛に生きた人だ。 兄には愛し、愛しすぎた”男性”がいた。兄の性自認は真っ当に男であったが、兄の愛した人もまた男であった。 しかもそれは会社の同僚や、友達なんてものではない。 私の幼なじみだ。もとい、私の彼氏。そして一昨日婚約をした相手。 陽にい。私の兄、陽にいは佐々木陽大という名前の通り、陽気でおおらかで、誰にでも慕われる人だった。 それに対し、私は根暗で地味でジトリとした目付きは、自分自身でさえ写真や鏡で見るたびに気分を落としてしまうほどだった。 そんな私を唯一のように愛してくれたのが、私の幼なじみで婚約者の、池村蒼士。蒼士もまた、私とは真逆のような人間だった。陽にいとは似ているようでまた違う、活動的で愚鈍で、本はーページ端から端まで読んだら、飽きてぐるぐると目を回すような、そんな人。 それでいて根は実に真面目だった。 プロポーズの言葉も、とても生真面目なものだった。 陽にいがなぜ蒼士のことを好きだったのか、そんなものは同じく蒼土を愛する私からしたら手に取るようにわかった。 いつから蒼士に惹かれていたのか、それだけが最早、神のみぞ知るところとなったのだが… 私がその事実を知ることになったのは、蒼士と付き合い出してから 1年半ほどたった頃。それは突然のことだった。 夏の夜ジメジメとした静寂に、私は話し声で目を覚ました。 私の寝室は二階、話し声は一階のリビングから聞こえてきた。 ひそひそ、一度静かになって、またひそひそ。 トントン、ツー、トントンって、モールス信号みたいな。 なにか不思議な予感がした。その会話を聞いてしまったら、もう戻れないような、私と陽にいの何かが崩れてしまうような虫の知らせがした。 今からタイムマシーンに乗ってその日に戻れるのなら、私は迷わず乗り込んでそのまま眠っているだろう。 布団を深く被って、一度目が覚めてもそのままもう一度夢の中へ潜り込むだろう。 陽にいの恋心を知らないでいられるのなら、私はなんでもするだろう。 そんなことを今さら思っても無駄であることは解っている。 リビングの扉の前に身を潜めて、息を遠慮しながら聞いた会話は、私の世界が角質みたいに少しずつ剥がれていってしまうようなものだった。 「それに俺は、蒼士くんのことが好きなんだ」 「あんたら兄妹は、男の好みが似たんだね。」 私は果てしなく後悔した。完全にそのとき、陽にいへの愛情が音を立てて排水溝から抜けていくのがわかった。 まるで、栓を抜いたバスタブみたいに。 それから私は陽にいに冷たくあたるようになって、今考えるとそれは幼い頃からよく面倒を見てくれた兄への態度として、到底許されるわけがないと思う。 無視して、意味もなく怒鳴り付けて、近づこうものなら突き飛ばした。 謝っても謝っても、謝りきれないほどに酷い仕打ちだっただろう。 母は私を責めなかった。陽にいのことなんて更に責めなかった。当たり前だ。陽にいは、人を愛してしまっただけなんだから。 ある時、陽にいは言った。 「なあ、俺は何かした?何かしたなら謝る。ごめん。」 陽にいは何も悪くはないから、私は黙っているしかなかった。 「蒼士くんもお前を心配してるよ」 蒼士のことに触れられ、私は煮えたぎった鍋を放り出すように、黙っていた口の紐を千切るように、哭した。 「蒼士の名前を呼ばないで!気持ち悪いのよ!」 陽にいはその一言で、これまでの酷い仕打ちの理由を悟ってしまったようだった。いつもの困ったような笑顔を浮かべると、どこに行く宛もない瞳を深く伏せて、微かに震えた声でこうとだけ言った。 「…俺は、蒼士くんとお前の仲を邪魔したりなんかしない。」 陽にいが自宅で首を括っている姿を発見されたのは、その二ヶ月ほど後だった。陽にいは最後に母に電話したらしく、その時に、「愛されたかった」と言い残したらしい。 葬式に参列した人々は口々に、 「愛されたかっただなんて…陽大くんは凄くいい子だったのに」 「たくさんの人に愛されていたのにね…残念だわ。」 「それだけじゃ満足できなかったのかしら」 と言った。私はそれで気付いたのだが、人間は愛している人に愛されてこそ満たされるのだろう。 「なあ、大丈夫か?陽大さんとお前、喧嘩しっぱなしだっただろ?」 蒼士は私の身を案じた。気の毒そうだったけれどそれは間違いなく私へ向けられた関心だった。私は、もうこの世界に居やしない陽にいに、優越感を覚えた。 最低だ。私は、最低。私が本当に愛していたのは、他でもない自分自身なのだろうか。 そしてあれから3年経った。 ー私は、近頃こんなことをたまに思う。 陽にいが欲しかったのは、蒼士の愛なんかじゃなく、紛れもなく、私からの、愛する妹からの愛だったんじゃないのだろうか。