天使の梯子
私はひかり、つい先日双子の妹が死にました。名前はあかり、明るい子になってほしいと母がつけたのです。あかりは何をやってもダメで、おまけに暗い子でした。もうずっと、笑った顔を見ていません。今考えれば私は嫌われていたのでしょう。
そんな妹ですが世界にたった一人の妹です。
私はあかり。ひかりは、私が殺しました。ひかりと呼ばれれば、私はひかりになるし、あかりと呼ばれれば、私はあかりになった。ひかりは私だし、あかりも私なのです。
嗚呼、私はなんて幸せ者なのでしょう。優しい姉が居て。きっと姉も許してくれるでしょう。私は姉に依存していたようです。
「ひかり、授業始まっちゃうよ。」
「先に行ってて、後から行く。」
「ひかりが先行っててだって。」
「分かった。」
「遅れるなよー」
友人に手を振り、見送った。
誰も居ない教室に、チャイムが鳴り響く。私は教室を後にした。もう人の姿は見えない。
私は後悔していない。ひかりは私が持っていないものを、全部持っていた。それが羨ましかったのです。頼れるのはひかりだけだった、だけど私のプライドが邪魔をしたの。
私が本当に欲しかったものは
「あかり、貴女だよ。」
雲の隙間から差し込む光が綺麗だ。
「いつの間に彼氏なんか出来ちゃってさ、お姉ちゃんは悲しいよ。」
あの雲は私に似ている、光が溢れ出てしまわないよう私が覆って隠すのだ。最初は軽い気持ちだった、あかりが私を頼ってくれればそれで終わりだったのです。
校庭の水溜りがきらきらと輝いている。目を輝かせながら、天使になりたいと笑っていた君が懐かしい。
「依存していたのは私の方だったのね。」
私の後ろに隠れてばかりだった、恥ずかしがり屋のあの子はもう居ないのです。私のたった一人の妹。
雨上がりの屋上には、天使の梯子が掛かっていた。
私はひかり