夢咲さくら

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夢咲さくら

LGB”T”Q 音大卒、元銀座のスナックホステス&メンエスコンパニオンを経て、今は引退して、心身療養中の無職。 私の人生のノンフィクション、LGBTQ当事者としてのノンフィクションをメインに書きます。

隠された少女 Part.1

 私は性同一性障害だ。いや、今は性別違和というのが正しいのか。とにかく、私は自分の性別に対して、強い違和感と嫌悪感があった。  私の中で最も古い記憶は小学生の頃だ。良くも悪くも、保育園の頃の記憶はない。  ランドセル。小学生なら誰しも買うであろうマストアイテム。赤、黒、紺、紫、水色・・・色とりどりだ。私の頃はまだ、男の子は黒や紺、女の子は赤や紫に水色。そんな時代だ。 私は水色のランドセルを欲しがった。薄い、海のような水色。何故かはわからない。水色に惹かれた。けれど親は、「男の子なのだから、せめて紺にしたら?」と言った。私には理解できなかった。当然だ、当時は5歳だ。『これがいい!水色のランドセルがいい!!』その訴えは退けられ、紺色のランドセルに決まった。”決まった”なんて言葉の綾。親の言う事は絶対だ。『紺色のランドセルにすべきだ。』そう思った。  晴れて小学生になった。紺色のランドセルを背負った小さな子は、懸命に歩いて1キロ先の南小学校まで通った。この頃は”性別”なんて、考えもしなかった。純粋にただ生きていた。けれどいつからだろう、男女別の身体測定が、男女で違う水着を着た姿が、“男女”という括り自体に違和感と嫌悪感を感じ始めたのは… 私の通った小学校では、男女で登校時に被る帽子の形が違った。私は男の子用。なぜだろう、女の子用の防止に並々ならぬ憧れを抱いたのは。  3年生の時、習字セットを買わなければならなくなった。学校からセットのパンフレットをもらい、色んなデザインの習字セットを見て、『これがいい!』と私は言った。ドラゴンが火を吹いている、そんなデザインのケースに入ったセットだ。私がこれがいいと言ったのは、当時仲が良かった男の子と同じ物だったから。本当は別のかわいいキャラクターの物が良かった。けれど、私の性は男の子。かっこいいデザインでなければ笑われる。それが周りと合わせると言う事。そう思った。中学生まで使ったそのセットを一度も好きになれる日は来なかった…  小学生のいつ頃からだっただろうか、なぜ可愛い服を着てはいけないのか、なぜスカートを履いてはいけないのか、、なぜ髪を伸ばしてはいかないのか。そんな疑念が頭を占領したのは。当時は、”LGBTQ”という言葉も、”多様性”という言葉も浸透していなかった。私も知らなかった。だから違和感を覚えても答えは出なかったし、誰かに相談しようとさえ思わなかった。おままごとが好きだった私も、男子トイレに恥ずかしさを感じる私も。    6年性になると、修学旅行がやってきた。グループは男女別だ。私は男子グループであることに漠然とした違和感と嫌悪感を感じた。グループメンバーはみんな仲の良い友達だった。けれど、その子達と夜同じ部屋で過ごす事、同じ時間を過ごす事、それがすごくイヤだった。夜は寝ても1時間おきに起きた。10歳の私でさえ寝付けなかった。  きっと私は、生まれた時は女の子だったけれど、親の意向か神様のイタヅラか、男の子に変えられてしまったんだ。手術か何かで…。現実味のない事だと今は思うけれど、当時は本気でそう思っていた。 『この気持ちは一体なんなんだろう?』そんな疑念は解決する事もなく、私の小学生は終わった・・・

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