とお

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とお

催眠術

 俺は昨日とある催眠術の道具を買った。 それは「絶対相手を惚れさせる催眠術」と言うものだ。 それを今からこいつに使おうと思う。 「ジロジロ見んな!気持ち悪いんだけど」 「は?見てるわけねえだろ。」 そお、この口の悪い幼馴染に対して使うのだ。 年々、成長と共に態度と口だけが悪くなっている。学校では誰にでも優しいのだが俺だけにはこんな態度である。腹立つ。 「なぁ、ちょっといいか?」 「話しかけんな、今この漫画読むので忙しいんだけど」 「じゃあお前の家で読めよ」ボソ 「なんか言った?」 「いや、なんも。そんでさ、催眠術してみたいんだけどいい?」 「何アンタw催眠術なんて信じてんのw」 「いいだろ、別に」 今に見てろ、俺に惚れさせて俺の命令を聞かせてやる。 ポケットから五円玉に紐をつけた道具を取り出し振り子のように振ってみる。 「あなたはだんだん眠くなーる」 「なんないにきまってんじゃんw」 「あなたはだんだん眠くなーる」 「なんも起きないけど?」 あれ?なんも起きないはずないのにここで眠った後起こしたら俺に惚れてるはずなのに、くそ、なんでだよ。 「読み終わったし帰るわ」 「お、おい…」 *否、本商品は既に惚れている方には効きません。

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催眠術

アルコール中毒

父はアルコール中毒者だ そのため家には酒類はない 父は足が不自由になり そのストレスによって アルコール中毒になった しかし最近、帰宅すると 父が酔っ払っている事がある 家には酒がなく 父は足が不自由なため 家から出ることができない 誰かに頼もうにも 父の親しい人間はもう居ない そのため父が酔っ払っているのは不自然だ そのことを調べるため 家に監視カメラを付けることにした 3日後、父が酔っ払っていた その時映っていたのは このご時世だからこそ どの家にもある 消毒液を飲む父の姿だった

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アルコール中毒

脱獄

 カリカリカリ、薄暗い部屋の中に音が響く。 「新入りか、脱走なんて考えやめときな」 年期の入った男が部屋の隅で座り、話し出す。 「あなたは?」 扉の鍵を外そうとする手を止め、少年が男の方に振り返る。 「はっ、俺かそんなのはどうでもいい。 ただ逃げ出すのだけはやめとくんだな」 男は名前も告げぬまま逃げる事はするなと再び警告する。少年はそのことに疑問を抱き、男になぜか問い始める。 「お前もあいつに買われたんだろ」 「それがよくわからないんです。気づいたらここに」 少年は顔を顰めながらここに来た経緯を語りだす。 それを聞いた男は一つ頷く。 「俺もだ、こんなことあるんだな」 少年は驚いたのか、無言のまま止まっている。 「ここの外は俺たちが暮らせるような世界じゃない、鈴の音を鳴らす怪物がいる、もう一個だけいるがそいつは害がない。どちらかと言うとそいつのことにさえ従っていればなんでもしてくるいい奴だ」 男が語り終えると悲鳴のような鳴き声を上げ、鈴の音がどんどん近づいてくる。 「な、なんです!」 「し!喋るな」 男は慌てて少年の口を塞ぎ息を潜める。 次第に鈴の音は遠ざかって行く。 「もういいだろう」 「今のはなんですか!こ、怖いです。早く逃げ出さなきゃ」 「さっき言った怪物だよ」 少年は再びカリカリと扉の鍵を開けようとする。男はやめとけと言うが少年は無視して扉の鍵を開ける。 「こ、これで逃げられる」 男は呆れたのか少年を止める事はなかった。 そして少年は外の世界へと飛び出して行った。       * 「待って〜」 「ハム二郎ケージから抜け出さないでよ〜」 「にゃー」

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脱獄