八咫烏
6 件の小説割り切った関係
そのロボットは災害時、人を助けるために造られた。製造者からは「命の危険のある者を助け、その命令に絶対に従え」 とプログラムされた。 初めてそのロボットが実用された日ある一人の老人が助けられた。ロボットの背に乗せられながら老人は「ありがとうね、ありがとうね」と何度も言った。そして安全な所まで来ると「もういいよ、大丈夫だよ」と言った。その瞬間、ロボットは手を離した。 老人はロボットから落とされ腰を打ってしまった。すると老人は「なんてことするんだい!」と怒りを露にした。しかしロボットは淡々と「私は貴方様のご命令に従ったまでです。」と告げ、歩いていってしまった。
対価
物を手に入れるのにお金という対価を払う。 未来へ進むために、歳をとるという対価を払う。 とある国のある科学者が、タイムマシンの発明に成功した。 これはまだ他国に知られておらず、国が秘密裏に行っていた事だった。 タイムマシンの発明を記念し、一度タイムマシンが行ける限界の、百億年後に行ってみようという事になった。行く人は総勢科学者百名、皆希望に満ち溢れていた。 百億年後の世界は凸凹した地形が広がっており、動植物はおろか、水も何も無かった、地面は黒く空も同じように黒かった、科学者達は何枚か写真を撮ると直ぐに帰ることにした。 元の百億年前に戻ると、科学者達は愕然とした。 先程、百億年後で見た世界とほぼ同じ世界が広がっていたのだ、タイムマシンの故障か?そう思って年数メーターを見ると、科学者達が出発した年の一年未来に来ていた。 絶望する科学者達の中、突然、皆急速に歳をとり始めた、そして老いて皆死んでしまった。 もう一度言おう人は未来に行くために歳を対価として払う。 では歳を取らずに百億年後に行った百人の対価は? 常人では払いきれない対価、その対価の精算としてある某国の大統領が死んだ、これを境に各国で謎の不審死、ひいては核戦争を引き起こす引き金になり人類は滅亡した。 しかしまだ精算は行われる。 人で払えなくなった対価は地球の動植物、そして地球自体の歳を奪い始めた、そして地球は死に、活動を止めてしまった。 その百億年後、百人の科学者達が来る。
いらない
醜い世界を見たくなくて、目を潰した。 嫌な音を聞きたくなくて、鼓膜を破った。 血と火薬の匂いを嗅ぎたくなくて、鼻をもぎ取った。 もう仲間の死体の味を感じたくなくて、舌を抜いた。 仲間の温もりを感じるのが、消えるのが怖くて、全身の皮を剥いだ。 五感を全て無くしたのに無くならない感情。消えない何かの存在感。 悲しみ…いらない 喜び…いらない 怒り…いらない “全部“いらない 世界大戦が終わり世界が復興に向かう中、ある1人の青年の五感を取り戻す治療が行われていた、この戦争で一番人を殺め、全てから逃げた青年に全ての罪を押し付け、世界が前に進むために…
お前は誰だ
「お前は誰だ」 「俺? 何度も言ってるでしょ、齋藤晴人だって!」 「…」 「やり直し」 「お前は誰だ」 「谷山千佳で~す、、それよりおじさんこの縄解いてよ」 「…」 「やり直し」 「で、どうだね彼女の容態は」 「その事ですが医院長、まだ本人の意識が見つかりません、これまでに10人以上の人格が見つかっています、脳の移植手術は成功していますが…」 「早く本人を見つけろ! 病院の面子に関わる! 、、、ん?この春香って奴、患者と同名じゃないか、この子ではないのか?」 「名前は同じですけどやはり本人とは少し違うんです」 「少しの違いなら問題ない、後遺症だとでも言っておけ、こっちは両親がまだかまだかとうるさいんだ」 「…」 「分かりました」 「娘さんはあちらに…」 「はるかあぁぁ!」 「大丈夫?意識はハッキリしてる?お母さんのこと覚えてる?」 「うん、覚えてるよお母さん」 「良かったあぁ」 「入院がやたら長くて会えなかったから心配だったのよぅ、すみません何時退院することが出来ますか?」 「もう日常生活を送れるくらいには回復してるので今日にでも退院出来ますよ」 「じゃあ今日!今日退院しましょう、ね?春可も今日帰りたいよね?」 「うん!」 「春可、話があるのだけどさ、」 「なーに?」 「本当はあなた、春可じゃないよね?」 「だってあの時、確かに私はあなたのことを殺して確認したもの、息がなかった、とても冷たかったのを覚えているわ、救急車が来たけど無駄だと思ってた、」 「直ぐに緊急手術を施されたわ、無駄なのに、そう思っていたら手術は成功した、医師の人は他の人格が入っていたりしたって言ってたじゃない?あなたは誰よ、春可は私のことお母さんって言ったりさない、せっかく自由を手に入れた私を邪魔するあなたはだれよ!」 「私は春香だよ?お母さん」 「春可ちゃんに頼まれたんだよね、『私のママは人を殺して自由を手に入れようとする、だからいつまでもママの枷となって、ママの人生を狂わして』って、だからね、いつまでも二人で仲良く暮らして行こう?ね?“ママ“」
虐め
「うわっキモッ」 「え?」 「キモイんだよ こっち来んな」 「…」 バンッ! 「いたっ!」 「何すんだよ」 「ばーか 死んどけ」 「…」 …2年の頃あんなに虐めてきた奴が今ではすっかり虐められている。 誰も助けようとしない、皆笑っている、僕もつられて笑う、こんなんでいいのか、 僕を虐めてきた奴だ当然の報いは受けるべきだ、でも何故だろう、体が勝手に動く、いつの間にか間に入ってる、 辞めろ、関わるな、また虐められるぞ、頭では分かってる、でも体が言うことを聞かない、 本当は分かってる、彼のような人を見たくないんだ、そんなの見るくらいなら自分が虐められた方がいい、 そうして今日も僕は虐められる。
日常
辛い…行きたくない……それでも…… 朝が来る、 目が覚める、 胸が苦しい、 学校に行きたくない、 頭に浮かぶのはそればかり、 思えば中一からだ、 ただその場にいるだけなのに馬鹿にされ、からかわれ、 親しいと思っていた友達にも裏切られ、陽キャ男子にはいいように使われて、理不尽な言葉の暴力、 いつしか自分と周りに距離が生まれるようになった。 誰も助けてくれない、先生だって気が付きやしない、どうせ気が付いても軽く流される。 こんな世界は間違っている、 いつも思う、けれど自分の力ではどうにも出来ない。 毎日が苦しい、辛い、死にたい、このぶつけようのない思いを胸に押し込め、それでも力ずくで前を向く、笑える大人になる為に…この色の消え失せてしまった世界で…… パリンッ! あれ? 何かが割れる音がする……