新規ユーザー

6 件の小説

新規ユーザー

執筆歴5年目の未熟者

さよなら

 胸の奥が、じんわりとあたたかくなる。  目尻が熱くなって、涙が止まらない。  何度も何度も頭の中でシミュレーションをしたのに、  次の言葉を言おうと決意すれば、声が出なくなる。  やっぱりつらい。  わかっていたことなのに、仕方がないのに、心はちゃんと素直なんだって自覚する。  好きという気持ちを隠すこと、綺麗なままお別れをすること、私にはとてもじゃないけど無理な気がした。  だってこんなにも貴方が好きだ。  弾けるほどの清々しい笑顔が、  美しいぐらいの横顔が、  何百回言っても足りないほどのかわいい仕草が、  落ち着いた大人ぽい声が、  あたたかく包み込むような優しさが。  思い出すだけで、涙はぽろぽろと落ちてくる。  息を大きく吸って、吐く。涙を必死に抑える。涙を拭う。今度こそ顔を上げて、彼の瞳を見つめた。  もう泣かないよ。あなたのためにも、私のためにも。  だから頑張れ、私。  振り返らず、一歩下がらず、勇気を出して。  さぁ、君に伝わる声で。 「先輩、卒業おめでとう」

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こわいもの

 たとえば  よく吠える野良の犬とか  大きなトラックのタイヤとか  掃除機の音とか  動く玩具とか  暗闇の中の雷とか  痛々しい傷とか  どこかの誰かの怒鳴り声とか  見えないはずのおばけとか  こわい顔した怪獣とか  この世界には  こわいものがたくさんある  きっと 僕ひとりで立ち向かうのは到底無理だ  けれど 君が居れば  君さえ居れば  どんなものだってこわくないだろう  たとえ こわかったとしても  怯えてしまっても  一歩下がってしまっても  君が居れば  それは最大の武器になる  

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はっぴーえんど

 君が笑う。  私も笑う。  涙をこぼして、  抱きしめあって、  ぬくもりを感じて、 「ばかなんだから」  そっと、つぶやく。  すると君はさらに笑って、 「ごめんね」  そっと、つぶやき返す。 「もう、謝らないで」  君の“ごめんね“を訊きたいわけじゃない。  ただ、笑っていてほしい。  それだけだよ。 「うん、わかった」  君の涙がぴかぴか光る。  そして、そっと涙を拭う。  君の唇がかすかに動く。  でも、君は何も言わない。  だから私から君に伝えた。 「別れよう、」

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膨らむ恋心

 好きな人を夢の中でも見たいと願いつつも、  いざ夢で見てしまうと、  コレが正夢になりますようにと二度願ってる惨めな自分。  好きな人に会って話したいと願うくせに、  いざ会えば  言葉も交わさず小さく俯くバカな自分。  好きな人が少しでも意識してくれているんじゃないかと、  自意識過剰になったはいいものの、  数分経てば嫌われたのではないかと考える情緒不安定な変な自分。  さて、こんな自分に掛けられる唯一の言葉は。 「恥ずかしさに負けるなよ」  と、残しておく。

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結婚式

「はるちゃん、愛してるよ」  君が僕の名前を呼ぶ。  愛おしい笑顔で、愛おしい声で。  だから僕も続けて言った。  結婚式ってどんな感じなんだろう。  昔、父にとある一枚の写真を見せてもらった時、そう思った。  そのとある一枚の写真は、父と母の華々しい結婚式で、今までで一番幸せそうな二人の笑顔があったのを覚えている。  それから、今僕の目の前にいる“美優“に出会い、恋をして、付き合って、お互いに色々な出来事があったけど、こうして結婚式を迎えることができたのだ。  きっとお互い、たくさんのことが変わった。  たくさんの出来事に直面した。  辛いこともあっただろうし、悲しいこともあったよね。でも同じくらいに、幸せと笑顔が僕たちを支えてくれた。  なぁ、美優。  これから先、君を困らせてしまうこともあるだろう。僕はダメダメな男だからさ、上手くいかないことは何百回とあるはずだ。  その度に君は、僕の不甲斐なさに呆れてため息を洩らしてしまうかもしれないね。  たださ、子育てが上手くいかなかったり。僕たちの間で何かが崩れて、理想とはかけ離れたものを歩んでも。  何度でも、立ちあがろう。  ゆっくりでいいから。少しずつでいいから。  崩れてしまった何かを、何度でも、築き上げよう。 『ねぇ、父さん。結婚式ってどんな感じ?』  昔、父さんにこんなことを訊いたことがあったっけ?  その頃の僕は頭が空っぽで、結婚式ってものもよくわからなかった。  けど父さんは笑顔で答えてくれたよね。 『人々が、幸せになる場所だ』 「−−僕も愛してるよ」

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海誓山盟

 カップルが無性にクリスマスツリーを見に来る理由とか、星ひとつ輝いてない空を見上げて「綺麗……」なんて呟く意味とか。 「ウチには一生わからないんだろうなって思ってたんだけどな」  思わず言葉にした思いを、君の耳がキャッチした。 「なに? なんか言った?」  なんでもないよ、なんて言うのも変だと思ったから「あたしね」と話を続ける。 「彼氏とか、一年前までは本気でいらない存在だって思ってたの」 「お前らしいな」  君が優しく微笑んで私を見つめた。  どうやら“私らしい“みたい。 「なによ。彼氏なんて人生に不必要じゃない」  そのとおりでしょ、と同意をして欲しいがために上目遣いでもして言ってみる。そしたら君はクスクスと笑い始めて、「まぁ、不必要なのかもな」ってぽつりと言ってくれた。  だって彼氏が居たところでメリットとかある?  そんなことを君に聞いたら「ないわけじゃねぇけど、俺は完全にお前と一緒で反対派だった」って二度目の同意を言ってくれた。 「まぁでも、恋人が居て邪魔だとは思わない」  しとしとと降る真っ白な雪が、さっきよりも勢いを強くして、私たちの間をほんのりと冷たくさせた気がした。 「いや、違うな。お前だから邪魔だって思わないのかも。俺、たぶんお前以外のヤツと付き合ってたら上手くいってねぇし。てゆーかお前だから上手くいってる」  何をバカなこと言ってるんだって思いながらも、内心少しだけ嬉しく思う自分がいた。  すると君がニコッと整う歯を見せて笑い、私の手を無邪気に掴んだ。君らしくないと思うけれど、君と手を繋ぐのはイヤじゃない。 「ねぇ、恥ずかしいって……。手繋ぐのにメリットってある? 絶対ないよね」  君のほんのりとあたたかい手が、身体中を熱くさせてあまりの恥ずかしさに「ぷしゅう」と湯気が出てしまいそうだった。まぁ、いまさら君に言ったってこの手が離れることはないだろう。だって、私もこの手を離したくないのだから。 「メリットしかねぇよ!」

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