松ノ葉 時雨
2 件の小説神様になったあなた。
拝啓 静子殿 私ハ、三日後ノ一九四五年ノ四月九日ニ大日本帝国ノタメ、米国へ飛ビタッテ参リマス。 戦争ヲ、終ワラセマス。 貴方ニ出逢エテ幸セデジタ。 サヨナラ。 拝啓 太郎殿 貴方が飛び立ってからもう、八十年以上経ちました。 神様になられて散っていった貴方様はどうお過ごしですか? あの頃見れなかった桜を貴方が生きていれば一緒に見れたでしょう。 貴方に会えて、ずっと幸せでした。 会いに行きますね。
理想絵図
あなたにとっての理想、理想絵図を思い浮かべてください。 それは、どんなものですか? お金持ち?その願いは際限がないのでいつか身を滅ぼしますよ。 楽して生きたい?それはとてもいいことですが、経済的など大丈夫なようにするには苦労もしなければなりません。 完璧人間? 今の時代は、推しを助けられる人とか?はたまた、スーパーヒーロー?あぁ、今はダークヒーローなのですね。どれが正義なのかわからないのにですか? それとも、今の日常?そのような人がいたらすごいと心から思えるでしょうね。 そんな言葉で私は心を壊されてきました。 様々な大人から否定されて、理想を持つのを怖くなった。 もう二度と持たないと決めたこともありました。 ですが、同じ境遇でずっと理想を持ち続けている子が近くにいたんです。 その子は同じ集落出身で、変に自信満々で、でも頭は少し悪く、運動の方も、苦手と自覚している私よりもできていなかった。 でも、ずっと理想を持っていた。 ずっと捨てなかった。 そりゃあ、キラキラして見えていたでしょうね。 期待で胸を膨らませて、現実なんて見ずに。 彼女は私のヒーローでした。 「いつか、遠いところで神様になってやる」 そんなことを言ってました。 高校を卒業してから上京して、離れ離れになりました。 共通の友達から聞いたことを言うとしたら、 「私みたいに理想を持てる子供をもっと増やすために漫画家になってくる!そして総理大臣!」 にかっと笑っていたそうな。 それから数年。 久しぶりにその子の親から電話があったのです。 その時は夜勤明けで泥のように眠ってしまっていたので気づきませんでした。 そして、夕方あたりでもう一度着信がありました。 私は電話をとり、スマホを耳に近づかせようとした時に信じられないことを言われて頭が真っ白になりました。 「あの子が死んだ、久しぶりに帰ってきた時に、酔っ払った男に跳ねられちまった」 私は今、学校の教師をしています。 今の難しい時代を生きていくあなたたちのために。 と、言えたらすごく綺麗だったでしょうね。 私は、最後に遺した彼女の言葉に縛られているだけです。 まだ、言ってなかったですね。 あの子の親に、彼女が渡したものです。 私に会えないと思うから代わりに渡しといて。と。 その手紙の内容は、 「みんなに理想を配れる大人にきっとなれるよね」 もう一度聞かせていただきます。 あなたにとっての理想、理想絵図を思い浮かべてください。 それは、どんなものですか? その“理想”は、大切にできていますか? 私が言いたいのは、それだけです。