それでもまだ生きたかった
悲しい。気持ち悪い。
頬を伝って唇に交わる涙はどこか甘い。
人の気配が全くない静かな駅で1人寂しく電車を待つ。
冬だからか、まだ5時なのに空は暗かった。
冷え切った寒さが凶器のように私の体温に浸透していく。
寒さを誤魔化す為に、私は思い出に浸り始めた。
今思い返したらそれなりに良い人生だったんじゃないかな。
虐められてる訳じゃない。
親だって大好き。
友達だって少ないけど大切だよ。
「じゃあ何でこんな所にいるの?」
分からない。
だけど、きっと私は人間として合わなかった。
勝手に期待して、嫉妬して悲しんで。
自分の体だって何回も傷付けた。
何回も親を悲しませた。
でも
でも
私は、
「まもなく2番線を列車が通過します。危ないですから黄色い線の内側までお下がり下さい。」
あっもう時間だ。
後悔してるのかな?
目から涙が止まんない。
全部夢だったら良かったのに。
電車の甲高いブザーの音が聞こえる。
肉塊が衝突する鈍い音が聞こえた。
思考が止まる寸前で私は声に出さないでつぶやいた。
それでもまだ生きたかった