三三

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三三

毎日に感謝。

終わりを選んだ君へ。

身体中にまとわりつく水分が、気怠さを引き起こし、体を動けなくする。 「午後10時から夜中の3時にかけて、大雨の予報です。最近は温度差が激しいので、体調管理をしっかりしましょう。」 液晶画面から発している青白い光が部屋を包む。 テレビから出るアナウンサーの声は、誰も呼応することなく、壁に吸収された。 リモコンを手に取り、テレビを消した。 『私だけは…君の味方だよ。』 目を開けた。 眩い光が瞳孔を刺激する。 視界を下に落とすと、そこには血まみれの死体があった。 「錆びた匂い…この教室…犯人は…」 ガラガラ、という音がして、ドアが開いた。 そこには、見慣れた顔があった。 「…なんだ。お前か…。どうだ、探偵。犯人はわかったか?」 そう、僕は探偵だ。 警視庁捜査第一課の高梨は、しゃがれた声で言葉を続けた。 「殺人現場、被害者共にここ、第三高校2年6組の生徒、半田友利17歳。死亡推定時刻は5月23日9:43。友達や、クラスメイトの繋がりが深かったわけではなく、クラスメイトからは『よくわからない』と。」 「そうか…。クラスメイトが犯人じゃないなら、他の人はどうなの?家族とか、彼女とか。」 僕は教室を物色しながら質問をする。 「友利の机…傷の着き方的に、いじめか…」 「…いじめ、いや、友利くんの机の場所、いつ…」 「本来なら、僕が聞き込みをするんだけど…。僕も高校生だから。君達が許さないんだろう?」 「……そうだな。高校生だっていうのに、本当に生意気だな。聞き込みなんてせずとも、お前はもう、犯人がわかっているんだろう?」 そのまま高梨の横を通り抜け、教室を出た。 今は春だが、梅雨が近く、桜は2日で散ってしまった。 独特の雨の匂いが鼻腔を刺激して、鼻の中の錆びた匂いが一掃された。 幸い、この学校には監視カメラがある。 犯人が逃げることはできないだろう。 「友利…君は虐められていた。そうだろう。その腹いせ…いや、逆だ。なんで、死んでしまった…」 何台かのパトカーがサイレンを鳴らしながら到着した。ベテランしかいないからか、全員の雰囲気は只者では無い。 「僕にはもう、犯人がわかっている、だと?バカを言うなよ。探偵には超能力なんてもの、ないんだ。」 「んー…監視カメラには探偵くんと、友利くんしか映っていませんし…」 「だが、探偵、とやらと友利くんの繋がりはないんだろう?なら、犯人は別の生徒に違いない!」 「まず、生徒と断定するのが良くないだろう」 会議室は雨の影響で暑苦しい。 中にいる全員が、各々の推測を話し合っている。 そんな中、高梨の重い口が開く。 「だが、あいつが犯人として考える方向で間違いないだろう。それ以外、考えられない。自覚がないんだ。…そう。自覚がないってことは…」 その時、会議室のドアが勢いよく開いた。 「決定的な証拠が上がりました。今、犯人を探しています。」 「え!?ほんとですか!?そ、その証拠は!?」 「友利くんのスマホです。スマホの中に……」 「詳しく、話してくれ。」 高梨だけが、冷静に、淡々と話を聞いていた。 錆びた匂いが充満する教室で思考が巡る。 ありがとうを言い忘れたこの世界で。 私の手は、汚れてしまった。 眩い太陽と、輝く桜は、暗雲と、悲痛な雨に殺された。 光が無くなった世界は、私にとって、それは地獄に等しかった。 「ごめんね。こんなことを頼んで。土曜日…だし。学校には…監視カメラがあるから。逃げることは…できないかもしれない。そのまま…その、ナイフで。お腹……とか。刺してくれれば…」 私の手には、銀色に輝くナイフがある。 目の前には、太陽がいる。 私は、その太陽を塞ぐ、暗雲になるんだ。 私は。私は私は。私は。 僕は。僕は?僕、僕は。私は。 「探偵。お前はもう、犯人がわかっているだろう。クラスメイトの事情聴取で、唯一、お前の名前が上がった。幸紀。お前…は、ああ。こんなことは、1回じゃない。幸紀…。探偵ごっこは、終わりだよ。」 僕は、探偵だ。 私は、友利の━━━━━お前たちは、救ってはくれなかった。 「いじめの事実を隠蔽していたのは学校側だ。だが、そのいじめを1番否認していたのは、いじめていた本人ではなく、友利くん本人だ。友利くんは気付いていたんだ。……そう、いじめも、殺人の犯人も…、全て…」 その時、暗雲に閃光が走った。 その後、轟音と共に静寂が包む。 気付けばあたりには警察がいた。 「そんなことを言いに、僕の所へ来たのか?もういい。それより、僕にはアリバイがある。僕は家で寝てたはずだ。なぜ、あの教室にいたのかわからない…けど、僕は家で……」 「これは友利くんのスマホだ。」 高梨はポッケからスマホを取りだし、メールを開いた。 そこには、 『君にしか頼めない』 『もう疲れた』 『終わりたい』 「これは友利くんがお前宛に、今日の午前9:02にメールが送られている。次がこれだ。」 『大丈夫』 『私だけは友利の味方だよ』 「これは、数ヶ月前から何度も送られていた言葉だが、今日も同じような言葉が送られていた。友利くんは、犯人と親密な仲で有り、人生に疲れていた。その時、お前の救いの言葉で、諦めがついたんだろう。監視カメラにも、お前と友利くんの2人が映っていた。」 「そして、お前は、友利くんの机の場所を知っていた。机の場所を把握しているくらい教室を知っていたなら、なぜ、先程、教室の物などを調べていた?土曜日なんだから、なにかの場所が変わるわけでもないだろう。」 「それに、ナイフには友利の指紋しかなかった。だが、友利がナイフを握り、その手をお前が握れば、指紋は着かず、殺せる。いや…救える、か。」 「そして、決定的な証拠が、これだ。」 『君に終わらせて欲しい』 「探偵、犯人はお前なんだ。いや…幸紀。なにも…違いはしない。」 「僕は…私は、違う……。そんなつもりでは、…ない。」 梅雨が開け、夏が始まる。 一連の殺人事件は、幕を閉じる。 春の桜は散ったが、向日葵は前向きに、太陽を向いて咲いている。 いじめの主犯である幸紀は、友利にバレないよう、悪質ないじめをしていた。 それは、嫉妬や憎悪ではなく、単なる「愛」であると、本人は供述していた。 いじめにより、辛くなった心に寄り添う。 依存。信頼を築く。頼られる。それを目的に。 だが、友利の頼り方は、違った。 幸紀は、友利との始まりを望んでいた。 それでも、友利は、幸紀との終わりを選んだ。

