にいたちー
3 件の小説波は君と共に
夜。街が眠り始めたが、完全な眠りにつくことはできない。 それはなぜか。そう、この一室の電気がついているからだ。 眠れない。今まで自分自身に「過去のことだから」と壁で隠していた、割り切っていた筈のストレスが、 突然荒波となって襲いかかってきた。 …沈む。……沈んでゆく。 終わった筈の苦しみに。 手元のスマホに文字を打つ。 「しんどい」 沈んでゆく。 時刻は深夜。当然波は勢いを増す。 既読。 突然、私に手が伸びてきた。 その手は私を掴むと、引き上げる。 …君はどれだけお人よしなんだ。 こんな時間に私に構ってくれるなんて…… 海面に顔を出し、上を見上げる。 そこには不安げな君の顔があった。 ……君は私を分かりすぎだよ。 ……え?「友達だから当然だ」って? ………そう…かな。ありがとう。 そう。今は友達。それでいい。 嬉しさで暖かくなった体を冷ますため、 私は穏やかな波の上に横になった。
循環するフィルム
こんにちは。『映像屋』へようこそ。 ここにきたということは… 貴方は生物としての過程を終了したのですね。 今までお疲れ様でした。 …さて、後は私共の方で全てさせていただきますので、目を閉じて……おやすみください。 頭に手を当てられた様な感覚を感じた後、 突然、走馬灯の様に記憶が駆け巡った。 あれ?なにをかんがえていたんだっけ? そして、これからまた……苦労の始まりです。 そう言いながら映像屋の主人は、貴方の記憶から取り出したフィルムを『天国』の棚に置いた。 『産まれましたよ!元気な男の子です!』
才能のショッピングモール
いらっしゃいませお客様、本日はどのようなご入用で? ………… なるほど、それでしたら…こちらはいかがでしょう。 『画力』 こちらはBランクです。 ………… お気に召しませんでしたか…でしたらこれは? 『話術』 こちらAランクとなっております。 ………… こちらのお買い上げですね。11014日となっております。……分割ですね。かしこまりました。 毎度、ありがとうございました。 ある日、突然現れたその男は世界の著名人と親しくなり一躍時の人となったが……2日後突然死したという。 おや、お客様。こちらのご利用は初めてですか? でしたらこちらはいかがでしょう。 『話術』 …………Sランクでございます。 以前のはあまり活用できていなかったものですから。 …貴方はどうするのでしょうね? 失礼…会計はこちらです。