脱獄

脱獄
 カリカリカリ、薄暗い部屋の中に音が響く。 「新入りか、脱走なんて考えやめときな」 年期の入った男が部屋の隅で座り、話し出す。 「あなたは?」 扉の鍵を外そうとする手を止め、少年が男の方に振り返る。 「はっ、俺かそんなのはどうでもいい。 ただ逃げ出すのだけはやめとくんだな」 男は名前も告げぬまま逃げる事はするなと再び警告する。少年はそのことに疑問を抱き、男になぜか問い始める。 「お前もあいつに買われたんだろ」 「それがよくわからないんです。気づいたらここに」
とお
とお