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「理想の」いじめっこ

今のいじめっ子は、ネットで悪口を書き連ねて、友達同士で陰口を言い合い、私がなにかやる度に、コソコソと嘲笑を繰り返す。 なんとも陰湿で、なんとも腹が立つ。 「殴りかかったりしてくれれば。」 「思いっきり、面と向かって悪口をいってくれば。」 やり返したり、先生に報告したり、できたのに。 そんな私に、私の元に、君は訪れた。 青空が輝く、「真夏日」という言葉が似合う季節になった頃だ。 「調子乗んなよ」 「なんで生きてんの?」 「気色悪い」 そんな言葉を私に振りかけては、悪魔のような笑顔で去っていく。 ああ、君は「理想の」いじめっ子だ。 私は君のような人を待っていたんだ。 君と会うために、今日まで「いじめ」に耐えて、耐えていたんだ。 ああ、さようなら。私の、理想の「いじめっ子」 また私を「可哀想な」被害者にさせておくれ。

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「死にたい」のと「生きたくない」

私は死にたいわけではない、 生きたくないだけだ。 どちらも、意味は変わらないと、皆は言う。 私にとって、2つは全く違う。 私は、真面目に生きたくない。 私は、不幸に生きたくない。 私は、自由を縛られて生きたくない。 私は、惨めに生きたくない。 だから、私はこんな人生を生きたいわけでは、ない。

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心中

潮の匂いと息苦しさが交差する中で、私は思う。 「孤独とは、死だ。」 ならば私は死んで、死んでしまおう。 親も、子も、友人もいないような私には、 死が最高のアクセサリーであると、私は願っている。 嗚呼、さようなら。 この世に未練も、思い出もない。 私には何も残っていない。 ですが、そうですね。 私には、唯一の恋人がおりましたか。 孤独というものが、私の隣にはいましたか。

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海賊の宝物

海を渡り、船を見つければ、その船に乗り込み、宝を奪う。 奪ったら、乗組員を殺したり。 私は、まあ、俗に言う、「海賊」というものです。 海賊と言ったって、私は船長でもないし、腕は伸びないので、そんな明るい期待はしないでください。 それに、剣や大砲で戦うわけじゃないのです。 それこそ、拳銃や、重火器を乱射して、ナイフで刺して。 ああ、剣は使っていましたね。 そんな感じで、皆さんがよく思いつく、「海賊」ではないのです。 船だってそうです。舵を切って、帆をあげて、大きい波に揺られて、嵐を乗り切るようなことはしません。 モーターボートでのらりくらりと、そこら辺の貨物船に喧嘩を売る。 そうして仲間のものを奪っては、海に蹴落とし、銃で殺す。 私はそんな、現代の「海賊」でした。 そんな「海賊」でも、人の心はあるようで。 時々、仲間と見る朝日は、どんなダイヤモンドよりも、どんな白金よりも、大切で、美しいものでした。

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