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3 件の小説人を信じたい時に読む話。
人を信じることの何がいけないのだろう? 「兄ちゃん、今の季節のリンゴは絶品だよ〜!」 上岡百恵は右隣で繰り広げられている会話のせいで、足を動かせずにいた。 ここのスーパーの店主は『誇大広告』というやつで、 商品を実際よりも大げさに宣伝する癖がある。 私もこのスーパーを利用すること三年近くなるけど、最初の頃は“人を信じすぎる“こともあってかよく買わされていたっけ。 「そうなんですか? そりゃ食べてみたいなぁ」 「そうだそうだ。ウチのスーパーの言い伝えがあるけどよ、ここのリンゴを食べると寿命が伸びるらしいぜ」 なんともまんまと引っ掛かる男性は私と同じタイプらしい。誰かの言葉に疑いもせず信用してしまうのは、昔の私を思い出させた。 昔から人を信用しすぎる悪い癖があった。 そんな性格のせいで損をしたこともあって、 お兄ちゃんやお姉ちゃんに『人を信じすぎるのも良くないよ』とこっぴどく言われていた。 『ねぇお父さん、人を信じすぎるのは悪いことなの?』 小さい頃、父にそんなことを聞いたことがある。 当時、お父さんは毎日疲れ切ったような顔をしていて。だけど次の瞬間、本当に久々に父は笑ったんだ。 『……お前のお母さんも、そんなこと訊いてたなぁ』 『お母さん? 天国にいるお母さんのこと?』 『そうだよ。お母さんもな、お前と同じで人を信じすぎる人間だったんだよ。それが自分の悪い癖だってよく言ってたよ』 父の横顔は懐かしいものに触れるみたいに、優しかった。 『百恵。たしかに人を信じすぎてしまうと、損することもある。だけどな、疑うよりは信じた方が全然マシだ』 「あの!」 声を掛けずにはいられなかった。 だって、彼が損してしまうから。 「……なんでしょうか?」 彼の優しそうな雰囲気が、あの頃の父と重なった気がした。 私は彼の手を引いてスーパーを出た。何をしているんだろうと自分でも思う。でも、それでも……。 「ど、どうしてそんなに人を信じるんですか……!」 人通りの少ない路地につくなり、声を上げてしまった。 「え?」 「だって、あの店主さんは……いろいろと物を大袈裟に言って買わせようって魂胆ですよ!」 私、何言ってるんだろう。この人のこと何も知らないし、初対面だし。ただ、昔の自分と重なっただけなのに……。 「そ、そうだったんですか……?」 「わ、私もあの店主さんを信用して商品を買わされたことがあるので……ご、ごめんなさい」 人を信じすぎると損することがある。それは痛いほど味わってきた。人を信じすぎたせいで傷つくこともあったし、怖くもなった。 だから、これ以上誰かに傷ついてほしくなかった。 「そうだったんですね……。俺、この辺に引っ越してきたばっかで全然わかんなかったので……」 彼が恥ずかしそうに後頭部をガシガシとかく。 「ひ、人を信じすぎると痛い目見ますよ……」 無意識につぶやいていた。ハッとして思わず顔を見ると、 彼は苦しいくらいに優しい笑顔で笑っていた。 「そうですね。俺、痛い目見るかも。でも、人を疑い続けるのは俺には合ってないっていうか……」 心臓がどきりと大きく鳴った気がした。 「それでも俺、人を信じ続けたいんですよ!」 思い出した。お父さんはもっと、大切なことを言っていた。 『いいか? 百恵。人を信じられる人間になりなさい』
夏色気分
ジリジリとした暑さが悲鳴を上げる暑さが、 私たちの青春を更に盛り上げる。 少しだけ浮かれた気分になって、 青春を謳歌している気持ちにもなって。 学年主任にこっぴどく叱られるのさえ酷く気持ちよく感じたあの夏の日。 なんとも言語化できないサイダーの美味さを、 サボりがバレて廊下を駆け巡る私たちの姿を、 線香花火のジンクスを信じて願い事を、 夏色気分に浸り続けていたんだ。 恥ずかしい思いしてもいいじゃないか。 叱られてもいいじゃないか。 惨めになっていいじゃないか。 全てのことに飽きたら、自由な旅に一人出てもいいじゃないか。 それを夏が教えてくれた。 さぁ、若者よ。今画面を見ている君よ。青春を謳歌する者よ。これから青春を背負う者たちよ。 コレはまだ序盤に過ぎない。 だからどうか限られた青春時代を一分一秒尊く生きろ。 そして大人たちに見せつけてやるのだ。 “自分たちは今、光り輝いていると“
海誓山盟
カップルが無性にクリスマスツリーを見に来る理由とか、星ひとつ輝いてない空を見上げて「綺麗……」なんて呟く意味とか。 「ウチには一生わからないんだろうなって思ってたんだけどな」 思わず言葉にした思いを、君の耳がキャッチした。 「なに? なんか言った?」 なんでもないよ、なんて言うのも変だと思ったから「あたしね」と話を続ける。 「彼氏とか、一年前までは本気でいらない存在だって思ってたの」 「お前らしいな」 君が優しく微笑んで私を見つめた。 どうやら“私らしい“みたい。 「なによ。彼氏なんて人生に不必要じゃない」 そのとおりでしょ、と同意をして欲しいがために上目遣いでもして言ってみる。そしたら君はクスクスと笑い始めて、「まぁ、不必要なのかもな」ってぽつりと言ってくれた。 だって彼氏が居たところでメリットとかある? そんなことを君に聞いたら「ないわけじゃねぇけど、俺は完全にお前と一緒で反対派だった」って二度目の同意を言ってくれた。 「まぁでも、恋人が居て邪魔だとは思わない」 しとしとと降る真っ白な雪が、さっきよりも勢いを強くして、私たちの間をほんのりと冷たくさせた気がした。 「いや、違うな。お前だから邪魔だって思わないのかも。俺、たぶんお前以外のヤツと付き合ってたら上手くいってねぇし。てゆーかお前だから上手くいってる」 何をバカなこと言ってるんだって思いながらも、内心少しだけ嬉しく思う自分がいた。 すると君がニコッと整う歯を見せて笑い、私の手を無邪気に掴んだ。君らしくないと思うけれど、君と手を繋ぐのはイヤじゃない。 「ねぇ、恥ずかしいって……。手繋ぐのにメリットってある? 絶対ないよね」 君のほんのりとあたたかい手が、身体中を熱くさせてあまりの恥ずかしさに「ぷしゅう」と湯気が出てしまいそうだった。まぁ、いまさら君に言ったってこの手が離れることはないだろう。だって、私もこの手を離したくないのだから。 「メリットしかねぇよ!」