杜若

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杜若

かきつばたです。多分不定期です。 あまり小説とか書いたことないので、変なところもあるかと思いますが、よろしくお願いします! (読者の心を掻き乱すような小説を書きたい...)

夏の犠牲1

あれは確か、8月のはじめの頃だった。 その日は、とにかく暑くて、まるで夏の終わりを知らない蝉のように、ジリジリと太陽は僕たちをしぶとく照らし続けていた。 …でも、まさか、あんなことが起きるなんて… 前日、僕は“古の供養”(いにしえのくよう)の代表に選ばれた。 “古の供養”とは、僕たちが住んでいるこの村、吐別村って言うんだけど、その村で毎年行われている行事だ。え?吐別村なんて聞いたことがない?まあ、周りは山に囲まれ、普通に生活していても村人以外会わないような、いわゆる孤立集落だから無理もない。 代表に選ばれた人は、この村の端のほうにある古い神社に、供え物をしに行かないといけない。 通常、代表は1人なんだけど、今回は僕と陽一の2人が選ばれた。 陽一は、僕の数少ない友達で、いつも僕に明るく話しかけてくれる、すごくいいやつで、小4からの仲だ。 わざわざ、いじめられてた僕と一緒にいなくても、他に友達いっぱいいるだろうに。 …はぁ、嫌なこと思い出したな。 陽一から与えてもらってばかりで、なにも返せない僕は、たまに、申し訳ない気持ちになる。 それでも一緒にいてくれる陽一には感謝でいっぱいだ。 …え?あぁ、忘れてた。僕は颯太っていいます。 陽一と同じ学校に通っている中学生1年生だ。小学2年生の時にこの村に来たらしい。…覚えていないけど。 …では、話に戻ろう。 代表の決め方はあまり詳しくはしらないが、この村の能力者(?)みたいな人が決めているそうだ。 (いや、正確には、村の神が代表者を告げているらしい) まあそんなこんなで、僕と陽一は神社に向かうことになった。 神社に向かう途中で、村のおばあさんに声をかけられた。 おばあさん「おや、“古の供養”をしにいく子たちか。…随分若いのねぇ。あそこはだいぶ古いから気をつけるんだよ…」 それから僕たちは一言二言おばあさんと喋って別れた。 それにしても神社まで遠すぎる。なのに真夏の日光は僕たちに容赦なく降り注ぐ。その冷酷さで涼しくしてほしいものだ。 陽一「なあ、颯太、アイス買い食いしないか?笑」 ということで、僕たちはアイスを食べながら進んだ。 残り少なかった小遣いを使ってしまったのは、ちょっと残念だったが、この判断は賢明だった。 アイスがなかったら、僕たちは途中で倒れていたかもしれない。 それくらい暑いし遠かった。 歩き始めてからおよそ1時間半で、ようやく、神社へ続く細い道に着いた。 深い森の中に続く1本の道は、若干上り坂になっていて、奥にはうっすらとだが神社が見える。そして、それらの木から伸びる、細くてしなやかな枝は、神社ヘ続く道の上に覆いかぶさり、まるでトンネルみたいだった。 陽一「早く行って帰ろうぜ!」 僕と陽一はそのトンネルを奥へと進んでいこうとした。 陽一「え…?颯太、大丈夫か?すごい気分悪そうだけど…」 …やばい、めっちゃ見られている。 僕は昔から少し霊感がある。 (そのせいで色々つらいことが…あったなあ…) 薄暗い木々に潜みながら、何百もの目線を感じる。けど、あまり強くなかったからなんとか進むことができた。 トンネル道を抜けると、鳥居があり、その奥にとても小さな社があった。 この神社を初めて見た印象は、もちろん古いのはあるが、どこか廃れた神社っぽかった。 鳥居は、赤い塗装が剥がれて木が剥き出しになっているところが多く、社は長い間、掃除されていないようで、埃がぎっしりと積もっていた。 僕たちは持ってきた酒と米を、お供えして帰ろうと社に背を向けた。 ……まさにその時だった。 シャンシャンシャンシャンシャンシャン………… 神社でお祓いをしてもらう時のような音が不気味に鳴り響き、さっきまであんなに晴れていた空は、薄暗いが濃い雲に覆われ、まるで津波に呑まれたような大雨が降り出した。 颯太「陽一!え…?い…いない…?」 いくら周りを見渡しても彼はどこにもいなかった。 先に帰ったのだろうか…? いや、陽一は置いて帰るようなやつじゃない。 ゴオォォゴゴォオオゴォゴオゴオゴォオ……… その時、社の後ろの方から、ものすごく大きくて、強力な何かが迫ってきているのを感じた。 もう無理だと思って僕はトンネルの方へ駆け出した。 トンネルでは来た時の何十倍もの強さと数の視線が来る。 その視線は僕にものすごい恐怖感を与え、気を抜いたらしゃがみこんでしまいそうなほどだ。 でも、なぜか止まってはいけない気がして…必死に走った。 …僕は1人で走り続けた。 陽一が先に無事に家に着いていると信じて。

