一ノ瀬 るい

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一ノ瀬 るい

気まぐれ投稿

2023年7月25日 言った通り彼女は補習に来ていた。 「おはよう、園田さん。今日は早いね」 在り来りな話を投げる。 「おはよー。てか園田さんじゃなくて、百合でいいよー」 「おっけー百合ね。俺は隼人でいいよ。」 「りょーかい。よろしく隼人。」 そんな会話をし終わり、僕達は机に向かって大量のプリントに集中した。 「おーい。隼人〜?もう4時だよー。」 僕はパチッと目を開ける。やってしまった。うっかり寝てしまった。課題もやっていない。どうしよう……。顔を青ざめている僕を見て百合が 「自分の課題早く終わったし、隼人の分もついでにやっといたよ」 僕は百合が天使に見えた。 「まじ!?ありがとう!!」 百合はニコッと笑って 「いえいえ」と言った。 「お礼したいんだけど、なにかある?」 そう僕が言うと百合はニヤッと笑って 「私学校のプールに1回でいいから制服で入ってみたいんだよね〜」 一度は憧れる青春の1ページ。いいじゃないか!今は夏休み、ちょうど先生も帰宅時間でいない。 「お望み叶えましょう!」 僕達はプールへと走った。 ザブーン! 4時なのにまだ日差しが眩しい。 「私たち今悪いことしてるよねー」 彼女が楽しそうに僕に言う。 「うん、めっちゃ楽しい」 心の底から僕はそう思った。 帰りに僕達は近くの駄菓子屋に寄って、2人で同じアイスを食べた。 ラムネ味の氷菓のアイスはこの時期にピッタリだった。 「ん、これなんかラムネ以外の味がする」 「え?そう?普通だと思うけど…。」 わかった。これはブルーハワイだ。ラムネ味と勘違いして僕達は違う味を食べていた。 「これ、ブルーハワイだよ笑」 「えぇ?まじ?ほんとだ、、確かに…。」 彼女の言葉が詰まる。 あの時の僕はまだ何も分かっていなかったんだ。

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三

2023年6月12日 クラスもだんだん活気が出てきた頃。新学期から気になっていた園田 百合は新学期最初の登校日から学校に姿を現すことはなかった。 「ねぇねぇ隼人くん!」 クラスの複数人の女子が 「隼人くんって全国の選抜メンバーなんだよね?」 「うん、そうだよ。」 「だよね!やっぱり運動出来る男の子ってかっこいい!」 「ありがとう。」 バスケを始めてからこういう事はしょっちゅうある。もううんざりだ。 「ほんとにお前は中学からモテモテだな」 蒼太を中心にクラスの男子は僕をからかったように言う。 「でもお前っていつ彼女作るんだよ。狙ってる女子相当いるぞ?」 「僕は部活命だし?笑」 「ほんとお前には敵わないわ!笑」 居心地のいいクラス。ひとつの席を除いては……。 2023年7月18日 学校はもう夏休みと言うのに、僕は今学校で勉強をしている。 そう、補習だ。 僕以外に補習を受けてるやつはいない。 そう思っていると、、、 「こんにちは。隣に座ってもいい?」 聞きなれない声がした。 僕は振り返りながら「どうぞ。」と、そこには、新学期の初日以来見てなかった顔だ。 「園田さんだよね。君も補習?」 勇気を出して声をかける。 「うん。学校ずっと休んでたからね。」 彼女は一瞬下を向いて言った。 なにか事情があることを僕は察し、これ以上聞くのを辞めた。 そして、補習が終わった。 「名前なんていうの?」 「水野 隼人。」 「私たち相性いいかもね。」 彼女の思わぬ言葉に僕は情けない声が出た。 「だって、「百合」には「水」が必要でしょ?」 なんだそう言うことかとホッとしたような、嫌なような変な気分になった。 「あなた次の補習はいつ?」 「25日にあるよ」 「じゃあ私もその日に補習しよーっと」 そのまま彼女は教室を出ていった。 また彼女に会える。

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二

一、

2023年4月10日 僕は家を一目散に飛び出した。 新学期早々、遅刻寸前だ。 急いで改札を通る。 何とか電車には間に合った。 電車を降り、改札を抜けると同じ制服を身にまとった女子生徒が目に入った。 こんな時間に歩いてて大丈夫だろうか。 でも、人の心配をするほど自分に余裕がある訳でもない。僕は気にせず、学校まで走っていった。 キーンコーンカーンコーン やばっ!急いで、クラス替え表を確認して僕は教室に入った。 「セーフ!」 「水野、アウトだ。」 顔馴染みのないクラスでみんな戸惑ってはいたが、若干笑いに包まれた。 「お前新学期から遅刻かよー!」 「うるせー、蒼太!」 中学から付き合いのある蒼太とはずっと同じクラスだ。呆れはするが、安心する。 「静かに。出席とるぞー」 一人一人名前が呼ばれる。 「園田 百合…は欠席か?」 と、その時。 「すみません、遅刻しました。」 新学期最初の日から遅刻するやつがもう1人いるとは、、。 「わかった。じゃあ次〜……。」 出席が終わり、そのまま休み時間に入った。 「なあ知ってる?」 突然蒼太から話しかけられた。 「なにが?」 「園田 百合って超不良らしいぜー」 「そうなの?」 「うんうん!1年の頃からろくに学校来ないで遊び回ってんだって!」 「そんなのただの噂だろ?」 「ほんっと隼人はつまんねーの〜」 「いいから部活行くぞ」 「ほーい。」 彼女の第一印象は不思議な子だと思った。 それ以外の印象はなかった。 でも本当に不良なのか?と疑うほど彼女は綺麗だった。

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一、

無の五感

「不順性五感不能症」 視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感全てが順不同で失われていく病気。 触覚が失われた時、歩行困難になる。 また、最後は全ての五感が失われ、弱体化し、死に至る。 発症の原因は不明、治療法は未だ見つかっていない。

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無の五感