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夏の犠牲1

前世の私は

ここは死んだ人がくるところ。使者が前世でのおこないを見て、天国に行くか、地獄に行くかを決めている。 聞いた話によると、前世で罪を犯した者は地獄に行き、それ以外の者は基本的には天国に行くらしい。ここに来る前に先に天国に行った死者に教えてもらった。わたしも早く楽なところに行きたい。 死者「次も、か。上手くやってこっちおいで。待っとるよ。」 あ、次は私だ。 使者「次はあなた? 若いのね。もちろんあなたは地獄よ」 ……え? ……待て待て。なんで地獄なんだ。 わたしは、なんの罪も犯していないはずだ。自分で言うのもあれだが、優等生だった。お年寄りに席を譲ったり、困っている友達を助けたり。だから、地獄には行かないだろうと思っていたのに… わたし「すみません。何かの間違いでは? わたし、生きている時に何も悪いことしてないと思うんですが…」 使者「え?あなた人を殺しているけど? まあこれだけじゃないんだけどね。まさか、三途の川を渡る時に後ろを振り向いてしまったのかしら…?」 どうやら三途の川を渡っている時に後ろを向くと前世での記憶を無くしてしまうらしい。うーん、心当たりがないが… わたし「あの…わたしは誰を殺したんでしょうか?」 すると使者は驚いた顔をして答えた。 使者「自分を殺したじゃないですか。」 気づいたら、わたしの目からポロポロと、大粒の涙が溢れていた。 −前世の記憶− 友達A「ねぇねぇ、わたしちゃん!今日さ、習い事あって早く帰らないといけないんだ。自分の日直の仕事、お願いしてもいいっ?」 私「んーわかった、いいよ。習い事頑張れ!!」 (うーん…今日は疲れていたから早く帰りたかったけどなあ…) −別の日− Aちゃん「わたしちゃん、一緒に遊びに行かないっ?あ、Bちゃんもっ!でさ、どこ行く?」 わたし「映画は…」(映画はどう?) Bちゃん「(大きな声で)カラオケがいい!!」 Aちゃん「カラオケか、最高っ!!わたしちゃんもカラオケでいい?」 わたし「う…うん」 (もうしんどい…こんなの嫌だ…楽になりたい…) ……もっと人に優しくしないといけない…… 使者「あのねぇ、人に優しくするのは大切なことよ。だけど、自分はもっと大切にしないと。あなたは人に親切をすることができていたけれど、自分にはできていなかったわ。」 涙が止まらない。 使者「あなたも周りの人と同じ、人でしょう? だから優しくしないと、ね?」 わたしは大きく頷いた。 使者「わかったなら地獄へ行きなさい。新しい親が待ってるよ。」 どうやら地獄とは人間の世界に戻ることのようだ…… 次は天国に行けるようになってたらいいな…… わたしはどんどん体が軽くなって、まるで、全てが新しくなったような気持ちになった。スッキリするはずなのになんか複雑だ。 懐かしい感覚がしたあとになぜか、少し悲しくなったような気がした。

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前世の私は